【海外サイエンス・実況中継】大学院留学準備 後編

Post date: Apr 12, 2013 6:0:23 AM

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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』

_/ April 2013, Vol. 58, No. 1

_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/

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日置さんによる留学準備記事後編です。大学選び、出願に

ついて、またその後の予想外のトラブルについてもかかれています。

ぜひお楽しみください。

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【GRE対策:ほとんどぶっつけ本番】

1年生の秋に留学を決意したのは良かったのですが、私がGRE対策を始めたのは

4年生の5月と非常に遅く、今でももっと早く始めているべきだったと思っています。

対策に利用したのは、The Official Guide to the GRE revised General Test と

いうETSが発行する公式の対策問題集で、これを通読し、付属の問題集を解きました。

5月から7月までは前期セメスタの講義や卒業研究で忙しく、週に2,3時間程度しか勉

強できませんでしたが、直前の一週間は研究を放り投げて1日5時間くらい集中して

取り組みました。

試験は4年生の8月上旬に受け、Verbalはそこそこ、Quantitativeはほぼ満点だった

のですが、Analytical Writingで3.0しかとれず、やはり勉強不足だったかなと思っ

ています。もし4年生の春に戻れるとしたら、徹底的に英語のライティングの練習を

したいです。また、大学探しをする上でも4年生になる前に一度はGREを受けておい

た方が良かったと思います。

【大学選び:指導教官との出会い】

東北大学の地球物理では、4年生の春から研究室に配属になります。一度研究室に

配属されてしまうと、その後の進路変更が難しいので、留学に理解を示してもらえ

そうな研究室選びをするところから、私の大学選びはスタートしました。

まずは、地球物理の先生約20人の中から授業でお世話になった先生を中心に海外

経験のある先生や留学生受け入れ経験の豊富な先生を探しだし、研究分野の動向や

国内、海外で有名な先生方について聞いてみました。このときは留学を考えている

ということを伝えた先生もいましたし、伝えなかった先生もいました。それまでの

講義と、講義後の質問への対応から得た感触から、どこまで自分のことを話すか、

さじ加減を決めていたように思います。

何人かの先生に聞いてみたところ、大気物理学を専門にしているある先生が詳し

いから相談してみるとよい、というアドバイスをいただいたので、面識がなかった

その先生のもとをドキドキしながら訪れました。唐突だとは思いながらも、留学を

考えていることと、大気光学と気候変動に関係することをやりたいと考えているこ

とを伝えたところ、その先生からは、うちの研究室に来る来ないに関係なく、でき

る範囲で応援してあげよう、という力強いお言葉をいただきました。その後、研究

室のレベル、国際的なネットワークの強さ、研究室の運営状況などを総合的に検討

して研究室を選びましたが、奇しくも私が飛び込んでいったその先生が、今の指導

教官となっています。

こうして、研究室と指導教官の両方から留学の支援をもらえる体制を整え、さて

大学選びだとなった4年生の春に、私は大きな問題に気がつきました。欲しい情報が

簡単には手に入らなかったのです。いくつか目星をつけた研究室のWebを調べてみま

したが、実際に何をやっているか書いているところは少なく、教授の書いた論文を

読んでも、知識不足で何が書いてあるのか分からないのです。この消化不良の状態

は2ヶ月ほど続き、この時期が非常に苦しかったです。しかし、研究室で卒業研究を

進めて行くうちに、少しずつその分野が分かるようになり、気になっていた研究室

の活発さなどがつかめるようになりました。最終的には7月頃、指導教官の勧めもあ

って、指導教官が以前勤務していたテキサスA&M大学を第一志望にして応募すること

に決めました。私が調べていた他の大学は、A&M大学と平行して応募することに決め

ました。

【出願と奨学金手続き:4時間と4日】

応募すると決めたその日のうちに、私の指導教官は早速テキサスA&Mで勤務してい

た当時のボスにメールを打ってくださいました。翌日、大学に行くと、先生はにこ

にこしながら「日置くん、履歴書を今日中に書ける?」とおっしゃるのです。どう

やら、前向きに検討してみるから、履歴書を送ってほしい、との返事だったようです。

私はその日、東北大学を1週間のプログラムで訪れていた海外の大学生たちとのお別

れの飲み会があったのですが、1次会はあきらめて、研究室で英文の履歴書を4時間

かけて書き上げました。履歴書を書き上げて疲れ切って2次会に行き、すっかり出来

上がった留学生たちのノリに遅くまで付き合ったので、充実していましたが、なか

なか大変な一日となりました。

