2010/6/29 Class 11

投稿日: 2010/06/29 6:04:46

■やったこと

  • 渡辺6章213-217頁.1035-1052.

    • Sa と Ku が最初から,Se と Ya が遅れて参加.

    • 完全合理的アプローチの背景には,ゲームのプレーヤーはゲームの分析者 (ゲーム理論家) と同じくらい合理的で賢いという想定がある.経済学以外の多くの社会科学理論はそうはなっていない.

  • 渡辺5章200-212頁.1052-1155.

    • 203頁で,金太郎が資格を取得してもホヤ商事にとっての価値は変わっていないことに注意.つまり資格取得は能力を高めないとほぼ仮定している.どうやってこの仮定を正当化できるのかは授業中に説明した.渡辺 (2004) への訂正・コメントなど」(watanabe04comm.pdf) にも載っている.

    • ちなみにシグナリングの理論を提唱したスペンスは,大学の卒業資格を例としてもちいた.シグナルが効果を持つのは,卒業するためのコストが能力の高低によって異なるという点にのみ依存し,大学でなにを学んだかには依存しない.卒業できない者も多い米国大学で言えば,大学での教育が能力を高めたかどうかは関係なく,落ちこぼれずに卒業できたという事実がシグナルとして機能するということ.容易に卒業できてしまう日本の大学でいえば,大学での教育内容に関係なく,潜在能力のある人間が入学試験で選別できてさえいれば,その大学へ入学できたという事実がシグナルとして機能するということ.なんだか米国大学よりも日本の一流大学文系のほうが当てはまりそうな感じがする.

  • 戦略にたいして整合的な信念,条件付き確率を求めるベイズの公式.1155-1215.

    • 板書を再現したノート babygames_notes.pdf の page 4 参照.難病の例は渡辺 (2008) 『ゼミナール ゲーム理論入門』382-383頁から取った.

    • 「エイズ検査で陽性が出た場合に実際にエイズにかかっている条件付き確率」の求め方は,ベイズの定理の応用問題として確率論や統計学のテキストによく載っている (語呂合わせにもなっている).通常はなかなか理解しにくいベイズの定理だが,授業で紹介したようなツリーの図 (および水量のたとえ) で考えると分かりやすくなるはず.

    • Web の検索エンジンで「ベイズの定理」や「ベイズ・ルール」を検索すると関連ページが現れるが,肝心の式が消えて意味不明になっていることが少なくないので注意.(式にあたる部分が画像になっていたのを,他のサイトが自動収集したときに無視したのだろう.) いずれにせよ,ベイズルールはビジネスはじめいろんな分野で応用されていることは分かる.

    • ベイズの定理は迷惑メールの自動判定のためのベイジアンフィルタなどで実用化されている.

    • [追記] 難病の例については,「現実にこういうことになっているのか?」という質問があった.数値は単純化してあるが,これはリアルな問題であり,医療統計学でも取り扱われている.ゲーム理論との比較で言えば,そもそもプレーヤーが出て来ないので,合理的であるとか限定合理的であるとかの仮定には依存していない.

    • [追記]「100 人に1人しか当たらないなら,この検査を飛ばしてはじめから精密検査に進んだ方がいいのでは?」と Sa が指摘.

      • 10,000人につき約9,900人については正しい判定をしているので,この検査の精度が低いわけではない.この例のポイントは事後確率 (条件付き確率) の意味を認識させることにあり,たとえ高い精度の検査でも事後確率 (条件付き確率) を見るとハズレが意外と多いことを理解すればいい.それでも検査前は 10,000分の1の確率だったのが,検査で陽性と出たことによって 100分の1の確率に高まったと見れば,検査は十分情報を与えてくれたと言える.かりにこの 9,900人にはじめから精密検査をしたら,(ほんとに精密検査が必要なひとになかなか順番が回って来ないなど) はるかにコストがかかるだろう.

  • [同日行ったCh への補講では,ベイズの公式を 1330-1350,渡辺を (図を指差しながら) 1350-1435 にカバーした.]

■アナウンスメント・感想など

生協からテキスト販売数の連絡が届いた.渡辺も武藤も 7 冊ずつ売れたらしい.以前の17冊という中間報告は間違いだったのだろう.

■授業の内容にかんする補足

「やったこと」に書いてしまった!

■課題

  • 前回までの「次回までの課題」を終わらせよう.

  • 補助教材 演習 5.9, 5.10.

  • 渡辺6章を読み終える.

■次回の予定

  • 渡辺6章218-224頁.15分?

  • 課題の解説 (第3回中間試験の対策)

      • 中間試験 3 は渡辺140-211頁および武藤45-53頁を範囲とする.特に以下を重点的に準備しておくとよい:

          • 混合戦略によるナッシュ均衡の計算法.

          • 完全ベイジアン均衡の求め方.与えられた戦略と信念の組が完全ベイジアン均衡かどうかを判定するなど.

    • [追記] 武藤 68頁,練習問題1 (マックスミニ戦略とマックスミニ値は除外) の 2-2 [三原正解6頁] (2-1は各自で) 15分?

    • [追記] 補助教材 演習 (4.3は各自で), 4.4, 4.5, 4.6, 4.7. 35分?

    • [追記] 武藤 135 頁 練習問題 2 (1は各自で) [三原正解13頁] 10分?

  • [追記] 補助教材 演習 (4.6の類題である) 5.9 と (4.4-4.7の類題である) 5.10 は余裕があれば解説する.中間試験 3 に出題される可能性も高い.

  • [修正] ホテリングモデルは Class 13 に延期.