artfarm ostinatoに広がるジャーマンカモミールの白い海。風に揺れる無数の花が放つ、甘く優しい香りは心を癒す。ボリジの青い星と共に、畑に咲き誇る初夏の風景と、植物がもたらす穏やかな時間と祈りを綴ったエッセイ。
Byartfarmer2025年5月29日
ジャーマンカモミール――やすらぎの白い海にて
artfarm ostinato の畑に、白い波が広がっている。
それは風でも水でもない。無数のジャーマンカモミールの花――
小さな白い舵をひとつずつ掲げながら、太陽に向かってやわらかく揺れている。
甘く、ほのかに青い香りが風に溶けてゆく。
その香りは、記憶の深くにふれる。
幼いころ、祖母の庭で嗅いだような匂い。
あるいは、旅の終わりに立ち寄った静かな村の午後の匂い。
疲れた心をそっと包みこみ、「もう大丈夫」と囁いてくれるようなやさしさ。
ジャーマンカモミール。
名に「ジャーマン」と冠されてはいても、その佇まいは気取らず、
むしろ大地に寄り添い、人に寄り添う存在だ。
踏まれてもなお香る――その性質は、まるで
「与えることに疲れない」という植物の哲学を体現しているようだ。
その隣には、星のようなボリジの群れ。
青と白の花が、まるで空と雲をそのまま植えたように、ベッドの上で咲き誇っている。
命が今ここにあることを、静かに、でも力強く証明している。
私はその中を歩きながら、ふと思う。
草花に囲まれながら過ごすひとときこそが、
この世界の喧騒の中で、もっとも尊い祈りなのかもしれない、と。
ジャーマンカモミールは、声高に何かを語らない。
けれどその静けさが、もっとも深く、心を癒してくれる。
まるで、何も語らずにそっと寄り添う友人のように。
artfarm ostinato の初夏――
白い海のようなジャーマンカモミールの畝の中で、
今日も風と光と共に、小さな命がゆったりと呼吸している。