インスリンとグルカゴン
インスリン至上主義からの脱却
インスリン至上主義からの脱却
'26 valentine's day 低糖質チョコレートタルト ラズベリー添え
By Artfarmer2026年2月14日
インスリンとグルカゴン
13年以上にわたり低糖質食を実践し、生化学の視点から自身の身体と向き合ってきた私には、長年どうしても解けない「一つの謎」がありました。
それは、2014年頃に読んだ米国糖尿病専門医リチャード・K・バーンスタイン医師の名著『糖尿病の解決』に記されていた、あるエピソードです。糖質ゼロのレタスを大量に食べただけの1型糖尿病患者の血糖値が、なぜか急上昇してしまう。バーンスタイン医師はこれを「中華レストラン効果」と呼びました。
しかし、そのメカニズムとして書かれていた「膵臓がインスリンの効きすぎを相殺するためにグルカゴンを出す」という説明に、私はずっと腑に落ちない違和感を抱え続けていました。臓器が勝手に「空気を読んで」ホルモンを出すことなどあり得るのだろうか?
その答えは、思わぬ形で、そして10年以上の歳月を経て、日々の農作業の最中に突然降りてきました。
実は2019年頃、私は稙田太郎氏の『糖尿病はグルカゴンの反乱だった』という電子書籍を購入していました。しかし当時の私は、「糖尿病はインスリンの病気である」という医学界の常識(インスリン至上主義)を固く信じていたため、このタイトルに反発を覚え(これはタイトルからしてインチキ本だ)、目次を見ただけで本を閉じてしまったのです。
それから約7年。今日、農作業中に農機具が故障するというアクシデントがあり、たまたまスマホの音声読み上げ機能でこの本を全編聴き直す機会を得ました。土に触れながら流れてくるその内容は、インチキどころか、これまでの生化学のパズルをすべて完成させる「これまでで最高の一冊」でした。
バーンスタイン医師の著書に書かれていた「中華レストラン効果」で血糖値が跳ね上がる本当の理由は、膵臓の忖度などではありませんでした。そこには、明確な生化学的ルートが存在していたのです。
胃腸に大量の食べ物(カサ)が入って物理的に膨張すると、小腸上部からインクレチンというホルモンが放出されます。ここで重要なのが、ホルモンの「裏の顔」です。
GIPの悪玉化: インスリンが正常に働く健常者では問題ありませんが、糖尿病患者のようにインスリンが不足した状態では、小腸上部から出た「GIP」というホルモンが、膵臓のα細胞を直接強力に刺激し、血糖値を上げる「グルカゴン」を暴走させてしまいます。
ストッパー「アミリン」の不在: さらに、膵臓のβ細胞が弱っていると、インスリンだけでなく、本来グルカゴンを抑え込み、脳に満腹感を伝えるはずの「アミリン」というホルモンも欠乏しています。
ブレーキ(アミリン)が完全に壊れた無法地帯で、胃腸の膨張という物理的刺激(悪玉GIP)がアクセルをベタ踏みする。これが、糖質を食べていないのに血糖値が急上昇する「グルカゴンの反乱」の正体だったのです。
さらに、過去の医学対談(チェリントン博士と河盛隆造医師)の記録も、このメカニズムを裏付けています。インスリン分泌が少ない状況下では、タンパク質(アミノ酸)の摂取も直接的にグルカゴン分泌を亢進させます。
つまり、「低糖質なら肉も野菜もいくら食べても安全」というのは幻想です。 お腹がパンパンになるまで大盛りの中華料理を食べた時、私たちは知らず知らずのうちに「タンパク質による化学的刺激」と「胃腸の膨張による物理的刺激(GIP)」という、グルカゴンを暴走させる2つの引き金を同時に引いてしまっているのです。これは医療関係者でさえ、盲点になりがちな深いメカニズムでした。
では、私たちはどう対応すべきでしょうか。 バーンスタイン医師が残した「満腹になるな」という教訓は、生化学的に極めて正しいものでした。
私の場合、日々自分で栽培した菊芋を食べています。 ご飯の代わりやおやつとして「適量」食べ、卵や豆腐などと合わせて腹八分目に抑える。物理的なカサを減らしながら、菊芋によるGLP-1のサポートで、空腹感なく満ち足りた生活を送る。これが「中華レストラン効果」を防ぎ、グルカゴンの反乱を鎮めるための最適解です。
糖尿病は単なる「インスリン不足の病」ではありません。 7年以上の回り道を経て、私はようやくこの「グルカゴン中心主義(Glucagon-centric)」という生化学の真理にたどり着くことができました。
🎧Listen to the audio commentary
音声解説その1
解説を聞きながらご覧になるとより理解が深まります。
🎧Listen to the audio commentary
音声解説その2
解説を聞きながらご覧になるとより理解が深まります。
バーンスタイン医師について :
自身がI型糖尿病患者である医師(工学博士から医師に転身)。
著書『Dr.Bernstein's Diabetes Solution』(邦訳『糖尿病の解決』)は 糖質制限による血糖管理法の古典的名著。
今回のグルカゴンに関する記事はDaiabetes Solutionバーンスタイン医師の「糖尿病の解決」から。
バーンスタイン医師の糖尿病の解決―正常血糖値を得るための完全ガイド 単行本 –
2009/12リチャード K.バーンスタイン (著), 太田 喜義 (翻訳)
Daiabetes Solution
p79より抜粋 原典
https://sites.google.com/view/ostinatoink/category/Biochemistry/insulinglucagon
インスリンとグルカゴン
Alan Cherrington
アラン・チェリントン博士
分子生理学と生物物理学
https://medschool.vanderbilt.edu/mpb/person/alan-d-cherrington-phd/
河盛 隆造(かわもり りゅうぞう)
順天堂大学医学部 :特任教授
順天堂大学大学院文科省事業スポートロジーセンター センター長
http://www.e-oishasan.net/site/kawamori/profile.html
アラン・チェリントン博士と河盛 隆造先生の対談
https://sites.google.com/view/ostinatoink/category/Biochemistry/insulinglucagon-2
13年以上にわたり低糖質食を実践し、生化学の視点から自身の身体と向き合ってきた私には、長年どうしても解けない「一つの謎」がありました。
それは、2014年頃に読んだ米国糖尿病専門医リチャード・K・バーンスタイン医師の名著『糖尿病の解決』に記されていた、あるエピソードです。糖質ゼロのレタスを大量に食べただけの1型糖尿病患者の血糖値が、なぜか急上昇してしまう。バーンスタイン医師はこれを「中華レストラン効果」と呼びました。
しかし、そのメカニズムとして書かれていた「膵臓がインスリンの効きすぎを相殺するためにグルカゴンを出す」という説明に、私はずっと腑に落ちない違和感を抱え続けていました。臓器が勝手に「空気を読んで」ホルモンを出すことなどあり得るのだろうか?
