一枚のクラシックCDと、結婚記念日に起きた小さな奇跡。「月光ソナタ」に導かれた心温まるエピソードと共に、癒やしの名曲たちをご紹介します。
Byartfarmer2024年7月17日
暑い夏が過ぎ、心地よい風が吹き始めた初秋のこと。いつものように常連さんたちのグループが、賑やかな食事会を開いていました。その中に、初めて参加された40代くらいの男性がいらっしゃいました。
彼は、ちょっと苦手だなと感じてしまうほどダジャレを連発するタイプの方。正直なところ、私は少し戸惑っていました。
食事会が終わり、お帰りになる際、その男性が「今度、女房と来たいので予約をお願いします」と声をかけてきたのです。どうやら結婚記念日のお祝いにご利用されるようでした。お客様からのご要望に、特別な理由もなく、お引き受けすることにしました。
そして、結婚記念日当日。
彼は、まるで別人のように紳士的で優しいご主人に変身していました。そして、隣には、彼とは釣り合わないのでは?と思ってしまうほど、素敵な奥様が寄り添っていたのです。
その日は、ランチタイムから忙しく、数日前に購入したお気に入りのクラシックCDをBGMにしていました。心地よい音楽が流れると、不思議と仕事もはかどるのです。ディナータイムにも、そのCDを流していました。
コース料理の中盤、ご主人がお手洗いに行かれた際、奥様が突然、小さな声で話しかけてきたのです。
「あの、失礼ですが、どうしてこの曲をご存じなのですか?」
店内には、ベートーヴェンの「月光ソナタ~第1楽章」が流れていました。
「この曲は、主人と結婚する前に、彼が『とてもいい曲だから』と私に勧めてくれた曲なのです」と、奥様は少し照れながら話してくれました。
結婚記念日に、お二人の思い出の曲が偶然にも流れていたとは…。まるで映画のワンシーンのような出来事に、私も心が温かくなりました。
お帰りになる際、お二人を見送ると、初対面の時の印象とは全く違い、本当にお似合いの素敵なカップルに見えました。きっと、ご主人は少し照れ屋な方なのでしょう。
それ以来、10年以上経った今でも、私はこのCDをコース料理のBGMとして流し続けています。
ちょっといいCD
「Gentle Brown」
制作・製造元:BMGビクター
白鳥(サン=サーンス)
バッヘルベルのカノン(バッヘルベル)
月光ソナタ~第1楽章(ベートーヴェン)
弦楽のためのアダージョ(バーバー)
亡き王女のためのパヴァーヌ(ラヴェル)
ラルゴ「オンブラ・マイ・フ」(ヘンデル)
アルビノーニのアダージョ(アルビノーニ)
ハイドンのセレナーデ(ハイドン)
交響曲第3番~第3楽章(ブラームス)
ワルツ「弦楽セレナード」より(チャイコフスキー)