5/5 【海外サイエンス・実況中継】アンケート記事第二弾!Ph.D取得は就職に有利か?不利か?

Post date: May 04, 2012 3:8:6 AM

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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』

_/ May 2012, Vol. 47, No. 2

_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/

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今回メルマガ配信を担当させていただきます、ブラウン大学 School of Engineering,

Materials Science 所属の石井です。

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まず最初に総会についてのお知らせです。

総会を7月22日(日)に東京国際フォーラムにて行うことになりました。

総会に参加して頂ける方は、お手数ですがこちらのページにて*事前登録*を

お願い致します。

http://www.kagakusha.net/conference

また、理化学研究所の杉本慶子先生に基調講演をして頂くことに

なりました。

杉本先生は、オーストラリア、英国でご活躍され、現在は理化学研究所

にて、ご夫婦で力を合わせ研究生活・子育てを両立されており、特に

これからの女性研究者にとってはロールモデルとなるお方であると

思います。

その他にも、カガクシャ・ネットメンバーによる講演、ポスターセッション、

パネルディスカッション、懇親会など様々な企画を担当スタッフの方で

準備しております。

興味がありましたら、ぜひご参加ください。

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それではアンケート記事第二弾をお楽しみください。

“Ph.D は就職に有利か?不利か?”(ここでいう就職はアカデミアを

除いた一般企業全般とする。)

今回はカガクシャネットのスタッフの方にアンケートをとりました。

結果について、杉村(ストワーズ医学研究所)、

石井(ブラウン大学)、鈴木(アリゾナ大学)が報告します。

<結果発表>回答数17名

有利: 52.9 % (9名)

どちらとも言えない: 35.3 % (6名)

不利: 11.8 % (2名)