後で分かったことですが、履歴書とともに私の指導教官は非常に強く私のことを

推薦してくださっていたようで、A&Mの教授からはとても好意的なお返事をいただく

ことができました。翌週には通常の9月入学ではなく、3月に卒業ししだい渡米できる

ようにしようと、特別な手配までしてくださることになりました。私は半年間早く

研究を始められるこの案に大喜びで、できることなら奨学金も取って行こうと、3月

出発に唯一対応してくれる日本学生支援機構の奨学金に応募することにしました。

ところが、奨学金に応募しようと大学の関係部署に問い合わせをしてみたところ、

学内の応募期限は私が応募を決めたその日だったのです。何とかその週の金曜日まで

4日間締切りを延ばしてもらい、その4日間のうちに、留学計画書や健康診断証明書を

はじめ30ページに及ぶ応募資料のほとんどを揃えました。結局金曜日には間に合わな

かったのですが、その後、面接審査を経て11月には、奨学金への採用通知をいただく

ことができました。

【特別手配は失敗:そして誰も知らなかった。】

奨学金に採用されたことをテキサスA&M大学の教授に伝えると、11月の末には入学

許可書をいただくことができました。この時から、2月末に渡米する方向で調整が

始まりました。卒業研究のかたわら、必要な書類を提出したり、予防接種を受けたり、

留学生向けオリエンテーションを受けたりしているうちに年が明け、履修登録の時期

になりました。ビザの申請に必要なI-20を出してもらえるよう事務にお願いしていた

したにも関わらず、なかなか届かないことに一抹の不安を感じながら、教授と相談し

ていた科目の履修登録をWebからしようとしたところ、驚くことに、履修登録ができ

ないことが分かったのです。

I-20の発行が遅いことも含めて、関係部署3箇所に問い合わせのメールを慌てて出

したのですが、どのメールにもなぜか返信がなく、あっという間に講義期間に突入

してしまいました。そもそも講義期間の途中に渡米する予定だったので慌てる必要は

ないと思いつつ、何となく嫌な予感がしてA&Mの教授に相談したところ、実は私たちの

立てていた計画はそもそも不可能だったということが分かりました。授業開始日から

12日目以降に渡航することはできないという規則があったようなのですが、それを教

授も、私も、そして専攻事務室も知らないまま準備を進めていたのです。

このことが分かったのは、1月30日でした。しかたがないので9月入学を目指して

もう一度準備を進めることになったのですが、渡航する日の会計年度が変わるため、

せっかく採用を受けた奨学金は受給資格を喪失してしまい、時期が時期だったために

応募できる奨学金は既にかなり限られてしまっていました。経済的に八方塞がりの状

況で、やむなく奨学金の辞退願いを提出した時は、悔しさでいっぱいでした。

そうはいっても、先のことは考えなければいけないので、東北大学の大学院への進

学も横目でにらみつつ、テキサスA&M大学の教授にも状況を説明してリサーチ・アシ

スタント(RA)での支援がもらえるかを問い合わせてみました。はじめのうちは、「来

年の予算の状況が分からないので、何とも言えない。日本国内で応募できる奨学金が

あれば、ぜひ応募してほしい。」という曖昧なものだったのですが、次第に状況は好

転し、2月の下旬には、RA付きの合格通知をいただくことができました。そこで現在は

9月入学に向けて準備を進めているところです。

【まとめ:四苦八苦して】

思いもよらず手に入ったこの半年間をどう活用するかを考えつつ、最近は前にも増

して、研究と英語学習を中心とした留学準備に取り組んでいます。たくさんの予想外

のことが次々と起こった半年間でしたが、4年間の留学準備の過程を通してみると、

特にダイナミックで充実していた時間だったように感じます。読者の皆様の中には、

もっと効率的な方法で準備を進めている方もいらっしゃると思いますし、私のような

不手際を起こさないくらい注意深い方もいらっしゃると思います。できればトラブル

はない方がよいですが、準備の中で四苦八苦した経験のひとつひとつが自分の能力を

引き伸ばすうえでプラスに作用しいたことが、私の場合は幸いでした。

履歴書を4時間で書き上げてみたり、自分の考えていることの詳述と資料収集とを

4日間で完成させてみたり、先方の大学の関係部署とメールのやりとりをしたりした

ことは、私にとって貴重な経験で、英語力や情報収集の能力を伸ばすことにつながり

ました。これからも半年間の留学準備期間が待っていますが、今度は自分のスタイル

で、研究と留学準備を進めていきたいと考えています。

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執筆者自己紹介

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日置壮一郎

2013 東北大学理学部宇宙地球物理学科 卒業

2013 Texas A&M University, department of atmospheric sciences 入学(予定)

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発行責任者: 石井 洋平

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