マニュアル化されたサービスに感じる違和感と、人間味あふれる「味のある店」の魅力を、筒井康隆『昔はよかったなあ』をきっかけに振り返ります。深夜食堂のような温もりある店が恋しくなる、そんなエッセイです。
Byartfarmer2024年7月18日
ちんどんの音色とともに始まる、筒井康隆さんの「昔はよかったなあ」。20年以上前に新潮カセット文庫で発売されたこの作品は、筒井さん自身の朗読で、テープが擦り切れるほど聞いたという方も多いのではないでしょうか。
「昔はよかったなあ~~~」と始まるこの作品は、痴呆気味の老人が昔のことを語るという内容ですが、そのほとんどがでたらめ。しかし、そのナンセンスな語りに、なぜか引き込まれてしまう不思議な魅力があります。
さて、今回のテーマは「マニュアル化されたサービス」についてです。現代社会では、コンビニ、銀行、スーパー、飲食店など、あらゆる場所でマニュアル化されたサービスが提供されています。笑顔での丁寧な接客、迅速な対応など、マニュアル化されたサービスは、私たちに快適さをもたらしてくれます。
しかし、時々、筒井康隆さんの「昔はよかったなあ」が頭をよぎることがあります。それは、マニュアル化されていない、人間味あふれるサービスが恋しくなる瞬間です。
35年ほど前、私がプロの演奏家として活動していた頃、川崎の雑居ビルにあった食堂によく通っていました。そこは、漫画「深夜食堂」のような雰囲気の店で、強面の店主が一人で切り盛りしていました。
ある日、常連ではなさそうな客が、料理が出てくるのが遅いことに腹を立て、「ビールぐらい出せよ」と怒鳴りました。それに対し、店主は「順番」と一言。客は黙って帰ってしまいましたが、そこにはマニュアル化されたサービスとは異なる、人と人とのやり取りがありました。
現代では、このような店は少なくなりました。しかし、マニュアル化されたサービスが普及した今だからこそ、私たちは「味のある店」を大切にしたいと思うのです。
マニュアル化されたサービスは、私たちの生活を便利で快適なものにしてくれます。しかし、それだけでは物足りないと感じる時もあります。
マニュアル化されていない店には、人と人との心の触れ合いがあります。そこには、マニュアルでは味わえない温かさ、面白さがあります。
私たちは、マニュアル化されたサービスと「味のある店」の両方を大切にし、その魅力を享受できるような、そんな豊かな社会を目指したいものです。
マニュアル化されたサービスが普及した今だからこそ、私たちは「味のある店」を大切にし、人と人との心の触れ合いを大切にしたいものです。
そして、いつか自分も「深夜食堂」のような店を開きたい。糖尿病で糖質制限中の身ではありますが……。
深夜食堂とは
新宿四丁目にある、深夜0時から朝7時頃まで営業している「めしや」。メニューは豚汁だけだが、出来るものなら何でも作ってくれる粋な店。
阿部夜朗原作の漫画「深夜食堂」は、4年ほど前にテレビドラマ化もされ、人気を博しました。
番組で出された料理は、どれも炭水化物たっぷりで美味しそうでしたが、それ以上に、人間ドラマが心に染みる素晴らしい作品でした。