その答えは、思わぬ形で、そして10年以上の歳月を経て、日々の農作業の最中に突然降りてきました。
実は2019年頃、私は稙田太郎氏の『糖尿病はグルカゴンの反乱だった』という電子書籍を購入していました。しかし当時の私は、「糖尿病はインスリンの病気である」という医学界の常識(インスリン至上主義)を固く信じていたため、このタイトルに反発を覚え(これはタイトルからしてインチキ本だ)、目次を見ただけで本を閉じてしまったのです。
それから約7年。今日、農作業中に電動農機具が故障するというアクシデントがあり、たまたま音声読み上げでこの本を全編聴き直す機会を得ました。土に触れながら流れてくるその内容は、インチキどころか、これまでの生化学のパズルをすべて完成させる「これまでで最高の一冊」でした。
バーンスタイン医師の著書に書かれていた「中華レストラン効果」で血糖値が跳ね上がる本当の理由は、膵臓の忖度などではありませんでした。そこには、明確な生化学的ルートが存在していたのです。
胃腸に大量の食べ物(カサ)が入って物理的に膨張すると、小腸上部からインクレチンというホルモンが放出されます。ここで重要なのが、ホルモンの「裏の顔」です。
GIPの悪玉化: インスリンが正常に働く健常者では問題ありませんが、糖尿病患者のようにインスリンが不足した状態では、小腸上部から出た「GIP」というホルモンが、膵臓のα細胞を直接強力に刺激し、血糖値を上げる「グルカゴン」を暴走させてしまいます。
ストッパー「アミリン」の不在: さらに、膵臓のβ細胞が弱っていると、インスリンだけでなく、本来グルカゴンを抑え込み、脳に満腹感を伝えるはずの「アミリン」というホルモンも欠乏しています。
ブレーキ(アミリン)が完全に壊れた無法地帯で、胃腸の膨張という物理的刺激(悪玉GIP)がアクセルをベタ踏みする。これが、糖質を食べていないのに血糖値が急上昇する「グルカゴンの反乱」の正体だったのです。
さらに、過去の医学対談(チェリントン博士と河盛隆造医師)の記録も、このメカニズムを裏付けています。インスリン分泌が少ない状況下では、タンパク質(アミノ酸)の摂取も直接的にグルカゴン分泌を亢進させます。
つまり、「低糖質なら肉も野菜もいくら食べても安全」というのは幻想です。 お腹がパンパンになるまで大盛りの中華料理を食べた時、私たちは知らず知らずのうちに「タンパク質による化学的刺激」と「胃腸の膨張による物理的刺激(GIP)」という、グルカゴンを暴走させる2つの引き金を同時に引いてしまっているのです。これは医療関係者でさえ、盲点になりがちな深いメカニズムでした。
では、私たちはどう対応すべきでしょうか。 バーンスタイン医師が残した「満腹になるな」という教訓は、生化学的に極めて正しいものでした。
私は日々、自分で栽培した菊芋を食べています。菊芋に含まれるイヌリンは、下部小腸のL細胞を刺激し、グルカゴンを抑える「善玉のGLP-1」の分泌を助けてくれます。しかし、農家として、実践者として分かっているリアルな事実があります。それは「菊芋でお腹をパンパンにすることは不可能(ガスが発生して苦しくなる)」ということです。
これはある意味で、人体が持つ究極のストッパーです。 菊芋をご飯の代わりやおやつとして「適量」食べ、卵や豆腐などと合わせて腹八分目に抑える。物理的なカサを減らしながら、GLP-1のサポートで空腹感なく満ち足りた生活を送る。これこそが、「中華レストラン効果」を防ぎ、グルカゴンの反乱を鎮めるための最適解なのです。
糖尿病は単なる「インスリン不足の病」ではありません。 7年以上の回り道を経て、私はようやくこの「グルカゴン中心主義(Glucagon-centric)」という生化学の真理にたどり着くことができました。
知識がコントロールを生む
「なぜ上がったのか?」という謎が解ければ、対策は可能になる。