「Mクラスの藤田光郎さんからの投稿文に感動」

坂本幸雄 Q 2017.11.27 6:19

「Mクラスの藤田光郎さんからの投稿文に感動」

・昨日(H29.11.25)Mクラスの藤田光郎さんからの、とても楽しい投稿文を当サイトで拝読しました。具体的には下記四点で楽しませていただきました。

当サイトの管理人森さんのご尽力で、最近その利用者が、我らが卒業年度33年度卒全員に拡大されているなか、初めてMクラスから藤田さんの参加を戴きました。これが一つの先鞭となって、他のクラスにも投稿者が拡大し、当サイトが、我らが来年迎える「一橋燦々卒業60周年記念」を飾るにふさわしく、その参加者が我ら33年卒業全クラスに亘り、かつ、当サイトが、21世紀のITネット社会に相応しい知的交流の金字塔になれば、と願っているのであります。

毎週木曜日の朝放送される「英雄たちの選択」は小生も同じく毎週見ている番組であり、かつ、その中に出演される磯田道史氏と中野信子女史は小生も藤田さんと同様に大ファンであることにも共通の楽しさを感じました。その上、このお二人の著書はそれぞれに数冊読んでいますので、フアン共通である点でも藤田さんと共感を共有できました。特に中野女史に関しては、なによりも美人で、しかも、英雄たちの選択の岐路に立った時の選択に関し、その英雄たちの心に分け入る時の女史の、その専門の心理学的知見からの鋭い分析・評価については、なるほどと頷きながらいつも感心させられているのであります。小生も最近では、自分の駄文を書くに当たり時々この番組で知った、この「誰々の心に分け入ってみると・・・・」というプロットを時々活用するようになりました。

藤田さんは、自らのメールには不勉強・ノンポリ・読書好きでもないとご謙遜されておられますが、当メールの主題である「日本近現代史について」を読ませて頂きますと、まるで井澤元彦氏の「逆転の日本史」を彷彿されるように、歴史の裏面史に深い造詣を感じさせられ、その勉強ぶりには大いに感心させられたのであります。藤田さんのメールの最後には「因みに、来年の大河ドラマ西郷どんがヒーローの由で当然ヒロイックに扱われると予想されるので、眉に唾を付けながら見たいものだ」と書かれています。鹿児島出身の小生もまた、ある種の郷土愛から「沢村修治氏の“西郷隆盛―滅びの美学」と大好きな作家池宮彰一郎氏の「島津奔る上下2巻」を読んでいます。小生の場合は、上記貴兄の眉唾性からではなく、TVドラマの展開での扱い方が定説によるものか、逆説的な扱いか、という判断の参考になれば、との興味から読んでいます。

また特に文中、我がサントリー社のことにもいろいろと触れて頂いたことにも感謝いたします。その中で藤田さんのご尊父が、山崎工場建設に関わられたという事実を知り、S社出身者としていたく感動致しました。小説「琥珀の夢」については、小生もこの「33PQネット」で何回か触れさせていただきました。小生には、その小説の展開の面白さから、新聞小説が終わった今でもなおその感動の余韻が残っているのです。

・そこで、最近、上記の中野女史の素晴らしい思考展開の常套的手法ともいえる「誰々の心に分け入ってみると」という手法を真似して「人生の前半生では、様々な事業を手広く展開されていた鳥井信治郎翁(以下翁と記す)が、その後半生では、一転、まるで何かに取り憑かれたかのように、“ウイスキーづくり”に一点集中しておられることに関し、それは何故か、何がそうさせたかと、いう大きな疑問から、その翁の心に分け入ってみたのです。以下駄文ながらそれを下記に記載させていただきます。

・翁が、あるときふと経験した「霊験あらたかなるある体験」こそが翁をして“ウイスキーづくり”という、ご自身の夢:「琥珀の夢」へと駆り立てたのではなかろうか、というのが小生が翁の心に分け入ってみての結論です。興味があればご一読ください。(これはS社OBのHPに数日後掲載予定の拙稿)

「翁のウイスキー・アニミズムについて」

・「感動の夢」終結後すぐに書店に大量に陳列された新刊本上下2冊を手にし、翁が最終的にウイスキー事業にその後半生を賭けて来られたのはなぜか、という興味から、その翁の心の中に分け入ってみました。

・小説によると、翁が赤玉ポートワインの品質向上に努めておられた折に、ふとしたことから、樽に寝かせておいたぶどう酒が“えもいえぬまろやかな味わい” に変質していることを発見されたのです。つまり"熟成"という、そのメカニズムも理屈も全く解らないその神秘的な現象に翁は驚かされたのであります。小生は、その時の翁のその驚きの体験こそが、翁をして、あらゆる酒類の中で"熟成"こそが最も重要なファクターである“ウイスキーづくり”への夢を膨らますことに繋がったのではなかろうかと、推察しました。しかもそんな翁のウイスキー信仰は、翁の心の中に日々強固になっていったために、信頼する従業員に「冒険的投資であるとの理由から」いくら反対されようとも、逆に、その翁の決然たる思いは、ますます強まって行ったのではなかろうか、とも思うのであります。

・人類には、「人智の及ばない現象に出合うと、そこには霊魂精霊が宿るとの考え方」が、東西古今を問わず、長年来の習慣として存在しています。英国の人類学者E・Bタイラーは、これをアニミズム(animism)と定義して、それが宗教の起源にすら繋がっているとの説をかって発表しています。

・ウイスキーづくりに不可欠な“熟成工程”のこの不可思議な現象を翁が“ふとしたきっかけ”で発見されたことこそは、翁にとっては、将にこの“アニミズム”にも匹敵する“霊験あらたかなる体験”となったのではないでしょうか。だからこそ、翁にとってのウイスキーづくりへの意思は、自らの人生の挑戦とも言うべき「琥珀の夢」にまでに拡がったのであろう、と小生は考えたのであります。その上、翁が、そんな大きな夢を強く心に思い描いておられたからこそ、大正・昭和という厳しい時代もものかわ、既に翁自らの信仰ともなったこのウイスキーつくりにその後のあらゆる事業努力を傾注されたのであろう、と推察したのであります。

・しかも、その結果が、戦後という日本の新しい時代になって、佐治サンたち一族後継者の皆さんの大いなる努力と相俟って、ウイスキー・ブームを巻き起こし、小説にも記述されているように、昭和55年には、オールドの年間出荷量が1200万ケースを超えて、世界洋酒市場に冠たる記録を打ち立てたのであります。ウイスキー事業開始55年目の快挙であります。と同時に、「今に見ておれ、日本一、いや世界一のウイスキーを造ったるで・・・」との翁の「琥珀の夢」の実現でもありました。更にそれがその後のS社の国際的発展にまでも繋がっているのです。

・そのように考えると、小生のサントリー在職時代は、各人それぞれに様々な努力を傾注したとはいえ、基本的には、翁の将に「琥珀の夢」という“ウイスキー・アニミズム”の成果を、われわれも大いに享受し得た、誠にもって有難い時代であった、と考えるのであります。(坂本幸雄 H29.10.15記)

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