2012/7/3 Class 12

投稿日: 2012/07/03 7:05:39

記録

  • 渡辺5章 202-209頁.1030-1120

  • 渡辺5章 210-211頁.1120-1127

  • 渡辺6章.1127-1214

    • 5名全員出席.

    • むかでの利得を「万円」として,どうプレーするかを質問.たしか第3段階か第5段階で2人が降り,第7段階で全員降りた.

    • 伊藤の本を Kb に貸した.僕は2冊持ってるから,返却は夏休み明けでもいい.

アナウンスメント

    • 期末試験準備用に2010年度の中間試験 3 (in-class exam) と正解例を Moodle にアップロードしてある.

    • 再来週7月17日は月曜授業に振替なので一週間空くことになる.

授業の内容への補足

ゲーム理論: 授業内容補足」(ダウンロードは babygames12comm.pdf) の第5章と第6章の該当部分をチェックすること.以下はそれへの追記.

    • 渡辺188 頁 [Class 11 の範囲].逆選択 (逆淘汰,アドバースセレクション,adverse selection) とモラルハザードは,情報の非対称性が引き起こす2つの代表的な問題である.逆選択はエージェントがもともと持っていた情報である属性をプリンシパルが観察できないことから起きる問題であり,(雇用者と被雇用者間の労働契約や保険契約など) 契約締結前の情報の非対称性がもたらす「隠された知識」の問題であると言える.一方,モラルハザードは契約を結んだ後のエージェントの行動 (努力) が観察できないことから起きる問題であり,契約締結後の情報の非対称性がもたらす「隠された行動」の問題であると言える.これらの問題とそれらへの対処法は,伊藤秀史『ひたすら読むエコノミクス』第7章と第6章で詳細に議論されている.

    • 渡辺 210頁8行目.「リスクなどの目に見えないもの」を「リスク削減など目に見えないもの」に修正.

    • 渡辺 214-215頁.「むかで」の利得構造に注意.奇数段階でプレイヤー1はゲームを降りることができるが,そのときの利得は 1, 8, 15, 100, 200 と増えている.一方,相手は偶数段階でゲームを降りることができるが,そのときのプレイヤー1の利得は 0, 5, 7, 10 となっており,直前の奇数段階にプレイヤー1が降りたときの利得よりも低い (1 > 0, 8 > 5, 15 >7, 100 > 10).つまり自分が協力した直後に相手が降りたら自分は損する.同様のことはプレイヤー2の利得にも当てはまる.

      • 仮に第1段階でプレイヤー1が C を選んだら,「プレイヤー1は逆向き帰納法の意味での合理性に従っていない」ということがプレイヤー2に伝わるから,「その意味の合理性から自分も離れてみよう」とプレイヤー2が考えても不思議ではない.

      • このゲームでは合理性を離れることで互いに利益になるが,別のゲームでは自分が合理性を離れることで相手を混乱させることができることがある.合理的なプレーヤを相手にしていてこちらに勝ち目がないようなとき,敢えておかしな行動を取ることで相手の合理的思考を遮断するのは,一種の「高等戦術」といえるだろう.どういう結果に落ち着くのか予想するのは困難になるが,そういう高等戦術を使った方がいい場面もときにはあるだろう.

    • [修正] (蛇足) 渡辺 220-221頁.『実験経済学』や『行動ゲーム理論入門』などの著者である川越敏司 (香川大学経済学部出身の西條辰義のセミナーなどによく参加していた) は,8月刊行予定の講談社ブルーバックスの一般向けゲーム理論入門書で (授業時言及した) 「三原メカニズム」を没にしたことについて,以下のような tweet をしている:

「編集途上で、予定していた題材の5分の2を捨てました。その中には、ソロモン王のジレンマに関する三原メカニズムの話題がありました。これを説明するためには事前にオークションの説明もしなければならなくなり、やむなく削りました。三原先生、ごめんなさい。また約束を果たせませんでした。」

    • 最後にちょっと触れたメカニズムデザインおよび三原の自己紹介については,「ゲーム理論: 授業内容補足」の13-14頁にも少し載っている.

      • 「三原メカニズム」はこの授業で説明してもよかったくらい簡単な配分メカニズムであり,これについては著者自身の解説がある: ソロモン王のジレンマはセカンドプライス・オークションで解決できるじゃないか!

      • 日本語で書かれた (数少ない) メカニズムデザインのテキストとしては坂井豊貴,藤中裕二,若山琢磨 (2008) 『メカニズムデザイン: 資源配分制度の設計とインセンティブ』が有用.上記の三原メカニズムも最初の方に登場する.ただし学部レベルのミクロ経済学とゲーム理論をマスターした上でないと読みづらいだろう.著者のひとり若山は香川大学経済学部出身で,ゼミその他多くの三原の授業に参加していた.現在はメカニズムデザインの分野で国際的な業績を積み上げている.

課題および次回の予定

取り組むべき課題,読むべき文献,次回の予定については,シラバス (ダウンロードは babygames12syllabus.pdf ほか) の「授業計画」を参照.

    • 渡辺 208 頁にある2個の主張の導出は演習に回した.緻密な議論が要求されるので,他の「課題」で慣れた上で取り組むといい.

    • 次回 Class 13 では12:30まで時間を延長して以下をカバーする予定:

      • ホテリングモデルと関連課題の解説を 40+15分ていど (梶井・松井の本の必要部分と補助ノートを持参; Moodle 参照)

      • 問題解説 3 (補助教材や演習問題正解を持参)