【海外サイエンス・実況中継】出願プロセスを始める前に知っておこう!~その2~
Post date: Jan 30, 2012 7:31:23 PM
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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』
_/ November 2008, Vol. 39, No. 1, Part 2
_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/
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先週に引き続き、「留学本では教えてくれない海外大学院のホント~実際の体
験から」をYKさんに紹介してもらいます。前回、5週連続とお伝えしました
が、最終回を待てない読者の方が多いとのことですので、2~4回目をまとめ、
今回を含めて残り3回です。どうぞお楽しみ下さい!
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留学本では教えてくれない海外大学院のホント~実際の体験から
出願プロセスを始める前に知っておこう!~その2~
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●奨学金のソースを知る!
前回のエッセイにおいて、アメリカの大学院では、博士課程の学生ほぼ全員に
対して、授業料免除+生活費支が提供されていると記しました。さて、これだ
け充実した財政援助制度ですが、このお金の出所は一体どこから?なんて思っ
たりもするものです。これは大学の種類や規模によってまちまちですが、主な
資金源としては、(1)州や国、団体からの研究資金、(2)学部生の授業料、
そして、(3)寄付金などがあると思います。
(1)州や国、団体からの研究資金
州立大学の場合、州が何割か研究資金を補助していることがあります。その場
合、大学側は州民(その州に市民権を持つ者)を何割か入学させるという、契
約を結ぶことになります。この結果、たとえば人気の高いカリフォルニア大学
系列(UC Berkeley, UCLA, UCSF, UCSD, UC Irvine など)は、カリフォルニ
ア州民以外を含めたアメリカ人のあいだだけでも、非常に高い競争率になりま
す。これ以外にも重要な公的資金として、NIH(National Institutes of
Health, アメリカ国立衛生研究所)による大学院生用奨学金(graduate stud-
ent training grants)があります。これは、大学院生への財政援助を奨励す
るため、NIH が大学に対して結構な額の補助金を提供するわけです。しかし、
これはアメリカ市民権を持つものにしか使用できないため、院生をサポートす
るための資金のソースが限られているプログラムでは、サポートできる外国人
枠(米国永住権を持つ者を除く)が限られている可能性もあります。ですが、
最近はそういった国籍の制限をとらない研究資金も増えてきているようで、留
学生にとっては大きなチャンスだと思います。
(2) 学部生の授業料
大学院と違い、大学の学部課程では、それほど財政援助は充実していません。
自分で奨学金に出願したり、自費で賄うことが多いようです。アメリカ人でも
多くの学部生は、親に頼って授業料を納付するケースが少なくありません。
大学院志向が強い学部生は、早くから GPA(Grade Point Average, 成績を数
値化したもの)を上げるための努力をし、卒業時には良い推薦状を書いてもら
い、他の学生との差別化を図ろうとします。そして、学部卒後にすぐ大学院に
進学するのではなく、2~3年ほど有名な研究室でテクニシャンなどとして働
いて研究経験を積み、うまくいけば論文の数も増やせます。そして、そのラボ
の教授からも推薦状を書いてもらい、大学院へ出願します。そのため、前回書
いたように、大学院入学時の平均年齢は、日本のそれよりも2~3年高いこと
が多いです。カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)やカリフォルニ
ア工科大学(Caltech)などの有名大学院では、多くの大学院生がこのような
パターンです。
(3) 寄付金
私立では、裕福になった卒業生などが、後々莫大な寄付をすることがよくあり
ます。これが大学の運営資金になったり、新しい研究施設の建造に使われるこ
とがあります。
●プログラム選びのアプローチについてもの申す!
