【海外サイエンス・実況中継】特別号: 大学院留学:なぜ日本でなくアメリカの大学院を選んだか。

Post date: Jan 09, 2012 5:5:52 PM

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| 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』

| January 2007 Vol 1 No 2

| カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/

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今週は特別号として、なぜ日本でなくアメリカで大学院留学する道を選んだ

のかを、前回の執筆者が語ります。日本は世界の中でも一流の科学技術立国

とされているはず。優れた科学者・研究者になるためには、日本の大学院に

行って研究することも立派な選択肢のひとつでしょう。日本では一般に

「研究留学」と言うと、日本で博士号を取得したあとに、アメリカやヨーロッ

パ等外国の大学・研究機関で、さらに数年間研究のトレーニングを受けること

(ポストドクターまたはポスドクといいます)を意味しています。すなわち

日本の大学卒業 → 日本の大学院(修士課程・博士課程)→ 海外でポス

ドク → 日本または海外で一人前の研究者になる

といった進路ステップの3番目に当たります。

これに対して、我々執筆者の多くは

日本の大学卒業 → 海外の大学院(博士課程)→ 海外で引き続きポスドク

→ 日本または海外で一人前の研究者になる

の2番目のステップ以後から、海外に行って教育を受ける、という選択肢を

選びました。このシリーズでは、どういう理由または経緯で、そういった

進路を目指すことになったのか、ひとりずつ紹介していきます。

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まわりに同じ志を持つ人たちがいる環境の中で過ごす。

杉井 重紀

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私がアメリカの大学院を選んだきっかけは、いたって単純なものでした。

