【海外サイエンス実況中継・特別号】大学院留学:なぜ日本でなくアメリカの大学院を選んだか。

Post date: Jan 09, 2012 5:7:38 PM

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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』

_/ February 2007 Vol 2 No 2

_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/

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今回も引き続き今村さんによるエッセイです。先週は、サプリやダイエット

の効果をはかる上で、ますます重要になってきている栄養疫学について紹介

してくれました。前回のバックナンバーは「まぐまぐ」のホームページか、

カガクシャネットワークのホームページで登録すれば見ることができます。

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なぜ日本でなくアメリカの大学院を選んだのか?

今村文昭

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私は日本ではなくアメリカの大学院を選んだ過程で、次の3つの点が鍵に

なったと考えています。

1)科学において英語を使いこなす必要性

2)学際領域への興味

3)人のための学問への興味

それぞれについて以下に詳しく述べます。

1)科学において英語を使いこなす必要性

「英語は科学者には絶対に必要」

「科学のプロになるには大学院に行く必要がある」

わたしの父は日本の工学系の出身で企業に勤め1年強アメリカで研究をした

経験をもっています。その経験からだったのでしょう。自分が中学・高校の

ころ、上記のような言葉をもらいました。

理数系が得意だったので理系に進むと考えつつ、英語の勉強にとても重きを

おいていました。そして英語はあくまでツールとして捉え、生命科学系にも

理工学系にも興味があったのでとりあえず融通の利く化学を大学で勉強する

ことにしました。

大学に入ってからは日米問わず、とりあえず大学院に行くことを前提として

学業に集中していました。そのご時世は、国際化の風が吹き荒れており、

新聞を全く読まない自分にさえも虫が噂してくれるような様子です。「英語

ができると良いですよ」と。

そして、最低でもアメリカで生きぬける人材であることを証明できないと

駄目だと考えるようになりました。漠然とアメリカの大学院で自分を試す

という目標が、内容を全く伴わずに産まれていました。

2)学際領域への興味

大学に行く以前に、自分は将来何を勉強したいんだろうという考えはいつも

ありました。何の情報もなくやりたいことが決められるわけもないので、

とりあえず幅広く勉強して、それをのんびりと的を絞っていくことを考えて

いました。

そんな中で特におもしろいと思った学問が、生命倫理と環境学です。

大学の特色から、そういった学問を学ぶ機会があったのです。2つの分野は、

理学を必要としますがそれだけでは対処しきれない、さらに国際性を伴う

学問。こうした分野に触れて、こうした学際性に富んだ分野を選ぼうと思う

ようになりました。

当時の自分が考えたことは、次のようなことです。

- 「日本の教育は、理系と文系を分ける、その中でも学問を1つ1つ分け

ていく。」

- 「日本の大学院は、専門にやたら強い人材を育てる。視野の広い人材は

育ちにくい。」

- 「理学系の学生に国際性が必要なのは明らか。しかしそのための土壌は

乏しい。」

こうした状況は変わってきているという印象がありますが、当時の自分には

学問の世界はこんな風に映っていました。したがって、科学に富んでいる

学際領域の学問は今後絶対に必要とされる、さらにそういう分野でこそ

国際性が必要とされると考えていました。

では海外はどうでしょう。調べてみるとたくさん出てくるのです。アメリカ

は特に人と学問の流動が盛んな国です。物理を勉強した人が経済で修士を

取り、文学を勉強した人が生物学のPh.Dを目指します。

社会的な流れが、分野をまたいでこそ成り立つ学問が成長するようになって

いるのです。

そして、そういった学問の専門家を育てる大学院レベルの教育機関が

たくさんあります。自然に魅力を感じ、アメリカで勉強するということに

ついて具体性が帯びるようになりました。

3)人のための学問への興味

わたしはだいぶ前から、科学の進歩について疑問をもっていました。もっと

弱者のための科学の展開が必要ではないかという疑問です。理工系の出身者

として科学への興味はいつでも持っており、今でもそう感じることが多い

です。

そうした疑問をもって資料を調べていて、特に惹かれた領域が公衆衛生学

(Public Health)でした。自分の身辺ではあまり耳にしない名前

でしたが、たとえば水銀中毒やゴミの問題といった環境学は公衆衛生学の

一環として考えることもできます。範囲が広いですが、大学で培っていた

基礎科学の知識は十分に生かせる、国際性・学際性にも富んでいる分野です。

この学問のために留学する価値が十分にあると感じました。

今、わたしは公衆衛生学において重要な役割を果たす疫学と、さまざまな

学問領域をまたぎ世界の誰もが必要とする栄養学を学んでいます。

わたしの知る限り、日本では学ぶ機会が限られている領域です。

日本ではなくアメリカの大学院を選んだのは、特定の学問を学ぶ環境の違い

と、国際性を養うことができる環境を求めたからでしょう。漠然とした考え

でも、常に頭に思い描いて、日本を離れる価値のある的に照準を定めて

いったといえます。

最後に、日米の大学院はどちらにも良し悪しがあるように今では考えて

います。日本の大学院教育でももっと情報を得て努力していれば、自分の

望む道も歩めたことでしょう。日米などは問わず、どんな環境を選択しても

その環境が自分にとって最良かはわかりません。しかし、自分次第で強引に

でも最良にすることができるでしょう。

今は、あらゆる社会のニーズに応えられるかどうか自分自身に問いかけ続け、

自分がいる環境を最大限利用しようと努めています。

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自己紹介

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今村文昭

2002年上智大学理工学部化学科卒業。コロンビア大学医学部栄養学科

修士課程修了後、タフツ大学のフリードマン栄養科学政策学部の博士課程

にて栄養疫学を学ぶ。

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編集後記

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アメリカに発つ前は、アメリカへの憧れとその先でできることを考えて

いました。しかし、異なる文化に触れた今、自分が日本の価値を全く

わかっていないまま今に至ってしまったことも痛感しています。高度成長を

支えた、日本人の真面目さや誠実さ、職人気質はなんとしても失っては

ならないと考えています。失うほど獲得しているのかわかりませんが。

そうした非科学的な考えを抱くのは、理学系20代の特徴でしょうか。

とにかくも、文化的な基盤は世界のどこにいようと大切にしていきたい

ですね。

(今村文昭)

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