アメリカは日本と比べて非常に大きな国なので、その分非常に多くの学校や大
学院プログラムがあります。そのなかから、自分の興味のある専攻、興味のあ
る先生、興味のある研究、興味のある土地柄、興味のあるシステム・・・これ
らの欲求を全て満たすプログラムを見つけることは、必ずしも容易なことでは
ありません。また、そのプログラムが自分の実力以上の場合、プログラムの要
求するレベルまで自分を高めるためには、さらに多くの時間を必要とします。
その意味でも、留学に興味を持ち始めた瞬間から、まずはプログラム探しから
始めるべきでしょう。
ここで突然ですが、reverse genetics という言葉を聞いたことがあるでしょ
うか?DNA チップなどの post genomic screening の手法を用いて単離された
ある遺伝子を起点として、その遺伝子が生体でどんな機能を担っているのかを、
K.O./transgenic 等を用いて解析する手法です。これは、これまでの forward
genetics とは下記のように区別されます。
*Reverse genetics の場合【小→大のイメージ】:
ある遺伝子を解析 → その遺伝子が生体で担っている機能を解明
*Forward genetics の場合【大→小のイメージ】:
ある疾患を解析 → その疾患のもとになっている遺伝子を解明
つまり、大学院のプログラム探しとは、まさにこの reverse genetics と同様
のアプローチを辿るべきだと思うのです。すなわち、「大学という大きなもの
を先に決めてから、次にその中のプログラムを選ぶ」、というのではなくて、
「自分の興味のある研究をしている研究室を見つけ、次にそのラボに入るため
にはどのプログラムを受ければよいのかを調べ、最終的にはそのプログラムを
提供している大学を調べる」ということです。
post genome と同じく、現在は post information の時代です。インターネッ
トが普及したおかげで、論文がオンラインで即座に閲覧でき、また各ラボも独
自のサイトを通じて研究内容を公表できる時代になりました。ですから、ある
種のランキングのみを参考にし、はじめに大学名から探すのは非常にもったい
ないことです。日本ではあまり聞き馴れない大学でも、素晴らしい論文を生み
出し続けているラボは数多いのです。
●推薦状についてもの申す!
推薦状は、出願者が他人にどう評価されているのかを知る際に、重要な手がか
りとなります。誰に推薦状を書いてもらうのがよいかは、プログラム側が 指
定していることと思いますが、たいていの場合は、現在所属しているラボのボ
スから頂くことになります。また、ほとんどの場合、3通は必要なので、他に
2人ほど 推薦してくれる人を探します。その際、次の点を頭の片隅に留めて
準備するとよいと思います。
推薦状は、世界的に名の知られている先生からもらうのが一番良い、とよく言
われています。当然ながらそのほうが良いに決まっています。しかし、悲しい
ことに、いくら日本で名の知れた先生でも、アメリカではほとんど名前を聞か
ない場合もあります。出願書類は多くの審査員がレビューするため、ある日本
の先生のサインのみが功を奏するケースは、非常に稀だと思います。
そういった意味合いから、(逆説になるかもしれませんが)推薦状を書いて下
さる先生の知り合いがいるプログラムに出願する、というのもオプションの一
つでしょう。しかし、渡米後にしっかりとした結果を残さないと、推薦してく
れた先生の名にもかかわってくるので、意外なプレッシャーを感じるらしいで
す。日本では推薦状を書く習慣があまりないため、日本人の先生にお願いする
場合、推薦状の文面は自分で用意せざるを得ないかもしれません。そういった
アジア地域特有の背景を察知してか、最近はオンラインで推薦人が直接投稿す
ることを必須とするプログラムも増えてきました。
次回は、出願後のアクションに関して簡単に記します。乞うご期待あれ!
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自己紹介
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2005年京都大学薬学部卒後、同大学院医学研究科医科学修士課程に3ヶ月
のみ在籍、同年8月に南カリフォルニア大学神経科学科博士課程入学。約2年
半の間学位研究に従事するも、08年2月に修士号と共に休学、帰国。3月よ
り東京の米系投資銀行にてセルサイド・アナリストとして活躍中。
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編集後記
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東京はここ最近一段と冷え込んできました。日本やアメリカ等海外でご活躍さ
れている皆様はいかがお過ごしでしょうか。私は毎朝徒歩で通勤していますが、
最近の朝はとても歩き心地のいい気候となってきました。私が米国で研究をし
ていた頃は車中心の生活をしており、積極的に外を歩こうとはしておりません
でした。お忙しいとは思いますが、皆様もぜひ散歩のためのお時間を作って、
季節の変化を楽しまれてはいかがでしょうか。些細なことですが、いろいろな
発見ができて意外に良い息抜きになると思います。(YK)
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