この章の初めで深田が雨飾山を見た「大町から糸魚川街道を辿って佐野坂を越えたあたりで」というのは、今の道の駅白馬のあたりだろうか。距離も30㎞程度だから見えるのだろうが、深田も記しているとおり「街道のすぐ左手に立ち並んだ後立山連峰」の鹿島槍や五竜に気を取られて、私はまだ見たことがない。
一方、私が雨飾山をよく見るスポットは糸魚川のショッピング・モールで、そこからは頸城三山の焼山の手前に立ち並ぶ奇岩怪石の海谷連峰の右端に雨飾山が見えるのである。それが「あっ雨飾山だ!」と気づくのは双耳峰の姿をしているからだが、いみじくも深田久弥が表現した雨飾山の双耳は私にとって大きな謎を投げかけた。
「北側から仰いだ雨飾山は良かった。左右に平均の取れた肩を長く張って、その上に、猫の耳のような二つのピークが睦まじげに寄り添って、すっきりと五月の空に立っていた。やはり品が良く美しかった」という「猫の耳」を私が初めて見たのは(いや、見たと思ったのは)2005年4月に雨飾山P2に登ったときで、頂上の南東400m強にあるP2・1,838mから見た雨飾山は確かに猫の耳の姿の双耳峰に見えた。しかし、P2から見た猫の耳は三角点峰1,963mと南東峰1,950mであり、南東峰は北側からは見えないはずだから、これは深田が見た猫の耳ではないことになる。
話をややこしくしているのは、深田がついに雨飾山の頂上に立った時の描写である。「ついに私は久恋の頂に立った・・・・・すべての頂には憩いがある。・・・・風化し磨滅した石の祠と数体の小さな石仏の傍らに私たちは身を横たえてただ静寂な時の過ぎるのに任せた。古い石仏は越後の方へ向いていた・・・・・一休みして、私たちはもう一つのピークの上へ行った。案外近く、30mほどしか離れていなかった。下から眺めてあんなに美しかったその二つの耳の上に立った喜びで、私の幸福には限りがなかった」:深田は笹平の方角から頂上に達しているから、最初に到達したのは三角点峰1,963mに違いない。そして一休みしたあとで西にあるもう一つのピーク(最高点峰)に行った。残念ながら、地理院地図にはこの30m離れた二つのピークは記されていない。しかし、深田は書いてないが、私が頂上で見た限りもう一つのピークのほうが僅かに高い。つまり、等高線は1,960mまでしかないが、最高点峰は三角点峰1,963mより高いはずなのである。
ところが、深田が頂上で歩いた30mしか離れていない二つのピークはほとんど平であり、遠くから見て「猫の耳」には見えないのではないかと思う。それは私が頂上で撮影した二つの画像から明らかなように思われる。そして2021年に北側の駒ヶ岳に登ろうとしたときに私が見た「猫の耳」こそが、深田が北側から見た「猫の耳」であり、それは最高点峰と西峰1,842mではないかと思われる。それらは確かに「睦まじげに寄り添って・・・・品が良く美し」く見えた。
この山にはもう一度登りたい。2020年に登る機会があったが、栃ノ木亭が営業停止してルートが長くなったこともあり、P2までしか行けなかった。その時にP2から見る「猫の耳」に再会して感動したが、双耳の頂上にももう一度登って、猫の耳の謎を究明してみたい。
AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA
この章の初めで深田が雨飾山を見た「大町から糸魚川街道を辿って佐野坂を越えたあたりで」というのは、今の道の駅白馬のあたりだろうか。距離も30㎞程度だから見えるのだろうが、深田も記しているとおり「街道のすぐ左手に立ち並んだ後立山連峰」の鹿島槍や五竜に気を取られて、私はまだ見たことがない。
一方、私が雨飾山をよく見るスポットは糸魚川のショッピング・モールで、そこからは頸城三山の焼山の手前に立ち並ぶ奇岩怪石の海谷連峰の右端に雨飾山が見えるのである。それが「あっ雨飾山だ!」と気づくのは双耳峰の姿をしているからだが、いみじくも深田久弥が表現した雨飾山の双耳は私にとって大きな謎を投げかけた。
