キクイモの防除における最も重要な発見の一つは、再生塊茎の発生と防除処理間隔の密接な関係である。
Byartfarmer2025年6月18日
https://www.naro.go.jp/laboratory/harc/contents/seikajoho/folder6601/folder6603/2013chiku10.pdf
本ブリーフィング資料は、北海道農業試験会議(成績会議)で発表された「十勝地域におけるキクイモの耕種的防除技術」と題された成果情報に基づき、キクイモ(Helianthus tuberosus L.)の防除に関する主要なテーマ、重要な知見、および具体的な防除方法について詳細にまとめたものである。キクイモはキク科の帰化植物であり、地中を這う茎(匍匐枝)と塊茎から増殖する多年生植物である。近年、北海道各地で飼料用とうもろこし圃場におけるキクイモの優占が問題となっており、とうもろこしの生育抑制、サイレージの嗜好性や栄養価の低下を引き起こしている。キクイモの防除は困難であり、現在、選択性除草剤の登録農薬等がないため、確立された防除方法が存在しないという背景がある。
本研究では、キクイモの防除が難しい主要因が、茎葉の処理後も再生塊茎を発生させて増殖することにあると指摘している。この課題に対し、繰り返し防除処理を行うことで地下部が減少し、最終的に防除が可能になるという仮説に基づき、多回刈り、除草剤処理、および表層撹拌を組み合わせた防除技術の確立が試みられた。
2.1. 再生塊茎の発生と防除処理間隔の重要性
キクイモの防除における最も重要な発見の一つは、再生塊茎の発生と防除処理間隔の密接な関係である。
再生塊茎の発生: 「無防除区では地下部量は出芽 32 日目まで減少するが、出芽 45 日目に増加に転じ、再生塊茎が認められる(図1)。」とあるように、キクイモは出芽後約45日で再生塊茎を形成し、地下部の増加に転じる。この再生塊茎が防除を困難にしている。また、写真1では、豊頃町で生育日数45日目に認められた再生塊茎が示されており、この知見を裏付けている。
処理間隔の閾値: 研究の結果、「防除処理間隔が 43 日より長い場合、再生塊茎を発生する可能性がある。」ことが示された。逆に、「45 日程度より短い生育日数で刈り取りを実施することにより、再生塊茎が発生することなく地下部が減少し、完全にまたは著しく抑圧できる」と結論付けられている。図2では、処理後日数が43日を超えると地下部量の比率が100%を超える場合があることが示されており、これも再生塊茎発生の可能性を示唆している。
2.2. 防除処理の種類と効果
本研究では、単一または複合的な防除処理の効果が検証された。
刈り取り: 「キクイモの地下部量は、刈り取りを実施するといずれの区も減少する。刈り取り間隔(生育日数)が短いほど地下部量の減少が顕著である。」多回刈りの効果は特に顕著であり、忠類での年3回刈り取り(34日、23日間隔)では冠部被度が0%に、本別での表層撹拌と年3回刈り取り(56日、43日、41日間隔)では3%、豊頃での表層撹拌と年2回刈り取り(1年目42日、50日、2年目45日、60日間隔)では1%に抑えられた。「キクイモは多回刈りにより完全にまたは著しく抑圧できることが明らかとなった(表1)。」
表層撹拌と除草剤処理の組み合わせ: 表層撹拌、刈り取り、グリホサート系除草剤処理、再度表層撹拌を組み合わせた鹿追での試験では、最終的に冠部被度が0%となった。「はじめの表層撹拌後に冠部被度が増加していることから、その後の処理によりキクイモが抑圧されたものと考えられる。刈り取り、除草剤処理、表層撹拌の組み合わせ処理によっても完全に抑圧できることが明らかとなった(表1)。」
本研究で確立されたキクイモの耕種的防除技術は、以下の主要な要素から構成される。
処理回数と間隔: 「防除処理を年3回以上、43 日より短い間隔で実施することにより地下部が減少し、完全にまたは著しく抑圧できる。」
防除処理の組み合わせ: 刈り取り、表層撹拌、一部除草剤処理を組み合わせることで効果的な防除が可能である。特にグリホサート系除草剤の併用が有効である。
継続性: 「キクイモの侵入程度により2年以上の防除処理実施が必要な場合がある。」これは、キクイモの地下部の再生能力が高いため、単年度の処理では完全に撲滅できない可能性があることを示唆している。
本成果情報の普及対象は、酪農畜産農家、農業関係機関、農業改良普及センター等であり、北海道全域のキクイモに侵入された圃場への普及が期待されている。
継続的な防除: 侵入の程度によっては、2年以上の防除処理が必要となる場合がある。
イタリアンライグラス播種の注意点: キクイモ防除における粗飼料確保のため、イタリアンライグラスの播種が検討されることがあるが、「アカヒゲホソミドリカスミカメの発生源となるので、稲作地帯への導入は避ける。」という重要な注意点が示されている。これは、防除計画を立てる際に周辺環境への影響も考慮する必要があることを意味する。
本研究は、難防除雑草であるキクイモに対して、耕種的な防除技術が有効であることを実証した。特に、年3回以上、43日より短い間隔での刈り取り、表層撹拌、および除草剤処理の組み合わせが、キクイモの地下部を減少させ、完全にまたは著しく抑圧する上で効果的であることが明らかになった。これらの知見は、北海道の酪農畜産農家がキクイモの侵入による被害を軽減し、飼料作物の生産性を向上させるための重要な指針となる。今後のキクイモ防除対策において、本研究で示された防除処理間隔と組み合わせが、実践的な技術として広く活用されることが期待される