【研究者向け】第1回:科学英語に関して by 今村文昭

Post date: Jan 30, 2012 7:16:7 PM

本内容は、今村文昭氏がボストンの研究者に向けて執筆したものを

許可を得て、カガクシャネット向けにダイジェスト編集させていただいたものです。

さらに詳細、参考文献を知りたい方は、

Japanese Researchers' Academic Network (JaRAN) in Boston

URL: http://www.jaranboston.org

を参照してください。

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こんにちは、タフツ大学にて栄養疫学を勉強している今村文昭です。専門とは異なりますが、ザックバランなコラムということで、科学英語について触れてみたいと思います。

私の科学英語に対する興味の発端は、私のボスが告げた以下のことがあります。

「最近は、PCのおかげで簡単に英文が書けてしまう。以前は、非常に骨の折れる作業だったので、効率よく書けるようにと、パラグラフの構成やトピックセンテンスの考察など、執筆前の準備に時間をかけた。今の科学者はそうした時間を割かずに執筆し始めてしまうケースが多いようで、良い文章を書くことができる科学者が減ってきている。」

科学者が書く英語の質の問題がどの程度か存じませんが、英語を母国語とする研究者にとっても問題となる事柄があるようです。そうした点を論じた本や学術論文が古くからありますので、数回のコラムに分けて紹介させていただきたいと思います。

ちなみに、ノーベル賞関連で科学英語に関連してこんなエピソードがあります。

・Dr. Barry Marshallは、ピロリ菌(胃癌・胃潰瘍などを引き起こす)に関する80年代の研究が認められ、2005年にノーベル医学生理学賞を受賞しました。しかし、彼の研究の60年以上前に、日本人はピロリ菌の研究についてそれに劣らない業績を上げていたそうです。日本人は論文を英語で書く傾向が無かったために、そういった業績は埋もれたままだとされています。またそういう実績があったからこそ、国際化が進んだ現代に日本人科学者には期待を寄せられています。

・MITの利根川進博士は1987年にノーベル医学生理学賞を受賞した後の、京都で行われた記念講演で英語を勉強するように伝えたそうです。