1/22【海外サイエンス・実況中継】スタンフォード大学材料工学科紹介 第ニ部

Post date: Jan 30, 2012 8:16:12 PM

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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』

_/ January 2011, Vol. 53, No. 29

_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/

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みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

1月の編集を担当しております、ボストンの青木です。

今回は前回に引き続き、スタンフォード大学(Stanford University)

の材料工学科(Department of Materials Science and Engineering)

に在籍されている松田佑介さんのエッセーをご紹介します。

第一部では主にスタンフォード大学全般、そして材料工学科の先生方

の研究、研究資金の獲得状況、研究施設のことなど詳しく書さいまし

たが、第二部では気になる同学科の博士課程選考について紹介してく

ださいます。内部の人でないと分からない貴重な情報がたくさんあり

ます。

また、教授にコンタクトする際のテンプレートのサンプルも書いてく

ださいました。

松田さんがエッセーの中で、スタンフォード大学の教授・スタッフが

日本人の出願者が少ないことを残念に思っておられる様子を何度か

言及されています。それだけ、日本人への関心が高いことが伺えます。

この機会にスタンフォードを含むアメリカ大学院留学を考えてみては

いかがでしょうか。

それではどうぞお楽しみください。

なお、メルマガについて、ご意見などございましたら、カガクシャネット

ホームページ経由、 Eメールでもご連絡をお待ちしております。

今後配信して欲しい内容や、その他の要望などもお待ちしております。

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私たちの最新著書、理系大学院留学(アルク社)

http://kagakusha.net/alc/ につきましても、手に取りご覧になって

いただければ幸いです。どうかよろしくお願い申し上げます。

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~スタンフォード大学材料工学科 (Stanford University, Department of

Materials Science and Engineering) 紹介 第ニ部~

松田佑介

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スタンフォード大学材料工学科の博士課程所属の松田佑介と申します。

前回に続く第二部では私が在籍するプログラムの博士課程選考について考

えてみます。

同学科では例年数百通の応募があり、博士課程入学者は20-30名程度(合格

者数はこれより多い)となっています。日本からの応募は例年とても少な

いです。

気になる選考基準ですが入学担当のスタッフによれば、「明確な採用基準

はなく総合評価で応募者の中でベストを選ぶ」とのことでした。

足切りは大学が定めたTOEFL(PBT換算で600以上)以外ありません(600以

下でも合格した学生が周りにいますが)。これだと具体的な選考基準に対

するイメージがわかないので、サンプル数は少ないですが周囲とインター

ネットで経歴を公表している学生の入学時スペックを調べてみました。

サンプル数は20人程度です。

合格者の成績はかなりよさそうです。アメリカの大学学部を卒業した場合、

Dean's list等成績優秀を表彰されている学生が多いです。インターネット

で履歴書を公表している学生(数名)は自慢したいのでしょうか?

