第四集ご恵送感謝(坂本)

「時代の風景〜郷愁の旅(第四集)」ご恵送に感謝

大津寄兄

・今回も貴兄の力作第四集をご恵贈頂きありがとうございました。

いつものことながら、貴兄のココロに詰まっている、その記憶の引き出しの、豊かさと濃密さに改めて感銘致しました。

・先般、五木寛之の「孤独のすすめ」という本を読みました。

その本の中に「人生には、青春、朱夏、白秋、玄冬という四つの季節が巡ってくるものである」という言葉と、「古代ヒンズー教の教えには、“学生期”、“家住期”、“林住期”、“遊業期”がある」という教えが書かれておりました。

勿論、われわれ八十歳代の年寄りは、いずれもその最終段階にあることは言うまでもありません。

そのうえで、前者の言葉には、「”玄冬”は、後ろを振り返り、ひとり静かに孤独を楽しみながら、昔の楽しかりし日々を回想することは、実は非常にアクテイブな時間の過ごし方であるとともに、それこそは、老齢期にあって”つきせぬ歓びに満ちた時間の過ごし方“である、と書かれております。

また後者の言葉では、さまざまな人生の務めや桎梏から解き放たれた、この人生最終段階の時期こそが、「人生の黄金期」ではなかろうかと諭し、人生を登山にたとえると、老齢期は、登山では下り坂に当たる下山の時ではあるが、しかし、「この時期こそは、まさしく人生の醍醐味を味わえるのである」と教示しております。

青春や壮年期には、上を目指して歩くのであるが、老齢の下り坂では、前を向いて歩くのではなく、後ろ向きに歩む「後背の歩み」を勧め、次のように書かれております。

老齢期で前向きに歩むと、そこには“死“と向き合う世界しかないのであるが、「後背の歩み」には、登り坂の時のその時々の思い出が蘇り、それが老後の生活にありがちな孤独感や寂寥感から解放される活力にも繋がるのである!。

・貴兄の今回の第四集を読み、殆んどQクラス全員との思い出が、実に克明に、しかも、昨日のことのように鮮やかに描かれていることにも驚嘆しました。

例えば、文集52pには、2年生の学園祭でクラス全員で合唱した思い出深い「赤トンボ」について、安楽君の日記に基づきあたかも、ごく最近の出来事のように、その発想、曲の選定、練習風景、その出来栄えまでも含め、しかもその日付けまでも付して記述されておりますね。

それを読み、小生にとっても、このことが大学生活全般を通じての忘れ難い思い出の一つでもあっただけに、貴兄の文集のお陰で、今回その前後の経緯まで含めてそれが実に鮮やかな思い出として蘇り、かつ、それが、小生の心の活性化にも大いに繋がったことを感謝します。

ありがとうございました。(坂本幸雄 H29.10.22記)