artfarm ostinatoに咲くフレンチラベンダーが、紫の風と香りの風景を紡ぐ。南仏を思わせるその優美な花と香りが、日々の喧騒から心を解き放つ。植物がくれる静かな聖域と、何もしないことの大切さを綴ったヒーリングエッセイ。
Byartfarmer2025年5月31日
artfarm ostinato の一角で、風が紫に染まっている。
それは光のいたずらではなく、満開のフレンチラベンダーたちがつくり出す、
ほんとうの「香りの風景」だ。
細かく裂けた銀葉の間から立ち上がる、細長い花穂。
その先に、まるで蝶が羽を広げたような、優美な紫の飾り花。
ひとつ、またひとつと空に手を伸ばしながら、
ラベンダーたちは静かに、けれど誇らしげに咲いている。
香りは、あたたかく、ややスパイシーで、甘く、そして青い。
目を閉じれば、南仏の石畳や、海風が吹き抜ける丘のイメージが
ふわりと脳裏に浮かぶ。
でもここは、東北の畑――
artfarm ostinato に広がる、もうひとつのプロヴァンスだ。
このフレンチラベンダーは、名のとおり“フランス風”の気品を宿しながらも、
地に根を張り、風に揺れ、雨にも耐える。
その姿は、気高くもたくましく、まるで希望という言葉の象徴のようだ。
私はときどき、この花の間に立ち、何もせずに深呼吸する。
何を考えるでもなく、ただ香りに身を委ねる。
そうすると、体の奥深くから何かがほどけていくのがわかる。
不安、焦り、責任、雑音――
それらが、紫の香りにゆっくりと溶けていく。
人はいつしか、「何もしないこと」を忘れてしまう。
けれどフレンチラベンダーは、何もしなくていい時間の大切さを、
香りというかたちで、そっと思い出させてくれる。
artfarm ostinato のラベンダー畑は、
香る詩であり、咲く祈りであり、
日々のなかに生まれる静かな聖域だ。