三角点2,864m
この章は数々の抒情表現、細かな情景描写で満ちている:「登山者というロマンティストは美しい山の名に惹かれる。心の中にまだ訪れたことのないしかしその美しい名前だけは深く刻み込まれている幾つかの山をもっているものだ」「空木、空木、なんという響きの良い優しい名前だろう」「磊磊(らいらい)というむずかしい漢字が似合うような岩の群れが、巨人のおもちゃ箱をひっくり返したように散乱していて」「駒石と呼ぶ大きな四角い岩があって、縦横に定規で引いたような割れ目が入っていた。大地震でもあったら、バラバラと積み木のように崩れそうに思われた」、などなど。
私にとって「まだ訪れたことのない美しい名前の山」はあるだろうかと考えてみる。北海道では愛別岳、ポンネアンチシ、カスベ&メップ、砂蘭部(さらんべ)岳、東北ではヒバクラ岳、小影山、花立峠、関東では半月山、赤雪山、鬢櫛山、影信山、連行山、天園、新潟では日白山、長野:カヤノ平、高ボッチ、山梨・静岡:乙女高原、扇山、白水山、金冠、北陸・岐阜:五色ヶ原、赤兎山、木ノ芽峠、野麦峠、輝山、関西・中国:ポンポン山、琴引山、星居山、四国・九州:眉山(先日登った)、千羽ヶ岳、ずいぶんある。
大きな白い岩が散乱しているのは、空木岳から南駒ヶ岳まで往復したときに見たが、駒石には気づかなかった。深田が「空木小屋」と書いているのは頂上直下にある駒峰ヒュッテではなく、1㎞強沢筋を下ったところにある避難小屋だろう。駒石は尾根上を頂上から800mほどのところだから、避難小屋からは道はなく、そんなに近くはないと思う。深田はそこでエゾノイブキトラノオというのを見ているが、私はチングルマをたくさん見た。
深田は翌朝、「遮る雲一筋ない完全な日の出」を迎え、雲海の上のすばらしい大観を見ている。私が稜線を歩いた時は次第に雲が流れてきて遠景を隠してしまったが、西のすぐ近くに御岳、北には木曽駒ヶ岳への稜線、東には南アルプスを眺めることができた。
深田はその後、縦走路を木曽駒ヶ岳まで歩き「振り返ると・・・空木岳と南駒ヶ岳の二つが睦まじそうに並んで立っている」のを見ているが、私は2021年5月に木曽駒ヶ岳頂上から真っ白な二つの峰が並んでいるのを見た。空木岳は私にとって、大田切谷を苦労して遡り、やっとたどり着いた思い出深い山である。
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この章は数々の抒情表現、細かな情景描写で満ちている:「登山者というロマンティストは美しい山の名に惹かれる。心の中にまだ訪れたことのないしかしその美しい名前だけは深く刻み込まれている幾つかの山をもっているものだ」「空木、空木、なんという響きの良い優しい名前だろう」「磊磊(らいらい)というむずかしい漢字が似合うような岩の群れが、巨人のおもちゃ箱をひっくり返したように散乱していて」「駒石と呼ぶ大きな四角い岩があって、縦横に定規で引いたような割れ目が入っていた。大地震でもあったら、バラバラと積み木のように崩れそうに思われた」、などなど。
私にとって「まだ訪れたことのない美しい名前の山」はあるだろうかと考えてみる。北海道では愛別岳、ポンネアンチシ、カスベ&メップ、砂蘭部(さらんべ)岳、東北ではヒバクラ岳、小影山、花立峠、関東では半月山、赤雪山、鬢櫛山、影信山、連行山、天園、新潟では日白山、長野:カヤノ平、高ボッチ、山梨・静岡:乙女高原、扇山、白水山、金冠、北陸・岐阜:五色ヶ原、赤兎山、木ノ芽峠、野麦峠、輝山、関西・中国:ポンポン山、琴引山、星居山、四国・九州:眉山(先日登った)、千羽ヶ岳、ずいぶんある。
大きな白い岩が散乱しているのは、空木岳から南駒ヶ岳まで往復したときに見たが、駒石には気づかなかった。深田が「空木小屋」と書いているのは頂上直下にある駒峰ヒュッテではなく、1㎞強沢筋を下ったところにある避難小屋だろう。駒石は尾根上を頂上から800mほどのところだから、避難小屋からは道はなく、そんなに近くはないと思う。深田はそこでエゾノイブキトラノオというのを見ているが、私はチングルマをたくさん見た。
深田は翌朝、「遮る雲一筋ない完全な日の出」を迎え、雲海の上のすばらしい大観を見ている。私が稜線を歩いた時は次第に雲が流れてきて遠景を隠してしまったが、西のすぐ近くに御岳、北には木曽駒ヶ岳への稜線、東には南アルプスを眺めることができた。
深田はその後、縦走路を木曽駒ヶ岳まで歩き「振り返ると・・・空木岳と南駒ヶ岳の二つが睦まじそうに並んで立っている」のを見ているが、私は2021年5月に木曽駒ヶ岳頂上から真っ白な二つの峰が並んでいるのを見た。空木岳は私にとって、大田切谷を苦労して遡り、やっとたどり着いた思い出深い山である。
p318 磊磊(らいらい):石の重なり集まっているさま、物事にこだわらないさまといった意味をもっています。 石そのもの様子からイメージされているのが、意味からよく伝わります。 こだわることも大切ですが、ときにはこだわらず大きな心を持つ必要もあるでしょう。 「磊」の由来は、石がごろごろしている様子からきているそうです。