旧約聖書の三分の一以上が詩の形式で書かれ、もっとも愛読されているいくつかのパッセージを含んでいます。散文が頭で考える言語であるのに対し、詩は心で感じる言語です。詩篇、箴言、雅歌は明確に詩(歌)として位置付けられていますが、多くの預言書も詩の形式をとっています。申命記、ルツ記、エステル記、ハガイ書、マラキ書は詩を含みません。ヘブル詩は
1753年に初めて認識されました。それ以前は詩と散文との間に区別が設けられていませんでした。RSVは英訳聖書で初めて詩を詩の形として印刷しました。
正しい解釈のためにはいくつかのへブル詩の特性を理解することが重要です。
ヘブル詩の特性
1.並行法
ヘブル詩の鍵は並行法にあります。並行法は一つの詩の行で2~3の部分がある程度お互いに対応しあっています。考えに対して韻を踏むことで知られ、ある考えを持って考えをまとめる。下記のように並行法は分類されます:
A.同義的並行法
詩の2行目が第1行目の考えを別のことばで繰り返す。
詩篇19:1
「天は神の栄光を語り告げ、
大空は御手のわざを告げ知らせる。」
詩篇2:3
「さあ、彼らのかせを打ち砕き、
彼らの綱を、解き捨てよう。」
2行目は初めの行のすべての点において並行するわけではありません。これは、「不完全な同義的並行法」に属します。通常、もし一つの言い方が省かれると、もう一方が行のバランスをとるために長さを補うのです。
詩篇103:7
「主は、ご自身の道をモーセに、
そのみわざをイスラエルの子らに知らされた。」
詩篇105:10
「主はヤコブのためにそれをおきてとして立て、
イスラエルに対する永遠の契約とされた。」
B.対照的並行法
二つの点が対照的に一つの節に存在します。しばしば、第二行目は一行目の肯定的な確信に対して否定的な事柄で対抗します。2行目の冒頭は「しかし」で始まることが多い。特に箴言において。
箴言15:1
「柔らかな答えは憤りを静める。
しかし激しいことばは怒りを引き起こす。」
箴言10:1
「知恵のある子は父を喜ばせ、
愚かな子は母の悲しみである。」
時々、上記二つの並行法は混ざり合っている。
イザヤ1:3
「牛はその飼い主を、
ろばはもち主の飼い葉おけを知っている。
それなのに、イスラエルは知らない。
わたしの民は悟らない。」
C.総合的並行法
第2行目は、1行目に見えていない考えを発展させたり、完結させたりします。この並行法は
法則に拘束されてなく、応答していることばは他のようには揃っていません。
詩篇51:13
「私は、そむく者たちに、あなたの道を教えましょう。
そうすれば、罪人は、あなたのもとに帰りましょう。」
第2行目が第1行目の考えを発展させます。
詩篇1:2
「まことに、その人は主のおしえを喜びとし、
昼も夜もそのおしえを口ずさむ。」
詩篇1:1は「歩」むことから、「立」つこと、「着」くことへ発展を見せています。
D.象徴的並行法
これは同義的並行とたいへん類似していますが、文字通りの意味で書かれている中、一つの行に直喩か隠喩が含まれています。
詩篇103:13
「父がその子をあわれむように、
主は、ご自分を恐れる者をあわれまれる。」
第1行目は直喩:
詩篇42:1
「鹿が谷川の流れを慕いあえぐように、
神よ。私のたましいはあなたを慕いあえぎます。」
E.段階並行法(クライマックス)
第1行目のある部分が繰り返されますが、強調点はパターンをぬけたところで、節の終わりにクライマックスがおかれます。
詩篇29:1
「力ある者の子らよ。主に帰せよ。
栄光と力とを主に帰せよ。」
士師5:27
「彼はひざをつき、倒れて、横たわった。
その足もとにひざをつき、倒れた。
ひざをついた所で、打ち殺された。」
F.内向的または交錯的並行法
4行詩で第1行目と第四行目、第2行目と第3行目を対応させるように編成してあります。
詩篇31:3,4
「あなたこそ、私の巌、私のとりでです。 A
あなたの御名のゆえに、私を導き、私を伴ってください。 B
私をねらってひそかに張られた網から、私を引き出してください。 B
あなたは私の力ですから。」 A
詩は4行以上の場合もあるがバランスは保たれています。
イザヤ6:10
「この民の心を肥え鈍らせ、 A
その耳を遠くし、 B
その目を堅く閉ざせ。 C
自分の目で見、 C
自分の耳で聞き、 B
自分の心で悟り A
立ち返って、いやされることのないために。」
G.形式的並行法
総合的並行法の一種で二つの行で一つの行とします。「非並行法」ということができます。
詩篇110:1
「主は、私の主に仰せられる。
『わたしがあなたの敵をあなたの足台とするまでは、わたしの右の座に着いていよ。』」
イザヤ13:10
「天の星、天のオリオン座は光を放たず、太陽は日の出から暗く、月も光を放たない。」
ヘブル詩を学ぶ場合、上記の種類とそのいろいろな組み合わせがあります。
2.詩の他の工夫
A.リフレーン(繰り返し)
効果をもたらすために句や節を繰り返します。
詩篇8:1、9
「私たちの主、主よ。あなたの御名は全地にわたり、なんと力強いことでしょう」
詩篇67:3、5
「神よ。国々の民があなたをほめたたえ、国々の民がこぞってあなたをほめたたえますように」
B.含有
詩の始まりと終わりがお互いに対応しています。
詩篇20:1
「苦難の日に主があなたにお答えになりますように。」
20:9
「主よ。王をお救いください。私たちが呼ぶときに私たちに答えてください。」
詩篇103:1、22
「わがたましいよ。主をほめたたえよ。」
C.比喩
詩の中で比喩は幅広くもちいられています。