2016/12/20 Class 12

投稿日: 2016/12/20 12:17:48

記録

    • カウントゲーム (逆向き帰納法の例) と事務連絡.1035まで

    • 天谷5章128-145頁.1201まで (1108時点で133頁まで)

    • 9名出席

    • MetaMoJi Note に読み込んだ天谷のテキスト pdf をプロジェクタに投影.ときどき本文の棒読みを意図的に挟み (書かれた文章で理解することの困難さを強調しすぎか; 笑),改めて説明し直したり.

    • 準備するとき134-135頁の「低い方の評価額の期待値」「高い方の評価額の期待値」の導出をどう簡潔に説明しようかと悩んだけど (おかげで3時間しか睡眠とれず,授業中口元に泡ついてたみたいだけど誰も教えてくれなかった…),今日は時間が取れそうになかったのでばっさりカットした.積分を知らないという人もいなかったし (「積分」という言葉を聞いたことがなくてポカンとしてた可能性は排除できないが),まあ演習問題に回そうと.

アナウンスメント

  • 先週書いたように,補助教材を年内に改訂するつもり.改訂したらここでアナウンスする.再訪よろしく.

    • [追記; 12月27日] 年内は難しそうな感じ.今年最後の授業後風邪が悪化して体調を崩してしまい改訂作業にまだ入ってない.

    • [追記; 1月3日] 1月に計画していた他の仕事を優先することにしたため,まだ教材改訂に着手できていない.(待っている人がいたら) すみません.改訂できたらこのページと Moodle の両方でお知らせします.ということで新年おめでとう.

    • [追記; 1月19日] 講師の病気,他の仕事の優先,そして単なる怠慢により遅延中.主な改訂は4.6節「コメント」および4.7節「課題」 (演習4.8以降) に集中しているので,改訂された演習を授業で取り上げる予定である1月27日までにはなんとかします.

授業の内容への補足

    • オークションが経済学的に重要な分析対象である理由をふたつ挙げておく: (i) 従来の価格理論と比較して,価格決定のアルゴリズムが明示的に与えられている.(ii)「余剰最大化」とよばれる効率的な配分を実現できる方式である.

    • 本日の範囲で「支配戦略」とあるのは,この授業で採用している用語では「弱支配戦略」になる.

    • 天谷129頁.プロ野球のポスティングシステムはその後金額に上限が設けられたりしたため,第一価格封印オークションの例とは言えなくなった.

    • 天谷134頁下段2段落.[0, V] 区間で一様分布するふたつの評価額の低い方の期待値が V/3 になり,高い方の期待値が 2V/3 になることを説明するには,連続確率変数の関数の「期待値 (平均値)」を導入しなければならない.そのためには「確率密度関数」(知らなければ「積分」も) を導入しなければならない.これらは統計学で学べることもあって,オークション理論の通常の解説はそれらの知識を想定したようなものが多い.そんななかにあって,尾山・安田『経済学で出る数学: 高校数学からきちんと攻める』第10章「積分とオークション」は初心者向けの丁寧な解説を与えている.問題はそれをコンパクトにまとめられるか.できそうならば「演習」あるいは脚注として採用したい.

    • 天谷134頁最終段落.「もっとも必要とする買い手」と書くと「必要とする」という言葉の多義性ゆえなかなか基準が定まらないけれども (「支払い能力が低くて借家に高い金を払えない人は住居の『必要度』が低いのか?」といった議論が始まる),経済学では「効率性」とか「余剰最大化」と呼ばれる明確な基準がある.財が1種類1単位しかないばあい,この基準に従うと最高評価額を持つ人にその財を配分するのが望ましいことになる.そうすることでその財がいちばん有効に (「余剰」を最大化するように) 使われるわけである.4つのオークションはこの基準を満たす.

  • 天谷136頁第2段落.「ロボットは,現在の最高額が限度額より低ければ…」の部分は分かりにくいが,入札が交互に行われ,同一買い手のロボットは連続入札しないことを想定している.言い換えれば,自動入札による競り上げが済んだ各時点においては,その時点での最高限度額を設定した買い手が落札候補者になり,価格は「2番目に高い限度額プラス入札最小単位 (例えば10円)」となる (ただし1番高い限度額が2番目の限度額と一致している場合は価格はそれらと等しくなり,落札候補者は申告の早い方とする).

  • 天谷139頁の図5-4.配布したコピーでは一部の点線が消えかかっているかもしれない.買った場合の利得は切片 x で傾き -1 の直線である.勝つ確率は原点を通る右上がりの曲線 (あるいは直線).

  • 天谷140頁.ここでは評価額が v のタイプのプレーヤーが v/2 の金額を入札するような戦略の組がベイジアン均衡であることを確認している.どのようにしてその戦略組を見つけたかは別問題であり,それは説明されていない.評価額が一様分布するという前提のままプレーヤーの数が増えたらどうなるか? 補助教材でコメントする予定.なお,第二価格オークションのばあいとちがって,第一価格オークションの均衡における戦略は弱支配戦略ではない.つまり相手の戦略を予想して行動する必要があるため,買い手は入札額をどの程度に設定すべきか (評価額よりどれだけ低く設定するか) 悩むことになりがちだ.

課題および次回の予定

取り組むべき課題,読むべき文献,次回の予定については,シラバスの「授業計画」を参照.

    • 次回1月20日の Class 13 では問題解説3 に入る.演習3.10あたりまで?