という結果になりました。

まず、コメントを先に発表したいと思います。

<有利と答えた方>

・就職先の分野によるが、米国で就職する際にはAdvanced degreeを

持っている方が断然有利。特に企業研究職ではPhDがないと上に

上がりにくいし、給与も大きく違ってくる。ただ他のAdvanced degree

に比べて有利かは、業界によって異なる。当然ながら企業経験豊富な

人材はAdvanced degreeがなくても十分やっていける。自分の進みたい

業界、働きたい国によってAdvanced degreeを取得するかしないか、

またどのAdvanced degreeを目指すかが大きく変わってくると思う。

・1.専門性をもっている。2.物事を理論立てて考えることができる。

3.研究、教育経験がある。

あくまでも比較する対象を学部卒業生と仮定した場合です。

もし5年間の企業経験のある研究者と比較した場合、一概にPh.D取得者

が有利とは言えないかもしれません。不利の意見として考えられるのは、

Over qualifiedがあげられますが、高い給料を要求しなければ少なく

とも教育分野ではPh.D取得者は有利だと思います。

・アメリカに限定すれば有利。基本的にPh.D.を持っていなければ

アプライ出来ない仕事があるので。

・一般企業の多くでは、Ph.D.取得者はoverqualifiedとなってしまい

ますが、Ph.D.取得者が有利になる職種もあるのは確かです。余剰博士が

問題となってはいるものの、周りを見るかぎり、ネットワーキングを

怠らない人は皆職にありついています。

<不利と答えた方>

・日本の企業への就職の場合不利あるとの話を大学の先輩より

伺いました。理由として、(日本の)博士課程の研究テーマは

とてもスペシフィックで、卒業しても使い物にならないうえに、

プライドだけは高いからと聞きました。

・専門性が高まる分、応用が利かないと見られがちで特定の仕事しか

できないように見られる傾向が、特に日本にあるように思います。

特に、専門分野や研究以外の就職を目指す場合、年齢も新卒より上で

お給料も学位があると高く払わなければならないならば不利だと思います。

<どちらとも言えないと答えた方>

・アメリカ企業での研究職でPh.Dが必須の場合があるので、そういった

就職をするのであればPh.Dが有利というよりも必須の場合がある。

職種によっては、Ph.Dがなくてもいい場合も実際に多く、

Ph.D取得者には高い給与を払わないといけないので、敬遠される

こともあります。また、アメリカではコネクションも重要です。

企業就職の場合、従業員の推薦がモノをいうこともあります。

実際、アメリカ某大手製造業で採用プロセスに関わったエンジニアの

知人が、2時間で200通のレジュメを受け取ったと言っており、

大抵推薦がないと電話インタビューすら来ないといっていました。

アメリカでは推薦(コネ)のみで入社できることはあまりないと

思いますが、コネで少なくとも専攻が違わないかぎり

レジュメスクリーニングをパスすることができます。そこからは

面接をほかの候補者と競って勝ち上がるのみです。ただし、

job description と研究内容のマッチングがそれなりにあれば

可能性はあるそうです。ですが、実際、研究内容がマッチング

してる場合は多くないので、コネクション作りが重要だと思います。

アメリカではPh.Dがあると外部の方とやり取りするときに信頼を

得やすいです。つまり就職後の話ですが、Ph.Dという肩書きを

見られることがあるのでPh.D を欲している企業もあるということです。

・欧米資本の会社の場合、Ph.D取得は就職に有利。日本資本の会社では、

不利という印象があります。後者の理由は、論文博士の制度により、

修士で入社後、 Ph.D.取得が可能で、会社も認めているからです。

また日本の社会では、課程を経て、Ph.D.を取得する意義や理解、

評価が非常に低いような気がして います。ただ、グルーバル企業を

目指す、日本資本の会社では、研究職での採用の場合、Ph.D.取得者

に多いに期待している印象があります。一概に有利、 不利と

選択するのは難しいと思います。学位の取得よりも、個人の

能力がすべてですが、入社前後に関わらず、研究開発系の

企業の上層部に登るには、Ph.D.取得が有利だと思います。

Ph.D.取得を有利、不利にするのは、自分次第であるのも

付け加えておきたいと思います。

・Ph.D. はアカデミアではパスポートであり、ないと研究者には

なれない。しかし、アカデミア以外で働きたい場合は、

実戦経験のなさ等により、敬遠される場合も多いと聞く。

結局は実力によって違いが大きいと思う。本当にいい Ph.D.

