【海外サイエンス・実況中継】University of California, Riversideのプログラム紹介

Post date: Jan 30, 2012 8:14:21 PM

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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』

_/ December 2010, Vol. 53, No. 26

_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/

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あっという間に今年も最後の月ですね。

12月の担当をさせていただく、メリーランド大学の中山由実です。

今回は、University of California, Riverside (UCR),

Department of Chemical and Environmental Engineering (CEE) 所属の

Ph.D.コースの4年生中尾俊介さんが、プログラムの紹介、Riversideでの

生活について執筆してくださいました。

以前に環境工学についてのメールマガジンを配信してから、個人的に

興味がある分野です。お楽しみください!

メルマガについて、ご意見などございましたら、カガク

シャネットホームページ経由、 Eメールでもご連絡をお

待ちしております。今後配信して欲しい内容や、その他

の要望などもお待ちしております。http://kagakusha.net/

私たちの最新著書、理系大学院留学(アルク社)

http://kagakusha.net/alc/ につきましても、手に取り

ご覧になっていただければ幸いです。どうかよろしく

お願い申し上げます。

最後に、アルク社からの書籍プレゼントのお知らせがあります。

お見逃しなく!

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UC Riverside, Chemical and Environmental Engineeringのプログラム紹介

UCR, Dep of CEEやRiversideでの暮らしについて(前)

中尾 俊介

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こんにちは、University of California, Riverside (UCR),

Department of Chemical and Environmental Engineering (CEE) 所属の

中尾俊介です。現在Ph.D.コースの4年生です。今回は私の所属する

UCR, Dep of CEEやRiversideでの暮らしについて簡単に紹介したいと思います。

(1)UC Riverside

UCRは、UC BerkeleyやUCLAといった、州立のカリフォルニア大学の一つで、

ロサンゼルスから東に約100キロほどの位置にあります。もともとは柑橘類の

研究所として始まったので、今も大学の周りにはオレンジ畑などがあります。

それに関連して、植物系・昆虫系の研究も盛んですが、他にも約50の専攻が

あります。大学ランキングはUCの中では下位の方ですが、良いプログラム・

研究室も沢山あり順調に成長していますので、これから大学院留学を

目指したいが、上位校が厳しいという場合にはオススメです。

(2)Department of Chemical and Environmental Engineering

私の学科は化学工学と環境工学が一つの学科となっています。

環境工学は主に、大気環境(大気粉塵や排気ガス)・水・エネルギーに

分かれます。

私の所属する大気環境グループの強みは世界最大規模の設備で、

光化学スモッグを実験的にシミュレーションするスモッグチャンバーや、

路上を走るトラックの荷台に丸ごと研究室を納めてリアルタイムで

排気ガスを分析するモバイルエミッションラボなどがあります。

水のグループでは、水中の病原菌や化学物質の輸送などに取り組んでいます。

エネルギーのグループでは最近注目のバイオ燃料に力を注いでいます。

バイオ燃料といえばトウモロコシやサトウキビから作るものが有名ですが、

彼らは食料となるもの以外から安価に効率よく燃料を作り出す事を

目指しています。

化学工学の分野には、ナノワイヤーなどの微小な素材を利用した

センサーを作るグループ、燃料電池の触媒を研究するグループ、

理論計算をするグループなどがあります。また材料工学のグループでは、

生物の構造を真似た材料を作るBiomimeticsに取り組んでいて、

その研究室にあるずらっと並んだエビやカニの入った水槽は工学部では

若干異質で興味深いです。

当学科では、いわゆるローテーションというものはありません。

約半分の学生は入学前から所属したい研究室がすでに決まっていて、

入学と同時か、少し早くから研究室で働き始めます。他の学生は、

三ヶ月ほど興味のある研究室のセミナーに参加してから決めています。

最終的にほとんどの学生が希望する研究室に所属します。

一年目はやはり講義がメインで、4つの必修科目、2つの選択科目を

履修します。必修科目は、

1.数学(微分方程式の解法など、教科書:

Rice and Do/Applied Mathematics and Modeling for Chemical Engineers)

2.反応速度論・反応工学(反応容器についての計算、

教科書:Schmidt/The Engineering of Chemical Reactions)

3.輸送現象(流体力学、熱移動、物質移動について、

教科書:Bird, Stewart, Lightfoot/Transport Phenomena)

4.熱力学(統計熱力学など、教科書:教授が執筆中の教科書)

