2/19【海外サイエンス・実況中継】Brown University, Materials Science and Engineering

Post date: Jan 30, 2012 8:17:25 PM

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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』

_/ February 2011, Vol. 53, No. 30

_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/

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みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

2月の編集を担当しております、ボストンの布施です。

今回はブラウン大学(Brown University)に所属されている

(Department of Materials Science and Engineering)に

在籍されている石井洋平さんのエッセーをご紹介させて

頂きます。

アイビー・リーグ校であるブラウン大学の紹介から、石井さん

が所属されているMaterial Science programに関する情報、

プロヴィデンスでの生活やプログラム修了後の進路まで、非常に

幅広く且つ簡潔に書かれています。

私も先週転職するまで勤務していたコンサルティング会社の

リクルーティングでブラウン大学を訪問する機会があり、

キャンパスと学生の質の高さに好感を抱いた記憶があります。

それではどうぞお楽しみください。

なお、メルマガについて、ご意見などございましたら、カガクシャネット

ホームページ経由、 Eメールでもご連絡をお待ちしております。

今後配信して欲しい内容や、その他の要望などもお待ちしております。

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私たちの最新著書、「理系大学院留学」(アルク社)

http://kagakusha.net/alc/ につきましても、手に取りご覧になって

いただければ幸いです。どうかよろしくお願い申し上げます。

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~ブラウン大学 (Brown University, School of Engineering, Materials

Science) 紹介~

石井洋平

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皆さんこんにちは。 Brown University, School of Engineering のMaterials

Science 所属博士課程4年目の石井洋平です。今回ブラウン大学についての紹介

をさせていただくことになりました。

○ブラウン大学について

ブラウン大学はアメリカ東海岸のロードアイランド州プロビデンス市にある

1764年に設立された私立大学で、アイビーリーグの一校です。ニューヨークか

ら北に三時間半、ボストンから南に一時間のところに位置しています。プロビ

デンス東部の丘の上にある大学で、高級住宅街の中にありますので、学校近辺の

治安は比較的いいですので安心して住むことができます。今の時期は、雪がかなり

積もり非常に寒く、最低気温がマイナス 15度なんて日もあります。一方で、夏は

非常に過ごしやすく、30度を超えることはまれで非常に過ごしやすくなって

います。生徒数は、大学生約6000人、大学院生約2000人の大学です[1]。

最近では、HEROS のHiro Namamura 役のマシ・オカ、ハリーポッターの

ハーマイオニー役のエマ・ワトソンのおかげで日本での知名度も上がってきて

いるところだと思います。

学生の満足度では、全米一位 [2]として知られています。

ブラウン大学のエンジニアリングの大学院生において留学生の占める割合は

大きく、五十から六十パーセントくらいは留学生という感じでしょうか。

中国人、インド人、韓国人が留学生のうちの六、七割を占めています。日本人は、

エンジニアリングでは私がただ一人であり、ブラウン大学全体でも日本人

大学院生は十人もいません。(ポスドクの方を合わせても十人程度です。)

