「大惨事と情報隠蔽/草思社」紹介(Q森)を読んで…P戸松孝夫2017.11.23
Q森 正之2017.11.20
2017.8.22草思社出版の著作(翻訳・ 560ページ)を、公明新聞(11/20)書評とAmazonデータによりお届けします。
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原発事故、大規模リコールから金融崩壊まで 単行本¥3,024 Kindle版¥2,800 ドミトリ チェルノフ/ディディエ ソネット(共著) 橘 明美/坂田 雪子(翻訳)【内容紹介】 福島第一、トヨタ・リコール問題、メキシコ湾原油流出、サブプライム危機、エンロン事件……業種も時代も超える、大惨事の共通項が明らかに! 人はなぜ《危険》を隠したがるのか? リスクの無視、非共有、あからさまな隠蔽を、人々にさせる組織の特徴とは? それらはどのように、「想定外の大惨事」へと結びついていくのか? 原発事故や原油流出などの工業分野の大事故だけでなく、軍事的失敗や感染症大流行などの社会的事件、自動車の大規模リコールや医療製品不正製造などの消費者問題、さらには銀行破綻や金融崩壊などの経済危機まで、幅広い分野の事例を検証。 それら大惨事に共通する人的要因=情報隠蔽の実態を明らかにし、その原因と対策を示す。 〔本書で扱う事例〕 ヴィオントダム災害(1963年、イタリア) スリーマイル島原子力発電所事故(1979年、アメリカ) ボーパール化学工場ガス漏れ事故(1984年、インド) スペースシャトル・チャレンジャー号爆発事故(1986年、アメリカ) チェルノブイリ原子力発電所事故(1986年、ソ連) エクソン・ヴァルディーズ号原油流出事故(1989年、アメリカ) ウファ鉄道事故(1989年、ソ連)
ラスパドスカヤ炭鉱爆発事故(2010年、ロシア)
福島第一原子力発電所事故(2011年、日本)
水俣病(1932-1968年、日本)
サバールのビル崩壊事故(2013年、バングラデシュ)
ディープウォーター・ホライズン原油流出事故(2010年、アメリカ)
ベアリングス銀行の破綻(1995年、シンガポール・イギリス)
エンロン事件(2001年、アメリカ)
サブプライム住宅ローン危機(2007-2008年、アメリカ)
ドイツ軍侵攻に備えられなかったソ連赤軍(1941年、ソ連)
SARSの世界的流行(2003年、中国)
クルイムスク地区の洪水(2012年、ロシア)
豊胸用シリコンの不正製造(1993-2010年、フランス)
トヨタ大規模リコール問題(2000年代、アメリカ・日本)
フォルクスワーゲン・ディーゼル排出ガス不正(2000年代-2010年代、アメリカなど)
ソニーのバッテリー・リコール問題(2006年、世界規模) ほか
【出版社からのコメント】
◆人はなぜ情報を隠したがり、それはなぜ大惨事を引き起こすか。徹底検証し対策を示す
「こんなこと上司に報告すると、また面倒なことになるな…」と考えて、見なかったことにする。
事の大小はあれ、こんな経験、あるのではないでしょうか?
