【海外サイエンス・実況中継】成功したサイエンティストたちを見て学んだこと

Post date: Jan 30, 2012 7:18:24 PM

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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』

_/ April 2008, Vol. 31, No. 1

_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/

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日本は桜の季節が到来し、新年度がスタートしましたね。2007年は、私たちカガク

シャ・ネットワークにとって大きなステップを踏み出した1年でした。本格的にウェブ

サイト(http://kagakusha.net/)をスタートし、このメールマガジンを創刊しました。

おかげさまで、読者数はついに1000名を越え、「まぐまぐ大賞2007」にもノミネー

トして頂きました。みなさんのご支援に、心より感謝しています。

さて、これまでのメルマガでは、27名のサイエンティストの卵が、最先端の研究紹介

と大学院留学の志望動機を紹介してきました。今回より、新たな2本立てのテーマで、

第二弾メルマガがスタートします。

(1) Ph.D.取得後のキャリアを成功させるには ~様々なケースから学ぶこと~

最初のテーマは、博士号取得後のキャリアパスを成功させるための考察です。身近で成

功したサイエンティストから、その秘訣を学び取り、それをみなさんと共有していきま

す。また、日本では、大学院重点化で博士の数は増えましたが、その受け皿がまだしっ

かりと確立されていません。このテーマを通じて、「高学歴ワーキングプア」問題への

解決も探っていければと思います。

(2) 留学本では教えてくれない海外大学院のホント ~実際の体験から~

もう一方のテーマは、留学本ではなかなか語られることのない、海外大学院事情をご紹

介していきます。自ら体験してみないとわからないことは、どんなことでもあると思い

ます。入学前とはまったくイメージが異なったこと、入ってから初めて知ったことなど、

執筆陣の経験を通じて見えてきた、それぞれの「留学体験記」をお送りします。

テーマの都合上、執筆者によってはどちらか一方のみという場合もありますが、基本的

には両テーマ交互で配信予定です。前回までの執筆陣と新たに加わったメンバーで、こ

れまで以上に面白く、知的好奇心を駆り立てるようなメルマガを目指していきます。今

後とも、どうぞご期待下さい!

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Ph.D.取得後のキャリアを成功させるには

~成功したサイエンティストたちを見て学んだこと~

杉井 重紀

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このシリーズでは、博士号取得後のキャリアを見つける上で、さまざまな分野で成功を

