Purdue(パデュー)大学の大学院プログラム

Post date: Jan 30, 2012 8:12:59 PM

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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』

_/ October 2010, Vol. 53, No. 23

_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/

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10月を担当させていただく今村文昭です。

先日のメルマガでは、ボストンは快適・・・

記載しましたが、一転して氷点下まで気温が

落ち込む気配がしてきました。

皆さん、季節の変わり目、風邪などにはお気

をつけて・・・

今回は、Purdue大学にいらっしゃる岩田愛子

さんに寄稿して頂いた、ご自身がいらっしゃ

る生命科学系の学際プログラムについての紹

介となります。

最後にふれますが、Purdue大学は10億円規

模のファンドを国から受けて、新たな人材育

成の環境を築いているようです。その一片を

ぜひご覧ください。

メルマガについて、ご意見などございました

ら、カガクシャ・ネットホームページ経由、

Eメールでもご連絡をお待ちしております。

今後配信して欲しい内容や、その他の要望な

どもお願いします。

http://kagakusha.net/

Kagakusha.netからの本についても、手にとら

れていない方、興味を持って頂けたら幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします。

http://kagakusha.net/alc/

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Purdue University

Interdisciplinary Life Science

Ph.D. Program

岩田愛子

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こんにちは。Purdue University Interdisciplinary

