森さんの情報提供への返信

Q坂本幸雄2017.12.15

・森さん。サントリーホールの最近の情報提供有難うございました。もうサントリーホール開設から31年にもなるのですか。貴兄の、最近のホールに関する詳細な情報に接し、S社出身の小生は、あのホール開設前後の様々なよき想い出に耽ったのであります。併せて「光陰矢の如し」という思いも致しました。

・当ホールの開設は、その数年前の故佐治敬三さんの役員会議での発言「清水の舞台から飛び降りる覚悟で、これからの国際都市東京の名に恥じないような名物ホールをつくりたいので、皆さんのご賛同を得たい」という発言からその準備はスタートしたのです。

・その後、佐治サンご自身が、ベルリンに行かれ、あの当時クラシック界の帝王と呼ばれていたあのカラヤン氏に直接ホール設計についていろいろとアドバイスを受けられたのです。その結果が、サントリーホールの、只今の、正面にパイプオルガンを据え、舞台左右前後を観客席で囲むようなビニヤード方式(ヨーロッパ各地で見られる南斜面傾斜地にあるぶどう畑のような形に設えられた客席設計)のホール設計になったのです。今でこそ、このビニヤード方式の音楽ホールは日本のあちこちの都市に誕生しておりますが、これらはこのサントリーホールの設計を模して作られたものであります。またホールの設計に当たっては、舞台から客席中央への反響音残響が、確か2.2秒ということにもすごくこだわって天井の反響版の大きさや位置、壁の材質などが決められたとも聞いておりました。

・開設の準備段階では、小生も当ホールの収支計算のシュミレーションを担当しました。当時S社では、小生がFortranで書いた「投資評価システム」(Suntory Investment Risk Analysis system)で様々な投資案件の収益性を事前に計算して、それを稟議書に記載することをルールにしておりました。当然に当ホールについても、小生自身、その収益性をいろいろと分析したのです。年間の公演回数、一回当たりの公演に要する諸経費、入場者数、入場券単価などを変数としたシュミレーションです。その結果はどのように計算しても年間数10億円の赤字という答えしか出なかったのです。それでも佐治さんは、当初からその程度の赤字は当然に覚悟の上でのホール開設だったのです。

・S社には当ホール以外にも美術館などいくつかの社会貢献活動の拠点があります。が、これらの拠点はいずれもそれなりの持ち出しを前提として運営されているのです。

・そのような状況を考えますと、鳥井信治郎翁が実現された「琥珀の夢」の果実は、S社の、こんなメセナ活動を支える大きな力ともなっているのでありましょう。改めて「昔の人は偉かった」としみじみ感じ入るのであります。(坂本幸雄 H29.12.15記)

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