2011/5/10 Class 4

投稿日: 2011/05/10 3:56:08

■やったこと

    • 事務連絡など. 1030-1038.

    • 渡辺2章60-71頁.1038-1110.

    • 渡辺2章72-73頁 (85頁時間差じゃんけんの後手の戦略も).1110-1125.

    • 渡辺3章75−85頁. 1125-1145.

    • 第1回中間試験.1145-1200. 全員時間内に提出.

■記録など

    • [訂正] 13名出席.うち1名は履修登録していなかった.過去の出席者数が 14, 10, 11, 13 と2回目以降増えているのは不思議.

    • Moodle コースページには現時点で10名が参加登録している.

      • Moodle 未登録の 4 名はボーナス点の「授業への積極的参加」要素で不利になりつつある.急いで登録すべき.4名のうち1名は登録に失敗したらしい.ボクとしては,「分からなかったら他の学生や総合情報センターや講師に尋ねて,成功するまでやれ」としか言えん.登録するときは「学籍番号」と「ユーザー名」のちがいや,メールアドレスの打ち間違いに注意.

    • 全員に前から6列目までの席に着いてもらった.特に不都合な理由 (視覚や聴覚の問題など) がなければ,今後もそうしてもらいたい.いちおうみなさんの顔色を確認しながら教えているので.

    • テキストぜんぶを読み終えた学生はいないか聞いたけど,だれも手を挙げなかった.ゴールデンウィークもあったし,そもそも大学というところは学問やりたいひとが来るところなので,全部読んでしまったひともいるんじゃないかと思ったのだが.

    • チキンとか背水の陣とか時間差じゃんけんで先手がコミットメントするバカバカしさとか,おもしろい例のところでニヤニヤしてくれた学生が何人かいたのはやりやすかった.あれで全員無表情だったら,教える方も辛かったであろう.発言があるともっとやりやすい.

    • 時間差じゃんけんにおける後手の戦略数を尋ねたところ,最初「9 通り」というよくある答えがあった.それは経路 (パス) の数である.少し考えた (ふりをした?) あと,正しく「27通り」と答えたのは学生 Yg だった.補助教材 演習 5.2 参照.

    • 香川大学のゲーム理論家である天谷研一が『図解で学ぶゲーム理論入門』を出版したのでお報せしておく.ボク自身はまだ見ていないが,天谷の授業は分かりやすさで人気が高いので (ボクのより分かりやすいかどうかは知らないが),きっといい本ではないかと思う.

      • 天谷の本はたぶん渡辺の図解雑学同様,テキストとして使えるようなものだと推測する.ゲーム理論の「読みもの」としては,シラバスに挙げた梶井厚志『戦略的思考の技術: ゲーム理論を実践する』をすすめる.

  • 本日あった第1回中間試験 (in-class) の問題を Moodle コースページに載せた.

    • [追記] 第1回中間試験 (in-class) の受験者は13名,配点は8点で,合格点は4点とした.(素点11点満点から零基準点3点を差し引いた値である8点を配点とした.合格点4点は素点に直すと7点であり,満点の64パーセントにあたる.)

      • 得点分布は8点6名,7点3名,6点,5点,0点,0点だった.In-class exam の不合格者は,0点 (素点では3点だった) の2名プラス未受験の1名となる.

      • 正解例は makeup の締め切り後に Moodle にアップロードする.問題 1 (ii) (a) ではサブスクリプト (添字) のミスが3名いた.問題 2 (iii) では支配と弱支配の関係を分かっていないのか,命題 2 の誤答が5名いた.

■授業の内容にかんする補足

    • 今後は「渡辺 (2004) への訂正・コメントなど」(watanabe04comm11.pdf) をチェックすべき.

    • 渡辺2章72-73頁で説明した,展開形ゲーム (ゲームの木) の「戦略」の意味や,展開形ゲームを戦略形になおす手続きは完全に理解すること.

      • その展開形ゲームにおける新朝の4つの戦略は図で説明した.これらの戦略は,以下のように言い換えることができる:

        • (疑惑,疑惑) は「つねに疑惑を選ぶ」戦略,

        • (疑惑,金融) は「先手と同じ選択をする」戦略,

        • (金融,疑惑) は「先手と逆の選択をする」戦略,

        • (金融,金融) は「つねに金融を選ぶ」戦略.

      • 時間の概念がある展開形ゲームを戦略形ゲームに変換するということは,いわば展開形ゲームの開始時に「同時ゲーム」をプレイして先のことまですべて決めてしまうようなものである.合理的なプレーヤーならば,ゲームの途中にある意思決定点に至ってはじめてその点における選択肢を決めるはずはない.それでは遅いのだ.合理的なプレーヤなら,ゲーム開始時にすべての意思決定点における選択ができるはずである.それにあわせて「戦略」の概念も,あらゆる意思決定点 (より一般的には情報集合) にたいしてなんらかの選択肢を指定することを要求するものになっている.これはたとえばプレゼンテーションであらゆる想定される質問にたいして準備しておくことに相当する.じっさいには一部の質問しかされないだろうが,どの質問をされるかは分からないので,すべての質問にたいして何らかの応え (「知らねえよ!」でもいいが) を用意してこそ「戦略」と呼べる.[修正] 時間差じゃんけんでいえば「相手がグー出しそうだから自分はパーを出そう」では戦略にならない.「相手がグーを出したら自分はパーを,相手がチョキを出したら自分はグーを,相手がパーを出したら自分はチョキを出そう」というふうに,(実際には起きなくても) あらゆる場合を想定しておくのが戦略だ.

