「68ー72*世界革命*展」いよいよ始動

「68ー72*世界革命*展」いよいよ始動

豊島重之

言うまでもなく写真は「still=静止・不動」であり、刻々と移り変わる現実の一瞬の切断面にすぎない。と同時に、単なる静止ではなく、静止なるがゆえに限りなく未完の、動的な静止・切断である。そこには「still=まだなお」現実化されてはいない過去の出来事が回帰・生成してくる。写真の現在とは、いわば未来の「still=蒸留器」でもあるからだ。

一月末の本欄にイカノフ花田喜隆が「写真=名/名の前で」を執筆しつつ、七月企画展の写真・映像・ポスター作品公募を呼びかけたが、多くの問い合わせやエントリーがあって正直驚かされた。こんな写真があったのかと。

ことに八戸生の月舘敏栄の写真は69年東北大学闘争の隆盛から壊滅までの貴重なドキュメンテーション。東京生の半田晴子の写真は60年代高度成長の残骸が「21世紀のモンスター」と化して再起動するかのようだ。

それに加えて沖縄生の写真家比嘉豊光「68〜72年沖縄コザ闘争」や、長野生の写真家北島敬三の未発表の大作「79年東京騒乱」や、68〜72年ゴダール映画分析の精鋭たる横浜生の美術家平倉圭のポスター連作が耳目をひく。

京都生の佐藤英和や名古屋生の柏瀬八峰や八戸生の伊藤二子・花田悟美の新作も期待できるが、とりわけ長野生の写真批評家倉石信乃が、企画展テーマに呼応した映像作品(!)に初挑戦する。

同時開催の「イカノフ全国フォーラム」には、福岡やトカラ島で活躍する盛岡生の写真家大島洋、著書「1968年」で知られる新潟生の文芸評論家絓秀実、福島生の先鋭的な詩人稲川方人、沖縄生の文化人類学者前嵩西一馬、静岡生の演劇批評家鴻英良、広島生の写真家笹岡啓子、神奈川生の美術批評家土屋誠一ら各氏、ほか大勢のゲストがこの夏、八戸に結集する。これを見逃す手はない。

(初出:「東奥日報」/2008年3月11日)