GPA4.0に近い学生がほとんどでした。

実際のところどうなの?とアメリカ人に聞いたところアメリカの大学から

トップスクールに応募する場合、GPA3.5以上は欲しいと言っていました。

お隣の韓国の場合、同国学生によればGPA3点台後半は合格者大体皆あるよ

ね、とのことです。

ただ合格者全員のGPAが必ずしも高いわけではなく、私を含め3点前半の学

生(アジア圏)もいました。GPAは国・大学で幅があるので(特にアメリカ

の大学は成績のインフレが起こっているようですし)、これだけが入学の

決め手となることはなさそうです。成績付けが厳しい大学から応募する場

合、成績の付け方を記載するなりすれば多少考慮に入れてもらえるかもし

れません。

研究経験は合格に重要な要素のようです。研究経験があるのは当然として、

論文や発表等の経験があるとかなり有利なようです。ある韓国人学生によれ

ば、韓国からの入学者(大体みな博士課程を希望するとのこと)で博士課程

合格者と修士課程合格者を振り分ける決め手は、論文や発表の有無だと教え

てくれました。

博士課程合格者は、論文投稿や発表経験があることが多いとのことです。私

は修士卒だったので、論文投稿と学会発表経験がありました。一方、学部卒

で論文投稿や発表経験がある学生は珍しいようです。今回調べた中ではいま

せんでした。つまり学部卒で論文投稿や発表経験がある学生は応募者の中で

かなり目立つことができると思います。

GREはどうでしょうか?これはどの程度重要なのかわかりません。数学は皆

よいとして、Verbal 400点半ばで合格した学生(アジア圏)もいますし、

700点代をマークした非英語圏からの学生もいます。私は500点半ばでした。

幅がありそうです。お目当ての教授がいれば、他の質問と一緒にどの程度GRE

の点数が必要か聞いてみるのがベストかと思います。

では良く言われるコンタクト(教授陣と事前に連絡を取り合うこと)は選考

時に有利に働くのでしょうか?周りの学生は取っていたりいなかったりと全

員コンタクトを取っているわけではありませんでした。個人的な意見だと、

お目当ての指導教官がいればコンタクトを取ったほうが有利に働く場合が多

いと思います。

私もコンタクトをとり、これが合格の決め手になったように思います。メー

ルで「あなたの研究に興味(下調べして、具体的になぜ・どうして興味ある

かを書きました)があるのでプログラムに入学したいと考えています。履歴書

(1ページ)を送るので自分の経歴がプログラムに見合うか教えてほしい。」

というようなことを質問しました。コンタクト時の文章は知り合いからテン

プレートをもらい参考にしました。

*最後に添付するのでよかったら今後の参考にしてください。

奨学金は学生すべてが持ってくるわけではないですが(半数以下と思いま

す)、奨学金付きだと印象がかなり良くなりますからぜひ応募することをお

勧めします。私は平和中島財団から奨学金をいただきました。以下に日本か

ら応募可能な奨学金のリストを記載するので良ければ参考にしてください。

奨学金一覧:http://www.iccworld.co.jp/scholarship/list.shtml

平和中島財団:http://heiwanakajimazaidan.jp/

総じて日本からの応募者は少ないので、応募が多い国の応募者と比べると

日本人応募者はそれだけでも有利かと思います。また冒頭に述べたとおりス

タンフォード材料工学科は日本からの応募者をもっと求めています。更にス

タンフォードはとても住みやすいところで、気候も温暖でほぼ一年中カリフ

ォルニアブルーと呼ばれる青空が続きます。嫌なことやつらいことがあって

も忘れることができましょう。

日本人もとても多い地域で,日系スーパーだけでも近隣に4つ、日本食レス

トランは至るところにあります。食生活に困ることはまずありません。日本

からのアクセスもサンフランシスコ⇔東京間には直行便があり便利で良いこ

とずくめです。留学希望で面白そうな研究室が見つかれば、ぜひ当学科への

応募を考えてください。質問はもちろんいつでも歓迎です。

*コンタクト用のテンプレート

Dear Professor _______,

I am a final year undergraduate student of the four year Bachelor of

..., Electrical Engineering program at the University of AAA, Japan.

I am interested in pursuing graduate (doctoral/masters) studies at

_________ in the semester commencing Fall 2011. After browsing through

your university'shomepage and several your papers, I noted that your

research group's interests concur with my desired area of specialization

which are:

* A

* B

* C

I am really very keen and enthusiastic about joining your research

group under your guidance, and it is in this context that I am writing

to you. I would be grateful if you could spare some time to evaluate my

credentials, which I have summarized in my resume (I have attached my

resume).

Presently, I am working on my thesis Project (Final year thesis)

titled- "ABC"

under the guidance of Prof. DEF. This involves …... (Please see the

enclosed research summary for details)

In my junior year, I presented GHI…

Besides my regular coursework, I have opted for a number of specialized

electivesto further my understanding in my interest areas. Currently I am

doing an elective on "HIJ" and am planning to take up an elective "KLMN"

in the next semester. (A

brief of such courses is included in the resume)

During my summer training, I worked as a Research Assistant under the

guidance of Dr. B and Dr. C, at A corporation, Japan on a project titled

"ABCDE".

I request you to make a frank assessment of my chances of securing admission

withfull financial aid in the form of Research/Teaching Assistantship to the

________under your guidance. I assure you that given a chance I would do you

and your university proud.

I would be glad to send you any other information and would appreciate any

suggestionsthat you may like to offer.

Thank you and hope to hear from you,

With warm regards,

Sincerely yours,

xyz

email...

tel...

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執筆者自己紹介

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松田佑介

2002年東北大学工学部機械・知能系卒業

2005年東北大学工学部工学研究科機械システムデザイン専攻修士課程修了

2003-2004年カリフォルニア大学サンディエゴ校交換留学

2005から2008年8月まで日立グローバルストレージテクノロジーズにてハード

ディスクドライブの研究開発を経て、

2008よりStanford University Materials Science and Engineering,

Ph.D. programに在籍。専門分野は材料工学(機械特性)および表面分析。

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編集者自己紹介

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青木敏洋

2000年熊本大学材料システム博士前期課程修了(修士)

2003年アリゾナ州立大学学際材料科学・工学プログラムPh.D.修了後、

John M. Cowley Center for High Resolution Electron Microscopyでの

博士研究員を経て、2004年9月、JEOL USA Inc.入社、2009年より米国Lehigh

Universityの客員研究員も兼務。専門は電子顕微鏡法のナノマテリアル研究

への応用。

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編集後記

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冬学期もすでに3週間が過ぎてしまいました。

学科では来年度入学者選考が大詰めのようで、

担当スタッフは大忙しのようです。

例年通りたくさんの書類がオフィスに溢れています。

記事にも書きましたが日本人応募者は毎年少ないようで、

なぜ日本からの応募者は少ないのか?

と上記スタッフから以前聞かれたこともありました。

研究では初めてシミュレーションに挑戦しています。

実験出来ない現象を理解する必要に駆られてなんですが,

今まで実験一筋だったのでなかなか苦労しています。

生みの苦しみと楽しんではおりますが。

(松田)

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編集後記

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カリフォルニアのベイエリアには仕事で良くいきますが、松田さんも仰って

おられるように天気も環境も素晴らしいところです。私の住むボストンも良

いところではありますが、冬になると非常に寒く雪も多いので、カリフルニア

の青空が羨ましく思えます。実は昨日は午前中にふぶき・積雪で息子の学校も

私の仕事も休みになりました。これをSnow Dayと言いますが、先週も大雪で

Snow Dayがありました。今年は雪が多いボストンです。

(青木)

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編集責任者: 青木 敏洋

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