【海外サイエンス・実況中継】 料理手順から工場生産まで・・・最も効率よいシステムをコンピュータで導きだす ~ システム工学
Post date: Jan 09, 2012 5:21:4 PM
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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』
_/ June 2007 Vol 12 No 1
_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/
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研究の最前線をお伝えするのも第12回目になりました。今週はカーネギー
メロン大学・化学工学科博士課程の川尻さんが、システム工学についての
エッセイを書かれています。われわれの日常生活に密接する問題をもテーマ
に含まれているので、多くの方にとって、役に立つ分野であることが分かる
でしょう。私の研究生活も、川尻さんのコンピュータ・シミュレーションで
効率化を図りたいものです。
(杉井)
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今日のエキスパートな質問(答えは下にあります)
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1.自動車や医薬品などの生産工場には、何という問題を解決することが
重要視されているでしょうか?例としては?
2.この問題を含む、産業界の生産活動において、「最も~になるよう」と
いう問題提起のことを何と言う?例を2つあげてください。
3. これらの問題を解決するために使う2つのツールとは?
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料理手順から工場生産まで・・・最も効率よいシステムをコンピュータで
導きだす ~ システム工学
川尻 喜章
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突然ですが、こんな経験ありませんか?大人数のお客さんを家に招くので、
たくさん料理をつくらないといけない。作るのは、焼きそば、スープ、サラ
ダ、フライドチキン、チャーハン、そしてデザートとお茶。料理をやって
くれるのは自分の他に一人だけ。家の台所だから使える調理器具の数は限ら
れている。レシピは決まっているとして、誰がどういう順番で作業をしたら
最も短時間で終わるのでしょうか?
実はこれは、スケジューリング問題と呼ばれる一大研究分野で、世界中の
研究者たちが取り組んでいる問題なのです。自動車工場では何百人という
作業者を使って何百、何千という部品から自動車を組み立てるわけですが、
どれをどういう順番でやったら最も効率的(同じ時間でたくさん自動車を
生産できる)でしょうか?
医薬品工場では数々の医薬品を製造しますが、それぞれの医薬品は決められ
た順番の工程(加熱、反応、精製など)を経てやっと最終的な薬になります。
一体どの薬をどういう順番で作ったら、最も無駄なく効率的でしょうか?
これは、紙と鉛筆を使って人間の頭で考えられるレベルの話ではありません。
産業界における生産活動には、このような問題がゴロゴロしています。スケ
ジューリングの他にも、最もコストがかからない工場の設計(最適設計)、
最も目標からのズレが少ない制御(最適制御)などなど。
そして、これらをうまくやれば年間数億円の収益増加、コスト削減ができる
事も決して少なくありません。キーポイントは、”最も~になるよう”と
いう問題提起です。これを最適化問題と呼びます。
では、その最適化問題はどうやって解決するのでしょう?
前述したように現実の問題は非常に複雑なので、コンピューターを使って
解く事が前提になります。コンピューターを使えばどんな難しい問題でも
解ける、と考えるのは大間違いで、やり方を間違えると最先端のコンピュー
ターが、何ヶ月も考え込んでも答えが出なかったりします。数学を駆使し
ながらコンピューターを”うまく”使わなければ答えが出ないのです。
この研究分野はオペレーションズリサーチ、工学系分野の中ではシステム
工学と呼ばれる分野に属します。更に分野を絞れば化学工学の中ではプロ
セスシステム工学と呼ばれています。これらは応用数学の一分野ととらえる
事も出来ます。私も数式とコンピューターに向かう毎日を送っています。
このような最適化問題、別に産業界の生産活動にだけ、現れるわけではあり
ません。”最も~になるよう”という願望はどこにでもありますよね。例え
ば最もリターンが多くなる投資方法、最も速度の速くなる通信回線ネット
ワーク、最も渋滞が起こりにくい道路の掛け方などなど。
この分野の研究をやっていて最も楽しい事の一つに、いろいろな分野の人と
出会えて問題を共有できるということがあります。自分とよく似た研究テー
マを、全く違う分野で形を変えながらやっている人を発見する、なんていう
経験はしばしばありますし、場合によっては共同研究につながったりします。
この分野のもう一つの楽しさは、現実的な問題に取り組む学問であるために、
産業界の人たちと接する機会がきわめて多いということです。私の所属する
研究グループも20社を超える会社とコンソーシアムを作っていて、アメリ
カ国外からの参加者もいます。時には私の研究に興味を持ったエンジニアが
コンタクトしてくる事もあります。自分が取り組んでいる研究が社会でどの
ような形で役に立つ(予定?)のか、直に感じる事ができるのは幸せです。
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自己紹介
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川尻 喜章
1999年関西大学工学研究科修士課程修了(化学工学)。企業の研究所に
勤務した後、2003年よりカーネギーメロン大学化学工学科博士課程に
在籍、現在に至る。研究分野はプロセスシステム工学、動的最適化。
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今日のポイント(エキスパートな質問の答えです)
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1. 生産工場には「スケジューリング問題」が重要。例えば、どうしたら
同じ時間でより多く生産できるとか、どういう順番で作ったら最も無駄が
ないか、など。
2. 「最も~になるよう」という問題提起のことを「最適化問題」という。
例としては、 最もコストがかからない工場の設計(最適設計)、最も目標
からのズレが少ない制御(最適制御)など。
3. 最適化問題を解決するには、「コンピュータ」と「数式」を駆使する。
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編集後記
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渡米してから4年がたとうとしていますが、本年7月にPh.D.を取得できる
見込みとなりました。そして来年秋からはアメリカ某校のAssistant
Professorとしてひとり立ちした研究者となる予定です。職探しについて
の私の体験談はまた別の機会にでもご紹介できればと思っております。
(川尻)
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