【海外サイエンス・実況中継】留学本では教えてくれない海外大学院のホント・総集編(前)
Post date: Jan 30, 2012 7:38:55 PM
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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』
_/ May 2009, Vol. 47, No. 1, Part 1
_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/
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2008年4月より始まった第二弾メルマガも、もう間もなく連載終了を迎えます。
今回は、これまでの総集編として、「留学本では教えてくれない海外大学院の
ホント ~実際の体験から~」のダイジェスト版(前編)をお送りします。も
う一度読んでみると、新たな発見があるかもしれませんし、忙しくて見逃した
回があるかもしれません。興味を持たれたエッセイは、リンク先の過去ログか
ら閲覧可能(無料ユーザー登録が必要です)ですので、どうぞお楽しみ下さい。
なお、出雲さんのエッセイの後編は次回以降で配信予定ですので、乞うご期待
下さい!
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留学本では教えてくれない海外大学院のホント ~実際の体験から~
総集編(前)
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駆け出し大学院生にとってのベストな研究室とは
杉井 重紀(ダートマス大修了、現ソーク研究所)
『必ずしも「大御所のいる有名な研究室に所属する」ことが、「大学院留学を成功させ
る」とは限らないのです。・・・研究経験がまだ少ない大学院生にとってのベストな研
究室は、「年齢差が少なくて自分たちの気持ちがよく分かる比較的若いプロフェッサー
が主宰で、ばりばり精力的に研究活動をしているラボ」、もしくは「規模が大きくなく、
長い間よい研究を行って来たと定評があり、院生への教育に熱心な教授のラボ」だと、
私は信じています。』
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=76
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人生の荒波にも対応できるアメリカの大学院(前)
出雲麻里子(バンダービルト大修了、現テキサス大学サウスウェスタン校)
『大学院2年目の終わりのこと。まさか、、、という事態が起きました。・・・とっさ
に考えたのは、長期の帰国です。できれば、休学して。しかし、それは可能なのかどう
か...。
日本で在学した大学でも、カウンセリングのシステムはあるにはあったのですが、アメ
リカはもう少しカジュアルで、且つ徹底していて、プロの医者も何人も用意していま
す。・・・確かに、このようなメンタル面の健康と仕事の効率には、大きな関係があり
ます。そのことを予め考えて手配しているアメリカの大学は、さすがだなと思いました。
こういったプロの手は、どんどん利用するべきでしょう。』
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=79
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人生の荒波にも対応できるアメリカの大学院(後)
出雲麻里子(バンダービルト大修了、現テキサス大学サウスウェスタン校)
『全てを通じて学んだのは、一人の力ではどうにもならない事態になったとき、一人で
解決しようとは思わないこと、です。できるだけ周囲の人と話をすると、理解や協力が
得られます。それが例えささいなことであっても、気分が楽になったり、実際の大学院
生活に関しても、随分と違うようになります。
この、周囲の人々の親切さというか、寛容さは、驚くほどにストレートで、それを受け
ることができた私は、感謝の気持ちで一杯です。こうして受けた恩や善意は、当人だけ
でなく、次の人に還元していくことが大事かな、と思っています。』
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=80
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奨学金が奨学金を呼ぶ
杉尾明子(カンザス州立大修了、現英ジョンイネスセンター)
『奨学金等々の選考委員は奨学金を「確か」な人に与えたいのではないかと思います。
その「確かさ」は、大学・大学院での成績などのほかに、それまでに得たいろいろな賞
や奨学金によって裏付けられるのでしょう。私は本当に平凡な学生でしたが、履歴書を
うまく飾り立て、運良くいろいろな奨学金を獲得できたのだと思っています。』
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=85
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困ったときには相談してみよう
佐藤修一(サウス・カロライナ大)
『博士課程は長いし、年齢的にも自分のこと、家族のことでいろいろなことが起こりう
るかと思います。ましてや異国でのこと、なかなか思うように対処ができるとも限らず、
留学を断念せざるを得ないと思うこともあるでしょう。その時は、是非上司などに相談
してみることを、私の経験からお奨めします。アメリカの先生は、その点かなり柔軟性
があるように思いますし、状況を理解もしてくれます。』
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=87
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学生代表として携わったカリキュラム構成委員会(前)
今村文昭(タフツ大学修了、現ハーバード大)
『私の籍を置いている栄養学の大学院大学では、外部の研究者に講義をお願いしたり、
栄養政策や栄養生化学などの背景や興味の内容も異なる学生が混ざって講義を受けるこ
とが多いため、講義の質や学生の満足度を保つのが難しい教育機関と思います。学生に
よる、講義の評価や客観的な講義の評価は、必須といえるでしょう。そうした評価シス
テムをを知ることができて、貴重な経験を得ることができたと思っています。』
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=88