というのは、考え方も成熟しており、問題解決の能力が高い

ため、アカデミア以外でも活躍が場が多いのだと思う。

・日本:いまだにPhD取得者には門が狭いです。大学院博士課程

にかけた時間と費用を考慮すると、いまだに見合っていません。

加えて論文博士の制度があるので、企業研究者にとっては

わざわざ大学院に行く必要性が見いだされません。

アメリカ等の海外:多くの国でPhD取得者の方が有利です。

研究職に限りません。給与にも反映されます。

・Ph.D.は科学者として活躍するには必須の学位。

またその過程で鍛えられる人的ネットワークや研究、

教育のプロセスへの理解や経験などはどの領域でも生

かせるかと。しかし、年齢からしてManagementなどにある

程度、通じている必要があることを考えると、職種や求め

られているものによっては必ずし も有利とはいえない。

Ph.D.の間にExtraで経験を積んでおくことが求められて

きているかも。

・分野、国内か国外かによる。日本企業はPh.D取得者を

避ける傾向が強いが、化学系の日本企業ではアメリカPh.D

取得者のための特別枠をもうけているところもある。

アメリカでは分野に関わらず多くの企業がPh.D取得者の

採用を行っているので有利。

・日本企業の場合、PhD を持っているとやや敬遠される

と聞いていたが、実際に面接でもよく聞かれたし、また、

日本の大学の先生にも、なぜ PhD を取って企業就職を

目指すのか、度々尋ねられる。一般的な日本企業の場合、

待遇面でもあまり大差がないのではないか。むしろ、

同期の修士卒で就職した人たちより、就労経験が

不足しているとみなされる雰囲気を感じる。北米でも

PhD 課程はトレーニング期間中と捉えられることが

多いが、日本よりもその期間の教育・成果が評価される

ように感じる。また、例えばドイツなどでは、PhD 課程は

学生としてではなく大学職員・プロフェッショナルとして

扱われるため、日本企業のように、卒業直後に

「就労経験が不足している」と言われることは、

あまりないのではないか。

・北米の企業の場合、PhD ホルダーが多いため、日本の

企業ほど抵抗感がなく受け入れられやすい。PhD を

持っていれば、その道の専門家として受け入れられるが、

エンジニアの場合、この「PhD 特権」は卒業後数年程度

であって、それ以降は実力がモノを言うように感じる。

また、PhD を持っていれば、当然ながら企業が求める

レベルもそれに準じて高くなるが、企業の開発現場では、

必ずしも PhD を必要としない仕事がたくさんある。逆に

PhD を持っていると有利なのは、社外の人とやり取りする

際に信用が得られやすい(その分、発言に責任も伴うが)。

また、アメリカのベンチャー企業などの場合、政府系研究資金に

応募することが少なからずあるため、PI として応募する際には、

PhD を持っている方が有利であるし、PhD 期間中の

トレーニングが非常に活きてくると思う。

<考察>

アカデミアではPh.Dは必須なのでここではアカデミア以外の

一般企業就職の話となります。まず不利であるとしてもそれは

日本でのことであり、ほとんどの回答がどちらとも言えない、

もしくはどちらかといえば有利に働くと思われている方が

ほとんどのようです。ただし、日本企業でもPh.D を評価して

いただける場合も分野によってはあるようです。また、

アメリカではPh.D があれば、高い給与など優遇されることも

ありそうですが、就職活動においてはネットワーク作りなどが

重要のようです。Ph.D であるがゆえに、就職後の要求される

水準が高くなるので、Ph.D過程での問題解決能力や論理的思考、

様々な経験を積んでおく必要がありそうです。中にはPh.D取得者

でないとつけない職種もありますが、その場合はPh.Dが最低限必要

となります。逆にPh.D が必要ない募集もありますので、

よく考えてキャリアプランを考えていく必要があります。

Ph.Dを持っていれば、社外の人とのやり取りで信頼を得られやすい

ことがあり、企業就職しても研究資金応募する際などにPh.Dが

有利に働くこともあります。

わかりやすく書くと下例のようになります。

・Ph.D 取得で日本就職の場合、ほとんどの場合は不利に働きますが、

一部の業界ではPh.Dに対しての枠がある場合があるようです。

・Ph.D 取得でアメリカ就職の場合、企業就職でも研究職など

Ph.D必須の場合があります。ただし、Ph.Dを要求されない職も

多いので、職種にもよります。さらに、ネットワークが重要だと

いう意見も数名ありましたので、ネットワーク構築を考えておく

ことも重要です。

日本企業での就職では一部を除いてPh.Dが有利に働くケースが

少ないですが、アメリカなどでは有利に働くケースも多いです。

ただし、ネットワーク作りなども在学中に積極的に行っておく

ほうがいいでしょう。Ph.D を必要とする職種と必要としない

職種があるので、描いている自分のキャリアプランから考えて、

Ph.D取得が有利に働くか、不利に働くかを見極めてみてください。

それによってPh.Dが必要かどうか留学準備期間中に考えてみると

いいと思います。

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編集者自己紹介

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石井洋平

2007年3月 上智大学理工学部物理学科卒業

2007年9月-現在 Brown University, School of Engineering, Materials Science

イオンビームを用いたself-organizedナノパターン作成に関する研究に従事

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編集後記

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留学しても現地就職できずに帰国する留学生がほとんどだと思います。

こちらの記事を参考にして現地就職希望の方は留学後の

キャリアプランを描いてみてください。

私生活ではもう五月なのに、コートを着ながら外を

歩くこともあるくらい時々寒いです。私の大学ではどんどん日本人が

少なくなっています。

カガクシャネットの活動を通じて、日本にいらっしゃる方にぜひ

海外留学を選択肢の一つとして考えていただき目を向けて

いただけたらと思います。

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発行責任者: 杉村 竜一

編集責任者: 石井 洋平

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