2010/5/11 Class 4

投稿日: 2010/05/13 5:40:29

■やったこと

    • このページのアクセス方法を実演したり書籍を紹介したり.1040まで.

    • 渡辺2章72-73頁 (85頁時間差じゃんけんの後手の戦略も).1040-1100.

    • 渡辺3章75−91頁.1100-1150.

    • 第1回中間試験.1150-1205 (希望者は延長).

    • [オフィスアワーは1250ころまで3人いて,Sa と Ku が質問.その後1335までChと雑談.]

■アナウンスメントなど

    • 前回ログに「追記」と「修正」がある.確認のこと.(今後はいちいち書かない.)

    • 前回と同じ5名が参加.名前と顔の対応を誤らないように写真を撮った.いまは選択肢として名前が列挙されていればどの学生がどの名前に対応するかは分かるが,とっさには名前が出て来ないことがある.

    • 今後も欠席しないのがベストだが,もし欠席するときは事前か事後にメールをくれたらありがたい.補講を希望するときは,月曜から土曜の朝10時から夜10時のあいだでいくつか候補を挙げて欲しい.ただし図書館が閉館する時間帯は通常とは異なる出入口を使う必要があることもあるので注意.テキストの大部分は簡単なので,とりあえず自力で勉強して次の回の授業後のオフィスアワーに質問してもいいだろう.(他の教員のばあい人数も多いので,欠席回にかんする質問や補講には応じないのがむしろ普通.その点には注意.)

    • Ch 以外は学外から Web にアクセスできるし,Ch は学内の PC を利用している模様.アクセスについてはあとはやる気の問題だろう.このページへのアクセスを実演したときについでに訪れた「自慢話」はこちらのプロフィールの「どうでもいい「記録」」あたりにある.「それって意味があるのか?」などとあまり細かいことは突っ込まずに,お祭り気分で「すごい」と思ってくれたらありがたい.(夜間主のゼミ生は,こういうので非常に盛り上がっていた.笑)

    • 授業開始時に紹介した最近入手したばかりの書籍は,川西諭『ゲーム理論の思考法』と松井彰彦『高校生からのゲーム理論』である.川西は実用的な「ビジネス書」で,簡単なゲームを多くの事例に当てはめている.著者は金融市場に詳しく,「企業利益のトレンド操作」などにも言及してるから,ヤクザ相手にゲーム理論を教えて稼げるかもしれない.経済学部のゲーム理論家・天谷研一が教養ゼミで採用している本でもある.松井は届いたばかりのをさっそく読んでみたけど [修正],なんと言うべきか……ところどころ著者がえらく優しそうなひとに見えたりといった独特な雰囲気がある.[追記] 詳しくは書かないけど,「もと理系だったの?」とか「最初の生徒に直接返信しなかったの?」とか思った.大学入試に出題されるだろうか.教育学部生ならいじめや障害をあつかったところという具合に,好きなところだけを読んでもいいだろう.ボク自身がおすすめする「読みもの」は,シラバスに挙げた梶井厚志『戦略的思考の技術: ゲーム理論を実践する』である.

      • ちなみに天谷の教養ゼミでは,学生個人が自分でゲーム理論的分析ができるようになることを重視している.そのため,「囚人のジレンマ」とか「合理的なブタ」とか「チキンゲーム」になっている実例を実社会のなかから探して来るといった課題を与えている.まじめに取り組めば思考の訓練になるしゲーム理論を自分のものにできるので,みなさんもやってみるといい.ゲーム理論的思考 (戦略的思考) がうまくできるようになるためには,経験と思考,そして多少の読書が必要である.

    • 第1回中間試験の結果は,受験者5人中2人が減点ゼロで3人が減点1点で受験者全員合格だった.前者には7点,後者には6点を与えた.(シラバスにある基準と辻褄を合わせるためには,素点11点満点,合格点7点,ゼロ基準4点,配点7点とすればいい.) ただ,問題 1 (ii) のように,わけが分からなくても対称性から正解を導きだせるものがあった.(去年はそれでも正しく答えられない学生が多かった.) 期末試験対策としては,ヒントがなくても「戦略の組 (s1, s2, s3) がナッシュ均衡である」条件を定義できるようにしておくべき.正解例を Moodle に載せたので,典型的な不正解例とともに十分理解しておくべき.試験問題自体は左のナビゲーションの「試験問題 (exam)」から行った先に載せた.今後もそこに載せる.