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学生代表として携わったカリキュラム構成委員会(後)
今村文昭(タフツ大学修了、現ハーバード大)
『私の所属する大学院では、学生と教授陣が協力し合い、カリキュラムの質の向上を図っ
ています。教育と研究が効率良くリンクして機能するよう、また無意味な講義が実施さ
れ、学生への負担が無いよう、委員会が機能しています。私にとって、そうした委員会
での意見を聴き、意見をすることができたことは、とても価値のあることでした。・・・
カリキュラム構成のための委員会だけではなく、入学審査の委員会もあり、そこにも学
生の枠が設けられています。こうしたシステムを設けている大学院は、私の所属してい
るところだけではなく、北米の大学院では一般的なことと思います。そうした委員に所
属するのは、留学生にとっては少し憚られることかもしれませんが、積極的に踏み込ん
でみるに値する機会かと思います。教育機関の背景を知る良い機会ですし、教授の違っ
た一面を見ることもできますし、有意義であることに間違いはありません。もしも、学
生の皆さんでそうした機会がご自身の横をすり抜けそうになったら、ぜひぐいぐいっと
手繰り寄せてくださいね。』
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=90
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工学系の大学院事情
青木敏洋(アリゾナ州立大修了、現JOEL USA, Inc.勤務)
『私のいた大学の工学系学科では、ローテーションは存在しませんでした。他大学の院
生たちにも聞きましたが、ローテーションをやっている工学系学科は少数派(今のとこ
ろ聞いたことがない)であるという印象を受けました。
TA/RA に関して驚いたことは、実際に渡米して大学に来てみると、RA を募集している
教授が何人もいたことです。院生を募集していたのは、新入生の合否・財政援助を決め
た後に研究費がついた先生方、または直接会ってインタビューができない院生には RA
をオファーしない、という先生方たちでした。財政援助なしで合格になっていた院生の
何人かは、レジュメを持参して教授と面接をし、無事に RA のポジションを得ていまし
た。留学本では、財政援助を入学時にもらえない場合は1年間待たないといけない、あ
るいは1学期待たなければならない、という情報があったので、これには非常に驚きま
した。』
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=96
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アメリカで「成功」する学生たちに共通するもの(前)
布施紳一郎(ダートマス大修了、現米コンサルティング会社勤務)
『私のプログラムに限っては、アメリカ人だから有利であると感じたことは全くありま
せん。逆に、プログラムの1/3程度しか占めないにも関わらず、目立つ学生の約半数
は留学生です。むしろ、留学生は健闘していると言えるでしょう。・・・やはり過去に
研究暦がある人の方が、多少有利であることは確かです。ただ、大学から直接進学して
きた学生の中でも、非常に良い仕事をする人がいます。研究に経験は重要ですが、大学
院博士課程の範囲で成功を収めるのには、必須条件ではないように感じます。
私が所属していた大学院に限らず、必ずと言っていいほど優秀な学生やポスドク、そし
て PI(Principle investigator: 独立した研究者)に共通するのは、同時に平行して
様々な仕事をこなす能力を有していることです。英語では、よく Multi-tasking(マル
チ・タスキング)と呼びます。・・・一般的に言って、優秀な学生は時間を管理する能
力に非常に長けてる、という印象を受けます。優秀な PI も、グラントを書きながら研
究室の仕事を管理し、講演をこなし、教壇に立つなど、複数の作業を同時にこなしてい
る人たちばかりです。実は企業就職する際に、企業側が学生に求める能力の一つとして、
マルチ・タスクする能力がよく挙がり、インタビューにおいても、これに関する質問も
よく出てきます。大学院に限らず、またサイエンスに限らず、マルチ・タスキングはア
メリカ社会で成功する為には必要な能力であると思います。』
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=97
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アメリカで「成功」する学生たちに共通するもの(後)
布施紳一郎(ダートマス大修了、現米コンサルティング会社勤務)
『自主性は、研究者にとっては必須と言える性質ですが、優秀な学生においても同様の
ことが言えます。・・・さらに彼らに共通する性質として、積極性が挙げられると思い
ます。・・・これもサイエンティストとして当たり前なことですが、やはり論理性も重
要な要素です。・・・最後に、当然ながら彼らに共通する要素として、サイエンスに熱
心であり、目的意識がしっかりおり、人一倍働く、ということが挙げられます。上に述
べたことは、優秀なサイエンティストの多くに見られる性質ですが、大学院で成功する
学生たちも、既に同様の性質を持ち合わせていると言えると思います。さらに言えば、
サイエンティストに限らず、アメリカ社会において重要視される性質でもあり、企業が
求めている素質でもあるように感じます。』
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=98
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編集後記
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私の大学院生活も5年目の終わりを迎えています。気が付けば、ビザの更新が必要な時
期です。本当にあっという間ですね。偶然5月に神戸で学会が開催されたこともあって、
火曜に成田に到着、水曜に東京のアメリカ大使館でビザ更新の面接、そのまま神戸へ新
幹線で直行、そして昨日土曜日まで学会と、非常に慌ただしい日程でした。学会期間中
は、研究発表がもちろんメインでしたが、同じ研究室の友人たちと、とろけるような神
戸牛を堪能したり、多くの知人に再会できたりと、とても有意義な時間を過ごすことが
できました。今日からは京都・大阪を少し散策して、東京に戻ってからは、卒業に向け
てまた頑張りたいと思います。(山本)
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