5/7【海外サイエンス・実況中継】Center of Advanced European Studies and Research (Germany)

Post date: Jan 30, 2012 8:19:58 PM

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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』

_/ May 2011,

_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/

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カガクシャネットのメンバーはアメリカへの日本人留学生が大半を占めて

いるため、アメリカ以外の国々への留学についての記事が多くありません

でした。成瀬さんの今回の記事がヨーロッパ留学を志す読者の方々にとっ

ていいヒントになれば幸いです。

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カガクシャ・ネット、メルマガ購読者の皆さん、こんにちは。私は慶應義

塾大学大学院理工学研究科の博士課程を2010年度で修了した成瀬正啓と申

します。私は博士課程の最後の数ヶ月をドイツの

Center of Advanced European Studies and Research

(Caesar: http://www.caesar.de/) で留学生としてすごしました。今回の

メルマガでは、その体験記を書かせていただきます。

・「組織的な若手研究者等海外派遣プログラム」について

留学するにあたり、私は独立行政法人日本学術振興会(以下、学振)の

「組織的な若手研究者等海外派遣プログラム」を利用しました。このプ

ログラムは、所属大学の研究機関がプログラムに採択されており、かつ

自らが学振の特別研究員や大学教員であれば、利用することができます。

このプログラムの留学生は一日一万2千円の生活費を受けることができる

ため、お陰で私は余裕ある留学生活を送ることができたのですが、残念な

がら平成21年度以降採択が中止されている状態です。また震災の混乱が治

まったころに復活するといいのですが・・・

・Caesarについて

私が留学したCenter of Advanced European Study and Research (Caesar)

は、ドイツのBonn市の郊外に位置する、1995年に設立された私立の研究所

です。Caesar はMax Plank研究所とのつながりが深く、その証拠として、

たとえば運営委員が共通であったり、研究者の交流が密接であったりします。

内部は4部門から構成されており、

Molecular Sensory Systems、Chemical Biology of Neurodegenerative Disease

の2部門は神経科学の研究を、

Electron microscopy and analytics、Micro Systems Technologyの2部門

は電子顕微鏡と微小機械の研究を行っています。前者の部門の研究に必要

な技術を後者の部門が開発するケースもしばしばあり、セミナー等で部門間

の研究紹介も盛んに行っていました。また、内部には食堂や売店、図書館、

講義室もあり、スタッフも100名強おりましたので、スケールとしては大学の

学部一つと同じ程度でしょうか。

私の滞在したMolecular Sensory Systems部門のリーダーのProf. KauppはCaesar

の所長も兼ねており、またフンボルト奨学金で日本へ留学経験もあったため、

快く滞在を引き受けて頂く事ができました。Prof. Kaupp は、精子が卵の出す

化学物質によって誘引される現象(走化性現象といいます)の研究の権威とし

て知られています。(私が行く前までのプロジェクトが先日Natureに掲載されました (http://www.nature.com/nature/journal/v471/n7338/full/nature09769.html)。

研究者達は、皆かなり規則的な生活をしており、だいたいのメンバーが8~18時

で仕事をしていました。メンバーの特徴として、(これは米国でも同様だと思い

ますが、)手を動かす前に議論をする、という仕事スタイルがあげられます。先

に論文の構成を考えつつ実験を組み立てるというやり方は非常にbusiness like

で違和感を覚えますが、綿密な立案が実験を効率化しているようにも思われます。

・ドイツにおける生活について

実は、私は大学・大学院生活において、一人暮らしというものをしたことがなか

ったので、ドイツ留学によって初の一人暮らしを体験することになりました。住

まいは、Studentenwerkという、いわば日本の生協のような機関が運営する寮で、

ドイツへの留学生はだいたいこの寮に入ることになります。Studentenwerkの本部

が各都市にあって、そこで契約と家賃の支払いをするのですが、家のインフラにつ

いては別に管理人Hausmeisterがおり、暖房の不備等で何かあった場合は管理人の

ところへ行くことになります。

食事についてですが、Bonnの街にはデパートもスーパーもあり、そして休日には広

場に市場も出ており、食糧はかなり自由に手に入りました。ドイツの様々な街を訪

れましたが、どの街もBonnと同様に買い物はできると思います、しかし大抵の店

は夜20時には閉じますので、実験が長くかかる日のために買い溜めをしておかない

とツライかもしれません。GaleriaやKarstadtといった大手のデパートでは日本食の

醤油や素麺が売られています。ただ、大抵の寿司屋は日本人ではない方が経営して

いて、あまり美味しくない場合が多いので、気をつけて下さい。(Bonnの寿司屋で

食事をしたら、見事に翌日お腹を壊しました。)

最後になりますが、米国と比較して欧州に行ってよかったと思ったのは、文化と歴

史が存在することです。Bonn市内も、KoelnやDuesseldorf、Aachenなど1時間以内

で行ける都市でも、音楽や美術館、博物館が数多くあり、素晴らしい休日を過ごす

ことができました。また、ライフサイエンスに限らず、多くの理学、工学分野にお

いて、欧州は何世紀も前から常に世界最先端を走ってきました。ドイツやフランス

等の国は英語圏でないため、言語の習得に多少時間がかかりますが、そんな語学の

バリヤーをものとせず、積極的に欧州留学にチャレンジしてくれる元気な学生が増

えてくれればと思っています。

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