【海外サイエンス・実況中継】アメリカにおける博士号取得後のキャリア・オプション(後)
Post date: Jan 30, 2012 7:28:9 PM
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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』
_/ August 2008, Vol. 37, No. 2, Part 2
_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/
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前回に引き続き、布施さんの「留学本では教えてくれない海外大学院のホント
~実際の体験から」第二弾です。「アメリカにおける博士号取得後のキャリア・
オプション」と題して、医学・生物系の博士課程修了後の進路を考えます。前
編では、アカデミアの道(研究職と教職)に関してと、企業研究職(製薬会社
やバイオテック企業)を紹介しました。ここまではおおよそ想像のつくもので
しょうが、今回はそれ以外の道として、特許関連やコンサルティング会社など、
自分の専門+他分野の組み合わせに関して書いてくれました。非常に面白い選
択肢がありますね。
ご連絡です。編集の都合上、当面のあいだは隔週で配信することに致しますの
で、どうぞご了承下さい。
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留学本では教えてくれない海外大学院のホント~実際の体験から
アメリカで「成功」する学生たちに共通するもの(後)
布施 紳一郎
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●法律の道
近年 NIH の予算が伸びず、研究費取得の競争が激化しているため、企業就職
を希望する学生が増えていると聞きます。なかには、大学院時代に得た知識を
使って、研究以外の分野に進む人も見かけます。その一つが、特許関連の仕事
です。
大学院修了後、テクニカル・アドバイザーとして、法律事務所に雇われる学生
やポスドクが最近増えています。彼らは自分の専門知識を活かして、特許の解
釈などの仕事を行い、夜間はロー・スクールへ通います。3~5年かけて法務
博士(J.D.)を取得した後、特許弁護士(Patent lawyer)として働きます。
最初の数年は忙しくて大変ですが、ロー・スクールの学費は事務所が払ってく
れ、高給であるため、どのポジションも人気があり、競争率が非常に高いです。
私の同級生で法律事務所に進んだ友人に聞いた話によれば、応募の際にエッセ
イを書かされ、その内容が面接に進むには重要だと言っていました。面接では、
弁護士なのでコミュニケーション能力や人間性などが重要視されるそうです。
やはりこのポジションは語学力が問われるため、どうしてもネイティヴの応募
者が有利になるのではないかと思います。
●ビジネスの道(コンサルティング、ベンチャー・キャピタルなど)
法律事務所と並んで、近年学生に人気を集めているのが、ビジネスの道です。
アメリカでは、コンサルティング会社、金融関連の企業(リサーチ部門など)、
ベンチャー・キャピタルなどが、専門知識、もしくは単に優秀な学生を求めて、
博士課程の学生やポスドクを積極的にリクルートしています。
ただポジションは決して多くなく、応募者が殺到するため、競争は非常に厳し
いものがあります。私は主にコンサルティング会社に応募し、大企業から専門
企業(Boutique firm)まで多くの面接に行きましたが、そこで会った学生や
ポスドク、医師の優秀さには本当に驚かされました。
応募の形は各社によって異なりますが、書類選考(レジュメ、カバー・レター、
エッセーなど)の後に、面接(グループや一対一)を2~3回行うのが通常で
す。なかには、あまりにも応募者が多いため、試験を受けさせられた企業もあ
りました。コンサルティング会社の面接形式は企業により異なりますが、主に
ケース面接とフィット・経験を見る面接、の2種類からなります。ケース面接
にも様々な種類がありますが、主にビジネスケースを解く能力を問われ、練習
が必要となります。面接が進むにつれて面接官のランクも上がり、ケースも難
しくなる、という印象を受けました。それに加え、当然ながらコミュニケーショ
ン能力、フィット、創造性、論理的思考力、分析力などを主に試されます。
就職活動中に、成功を収めたベンチャー・キャピタリスト数人と話す機会もあ
りましたが、この道の就職はさらに狭き門だと聞きます。学生・ポスドク・PI
として企業を立ち上げた経験がある、コンサルティングの経験がある、または
よほどのコネクションがある人でない限り、入るのは難しいという感じを受け
ました。
他には、専門知識を活かし、ビジネスネットワークを仲介する企業への就職や、
非営利団体に就職する学生もいます。コンサルティングを経て、非営利団体や
製薬企業に進む人もいたりと、本当に多種多様です。
●最後に
博士号取得後、どのような進路を選ぶかは、個人の興味、性格、住みたい場所、
フィット、条件や家族事情などを踏まえて、最適なものを選ぶことが重要だと
思います。私自身を例に挙げますと、(1)変化の激しい環境を好む性格であ
る、(2)大学院時代の経験から技術の商品化に興味をもった、(3)アメリ
カの多様性・ダイナミックな環境(特にバイオテック業界)に残りたかった、
(4)小さい頃アメリカで育ち住み慣れている、(5)家族の事情、などの理
由から、アメリカに残ってコンサルティング会社に就職する道を選びました。
就職活動をして、やはり自分はアカデミアに残りたい、と考え直す人もいれば、
アカデミアを希望して数年間ポスドクを経験した後、やはり企業に勤めたいと
考える人もいます。キャリアのどの段階であっても、情報収集は非常に重要で
す。友人や同僚などを通じて情報を手に入れるのは勿論ながら、ウェブ(例え
ば、サイエンス誌のキャリア・ウェブサイト等)や本(Vault, Wetfeet な
ど)、大学のキャリア・サービスはとても有用な情報源であり、フルに活用す
ることが大事だと思います。さらに、アメリカでもコネクションは非常に重要
であり、なるべく多くの人とコンタクトを取ることをお勧めします。
最後に、自分に与えられたオプションを柔軟にみつめ、早い段階から、本当に
自分が何をやりたいのか、をしっかりと考えることが大切なのではないかと思
います。私はアメリカでの就職活動の体験は大変貴重なものであり、学ぶこと
が多かったと感じています。
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自己紹介
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布施 紳一郎
慶応義塾大学理工学部、東京大学院医科学修士、米国ダートマス大学院博士課程修了
(2008年、免疫学)。大学院修了後、ボストンに拠点を置く早期ステージベンチャーキ
ャピタルであるPureTech Venturesのアソシエイトとして、Vedanta Biosciences、
Mandara Sciencesの起業に関わる。2012年よりヘルスケア戦略コンサルティングファーム
であるCampbell Allianceのシニアコンサルタントとして製薬・バイオテック企業の戦略
アドバイザリーを手がける。コンサルティング業に加え、起業家、VCアソシエイトを対象
としたNPOであるStartup Leadership Programの2012年ボストンフェロー、
現ヴァイス・プレジデントとして運営を手がける。
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編集後記
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ようやくボストンでの生活も立ち上がり、来週から新しい職を開始します。博
士修了後のアメリカ企業への就職に関する質問を数人の方からメールで頂きま
した。このようなメールはいつでも歓迎致しますので、直接メールを頂ければ
幸いです。記事へのコメント、批評、要望などもお待ちしております。(布施)
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