話の種「仰げば尊し」について
Q下條剛一2018.5.4
些か時期がずれたが、且つて卒業式の定番歌唱曲の「仰げば尊し」について面白い事実を知った。
明治の初め、西洋音楽から大きく遅れを取っていた日本は、欧米諸国に追いつけ追い越せとばかりに、アメリカのボストンから音楽教育で実績のあったメーソン(Mason, Luther Whiting/1828-1896)を呼び寄せた。メーソンの指導の下、既存の西洋音楽の中から日本人に親しみやすい曲を選び、そのメロディーに日本語の歌詞を付けて、日本の音楽教育「唱歌」の教材とした。こうして明治時代に生まれた唱歌に「蛍の光」、「仰げば尊し」が含まれていて、卒業式の歌と言えば、「蛍の光」と「仰げば尊し」が定着した。
「蛍の光」は、1881年(明治14年)に、我が国最初の音楽教科書『小学唱歌初編』に掲載されて広まった。スコットランド民謡の「オールド・ラング・サイン(久しき昔)」が原曲であることは周知の事実である。
その3年後の1884年(明治17年)発行の『小学唱歌集』第3編より収録されたのが、「仰げば尊し」であるが、こちらの方は、出所が不明であった。八分の六拍子のこのメロディーを聴くと、はるか昔の卒業式を思い出す。台湾では、今日でも「青春校樹」として歌われている様だ。
「仰げば尊し」の原曲が、今から7年前の2011年(平成23年)1月に、一橋大学名誉教授の桜井雅人氏によって発見された。この発見は、日本音楽史上世紀の大発見と言われている。 2011年1月25日付の日経に「仰げば尊し」原曲は米国の歌 19世紀、同じ旋律・・・との見出しで下記の様に報じられている。
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卒業式でよく歌われてきた唱歌「仰げば尊し」の原曲とみられる米国の歌の楽譜を、一橋大名誉教授(英語学・英米民謡、歌謡論)の桜井雅人さん(67)が25日までに発見した。研究者の間で長年、作者不詳の謎の曲とされていた。
桜井さんによると、曲名は「Song for the Close of School」。米国で1871年に出版された音楽教材に楽譜が載っていた。直訳すると「学校教育の終わりのための歌」で、友人や教室との別れを歌った歌詞という。作詞はT・H・ブロスナン、作曲はH・N・Dと記されていた。旋律も演奏記号フェルマータの位置も「仰げば尊し」と全く同じという。
桜井さんは約10年前から唱歌などの原曲を研究。古い歌集や賛美歌などを調べていたところ、1月上旬に楽譜を見つけた。桜井さんは「日本にはたどれる資料がなく、今の米国でも知られていない歌。作詞・作曲者の実像など不明な点も多く、今後解明されればうれしい」と話している。〔共同〕 Unquote
去る4月14日は、この発見者桜井雅人教授の一周忌にあたる日であった。桜井教授は、宇都宮出身、東京外語英米語科卒業後、大学院で更に研鑽を積み、東京商船大学助教授の後、一橋大学教授就任され、2008年(平成20年)定年、のちに名誉教授の称号を贈られる。
同教授は英米歌謡民謡論を研究。作者不詳とされていた小学唱歌「仰げば尊し」の原曲が、19世紀に米国で作られた「卒業の歌」であることを2011年に突き止めた訳である。
桜井教授は、2015年に、『仰げば尊し――幻の原曲発見と『小学唱歌集』全軌跡』(桜井雅人・ヘルマン=ゴチェフスキ・安田寛共著、東京堂出版)を刊行している。
*******以下管理人が挿入しました。************************************************************************************************************
******P大島昌二2018.5.4********************
アメリカでは忘れられたこの曲が日本で愛唱されたというニュースは読んでいましたが英語の原曲の録音は初めて聴くことができました。どこで探し出したものか。深く御礼申し上げます。大島昌二
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※譜面および歌詞はWikiZEROより転載させて頂きました(管理人)。
二十四の瞳の最初の方と最後に「仰げば尊し」が歌われています。
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