【海外サイエンス・実況中継】留学本では教えてくれない海外大学院のホント・総集編(後)
Post date: Jan 30, 2012 7:39:41 PM
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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』
_/ May 2009, Vol. 47, No. 1, Part 2
_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/
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先週に引き続き「留学本では教えてくれない海外大学院のホント ~実際の体験から~」
のダイジェスト版(後編)をお送りします。もう一度読んでみると、新たな発見がある
かもしれませんし、忙しくて見逃した回があるかもしれません。興味を持たれたエッセ
イは、リンク先の過去ログから閲覧可能(無料ユーザー登録が必要です)ですので、ど
うぞお楽しみ下さい!
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留学本では教えてくれない海外大学院のホント ~実際の体験から~
総集編(後)
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大学院留学を成功させるための指導教官選び(前)
山本智徳(ジョンズ・ホプキンス大学)
『私個人の考えとしては、自分の興味のある研究をしているのが一流校や有名校ではな
い限り、わざわざこだわる必要はないと思います。・・・同じ学校であったしても、指
導教官によって学生の得られる満足度は大きく変わってくるでしょう。そのため、充実
した大学院生活を送るためには、自分に合った指導教官を選ぶことが最重要だと、私は
思います。』
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=104
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大学院留学を成功させるための指導教官選び(後)
山本智徳(ジョンズ・ホプキンス大学)
『指導教官を選ぶ際には、自分にはどんなタイプのアドバイザーが合っているのか、十
分に吟味する必要があります。・・・大学院でしっかり基礎を固めたい場合、マネー
ジャータイプよりは研究者タイプの指導教官が合っているでしょう。・・・一方、マネー
ジャータイプの指導教官を持つと、ネットワークが多いに活用できます。特にアカデミ
アを希望する場合、将来の就職の際には、そのコネは大きな武器となります。・・・や
はり指導教官とは長い付き合いになるので、研究業績のみではなく、その教授の性格や
上記で挙げたタイプなども加味する必要があると思います。』
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=106
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出願プロセスを始める前に知っておこう!~その1~
小池幸弘(南カリフォルニア大修了、現米投資銀行)
『文化が異なれば当然そのシステムも異なるわけで、留学とはそういった文化的な面も
理解していないと当然痛い目に遭います。・・・日本とアメリカでは似通っているとこ
ろもあれば、異なっている部分もあるわけですね。
学生として留学する際、やはり最も気になるのは、金銭的なことだと思います。日本の
場合、博士前期課程(修士課程)で得られる唯一の公的な奨学金は日本育英会のみで、
しかも返済が必要という制度です。・・・つまり、日本の場合、修士→博士の際に一種
の人生の決断を迫られるわけで、いくら研究に秀でている人でも、金銭面での個人的な
折り合いがつかず、修士卒後は就職していく人が少なくありません。』
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=108
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出願プロセスを始める前に知っておこう!~その2~
小池幸弘(南カリフォルニア大修了、現米投資銀行)
『アメリカの大学院では、博士課程の学生ほぼ全員に対して、授業料免除+生活費支が
提供されている・・・。
大学院のプログラム探しとは・・・すなわち、「大学という大きなものを先に決めてか
ら、次にその中のプログラムを選ぶ」、というのではなくて、「自分の興味のある研究
をしている研究室を見つけ、次にそのラボに入るためにはどのプログラムを受ければよ
いのかを調べ、最終的にはそのプログラムを提供している大学を調べる」ということで
す。 』
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=109
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出願プロセスを始める前に知っておこう!~その3~
小池幸弘(南カリフォルニア大修了、現米投資銀行)
『出願後に何もせずにただ結果を待っているだけでは、せっかく苦労して提出した出願
書類に磨きをかけることができません。・・・財政援助をもらうためにも、最後の一押
しは大切だと思います。
最後の一手といっても、特にこれといった必殺技があるわけではないのですが、私はこ
んなことをしてみました。
・研究内容に興味のある先生方に、出願した旨のメールを送る。
・オンラインで出願作業を進める場合、Additional Informationを頻繁にアッ
プデートする。更新できる範囲のものは常に最新の状態にしました。たとえば、
学会の出席実績、研究室内セミナーでの発表実績など。 』
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=110
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実際の体験から思うこといろいろ
HNミユキ(ドイツ)
『わがプログラムは学生の面倒見がよい、と言われていました。でも、それをアテにし
て入ってくると、足元を救われてしまいます。・・・だからといって、助けを求めてす
がってくる人を足蹴りにはしないんですけどね。・・・なんだか面倒見がいいんだか悪
いんだか、プログラムに助けられたんだか落とし穴に落とされたんだか、全くわからな
い。ただ、しまった!こまった!と思ったときに行動に移していなかったら、そのまま