でした。私は選択科目に、大気化学系のクラスを2つ履修しました。

一つの科目ごとに一時間半の講義が週二回・一時間のディスカッション

(問題演習)が週一回、というのがよくあるパターンです。私の場合は、

日本の学部で輸送現象についてちゃんと履修していなかったので、

大学院レベルの輸送現象は二年目に履修する事にして、

一年目は学部のクラスを3つ履修してカバーしました。

このように、ある程度違う分野から来た人も

学部のクラスを履修して皆に追い付く事が出来ます。

毎週宿題がしっかり出るので忙しいですが、友人と一緒に勉強した事も

今では良い思い出です。またアメリカに来る前は、授業はTOEFLの

リスニングのようなものを想像していて英語が聞き取れなかったら

どうしようと若干心配していましたが、使うのは基本的に数式か

化学式ですし、教科書を読めば必要な単語は頭に入るので

授業の英語自体はとても簡単で安心したのを覚えています。

一年目の終わりにはPreliminary examという筆記試験があります。

基本的に問題は学部レベルですが、範囲が広いので一ヶ月近くは

試験勉強に専念しないといけません。不合格となっても追加試験

など救済措置もあるので基本的に皆クリアします。また一般的に

二年目の終わり頃これまでの研究成果・今後の研究計画を5人の

教授に発表するオーラル試験(Proposal)があります。

まじめに研究していればこの頃には教授陣からの質問攻撃にも

耐えられるだけの力がついています。これで晴れてPh.D. candidate

として研究に専念し、基本的に5年でPh.D.を取得し卒業します。

皆授業料は免除され、十分な生活費を支給されています。

(3)Riversideの生活

Riversideはその名前とは似ても似つかぬ乾燥地帯です。

夏は非常に暑いですが、湿度が低いので日差しさえ避ければ

不快ではありません。冬は暖かいので快適です。Riverside自体には

モールがいくつかあるくらいでこれといった観光地は無いですが、

車で1~2時間の圏内で、スキー場・ロサンゼルス・サンディエゴ

など色々行くことができるので、私自身はレジャーや日本食には

困っていません。なお車は必需品です。

日本からのアクセスは、基本的に成田─ロサンゼルス(LAX)の直行便で、

LAXからは乗り合いのシャトル(Super Shuttleなど)や電車(Metrolink)

が利用できます。

次号は、大気環境化学の論文紹介になります。

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アルク社より、「科学技術英語徹底トレーニング」の下記4シリーズを

各1冊ずつ寄贈頂きました。

・「資源・材料・エネルギー工学」編(http://goo.gl/AZCC)

・「環境工学」編(http://goo.gl/EGZO)

・「ロボット工学」編(http://goo.gl/rwxk)

・「バイオテクノロジー」編(http://goo.gl/3ld8)

カガクシャ・ネット宛に頂いたものですので、

抽選で4名の読者の方にプレゼント致します。

初めて英語での論文執筆やポスター発表を控えている大学・大学院生を

対象に書かれているため、近い将来に控えている方に特にお勧めの書籍です。

また、該当分野の学術論文・ポスターを使いながら解説が進められるため、

特に上記分野を専門にされている方には最適でしょう。

なお、「ライフサイエンス」編が来春発刊予定だそうです。

一つだけ注意点があるのですが、書籍の内容チェック等のため、

既に CDが開封済みであったり、新品の状態でない物もあります。

書き込み等は一切ありませんが、中古品扱いとなること、ご了承願います。

プレゼントを希望する方は、応募ページ(http://goo.gl/7LV2Q)より、

必要事項を、日本時間の12/19(日)深夜24時までにご記入下さい。

抽選は非公開ですが、締め切り後に公正に執り行われ、当選者の方に

メールでご連絡致します。こちらからのメール送信後、

48時間以内に送付先等の情報をご返信頂けるよう、お願い致します。

最後になりましたが、4冊の書籍を寄贈して頂き、本プレゼント企画を

ご快諾頂きました、現 h+mlab(元アルク社)の岡田真紀様、

そしてアルク社の菊野啓子様に、心から御礼申し上げます。

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自己紹介

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中山 由実

東京大学農学部獣医学課程修了。2008年、University of Wisconsin-Madisonにて

Ph.D取得。その後、Mt. Sinai Medical Centerにてポスドク、ボスの移動に伴い、

2010年10月よりUniversity of Maryland-Baltimoreでポスドクをしています。

現在の研究分野は移植免疫です。

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編集後記

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ボスの引越しに伴い、ラボの引越しを初体験しました。

聞いていたよりはスムーズに行ったかな、、と思うのですが、やはりまだ

実験を再開してどんどん結果を出す、、というわけには行かず、論文を

書いたり機械の注文をしたり、、、という日々です。

そしてThanksgivingにChristmas、New Yearとイベント続きなので大学も

お休みになり、本格的に始められるのは来年の年明けからになりそうです。

となると、聞いていたとおり、「3ヶ月は何もできない」というのも

あたっていますね。。。

寒くなってきたので、暖かくお過ごしください!

中山由実

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発行責任者: 杉井 重紀

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