非場所のネストワーク

非場所のネストワーク —パフォーマンスからパソーナンスへ—

豊島重之

虚空と海豹、なんてネッスル(快い)なソナンス(響き)だろう。二人のテーマはペルソナとネスト。ペルソナは人格・仮面・役柄の謂だが、ペルは境界・貫通・過剰、ソナは音・声・共鳴、さらにネストは巣、ネセンスは無垢・不可知論、ゆえにペル・ソネストは不可知論を超える仮装行列である。

海豹は音のエンドレス・ループを行列する。

虚空は声のヴィデオ・サイクルを行列する。海豹は北海のオーロラに吼えて、音のネットワークを送信する。虚空はヴィデオのオーラに慄いて、声の巣造り=ネストワークの中で幼虫に退行していく。まさしく非場所のブーツ・ストラップ状のコラボレートだ。パフォーマンスが脱フォームならば、彼らの脱音楽をパソーナンス(=ペルソナンス)と私なら命名する。7月12日が愉しみだ。

収録者註:1986年7月12日:UZU音楽パフォーマンス「ペルソナの巣 II/Nest of Persona」(構成・主演/コ・クー&アザ・ラシ(東京UZU)、制作・共演/吉井直竹(八戸UZU)・米内晃ほか、八戸市公民館ホール)に向けて書かれたテキスト

(初出「TATA86 非場所連弾」/1986)