  • Ya は試験結果がいつ分かるか尋ねた.この科目の履修という展開形ゲームをプレイするにあたっては重要な質問だ.シラバスでは,ある (見え見えの) 意図があって makeup の締め切り前には in-class の結果を通知しないと書いたが,今回は試験のできが十分よかったし,被害を被る学生もいないはずなので (ひとり欠席者がいるが,たぶんもう来ないだろう),ここまで情報を出すことにした.(個別の得点はいずれ通知する.) 次回以降はシラバス通りにいくことになると思うが,合格者数くらいは教えるかもしれない.

  • Makeup exam の提出は不要.ただし自分の解答に自信がなければ,オフィスアワーズに質問して確認しておくべき.

    • Ch はさっそく A Beautiful Mind の映画を見たらしくて,ナッシュはすごいと言っていた.彼と経済学の話をしたときに,シラバスにも載っている伊藤秀史の商学部生への経済学のススメ (改訂版) に言及した.経済学部とはどんな学問かに関心があるすべての学生にすすめたい.

■授業の内容にかんすること

    • 今後は「渡辺 (2004) への訂正・コメントなど」(watanabe04comm.pdf) をチェックすべき.

    • 渡辺2章72-73頁で説明した,展開形ゲームの「戦略」の意味や,展開形ゲームを戦略形になおす手続きは完全に理解すること.時間差じゃんけん (85頁) の後手の戦略の数を尋ねても正解は出て来なかった.理解できなかったひとは後述の演習5.2などをじっくり検討すべき.

      • 時間の概念がある展開形ゲームを戦略形ゲームに変換するということは,いわば展開形ゲームの開始時に「同時ゲーム」をプレイして先のことまですべて決めてしまうようなものである.合理的なプレーヤーならば,ゲームの途中にある意思決定点に至ってはじめてその点における選択肢を決めるはずはない.それでは遅いのだ.合理的なプレーヤなら,ゲーム開始時にすべての意思決定点における選択ができるはずである.それにあわせて「戦略」の概念も,あらゆる意思決定点 (より一般的には情報集合) にたいしてなんらかの選択肢を指定することを要求するものになっている.これはたとえばプレゼンテーションであらゆる想定される質問にたいして準備しておくことに相当する.じっさいには一部の質問しかされないだろうが,どの質問をされるかは分からないので,すべての質問にたいして何らかの応え (「知らねえよ!」でもいいが) を用意してこそ「戦略」と呼べる.じゃんけんでいえば「相手がグー出しそうだから自分はパーを出そう」では戦略にならない.「相手がグーを出したら自分はパーを,相手がチョキを出したら自分はグーを,相手がパーを出したら自分はチョキを出そう」というふうに,(実際には起きなくても) あらゆる場合を想定しておくのが戦略だ.

      • Sa の質問はややユニークで,展開形ゲームを戦略形になおす理由を尋ねるものだった.まず,展開形ゲームを戦略形ゲームにしたら情報が一部失われる.展開形から一意的に戦略形を導くことはできるが,逆は一意的にはできない.にもかかわらずなぜ「わざわざ」戦略形を考えるのかという疑問だ.これは参考文献としてシラバスに掲載した奥野正寛『ミクロ経済学』を参照するのが分かりやすい.奥野の定義 4.2 に「展開型ゲームでのナッシュ均衡とは,展開型ゲームから構成される戦略型ゲームのナッシュ均衡のことを言う」とある一見無意味な記述が,端的な理由を物語っている.つまり,「ナッシュ均衡」という概念を戦略形ゲームで定めておけば,そして展開形ゲームにたいして戦略形ゲームをひとつ対応させる手続きを決めておけば,それをもちいて展開形ゲームの「ナッシュ均衡」を定義できるのだ.より一般的には,展開形ゲームを戦略形になおす方法を決めておけば,戦略形ゲームにおける「支配」とか「均衡」といった概念や命題をふくむ理論を,展開形ゲームの理論を構築するのに使える.展開形ゲームを戦略形になおす理由はこれだ.

