この山についても深田は山名の由来について2ページを割く。「間ノ岳」「荒川岳」とも呼ばれたが、「塩見岳」に落ち着いた。この「塩見」という名の由来となった大鹿村の伝説を深田は二つ(「健御名方命(たけみなかたのみこと)が鹿塩の谷で塩を見られた」「弘法大師が山へ登り、山頂から海を望んでその塩をこの谷に呼んだ」)挙げ、これらは根拠不足としながらも、わが国最高の強食塩泉の塩湯温泉があることから「塩見岳という名は・・・・山麓の名前と関係があるのだろう」と論ずる。
大鹿村から塩見岳は見えないが、深田が書いている通り当時、大鹿村から三伏峠まで登ってこの「息を飲む思い」の「天下一品」の山に登拝する習慣があったのだろう。そして、自分たちの村に縁のある「塩見」という名で呼んだのだろう。
なお、深田の書いている三伏峠から伝付峠に抜ける街道は、伊那街道(塩尻から伊那谷を南下して岡崎)ではなく伊奈街道であり、明治19年に整備されたが、数年で荒廃したらしい。
この街道からも人々は塩見岳を見ただろうが、もう既にその名は定着していたに違いない。私はこの「天下一品」の塩見岳、「漆黒の鉄の兜、あるいはズングリした入道頭」を2005年9月に初めて見て感激し、2017年10月に2度目に登った時は紅葉に染まる塩見岳の入道頭を見て息を飲んだ。
南アルプスの中央部の中で突出した3,000m峰なので、深田の指摘通り、北岳や悪沢岳からでも、この入道頭はすぐ同定できる。だがやはりこの山を見るべき場所は三伏峠に違いない。私にとって(雪山を除いた)最高の山岳風景の一つである。
二度目に登った時は塩見岳を越えて蝙蝠岳まで歩いたが、それはまさに南アルプスど真ん中の旅だった。
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この山についても深田は山名の由来について2ページを割く。「間ノ岳」「荒川岳」とも呼ばれたが、「塩見岳」に落ち着いた。この「塩見」という名の由来となった大鹿村の伝説を深田は二つ(「健御名方命(たけみなかたのみこと)が鹿塩の谷で塩を見られた」「弘法大師が山へ登り、山頂から海を望んでその塩をこの谷に呼んだ」)挙げ、これらは根拠不足としながらも、わが国最高の強食塩泉の塩湯温泉があることから「塩見岳という名は・・・・山麓の名前と関係があるのだろう」と論ずる。大鹿村から塩見岳は見えないが、深田が書いている通り当時、大鹿村から三伏峠まで登ってこの「息を飲む思い」の「天下一品」の山に登拝する習慣があったのだろう。そして、自分たちの村に縁のある「塩見」という名で呼んだのだろう。
なお、深田の書いている三伏峠から伝付峠に抜ける街道は、伊那街道(塩尻から伊那谷を南下して岡崎)ではなく伊奈街道であり、明治19年に整備されたが、数年で荒廃したらしい。この街道からも人々は塩見岳を見ただろうが、もう既にその名は定着していたに違いない。私はこの「天下一品」の塩見岳、「漆黒の鉄の兜、あるいはズングリした入道頭」を2005年9月に初めて見て感激し、2017年10月に2度目に登った時は紅葉に染まる塩見岳の入道頭を見て息を飲んだ。南アルプスの中央部の中で突出した3,000m峰なので、深田の指摘通り、北岳や悪沢岳からでも、この入道頭はすぐ同定できる。だがやはりこの山を見るべき場所は三伏峠に違いない。私にとって(雪山を除いた)最高の山岳風景の一つである。
二度目に登った時は塩見岳を越えて蝙蝠岳まで歩いたが、それはまさに南アルプスど真ん中の旅だった。
p347 塩湯:古くから愛される名湯として知られる「鹿塩温泉」には、古事記にも登場する建御名方神が「鹿狩りをしている際に鹿が塩水を舐めているのを見て発見した」とか、平安時代の僧であり真言宗の祖である弘法大師が大鹿村を訪れた際に村人が塩に困窮していることを憂い、持っていた杖で地面を突いたところ、そこから塩水が湧出したといった開湯伝説が残されています。当館の自家源泉は地底7000mの極深地から湧き上がり、その塩泉は少なくとも2万年以上前の塩水と考えられています。温泉の濃さを表す蒸発残留物は「1ℓ当たり15~25g」と濃度が高く、一部の温泉学者から「奇跡の温泉」と称される源泉です。 (山塩館)
p348 伊那街道→伊奈街道:南アルプスを横断する道は伊奈街道という。新甲州街道等のほかの名前で呼ばれることも多い。繋いでいるのは山梨県早川町と長野県大塩村だ。南アルプスを東西に突っ切るようなルートとなる。この道は明治19年に整備された道で、早川町と大塩村がお金を出し合って整備した。しかし整備が行き届かず数年で荒廃してしまったようだ。寿命が短かったため、その道の地形図への記載は大正2年発行の5万分の1地形図のみにとどまり、ほかの文献による記述も極端に少ない。近年の情報としては『岳人』834号(2016年12月)(ジャンダルムで揺れた鎖の音)