4/23【海外サイエンス・実況中継】Brown University コンピュータサイエンス・プログラム‏

Post date: Jan 30, 2012 8:19:22 PM

今週はブラウン大学の木村さんから、コンピューターサイエンス学科を紹介させていただきます。卒後の進路の話題もあり、とても参考になります。

それでは、お楽しみください。

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Brown University Computer Science学科

木村英朗

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はじめまして、Brown University博士課程4年目の木村英朗と申します。先日同じくBrown Universityの石井さんからEngineering DepartmentとBrown全体について既に紹介があったので、今回は私が所属しているComputer Science学科についてカリキュラムと卒業後の進路の両面から詳しく紹介したいと思います。

-- カリキュラム学科全体の規模としては小さめで、博士課程の学生が合計70人強ほどです。しかし、小さいながらTheoryからSystemsまで色々な分野で健闘していて大体の学科別大学院ランキングでは10位から20位ぐらいに位置されるようです。

Andy van Dam (Graphics), Maurice Herlihy (Parallel Computing), Stan Zdonik (Databases)など各分野で知らぬ人のない有名教授も多くいます。産業界との繋がりも非常に強いです(これについては別項で後ほど)。

Graduate ProgramsはMastersとPhDからなり、Admissionは基本的に別々です。ただし、Mastersから始めてPhD課程に移籍する人も年数人います。私もその口でした。Mastersで良い成績を維持して研究を頑張っていればPhDへの再Admissionは受かりやすいようです。

直接PhDに応募するよりははるかに確実なのですが、移籍までのMastersの学費はかなり高くつきます。

やはり直接PhDに入れるならそれにこした事は無いでしょう。 Mastersの場合は卒業までに6個の授業を取り、Masters Projectと呼ばれる研究作業をする必要があります。教授に依りますが大体1-2 Semesterで終わります。ここで成果が出た人はその内容を国際会議に改めて投稿したり、PhDに移籍して研究を続行することがあります。卒業までに要する時間は1年半から2年の人が多いです。急げば1年で卒業できます。

PhDの場合は卒業までに8個の授業、2個のOutside Minorをこなす必要があり、かつ幅広い分野の授業を取らなければならないよう定められています。また、一年目の終わりごろにProgramming Comps というプログラミング力を確かめる試験があります。課題と1週間の時間を与えられて作り上げるわけですが、留学してまでComputer Scienceを学びたいと思っている人なら余裕の内容でしょう。

次にResearch Compsという研究能力を確かめる試験があります。2年目の中頃までに小規模な研究のProposalとDefenseを3人のCommitteeの前で行います。要はThesis Proposal/Defenseの

予行練習なので、新奇性のある研究をする必要はありません。これが終われば晴れてPhD Candidate扱いになります。後は新奇性のある研究をして博士論文を書き上げて卒業することを目指します。

PhDの場合卒業年数は大体5年から6年になります。ただし最後の半年ぐらいは就職活動が主で研究は大体完了していることが多いです。

-- 卒業後の進路

さて、米国にComputer Scienceを学びに来ている留学生には特に気になるのがその後の進路でしょう。GoogleやMicrosoft, Facebookで働きたい、自分でシリコンバレーで新しい会社を立ち上げたい、といった人達には在学中に培った人脈が非常に役立ちます。

前述しましたが、この学科の教授陣はその研究内容のためにMicrosoft, Intel, IBMや多くの有名なベンチャー企業と非常に強い人脈を持っています。インターン程度であれば応募締め切り後でも電話一本ですべての手続きをすっ飛ばして学生を送り込む、など日常茶飯です。

卒業後の就職でも教授陣からの推薦状は決定的に重要な役割を果たします。 さらに、この学科では学生と企業のつながりを促進するためIndustrial Partners Program (IPP)という催しを頻繁に行っています。これは上記のような有名企業が就職希望の学生を求めて毎週のように学科内で説明会を開くというもので、ここで意中の会社にコンタクトしてオファーをもらうか、インターン(勿論有給です)から始めて本採用までいく、という人が非常に多くいます。

また、ここでベンチャー企業を立ち上げたり技術者として参画していく人も多くいます。特に私の所属しているData Management GroupではMIT, Brandeis Universityと共同でVertica, Streambase, VoltDBなどのベンチャー企業を次々と立ち上げていて、学生もそれに参加してそのまま就職したりストックオプションを得たりしています。最近では某大企業が上記の会社のうちの一つを買収したために目の前で億万長者が誕生してびっくりしました。

-- 最後にこの学科は小規模ですが、それだけに各分野の有名教授から直接様々なことを学べる刺激的な環境です。そういった人材はどこでも歓迎されるので、この学科の卒業生はAcademia志望でもIndustry志望でも非常に就職に恵まれています。興味をもたれた方は是非学科のウェブサイト(http://cs.brown.edu/)をご覧ください。

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編集者:自己紹介

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杉村 竜一

大阪大学医学部医学科卒(2008)。以降、米国カンザスシティのストワーズ医学研究所にてPhDプログラムに所属。造血幹細胞の研究に従事する。

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編集後記

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今週末から、1週間ほど日本に行きます。3年ぶりに、たこ焼きを食べて来ます。はい、生まれも育ちも大阪です。

(杉村)

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