あまりにも日本人同士の繋がりがなかったので、一年ほど前に日本人会

を立ち上げプロビデンス近郊の日本人コミュニティーを広げる努力を

した結果、現地の日本企業で働かれている方とも現在では交流があり

ますが、普段の生活において日本人の方と出会う機会はほとんどなく

英語漬けの環境下で勉強するという意味では、理想的な環境かもしれ

ません。

理工系の分野では、特に Mechanics of Solids は全米でも1,2を

争うプログラムとなっています。また、物理学科には、固体物理を学

んだ人であれば誰でも知っているノーベル賞を受賞したLeon Neil Cooper

教授もいます。

○Materials Science and Engineering

入学して一年目は、どのアメリカの大学院でもそうだと思いますが、授業が忙し

く研究はあまりできません。 Materials Science では授業を三つから四つ程度

一年目には秋セメスターと春セメスターにとります。トータルで4つクラスを

登録することになりますが、四つ目はリサーチのクラス(つまり、研究室で働く

。)をとることが多いです。授業を四つとった場合は、リサーチはとらないのが

通常ですが、中には五つ目をリサーチでとるツワモノもいます。私は四つ目を

リサーチで登録しましたが、それでも授業での課題をしつつ、リサーチをする

というのはかなり忙しかったです。そのため、一年目は研究をしているという

よりはむしろ、授業の課題をこなす合間を縫って研究をし始める程度でしょう。

Ph.D をとるためには、途中突破しなければならない関門が二つあります。一つ

目は、 qualifying exam で、二つ目は、preliminary exam です。Qualifying exam

とはペーパー試験で Materials Science で重要な四教科を理解しているかどう

かをテストするものです。ブラウン大学では、Kinetic Process, Crystallography,

Thermodynamics, Mechanical Behavior の4科目です。この最初の関門を突破

しなければ Ph.D candidate としての道が開かれません。チャンスは二度与えら

れ、二回目に突破できなければ学校を去らねばなりません。通常, qualifying

exam は二年目終了時の六月(二年目と三年目の間の夏休み中。)に課されます。

Materials Science に入れば、この上記の4科目は必須科目ですが、その他の

クラスは所属した研究室によってどれを履修するのかは変わってきますので、

アドバイザーと相談して決めていきます。それゆえ、1年目は大抵同じ授業を

Materials Science 所属ならとりますが、2年目からはそれぞれの研究に基づ

いた授業計画になります。Materials Science では、Minor(副専攻?)を

2つとらなければならない決まりになっていますので、私の場合はMathematics

と Solid Mechanics がマイナーとなっています。人によっては、Electrical

Engineering などをマイナーでとる生徒もいますし、同じラボでも研究内容

によってとる授業が変わってきますので、教授と話あって決めていきます。

次に第二の関門である Preliminary exam ですが、Materials Science の教

授に対しての自分の研究のプレゼンになります。これに対してもチャンスは

二度あります。この試験は通常、在籍4年目にすることになります。

ブラウン大学では、突破しなければいけない試験は2つですが、大学

によってはペーパー試験はなしで、oral presentation のみの学校も

あるようです。

卒業にかかる年数は、博士課程だと日本では通常5年(修士2年、

博士3年)ですが、ブラウン大学 Materials Scienceでは大体5.5~

7年が卒業までにかかる期間です。(2年間の幅があるのは、研究の進

み具合や、教授によって違ってくるからです。)

卒業後の進路は、アカデミアに進む人から企業就職の人までさまざまです。企業

就職もエンジニアや研究職になる人もいれば、consulting company に入る人まで

さまざまです。日本だと、博士号取得者の就職はアカデミア等の研究職にほぼ限ら

れますが(もちろん、それ以外の人もいますが、研究職希望が多いと思います。)、

アメリカでは選択の幅が逆に広がることもあります。

ブラウン大学の Materials Science では、Solid Mechanics との共同研究が

多いです。実験はMaterials Science で、理論等をSolid Mechanics という

形は多いです。当然外部との共同研究もありますが、Solid Mechanics との

共同研究もかなりの数だと思います。Materials Science では、幅広い研究

がカバーされています。詳しくは、

http://www.engin.brown.edu/people/Faculty/Materials.php

こちらのリンクから興味のある教授のホームページを参照してください。

博士課程在籍者には、通常教授からの金銭サポート付が一般的で、ブラウン

大学materials scienceでは、毎月1800ドル程度となっています。(贅沢は

できませんが、つつましく生活をすれば生きていけます。)

○最後に

留学することによって大変な事もありますが。得るものも多いです。卒業後

友人が世界中に広がり、ネットワークが世界規模になるなどが一例かと思い

ます。ぜひ留学中にさまざまなものを身につけ将来に役立ててください。

[1] http://en.wikipedia.org/wiki/Brown_University

[2] http://www.princetonreview.com/BrownUniversity.aspx

<自己紹介>

石井洋平

2007年上智大学物理学科卒業。現在はBrown University, School of Engineering,

Materials Science and engineering にて博士課程在籍中。イオンビームを用いた

ナノパターン作成の研究に従事。

<編集後記>

日本人の内向き思考が叫ばれるなか、留学は価値のあることだと思います。

留学をすべての人に勧めるつもりは全くありませんし、日本でやりたいこと

が見つかればそれでもいいと思っていますが、選択肢の一つとして留学を視野

に入れる人はあまり多くはないのではないでしょうか?留学を選択肢として

考える日本人が一人でも増えてくれればいいと思います。

アメリカで一番大変だったことのうちのひとつは、食事です。とにかく適当

にレストランに入ればあまりおいしくなかったりします。日本食を食べるに

しても寿司レストランしかないので寿司以外の日本食が恋しくなります。

一時帰国中に日本で非常食を買い込んでアメリカに買えるのが、恒例?に

なっています。

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