昨今、政界・官界・財界など、世の中じゅうで問題となっている「情報隠蔽」。情報隠蔽が問題なのは、それが不正の徴候だからというだけではありません。情報が共有・公開されないと、恐るべき大惨事が起こる可能性があるからなのです。
本書は、大惨事の主因がリスク情報隠蔽にあることを25余りの幅広い事例から示したノンフィクションであると同時に、その対策をリスク管理の専門家である著者が示すビジネス書です。
著者によれば、情報隠蔽にはいくつかのパターンがあります。
たとえば、リスクの存在を認めると、コストのかかる対策をしなければならなかったり、期日に仕上げることが不可能になったりするからと、その情報を隠蔽するパターン。
また、「日本のものづくりは優秀で、日本人は勤勉だからそれは問題にならない」〔日本〕とか、「資本主義に毒されていない我が国では、そのような問題は起こりえない」〔旧ソ連〕などの、国家主義的な「おごり」により、リスクを矮小化したり、無視したりする形の情報隠蔽。
さらには、従業員の待遇が悪いことなどから、担当者が頻繁に辞めて入れ替わり、現場の履歴やノウハウの情報が共有されなくなるという、広義の情報隠蔽のパターンもあります。
どれもこれも社会のあらゆるところで、私たちがよく目にし、耳にする事柄ですが、本書ではそれらが深刻な大惨事へと発展した事例を検証します。読者は、ページを繰るごとに身につまされ、自分の所属する会社や組織を、情報隠蔽が起こりにくいものに変革しなければならないと、強く感じさせられることでしょう。
◆トヨタ・リコール問題、福島原発等を含む日米欧露亜の多様な事例。共通項が明らかに
本書の強みの一つは、事例の豊富さと幅広さです。日米欧露およびアジアの事例を偏りなく検証しています。
日本の例ではトヨタ・リコール問題や福島原発、水俣病が取り上げられるほか、情報共有・公開がうまく行った例として、トヨタ生産方式やソニーのバッテリーリコールを紹介。
業種・分野の多様さにも特筆すべきものがあります。この種の本で取り扱われることがほとんどない、エンロン事件やサブプライム危機などの金融の大惨事、独ソ戦初期におけるソ連軍の失敗や、SARSの世界的感染拡大といった社会的大事件が取り扱われているのです。
もちろん、メキシコ湾原油流出やチャレンジャー号爆発事故などの工業的大事故、豊胸手術用シリコン不正製造やフォルクスワーゲン・ディーゼル問題などの消費者問題も取り扱われます。
驚くのは、これらの事件事故が、洋の東西、業種・分野の多様さを越えて、どれも同じような情報隠蔽に端を発していること。
ノンフィクション好きの方にオススメなのはもちろん、会社組織のリスク管理担当者や、経営に携わる方々が是非とも読むべき一冊です。
【著者について】
ドミトリ・チェルノフ Dmitry Chernov
チューリッヒ工科大学の「企業家リスク」講座に所属する研究者。ロシアで一五年以上にわたりコーポレート・コミュニケーション(企業広報)のコンサルタントを務め、とくにクライシス・コミュニケーション(危機管理広報)に注力してきた。
ディディエ・ソネットDidier Sornette
チューリッヒ工科大学の「企業家リスク」講座を担当する金融学教授で、金融危機研究所(FCO)所長。チューリッヒ工科大学リスクセンター共同設立者、スイス金融研究所のメンバーでもある。邦訳されている著書に『[入門]経済物理学―暴落はなぜ起こるのか?』(PHP研究所)がある。
【訳者略歴】
橘 明美 たちばな・あけみ
英語・フランス語翻訳家。お茶の水女子大学文教育学部卒。訳書にチャールズ・マレー『階級「断絶」社会アメリカ』(草思社)、ピエール・ルメートル『その女アレックス』(文藝春秋)ほか。
坂田雪子 さかた・ゆきこ
英語・フランス語翻訳家。神戸市外国語大学中国学科卒。訳書にマイケル・ラルゴ『図説 死因百科』(共訳)、クリストフ・アンドレ『はじめてのマインドフルネス』(共に紀伊國屋書店)ほか。
【Amazonトップカスタマーレビュー】
「大惨事」を引き起こす本質 投稿者hbspmd 2017年9月18日
世の中を騒がせる「大惨事」には一定の法則とでも呼ぶべき「共通項」がある。
本書は、チューリッヒ工科大学の「企業家リスク」講座を担当する筆者たちが、スリーマイル島原発事故、チェルノブイリ原発事故、福島第一原発事故という3つの事故のつながり、エンロン事件やリーマンショックにつながるサブプライムローン危機など、過去数十年に発生した様々な「大惨事」を題材として、それらに共通する原因を研究したもの。
各々、興味深い要因が背景になるが、ほとんどのケースに共通していることは、短期的・非現実的な目標設定がなされていること、悪い知らせに耳を貸さない組織文化があること、組織の上層部がリスクの全体像を把握していないこと、それまで事故がなかったためにこれからも大丈夫だろうと考える「慣れ」があったこと、意思決定者の希望的観測・自己暗示・自己欺瞞があったこと、更には上層部に良く見られたいと思う気持ちや自らの能力を過大に評価していたことなどが挙げられる。
大惨事は起こるべくして起こり、その背景には情報隠蔽があるという本書の研究成果に加え、過去の事例に類する隠蔽が現在進行中であると筆者が語る事例も極めて興味深い。
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