【海外サイエンス・実況中継】アカデミアで研究を続ける場合:カバーレター作成と面接時に見るべき点
Post date: Jan 30, 2012 7:37:55 PM
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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』
_/ April 2009, Vol. 45, No. 1, Part 2
_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/
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前回に引き続き、杉井さんが、「Ph.D. 取得後のキャリアを成功させるには」
を紹介してくれます。前回は、博士号取得後にポストドクターの道を選ぶ場合
の準備編として、ポスドク先の選び方、希望ラボの情報収集の仕方、そして連
絡の取り方に関して話してくれました。
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=123
今回は、その続きの実践編です。実際に応募する際に必要となるカバーレター
の書き方、面接に呼ばれた際にチェックすべき点、面接後にもしっかりコンタ
クトを取ること、そしてまとめです。では、お楽しみ下さい!
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Ph.D. 取得後のキャリアを成功させるには~様々なケースから学ぶこと
アカデミアで研究を続ける場合:良いポスドク先を見つける方法
杉井 重紀
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●カバーレターの書き方
希望ラボがいくつか決まったら、アプライの手紙を書きます。このときのカバー
レター作成は、非常に重要です。重要ポイントは、
1.なぜその研究室に興味を持ったか
2.自分の簡単な研究歴
3.その経験と知識がどうして志望ラボに貢献できるのか
です。これを簡潔かつ網羅的に、1ページにまとめます。その研究室のことを
どれだけ知っていて、そこに行きたいか、情熱を示しましょう。ほとんど「コ
ピー&ペースト」しただけのカバーレターを、やみくもに何十カ所(人によっ
ては百以上)も送りつける人たちがいますが、採用側もすぐ見抜きますので、
時間の無駄です。この「逆」の方法を行うべきなのです。
実際にどのように書けばよいか分からない、という方のために、以下のページ
に、私の書いたサンプルと、もう一人のカガクシャネットメンバーの方が書い
たものを載せておきます。(閲覧には無料ユーザー登録が必要です)
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=124
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=125
場合によっては、1ページしかないカバーレターに加えて、希望する研究室で
やりたい研究の志望動機・内容について1-2ページ書くと、さらに真剣に考
慮してもらえる可能性が増します。ただ、志望ラボの方向性と違ったことを書
くと、逆効果にもなりがちなので、そのラボのことについてよく分かっていて、
相応の時間をかけられる場合のみ、考慮してください。
私のカバーレターの例では、必須ではありませんが、「過去に会ったことがあ
る」という売りを書いてあります。他にも「今のボスや知人の知り合いである」
とか、「誰々に薦められた」など、何らかのつながりがあれば、必ず書くこと
をお勧めします。その「知人」や、会ったときの「あなた」に悪い印象を持っ
ていない限り、有利に働くことでしょう。
また、もう一つの文例にある通り、「雇ってもらえたら自分から進んでフェロー
シップ(奨学金)を取る旨」をカバーレターに書くのも、好意的に見るボスは
多いと思います。ポスドクのフェローシップで代表的なのは、日本からの留学
の場合、例えば「海外学振」や「上原財団」などです。
この時世、研究資金のやりくりに苦労しているラボ主宰者が多いので、もっと
もお金のかかる人件費を、自分からまかなう姿勢を打ち出すと歓迎されること
でしょう。ただしこの場合、どのようなフェローシップに応募できるのか、しっ
かりと自分で調べておく必要はありますし、足下を見られて「フェローシップ
が取れたら」という条件付きで雇用が決まらないように、注意する必要もあり
ます。
●インタビュー時にチェックすべき点
運良く良い返事が来たら、次にインタビューとなります。電話や学会場でイン
タビューということもありますが、何としてもラボを直接訪問してください。
メンバーの人たちと直に話ができる、絶好の機会です。アメリカ国内だったら
旅費が出るのが一般的です。