恥ずかしながら、アメリカで留学することにどれほどの利点があるか、留学

を目指した当時は分かりませんでした。

留学を目指す上で一番モチベーションとなっていたのは、高校の時に「将来、

絶対に留学する」とまわりに公言していたことです。このとき正直言って、

具体的な計画はまだありませんでした。私が小学校から高校まで通っていた

塾は、そこらの学習塾とは違って、小中高一貫教育で途中から新しい生徒は

入れない、勉強以外の教育やイベントも満載という寺子屋的なユニークな塾

だったのですが、そこの生涯の恩師、細井先生が留学することを奨励して

おり、事実そこの卒業生に留学している人が多かったのでした。

その上、高校時代の私はアメリカに憧れていました。聞く音楽は洋楽のみで

好きなラジオ番組は「アメリカントップ40」、好きな食べ物は「ステーキ」

、映画はもちろん「ハリウッド映画」しか見ず、好んで見るテレビ番組は

「アーノルド坊やは人気者」でした。おそらく一生のうちで一番アメリカ

ナイズされていた時期でしょう。しかし、私はこのとき具体的にどこで、

どの分野で、どんなことをするかはっきりとしたビジョンはまったくありま

せんでした。

そうこうしているうちに、大学に行って、まったく勉強をせずバイトに明け

暮れる毎日を送り、悪友たちにも恵まれ(?)、留学する決意などすっかり

消え果てていました。

しかし、そういう私の方向性を変えたのは、やはりかの細井塾でした。毎年、

新年に塾の卒業生たちが細井先生に挨拶しに集まるのですが、私が大学

3回生の新年のこと。いつも通り集まった時に、当時のクラスメートたちと

ふと大学卒業後の進路の話になりました。聞いているとみな、一年以上先で

あるのにしたいことが決まっていて感心していました。ちょうどバブルの

時期が過ぎて就職難が明るみになりはじめた時期です。

そんな時に「おまえはどうするんだ?」と聞かれました。このとき正直、

先のことなどはっきりと考えていなかったのですが、そう言ったら恥だと

思い、「まあそのまま大学院の修士過程にでも行って、それから就職探す」

と答えました。私の所属していた農芸化学学科はほぼ9割の大学生が大学院

修士過程に進みます。だから私もそうすると言うのが一番、立派な選択だろ

うと考えたのです。ところが、ここで私にとって衝撃の言葉を受けます。

「あれ、おまえ、絶対留学するって言ってたんじゃない?」。もちろん

言った本人はささいな気持ちで発した言葉でしょうが、私にとって進路を

大きく変えるビッグバン級の一言でした。それからというもの、将来の指針

を失いかけていた私は、「留学」という言葉を常に意識するようになりま

した。大学卒業するし、みなはほとんど大学院進むんだから、ここは同じ

分野の大学院で留学を目指そう、と考えたのです。

さて、大学院留学しようと決意したのはいいが、問題はいつ、どこで、何を、

なぜ、どうやって(まさに5W1H)留学するかでした。本当に0からの出発。

この時点では、アメリカへのこだわりはすっかりなくなっていましたから、

場所はアメリカとも決めていませんでした。

ここで役に立ったのは、大学時代を過ごした京都にアメリカンセンターや

イギリスのブリティッシュ会館があって、そこで留学のための情報が手に

入ったことです。それから当時、大学の研究室のボスであった阪井元助教授

(現教授)や、元教授の加藤先生に、外国の研究はどこがすすんでいるか、

またアメリカの大学・研究機関の情報はインターネットで容易に手に入る

ことも教えて下さりました。多くの大学で、願書もネット上で請求できて

送ってくれることも知りました。

しかし留学を目指して準備し始めたのが少し遅かったのもあり、大学4年時

ではどこの大学院にも合格できませんでした。結局、大学卒業後、入試の

情報が多く手に入るし英語力をつけるのにも良いと思い、アメリカに直接

乗り込みました。そしてカリフォルニア大学バークレー校で一年間聴講生

としての身分で、大学院出願の準備をしました。1年余分にかかったことに

なりますが、今でも決して無駄な時間を過ごしたとは思いません。

このように、私が留学しようと思ったのは、きわめて個人的な理由からで

あり、「英語で研究発表をしたい!」とか、「生活費をもらいながら在学

できる」とか、「世界の一流の研究者と肩を並べて研究したい」などという、

高尚な理由が主ではありません。結果的に、留学できてはじめてこれらの

利点に気がついて、自分は何とツイていたのだろうと思います。

このように、自分のおかれている環境というのは、想像以上に皆さんの将来

の行く末を決めているものです。「カガクシャ・ネットワーク」を立ち上げ

ようと思ったのも、そういった仲間をまわりに多く集めて、それぞれの情報

や経験を共有していけば、相乗効果によって、一人では限られた世界を

どんどん広げていくことができるからです。そうやってひとりひとりが、

進路の選択肢の幅を広げるのみならず、研究でも新たなフィールドを切り

開くきっかけを作っていく、というのがこのネットワークの一つの目標です。

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自己紹介

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杉井 重紀

1996年京都大学農芸化学科卒業。卒業後、UCバークレーで聴講生

(浪人生活?)を経て、ダートマス大学分子細胞生物学プログラム博士課程

に在籍。2003年に博士号取得後、カリフォルニア州ラホヤにあるソーク

研究所にポスドク研究員として勤務中。

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編集後記

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私は日本を出たあと、バークレー(北カリフォルニア)→ニューハンプシャー

州(東海岸)→サンディエゴ(南カリフォルニア)、と移動してきました。

アメリカの中でもどこの地域のどの都市に留学するかによって、ずいぶん

生活も変わってきますね。

一般的に、東海岸はアメリカの中では、面接やセレモニーなどのオフィシャル

な場で正装する機会が割と多く、 時間にきっちりしていて、街はヨーロッパ

的な雰囲気もただよいます。いかにも「外国に留学している」という気分を

味わえることでしょう。政治と経済の中心が位置するのも魅力ですね。

これに対してカリフォルニアなどの西海岸は、ざっくばらんで、オフィシャル

な場でもTシャツと短パンってことも珍しくありません。このような雰囲気

から、既成概念を打ち砕く商品やアイデアが生まれてきたのかもしれません。

またアジア系の店やレストランが多く、日本のビジネスも多いため、日本の

食べ物やサービスには事欠きません。「留学はしたいけど、日本の文化や食

も手放せない」という人たちには絶好の場所だと思います。

ちなみに両海岸の中間・・・中西部や南部は、私は生活したことがないので

何とも断定できませんが、まわりに聞いた話では、「古き良きアメリカ文化

と広大な土地」を感じるのには良いところ、と言ったところでしょうか。

きっと、これらの地域に住んでいる方々から、今後フォローがあることかと

思います..。

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