        • さらに一般化すれば,ある集合の要素にたいして定義されたある概念を,べつの集合の要素にたいしてべつの概念を定義するために援用することは頻繁にある.たとえば「エロい女子高生」という概念は.その心理や行動などいろいろな要素を考慮してはじめて定義できる複雑なものかもしれない.しかしいったんそれをいったん定義してしまえば,たとえば「す敵な女子高」というべつの概念を定義するためにそれを利用できる.「す敵な女子高とは,その生徒の75パーセント以上がエロい女子高生である女子高のことである」といった具合に定義でき,あらためて心理や行動に言及する必要はなくなる.このばあい必要なのは,与えられた女子高----それ自体は立地とか,建物とか,提供科目とか,学則とか,年表とか,教員の集合とか,生徒の集合などをふくみ得る概念と考えられる---にその生徒の集合を対応させる手続きである.

      • [追記] 中間試験 2 (makeup exam) の「予告」として,展開形ゲームにおける戦略をもとめる方法や戦略の意味を分かりやすく説明させる問題を Moodle に掲載した.詳しくは Moodle を参照.

    • 74頁にエスカレータで右を空けるか左を空けるかという話が出て来る.上述の川西は「本当ならエスカレータで歩く行為が禁止されるべきなのに,多くの人がつくりあげた暗黙の暗黙のルールによって,立ち止まってる人が注意されてしまうのです」(117頁) と言う.じっさいエレベータは片方を空けるようには作られてはいないから,その指摘自体は正しい.ただ,人々が作り上げた暗黙のルールを簡単には変えられない以上,「歩く奴が悪い」といっても解決にはならない.エレベータをデザインする段階から,人々の行動を読み込んでデザインする必要があるんじゃないか.

    • 有名陶芸家が焼き上がりの気に入らない作品を叩き割るのをコミットメントの例として出した.もちろん気に入らなければなんでも割ればいいってものじゃない.「よく出来た作品には確立したブランドの「麗珠」印,そこそこのものにはほぼ無名の「れ」印,その他は叩き割る」などと使い分けた方がベターってこともあるだろう.

    • 生協で紙コップを10円で回収していることを知らない学生がいた.図書館前の生協外側の自動販売機のあるところと図書館側入り口,その他自動販売機がある場所数カ所に回収マシンがある.あるマシンが動きにくいときはちがうのを試そう.原理的には,一個10円未満の紙コップを大量に買って来てどんどんマシンに入れるとどんどん稼げる.もちろん連続でやると探知されるかもしれないし,こういうのはだれでもすぐ思いつく悪戯なので,やっても感心されない.それどころか最近は香川大学にも市場のルールを守らない迷惑な学生がいたおかげで (さすがに経済学部生ではなかった),見つかったとき「三原麗珠に教わったとおりにやっただけ」とか「ごめんなさい」とかでは済まなくなる可能性が高い.精神活動の自由は大学にとって死活的に重要なことだけど,近年はいろいろと制限が多くなっている.悪い時代になったものだ.いま学生やってるみなさんはかわいそうだと思う.いやべつにボクが学生時代悪いことしてたというわけじゃないけど.

■次回までの課題

    • 前回までの「次回までの課題」を終わらせよう.補助教材演習 2.8 も (時間があれば期末試験前に説明する).

    • Moodle に掲載した中間試験の正解例を検討.特に誤答例や問題 3 (makeup で出題) に注意.Makeup の問題の類題が期末に出る可能性があるのを忘れないように.

    • 渡辺3章を読む.

    • 補助教材演習 5.1-5.5 を理解する.演習 5.2 については,2009 年度の問題ページにある babygames09quiz3ans.pdf 問題 4 の正解も参考になる.なお,連絡ページに書き忘れることもあるだろうから,ときどき補助教材2ページで各自が課題を確認するといい.

■次回の予定

    • 質問.自分をオタクと思うか?

    • 渡辺3章92-119頁.60分?

  • 渡辺4章 121-127 頁.25分?