おさめた人たちについて、私を含む「カガクシャ・ネットワーク」のメンバーが、その

方々に共通する特徴を見いだし、その一つ一つを紹介していきます。

まず、「研究者として」活躍することだけが、必ずしも成功というわけではありません。

研究に携わる分野以外のキャリアについても、多くの「成功の道」が存在します。今回

は、博士号を目指すまたは取得した人たちの多くが夢見ているであろう、「サイエンティ

ストとしての成功」について書かせてもらいます。

私のいう「成功したサイエンティスト」とは、歴史に残るような大発見や大発明をした、

ノーベル賞を受賞した、あるいは受賞に値する仕事をしている、または各分野でトップ

を走っている大物の科学者・技術者、と定義したいと思います。

もちろん、このようなサイエンティストになることが、必ずしも人生の成功者になるわ

けではありません。しかし、少なくともそのような人物になることを目指すのが、将来

プラスに働くことは間違いないでしょう。

成功したサイエンティストたちは、一人一人を見ると、その性格や見かけはひじょうに

多種多様です。ですから、多くの人はつい、科学者や技術者が成功をおさめたのは、偶

然に訪れた運である、と考えがちです。また、ある人は、成功した人たちはアインシュ

タインのように卓越した頭の良さがあったからだ、と考えます。

ところが、驚いたことに、単なる運とか頭の良さが、どうやら直接の原因ではないので

す。「表面的には」実に異なる人々でも、科学者として成功する「素質」に、多くの共

通点が別にあることが分かりました。今回はその一つを、私が紹介させてもらいます。

▲「成功したサイエンティストの特徴」その1. ~進んで「与える」~▲

私は現在、カリフォルニア州ラホヤにあるソーク研究所で研究をしています。ここから、

ノーベル賞学者をはじめとするトップサイエンティストを輩出したり、歴史に残るよう

な科学者たちが在籍しています。そのため、数多くの著名なサイエンティストがこの小

さな研究所を訪れ、セミナーや講義を頻繁に行っています。

私にとって幸運なことは、これらの訪問研究者と、昼食などで直接話す機会を多く持て

ることです。そんな中で気づいたことを、少しでも多く、皆さんと共有していきたいと

考えています。

最初に挙げる、成功した多くのサイエンティストの特徴は、「普通の」科学者と比べる

と、積極的に「与えてきた」ということです。ここで「与える」のは、科学的知識や研

究材料や情報など、相手にとって有益である物事のことを指します。

もちろん彼らは有名になり、重要な要職につくようになってくると、時間的な制約や、

特許・守秘義務などが常につきまとうので、自分の思い通りには「与える」ことができ

なくなります。しかし、成功する過程では、多くの人に、すぐに見返りを要求すること

なく、惜しみなく「与えて」きた過去があるのです。ですから、話していると隅々にそ

ういう志向を感じ取ることができます。

平凡に終わってしまう科学者は、そういった制約にとらわれすぎて、与えてもかまわな

いものまで、自分の中に閉じ込めようとします。または、すぐに見返りがあるまで与え

ようとしません。

成功哲学の研究者として著名なナポレオン・ヒル博士は、500人以上の各界の著名な

成功者を20年かけて取材・調査した結果、「富を積極的に与え続けていると、よりいっ

そう多くの富を得られるようになる」ことを発見しました(*)。その中には、エジソ

ン、ベルをはじめとする科学者・発明家も多く含まれています。

人間関係にも、与えることのメリットが、如実にあらわれてきます。「進んで与える」

人たちのまわりには常に人が集まり、自然といろいろな情報も集まってきます。当然の

ことながら、「与えない」人には、何も集まってきません。

このように、「与える」思考法が、アメリカの、特にトップにいるサイエンティストの

源流にあることが、感じられます。

「カガクシャ・ネットワーク」に参加している大学院留学生・卒業生の中には、すでに

進んで「与える」ことを実践している人たちがたくさん見受けられます。それを思うと、

このコミュニティは、将来有望なサイエンティストの宝庫であることを確信せずにはい

られません。

「進んで与える」、皆さんも始めてみませんか?

(*)思考は現実化する/ナポレオン ヒル (著)、田中 孝顕 (翻訳)

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4877710515/kagakusha-22/

http://www.amazon.com/exec/obidos/ASIN/1593302002/kagaknetwo-20/

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自己紹介

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杉井 重紀

1996年京都大学農芸化学科卒業。卒業後、UCバークレーで聴講生(浪人

生活?)を経て、ダートマス大学分子細胞生物学プログラム博士課程に在籍。

2003年に博士号取得後、カリフォルニア州ラホヤにあるソーク研究所に

ポスドク研究員として勤務中。

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編集後記

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今回より、このメルマガの編集長を務めさせて頂くことになりました、山本智徳です。

前編集長の杉井さんが中心となって作り上げてきたこのメルマガを、これまで以上によ

り飛躍させていければと思っています。まだ至らぬ点が多いと思いますが、この経験を

通して、私自身、多くのことを学んで成長できればと思います。

なお、これまでに配信されたエッセイは、カガクシャネットのウェブサイト上でもご覧

頂けます。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、それぞれの過去ログにコメン

ト欄がついています。ご質問やご感想があれば、フォーラムと共にぜひご活用して頂け

ればと思います(無料のユーザー登録が必要です)。一方通行ではなく、双方向のコミュ

ニケーションを計り、より良いメルマガをみなさんと作り上げていければと思います。

(山本)

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