埋もれて朽ち果てていったのは、間違いないです。・・・前にも後ろにも進めなくなっ
たとき、じっとしているといずれ体力が切れたときにはがれ落ちるのを待つのみ、誰も
助けてくれないけど、何とかしようと模索する人には解決策が用意されている、アメリ
カの大学院。』
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=114
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大学院プログラムの比較
出雲麻里子(バンダービルト大修了、現テキサス大学サウスウェスタン校)
『「大学院」といっても、アメリカでは学部により、もしくはプログラムにより、中身
は様々です。そして、ほとんどの場合、たとえ同じ大学の中であっても、それぞれのプ
ログラムは各々が独立しています。従って、入学基準、入学人数から、コースワークや
プログラムの中身、卒業の基準など、全てが独自のプログラムによって決定され、それ
ゆえ内容も変わってきます。
特に生命科学系の大学院プログラムで大きく違うのが、この2つです。Arts &Science
(以下、A&S)というのは、いわゆる学部教育の行われるところです。・・・一方、
Medical School は「医学部」。大学院から上の組織で成り立っており、そのため、医
学系の研究に専門科されています。
これが大学院プログラムにどう影響してくるか。まず一つは、「大学院生の雇われ方」
にあります。極端だった例を持ち出しますと、ある大学の A&S 系の大学院では、大学
院生は TA (teaching assistant) として雇われ、卒業まで毎学期毎学期 TA が課され
ていました。・・・一方、Medical School 系の大学院では、卒業までに2回だけ TA
を課す所が多いです。・・・では、この場合の大学院生の給料はどうやって賄われるの
かというと、大抵、RA (research assistant) です。・・・影響の表れ方のもう一つは、
大学院の研究内容や、コースワークの内容などです。これは、主に、どういった研究者
が揃っているかにもよるのですが、各プログラムの色がズバリ出ているので、大学院紹
介のサイトで一目瞭然でしょう。』
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=115
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財源と大学院プログラムの関係
出雲麻里子(バンダービルト大修了、現テキサス大学サウスウェスタン校)
『何をするにもお金がかかるというのは、大学院でも同じことです。一方で、大学院と
いうのは、将来の研究者を育てる、一番大事で且つ、一番力を入れなければならないと
ころです。では、どうやってその財源を確保しているのでしょう。このことについて、
特に、留学生という立場から見てみたいと思います。
一つには NIH があります。各学部長、もしくは各プログラム長の仕事の一つに、大学
院生のための教育期間用資金(training grant)を取ってくる、というのがあります。
・・・ただし、NIH は国の機関ですので、留学生への許容がぐっと減ります。私がその
昔聞いたのは、「2%までなら支援可能」。・・・もちろん、NIH 以外にも、資金源は
あります。A&S 系の大学院に多いのですが、大学自身の財源です。・・・全く別の財源
のある大学院もあります。Endowment(寄付金)と呼ばれているものです。・・・しか
し、大学院によっては、こういったことに関わらず、「留学生への入学オファーを出す
のは、数年に一度のみ」ときっぱり言うところがあります。』
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=116
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大学院プログラムを選ぶ際に考慮すべき点
出雲麻里子(バンダービルト大修了、現テキサス大学サウスウェスタン校)
『プログラムの中身は、どこも似たりよったりです。杉井さんが御自身のウェブサイト
(http://blog.shigeki.org/)で大学院のプロセスについて紹介していらっしゃいます
が、あれが骨格だと思ってくだされば、あまり間違いはないです(コースワーク、
Qualifier、研究、卒業のための博士論文)。それ以外の部分で、大学院によっては、
多少違うところがあるので、それを付け足しておきます。
一つは、コースワークの内容です。教授陣が豊富であればあるほど、また、いろんな分
野にまたがっていればいるほど、コースワークの内容は充実してきます。・・・二つ目
は、卒業までにかかる年数です。・・・三つ目は、卒業率(Ph.D. 獲得率)です。
また、最初の数年にこなす規定のプログラムを除いては、ラボでの研究は、どこも同じ
です。ほとんどの場合、論文は必須で、公表する論文は、その分野に貢献するものを求
められます。大学院生の場合、新しい技術や知識を学びながら研究していくので、相当
の努力を要することになります。でも、卒業してみると、ここが一番大事なところなの
で、時間とエネルギーを一番割かなければなりません。結局、卒業して残るのは、研究
の成果である論文と、研究中に得たもの(技術や知識、研究のトレーニングなど)、そ
して、なによりも、大学院や研究を通じた人とのつながりだと思いますので...。』
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=117
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編集後記
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日本では、新型インフルエンザが常にトップニュースで流れています。感染を防ぐ対策
を訴えることは重要ですが、マスコミによって必要以上に煽り立てられているため、か
なり社会活動への影響が大きくなっています。こういうときにこそ、日本政府にリーダー
シップを発揮して欲しいところですが、いまのところ残念ながら、その影響を食い止め
ているとは言えないでしょう。むしろ、混乱を増長させていると私は感じています。今
回の一連の「事件」で、トップが下す判断の重要性と、一人一人が科学リテラシーを高
め情報を正しく解釈することの大切さを再認識しています。早く正常な状態に戻って欲
しいところです。(山本)
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