「北側から仰いだ雨飾山は良かった。左右に平均の取れた肩を長く張って、その上に、猫の耳のような二つのピークが睦まじげに寄り添って、すっきりと五月の空に立っていた。やはり品が良く美しかった」という「猫の耳」を私が初めて見たのは(いや、見たと思ったのは)2005年4月に雨飾山P2に登ったときで、頂上の南東400m強にあるP2・1,838mから見た雨飾山は確かに猫の耳の姿の双耳峰に見えた。しかし、P2から見た猫の耳は三角点峰1,963mと南東峰1,950mであり、南東峰は北側からは見えないはずだから、これは深田が見た猫の耳ではないことになる。
話をややこしくしているのは、深田がついに雨飾山の頂上に立った時の描写である。「ついに私は久恋の頂に立った・・・・・すべての頂には憩いがある。・・・・風化し磨滅した石の祠と数体の小さな石仏の傍らに私たちは身を横たえてただ静寂な時の過ぎるのに任せた。古い石仏は越後の方へ向いていた・・・・・一休みして、私たちはもう一つのピークの上へ行った。案外近く、30mほどしか離れていなかった。下から眺めてあんなに美しかったその二つの耳の上に立った喜びで、私の幸福には限りがなかった」:深田は笹平の方角から頂上に達しているから、最初に到達したのは三角点峰1,963mに違いない。そして一休みしたあとで西にあるもう一つのピーク(最高点峰)に行った。残念ながら、地理院地図にはこの30m離れた二つのピークは記されていない。しかし、深田は書いてないが、私が頂上で見た限りもう一つのピークのほうが僅かに高い。つまり、等高線は1,960mまでしかないが、最高点峰は三角点峰1,963mより高いはずなのである。
ところが、深田が頂上で歩いた30mしか離れていない二つのピークはほとんど平であり、遠くから見て「猫の耳」には見えないのではないかと思う。それは私が頂上で撮影した二つの画像から明らかなように思われる。そして2021年に北側の駒ヶ岳に登ろうとしたときに私が見た「猫の耳」こそが、深田が北側から見た「猫の耳」であり、それは最高点峰と西峰1,842mではないかと思われる。それらは確かに「睦まじげに寄り添って・・・・品が良く美し」く見えた。
この山にはもう一度登りたい。2020年に登る機会があったが、栃ノ木亭が営業停止してルートが長くなったこともあり、P2までしか行けなかった。その時にP2から見る「猫の耳」に再会して感動したが、双耳の頂上にももう一度登って、猫の耳の謎を究明してみたい。
天狗原山から見下ろす雨飾山:西にはトンガリ頭の雨飾山がこっちよりも低く見えていて、ずいぶん高いところまで登ってきたことが分かる。 頂上の右下にフトンビシの岩壁。
根知駒ヶ岳途上から見る雨飾山(糸魚川のショッピング・モールから見るのとほぼ同じ):「あっ雨飾山だ!」と気づくのは双耳峰の姿をしているからだが、いみじくも深田久弥が表現した雨飾山の双耳は私にとって大きな謎を投げかけた。
「猫の耳」を私が初めて見たのは(いや、見たと思ったのは)2005年4月に雨飾山P2に登ったときで、頂上の南東400m強にあるP2・1,838mから見た雨飾山は確かに猫の耳の姿の双耳峰に見えた。しかし、P2から見た猫の耳は三角点峰1,963mと南東峰1,950mであり、南東峰は北側からは見えないはずだから、これは深田が見た猫の耳ではないことになる。
乙妻山から見る雨飾山は双耳峰には見えないが、そこには、見る方角によって「猫の耳」に見えると考えられるピークがならんでいた
①最高点峰と三角点峰:頂上で30mしか離れていない
②西峰と最高点峰:北(画面の奥側)から見る双耳峰
③三角点峰と南東峰:P2から見る双耳峰
雨飾山・三角点峰1,963m(右手前)と西にあるもう一つのピーク(最高点峰、左奥):残念ながら、地理院地図にはこの30m離れた二つのピークは記されていないが、左奥のピークのほうが僅かに高い。つまり、等高線は1,960mまでしかないが、最高点峰は三角点峰1,963mより高いはずなのである。
雨飾山・最高点峰の石仏群