Life Science Ph.D. Program (PULSe) 所属の

岩田愛子です。

根岸英一特別教授のノーベル化学賞受賞の

ニュースで、Purdue大学について知られた方

も多いと思います。今回はPurdue大学と、私

の所属しているPULSeプログラムについて、

そして、大学のあるWest Lafayette市での生

活について紹介したいと思います。

■Purdue 大学

Purdue大学はインディアナ州にある州立の総

合大学で全生徒数は40000人、200以上の専

攻科目がある大きな大学です。

インディアナポリスから北西へ車で1時間、

シカゴから南東へ2時間半のWest Lafayette

市に位置しています。大学のまわりは、大豆

ととうもろこし畑の広がる典型的なアメリカ

中西部の田舎の風景が広がっています。

留学生の数は5000人以上で、全米公立大学の

中では二番目に多く、特に中国、インド、韓

国、南米からの留学生が多く在籍しています。

しかしながら、日本人学生は学部生、大学院

生あわせて70人ほどしかおらず、キャンパス

で日本人と出会うことはほとんどありません。

対照的に、留学生の中で一番多い中国人は理

系のほとんどの研究室で最低一人は存在して

いることが多いです。

理工系分野のレベルは高く、特に、航空宇宙

工学は有名で、多くの宇宙飛行士を輩出して

おり、初めて月面着陸を成し遂げたニール・

アームストロング船長も卒業生の一人です。

航空宇宙工学以外では、根岸英一特別教授の

おられる化学科や、透明マントの開発で有名

なナノテクノロジーの分野、農学分野での

ノーベル賞と言われるWorld food prizeを受

賞したGebisa Ejeta教授のいる農学分野、薬

学、獣医学、コンピューターサイエンスなど、

多くの理工系分野が高い評価を受けています。

■PULSe

私の所属しているPULSeプログラムは既存の

分野にとらわれず、ライフサイエンスに関わ

る様々な分野を勉強したり研究したりする機

会を学生がもてるように設立されたもので、

現在、27の学部の185人の教授陣が所属して

います。

一学年で学生はだいたい30人ほどいますが、

ここ数年は、生徒数の半分が中国人、後の半

分はアメリカ人と他の国からの留学生です。

Chemical Biology, Neuroscience, Plant

Science, Microbiology, Cancer Biologyを

はじめとして、10のトレーニンググループが

存在し、いずれかのトレーニンググループに

所属して、勉強、研究をすることになります。

入学時には、どの分野で研究をしたいのか決

めかねている学生も少なくないため、一年生

の間は7週間ずつ4つの研究室をローテーショ

ンし、一年生の春セメスターの終わりに最終

的な研究室を決めます。

すべての教授陣が新しいPh.Dの学生を募集し

ているわけではないので、入学してすぐに、

ローテーションの学生を受け入れたい研究室

のリストをもらい、そのリストの中から、自

分の興味のある教授と話をして最終的にどの

研究室でローテーションをするか決めます。

一年生の間はコースワークもあるので、なか

なか思うように研究室にいる時間はとれませ

んが、それでも7週間の間にだいたいの教授

の人柄、研究内容、研究室の雰囲気はつかめ

ます。

次にコースワークについてですが、主に一、

二年生の間に必須の科目をとります。必須科

目には生化学、生物統計、自分の所属するト

レーニンググループの必須科目、またロー

テーションの研究内容について生徒がプレゼ

ンテーションを行うような授業があります。

多くの大学院にあるようなQualify examはあ

りませんが、その代わりPreliminary examは

3年生の秋セメスターに受けなければならず、

合格基準も若干厳しいです。

しかしながら、2回チャンスはあり、また準

備をきっちりすれば、大多数の留学生は最終

的には合格していますので、それなりの勉強

は必要ですが、決して超えられないような壁

ではないと思います。

PULSeは、ライフサイエンスに関わることを

研究したいけれど、特にどの分野を研究した

いか決めかねている。いろいろな分野の研究

を知りたい。違う分野の人と交流したい。と

いうような人にはお勧めのプログラムです。

さらに詳しくPULSeについて知りたい方はPUL

Seのウェブサイト(↓)をご覧ください。

http://www.gradschool.purdue.edu/PULSe/

■West Lafayette での生活

West Lafayette市とその東に位置する

Lafayette市は人口の半分以上が大学関係者

であり、静かな大学街です。

夏は30度近くまで気温が上がり、紫外線もき

ついですが、日本ほどに湿気はないのでそれ

ほど問題ではありません。

しかしながら、冬は-20度まで下がり、雪も

積もりますので、寒さ対策、運転の面などで

気をつけることが必要です。

建物の中自体は暑いくらいに暖房がきいてい

ますので、研究室にいる分には大丈夫です。

街の雰囲気としては、留学生に優しい人が多

く、治安もよく、また物価も安いために、住

むには最適な場所です。

日本のワンルームマンションぐらいの家賃を

払えば、ここでは、リビング、ダイニング、

キッチンのあるいいアパートメントに住むこ

とができます。

大学のまわりは大豆ととうもろこし畑が延々

と広がっているために、日本の都会に住み慣

れた人にとっては、若干退屈な街に感じるか

もしれませんが、勉強、研究に集中するには

もってこいともいえます。

また、インディアナポリス、シカゴへは車で

日帰りで行けますので、平日は研究に集中し

て、週末や祝日に遠出をして楽しむというス

タイルの人が多いです。

中西部の真ん中に位置していますので他の中

西部の都市へも出かけやすいです。アジア人

留学生が多いため、アジア系の食料品店も4

つほどあり、日本のもの、アジアのものも簡

単に手に入れることができます。

またアジア系のレストランも多く、寿司はも

ちろん、その他の日本の料理、中華料理、韓

国料理、インド料理などを楽しむことができ

ます。

また、留学生主催のインターナショナルなイ

ベントも多く、各国の留学生が自分たちの国

の食べ物を料理して販売するフードバザール

や、それぞれの国の伝統的なものを展示した

り、体験したりできるグローバルフェスティ

バルなどが毎年開かれています。

最後にPurdueへのアクセスについてですが、

最寄りの空港はインディアナポリス空港

(IND)とシカゴ・オヘア空港(ORD)で、そ

れぞれPurdue大学へのシャトルバスが出てお

り、インディアナポリスからは1時間半、シ

カゴからは3時間で来ることができます。

東京-シカゴ間の直通便はありますが、イン

ディアナポリス空港を使う場合、あるいは成

田空港以外の空港を使用する場合は1回か2回

の乗り継ぎが必要です。

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自己紹介

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岩田愛子

神戸大学発達科学部卒業 (2006年)

神戸大学大学院総合人間科学科修士課程卒業(2008年)

Purdue University, Interdisciplinary Life Science, Ph.D. 課程

専門分野:植物細胞遺伝学・ゲノム科学

今村文昭

上智大学理工学部化学科卒業(2002年)

コロンビア大学医学部栄養学科修士課程卒業(2003年)

タフツ大学フリードマン栄養科学政策大学院栄養疫学博士課程卒業(2009年)

2009年よりハーバード公衆衛生大学院疫学部門にてPost-doctoral Fellow

専門分野:疫学・栄養学・栄養疫学

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編集後記

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編集後記

PurdueでPh.Dコースを始めて3年目に突入しました。

こちらへ来た当初はあまりの田舎に愕然としました

が、生活費も安いし、広いアパートに住めるし、治

安も良いので快適な生活をおくっています。

いろいろな国の友達ができるのも留学生の多い

Purdue大学の大きなメリットだと思います。私の研

究室は、アメリカ人のほかに、プエルトリコ人、

コロンビア人、韓国人、中国人、台湾人、インド人、

フランス人、そして日本人と国籍豊かなため、研究室

のパーティーではそれぞれの国の料理を持ち寄ってみ

んなで食べます。私はたいていアメリカナイズされた

巻き寿司(カリフォルニアロールのような裏まきの寿

司ロールとかです)を作って持って行きます。

Ph.D.をとるのは決して簡単ではなく、忙しかったり、

ストレスがたまることもありますが、いろいろな国の

人と交流したりするのは気分転換になるし、他の留学

生のがんばりをみるのは励みになるので、私はアメリ

カに来てよかったと思います。

Purdue大学以外にもアメリカにはたくさん良い大学は

あります。同じアメリカでも場所によって気候も、人

柄も、街の雰囲気も、生活スタイルも大きく違ってく

ると思いますので、大学院留学を目指す読者の皆さま

が、自分のスタイルにあった大学院に進まれることを

願っています。

(岩田)

米国の国家機関であるNational Institute

of Health は、人材育成のためのファンドを設け

ており、Purdue大学にも施設や教授陣の確保

などに10億円規模のファンドを提供しているよ

うです。

http://www.ncrr.nih.gov/the_american_recovery_and_reinvestment_act/construction_programs/awards/

http://www.purdue.edu/newsroom/research/2010/100412KuhnBindley.html

NIHのホームページにあるように、全米各地で

新たな研究施設・プログラムが設立されています。

岩田さんの寄稿を通じて、あらあめて米国の

科学政策の力強さを認識しました。

(今村)

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発行責任者: 杉井 重紀

編集責任者: 今村 文昭

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