      • 展開形ゲームを戦略形になおす理由を質問した学生が過去にいた.まず,展開形ゲームを戦略形ゲームにしたら情報が一部失われる.展開形から一意的に戦略形を導くことはできるが,逆は一意的にはできない.にもかかわらずなぜ「わざわざ」戦略形を考えるのかという疑問だ.これは参考文献としてシラバスに掲載した奥野正寛『ミクロ経済学』を参照するのが分かりやすい.奥野の定義 4.2 に「展開型ゲームでのナッシュ均衡とは,展開型ゲームから構成される戦略型ゲームのナッシュ均衡のことを言う」とある一見無意味な記述が,端的な理由を物語っている.つまり,「ナッシュ均衡」という概念を戦略形ゲームで定めておけば,そして展開形ゲームにたいして戦略形ゲームをひとつ対応させる手続きを決めておけば,それをもちいて展開形ゲームの「ナッシュ均衡」を定義できるのだ.より一般的には,展開形ゲームを戦略形になおす方法を決めておけば,戦略形ゲームにおける「支配」とか「均衡」といった概念や命題をふくむ理論を,展開形ゲームの理論を構築するのに使える.展開形ゲームを戦略形になおす理由はこれだ.

        • さらに一般化すれば,ある集合の要素にたいして定義されたある概念を,べつの集合の要素にたいしてべつの概念を定義するために援用することは頻繁にある.たとえば「エロい女子高生」という概念は.その心理や行動などいろいろな要素を考慮してはじめて定義できる複雑なものかもしれない.しかしいったんそれを定義してしまえば,たとえば「す敵な女子高」というべつの概念を定義するためにそれを利用できる.「す敵な女子高とは,その生徒の75パーセント以上がエロい女子高生である女子高のことである」といった具合に定義でき,あらためて心理や行動に言及する必要はなくなる.このばあい必要なのは,与えられた女子高----それ自体は立地とか,建物とか,提供科目とか,学則とか,年表とか,教員の集合とか,生徒の集合などをふくみ得る概念と考えられる---にその生徒の集合を対応させる手続きである.

    • 74頁にエスカレータで右を空けるか左を空けるかという話が出て来る.川西は「本当ならエスカレータで歩く行為が禁止されるべきなのに,多くの人がつくりあげた暗黙のルールによって,立ち止まってる人が注意されてしまうのです」(川西諭『ゲーム理論の思考法』117頁) と言う.じっさいエレベータは片方を空けるようには作られてはいないから,その指摘自体は正しい.ただ,人々が作り上げた暗黙のルールを簡単には変えられない以上,「歩く奴が悪い」といっても解決にはならない.エレベータをデザインする段階から,人々の行動を読み込んでデザインする必要があるんじゃないか.

    • 82頁の説明で,コミットメントの例を挙げるのを忘れていた.有名陶芸家が焼き上がりの気に入らない作品を叩き割るのはコミットメントの例である.もちろん気に入らなければなんでも割ればいいってものじゃない.「よく出来た作品には確立したブランドの「麗珠」印,そこそこのものにはほぼ無名の「れ」印,その他は叩き割る」などと使い分けた方がベターってこともあるだろう.

[三原個人メモ: 以上は「渡辺」ドキュメントに追加済み.]

■次回までの課題

取り組むべき課題や読むべき文献については,シラバスの「授業計画」を参照.これまでの講義で,第3章の「コミットメント」までカバーした.

      • 本日分の課題となるのは,具体的には補助教材演習 5.1 と 5.2.後者は「コミットメント」の下位項目にするつもりだったが,シラバスでは誤って「インセンティブ」の下位項目になっているので指摘しておく.

■次回の予定

    • 中間試験 1 (makeup) の提出期限は授業開始時.

      • 問題は5月2日に Moodle にアップロードした (このサイトの左窓「外部サイト」から行ける).

      • [追記] 上に追記したように,救済対象者は素点で3点だった者および欠席者の3名.ミスしやすい問題を追記に載せておいたので,参考にするといい.

      • 以下は提出希望者へのメッセージ: 授業開始時に持参のこと.どうしても出席できないときは前日までにメールで連絡すること.例外扱いを求める場合も,当日14時までに連絡してもらえるとありがたい.

    • 渡辺3章 86-119頁.80分?

    • 自己紹介.15分じゃ無理?

      • 1分程度の自己紹介を考えておこう.出身地 (秘密でなければ出身高校) とか,得意なこととか,こだわっていることとか,頭に来ていることとか,所属学部を選んだ理由とか,この科目を受講することにした理由とか.12:20 くらいまで続く可能性がなくもないが,「課外」あつかいということで悪しからず.(用事があるひとは先に出て行ってくれて問題ない.)