3/30 【海外サイエンス・実況中継】大学院留学準備 前編

Post date: Mar 29, 2013 6:13:50 AM

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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』

_/ March 2013, Vol. 57, No. 2

_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/

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「海外の大学院博士課程で基礎医学を学ぶ」

http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03018_02

カガクシャネットスタッフ、杉村、若林が執筆しました。

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9月から留学が決定している日置壮一郎さんに留学準備記事を書いて

もらいました。今回は留学準備から英語対策まで前編の配信と

なります。それではお楽しみください。

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はじめまして、今年の9月からテキサスA&M大学に進学予定の日置壮一郎です。

私は東北大学理学部の4年生で、大気物理学を専門にしています。このたび、メル

マガ執筆という貴重な機会をいただきましたので、私と同じように留学準備を

進めている方の参考になればと思い、私がこれまで行ってきた留学準備について

ご紹介いたします。

【きっかけ:破格値のシリコンバレー】

そもそも私が留学を志したのは約3年前、大学主催の海外研修プログラムに

参加したのがきっかけでした。そのプログラムは、シリコンバレーの企業や近隣

の大学を訪れ、ベンチャービジネスの現状とアメリカの大学の様子について学ぶ

という1週間のものでした。

そのころ私は、大学で気候変動のコンピュータシミュレーションについて学び、

最終的には気候変動を踏まえた地域研究をしたいと考えていたので、コンピュータ

産業の中心地であるシリコンバレーに破格の金額(参加費総額10万円)で行けるこのプロ

グラムに、飛びついてしまいました。

運良く高校のころにTOEICを受験していたので、そのスコアで審査をパスし、ま

ったく未知の分野だったベンチャー企業のことについてガリガリ勉強して、晴れて

初海外のアメリカへ。消化しきれないくらいたくさんの刺激を受けた1週間を過ご

すことができました。この間に訪問先のスタンフォード大学でお会いした松田さん

(カガクシャ・ネットでもご活躍なさっています)に、大学院留学という選択肢を

ご紹介いただき、その後半年ほどして留学を決意したのでした。

世界規模の現象を研究し、さらにそれを地域規模に落とし込むという夢を実現す

るには、まず海外での経験を積みたいと思ったこと、そしてそれには今こそが一生

に一度のチャンスだと思ったことが決め手でした。また、アメリカの大学院の場合

は日本の大学院よりも経済支援が充実しているという点も魅力でした。

【TOEFL対策:じっくり時間をかけて】

留学すると決めたのは良かったのですが、英語力の向上は私にとって重要な課題

でした。英語は理科と並んで得意科目の一つでしたが、1週間の研修期間中、英語力

不足を思い知らされるような場面に何度も遭遇し、それまで自分がクリアしてきた

ハードルが低すぎたことを実感したからです。

そこでまず、英単語の補強からはじめました。それまで私は単語帳が大嫌いで、

使ったことがなかったのですが、この時ばかりはあきらめて、TOEFLテスト英単語

3800(旺文社)を購入しました。自宅から大学までの通学はバスで片道50分だったの

で、毎朝付属のCDを聞きながら単語帳を目で追いかけ、単語の見た目と音と意味の

3セットを覚えていくという日々を約1年間続けました。私にとってこの方法がベス

トだったのかどうかは分かりませんが、1年間の訓練で「ああなんか見たことあるな」

あるいは「どこかで聞いたことあるな」という単語を増やすことができ、その後の

勉強の足がかりになりました。

これに加えて、1年生の春休みには大学の国際交流センターで開講されたTOEFL対

策講座に参加しました。これは3週間ずっとTOEFLテストの対策問題を解きつづける

というハードな内容で、特に苦手だったライティングの能力を伸ばすことができま

した。自分が書いた英作文を見てもらい、フィードバックをもらうことは私にとっ

ては非常に効果的でした。

こうして留学を決意してから1年後の2年生の秋に受けたTOEFL iBTのスコアは92点

で、さらに翌年の3年生の秋には99点までスコアを伸ばすことができました。1回目

と2回目の間に力を入れたのは、スピーキングとリスニングで、大学内の英語自主ゼ

ミを活用して英語でのディスカッション演習を繰り返したのが効果的だったように

思います。

【研究用の英語対策:英文ノートを和訳する!?】

TOEFLの対策と同時に進めていたのが、研究に必要とされる英語運用能力の習得

です。TOEFLでは測ることのできない英語能力が、研究では必要とされると私は考

えました。その一つが、専門用語の語彙力です。

そこで、2年生の後期セメスターから、私は専門科目の講義ノートや実験ノート

をすべて英語でとるようにしました。初めのうちは新出単語の嵐で、90分の授業の

後に残ったのが走り書きの日本語のメモとよく理解できていない30本の数式だけと

いうことも少なくありませんでした。それでも、学部生レベルの英語の教科書を図

書館で探し当てて、2,3時間かけるとなんとかノートが作れたので、図書館に通っ

て地球物理兼英語の勉強をしていました。

この英語ノート作戦をしていておもしろかったのは、日本語で講義を何となく分

かったつもりになっていても、英語でノートに書こうとすると、本当に分かってい

ること以外はまったく書けないということでした。英語の勉強をするつもりで始め

た作戦でしたが、結果的には講義の理解が深まりました。講義中、常にどの部分を

理解できていて、どの部分が理解できていないのかを確認することができたからで

す。ところが、いいことづくめのようなこの作戦には、致命的な欠陥がありました。

試験が日本語の記述式で、ノート持ち込み可のときに講義ノートがまったく役に立

たないのです。そこで、おかしな話ですが、試験直前になると、日本語の教科書を

斜め読みして、正しい和訳で「まとめページ」を作っていました。

ほかにも、レポート課題を行うときに文献の指定がなければ英語論文を読むよう

にしたり、自分の関心がある分野のレビューペーパーを読んでみたりと、普段の学

術活動の中にできる限り英語を取り入れるように工夫していました。

研究の場面で必要で、TOEFLでは測りきれない能力がもう一つあります。それが

ディスカッションの能力とプレゼンテーションの能力です。これについては、前述

の英語自主ゼミへの参加が効果的でした。自主ゼミでは毎週1回、誰かにプレゼン

テーションをしてもらい、参加者全員が5人ずつグループに分かれてそのテーマに

関係するディスカッションを行います。さまざまな学部からの学生が集まるので、

本質的な部分を簡単な英語で述べる必要があります。参加して1年間は議論を追い

かけるので精一杯でしたが、次第に自分の意見を述べられるようになり、最近は

伝え方にも工夫をできるようになってきました。活動に参加するのは日本人の学生

が多いので英語表現のレベルは下がりますが、論理的に話す訓練として、今でも学

ぶことが多くあります。

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執筆者自己紹介

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日置壮一郎

2013 東北大学理学部宇宙地球物理学科 卒業

2013 Texas A&M University, department of atmospheric sciences 入学(予定)

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発行責任者: 石井 洋平

編集責任者: 石井 洋平

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