第7回
どこまでもどこまでも落ちていく。それは夢ではなく足元の中空感を伴った現実の落下で、着 地しない無尽にして無窮の浮游。もがきの時は既に終わり、諦めとは違う静謐の中でいて、静かさには永遠の記憶が宿る。シャーマに連れられ た先でセラフィカの説明を聞くことにする。セラフィカの照射前には意識のフォーカスが大切で、フォーカスした対象にのみ照射は作用すると 前置きがあり、「あなたは何にフォーカスしますか?」と尋かれたが答えるのは先伸ばしにする。次に照射時間について質問を受ける。照射時 間を長くすれば効果は長くなり、一か月持続させたければ40分、140ユーロかかるそうだ。時間は40分とすぐ に決められたが、強化目標を考えている時にさっき地下神殿の最後で見た人類の宮殿の巨大な男の像が浮かび「男性性」と口に出して確定し た。
狭い四角い部屋の真ん中に椅子があり、四方と天井に大きいセラフィカが設えられている。ど のセラフィカにも電線が繋いであるここが照射室で、中央の椅子に座る。40分、体の変化 は特に感じずに過ぎた。部屋を出て来るとガラスケースにセラフィカ・グッズを並べて売っていたがどれも買わない。一人歩きながら「男性性 と攻撃性の間には何の関係もない」という気付きが脳を浮上してくる。女性を愛し愛でることだけが唯一男性性の特徴だ。奈落への無限降下は 対するに男性性の生命力をもってしてかろうじてバランスを取ることができる。そもそもここjGに いること自体浮游の漂泊でなくて何だと言うのだ。突然、ロワール川の川辺が浮かぶ。川辺に座って流れをただ眺めていた。行く先もわから ず、南を目指すことしか頭になかった。南は南仏なのか、スペインのアンダルシア地方なのか、それとも北アフリカなのか……、まったくわか らなかった。
無限の落下はロワール川の前から続いている。エクス・アン・プロヴァンスも、グラナダも、 カディスも、パリも東京もjGも漂着地居留地にすぎない。