日本にいる人でも、学会のついでなど、何とか理由を作って、訪問する機会を
作ってください。数年を過ごす場所ですし、将来にも関わってきますから、長
い目で見ればそれだけのことをする価値はあります。
ポスドクの面接では、自分の研究成果発表のセミナー、ラボメンバーとの個別
面談、ランチやディナー、そしてボスとの面接、というのが一般的なメニュー
です。
良い印象を与えるためには、万全の準備をして、良いセミナーをするのは当然
のことですが、ポスドクインタビューの場合、実はかなり重要なのが、メンバー
との個別面談(ランチやディナーを含む)です。
研究の話も重要ですが、それ以上に、ボスがどのようにラボを運営しているか、
ボスの人間性、メンバーの進路、ラボの雰囲気、メンバーが生活・研究環境に
満足しているかどうか、このような事柄を伺い知ることのできる世間話をした
方が、より後々の参考になることでしょう。また、希望先のラボメンバーで、
気が合いそうな人が見つかったら、Eメールなどの連絡先を聞いておくと良い
でしょう。
そして、気に入ったラボのボスには、自分がどれだけ興味を持ったかできるだ
けアピールして、インタビュー当日を終えます。
●面接後にはお礼を
しかし、面接はこれで終わったわけではありません。
家に帰ったあと、面接に呼んでもらったお礼と、再度そこのラボにどれだけ行
きたいかをアピールするべく、「サンキューレター」を書いてEメールで送り
ましょう。人気ラボの主宰者には、「面接では人柄がとても気に入ったんだけ
ど、そのあとのフォローアップレターがなくて、がっかりした」と言う人が結
構います。志願者が殺到しているラボでは、わざわざそういう人を選ぶ必要は
ありませんから、取りこぼしのないようにしてください。
●まとめ
さて、2回にわたって書いてきましたが、もし「ポスドクの就職活動を成功さ
せる秘訣」を一言で表現してください、と聞かれたら、私は「相手の立場に立っ
て考えること」と答えます。これは、ポスドクに限らず、他の就職活動にも言
えるかもしれません。
博士号を取ったばかりで、研究室の主宰者の考えなんてわからない、という人
も多いでしょうが、たとえば今所属しているラボでも、つねに自分のボスの立
場や考えを学んだり、研究室を運営している人の身になって考えるくせをつけ
ていれば、自然とボスの考えていることがわかってくると思います。そうした
ら、自分にどんなことを求められているのか、向こうのニーズに的確に応える
ことができるようになり、スムーズに就職活動を進めていくことができるよう
になるでしょう。
最後に、主宰者の立場を理解するのに最適な良書を紹介します。
- アット・ザ・ヘルム - 自分のラボをもつ日のために
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4895923576/kagakusha-22/
- Lab Management: Making the Right Moves
(Howard Hughes Medical Institute / Burroughs Wellcome Fund 刊、英語)
http://www.hhmi.org/resources/labmanagement/moves.html
今回のエッセイへのご意見は、こちらへどうぞ。
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=126
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自己紹介
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杉井 重紀
1996年京都大学農芸化学科卒業。卒業後、UCバークレーで聴講生(浪人生活?)
を経て、ダートマス大学分子細胞生物学プログラム博士課程に在籍。2003年に
博士号取得後、カリフォルニア州サンディエゴ近郊にあるソーク研究所に ポ
スドク研究員として勤務中。 2000年より、カガクシャネット代表をつとめる。
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編集後記
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先日、同じ研究室の友人が博士論文発表・提出を終えました。彼は企業就職希
望ですが、やはりこの経済不況で、なかなか仕事探しに苦労しています。そん
なとき、ツテを辿ってある企業に採用に関して問い合わせたところ、その企業
で働いている彼の知人3人が、「彼のことを採用すべきだ!」と揃って人事部
に掛け合ったそうで、雇用は凍結中にも関わらず、彼のためのポジションを新
設するために動いているそうです。やはり人との繋がりは大事だな、と改めて
感じました。(山本)
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