枯葉が走る
「おーい、すごく早いぞ」
「さっきまで雨だったのに」
「追い抜くぞ」
「もっと行くよ」
「面白いかけっこだ」
「風に乗ってどこまでもいくよ」
「アッ止まった」
「水にぬれてると落ちたけど乾いたよ」
「もう一度走ろうね」
「うん、いくぞー」
「おーいみんな」
「キラキラしてるよ」
「おい、遅れてるやつ枝で頑張ってるぞ」
「いくぞー」
「走るとアセだらだら、でもすぐ乾いてもっと速く走るよ。爽快」
「そうかい。いくぞ」
「高く高く」
「おい。神ヒコーキが追いかけてくるぞ」
「やばい、こどもたちがはしっている」
「いきますよー」
「がんばってくださーい」
子供たちは勢いよく樹の木立のそばの道を走って追いました。
「おい、もう暗くなるぞ、仲間の木にぶつかるなよ」
「何か言った」
「言いません、腹減った」
「あはっは。腹減っただと。俺たちは平気さどこまでも走るぞ」
枯葉は、まだまだ休みそうにありません。
「帰るかー」
「はい、行きます」
「おなかすいたー」
「走るぞ」
子供たちは帰っていきました。
枯葉は夕陽にニッコリとあいさつしました。
「ありがとう。あしたまたね」
枯葉は静かに木の根元で眠りにつきました。
じめんからありさんとかこがねむしにだんごむしにみみずさんたちがでてきて。
「いただきまーす」と木の実を食べていました。
枯葉は静かに見ていました。でもなんかざわつくなと思っていました。
枯葉の道
翌朝めざめたらすっかり、仲間は道に溜まっていました。
みあげたら真っ青な空でした。
「みんな起きたか」
「野球少年が来たぞ」
「みんな勢いよくバットをふっているね」
「さあ僕らも動くぞ、あったかくなったからね」
「風よこい」
「吹くぞー」
空の雲が息をいっぱいに吸っています。
「さあ、来たぞ」
枯葉は一斉に飛び立ちました。
「おーい、落ち葉が飛んでくるぞ、逃げろ」少年たちはグランドの真中に集まって、大笑いです。
「みんな、渦になろうよ」
「おい、なにをするんだー、えい」
少年たちはバットで枯葉を打っていました。
「だめだよ、そんなことしたってぼくらはほらひらひらひら」
「おもしろいことするな」
「遊ぼうぜ」
「もう遊んでるよ。僕らは練習中なんだけど」
「つまらないよ、遊ぼう」
「試合中はだめだよ」
「わかった」
「いこうぜ」
「飛ぶぞ」
少年たちは楽しそうに集まって、走り出しました。
「おい、まってよ、ぼくらもいくよ、えいっ」
枯葉は勢いよく走りだしました。
「おーい。あんまり邪魔するなよ」
「君たちも仲間をいじめないで」
「わかったよ、一緒に遊ぼうよ」
「そうしようよ」
「えい」
「またやったな。目隠しの術」
「なにをする」
「きみたちまたなぐってきたろ。やめるんじゃないのか」
「殴ってないよ。飛ばそうと思ってバットを振っただけだよ」
「怖かったよ、それだけはやめてくれ」
「目隠しも怖いよ」
「男子何してるの、枯葉をいじめないで。私たちの友達よ。髪飾りになってくれるの」
「僕らも遊んでるんだ」
「練習じゃあ、ないの」
「やっているけど、枯葉が邪魔するんだ」
「なんだ、それなら私たちが集めて髪飾りを作るよ」
「ありがとう」
枯葉もほっとして、
「助かった。ありがとう」
空の雲もにっこりと笑いました。
「枯葉さん、奇麗にするから」
「ありがとう。ぼくらもやりすぎたのさ。でもかけっこはやめられないんだ」
「女子はずるいぞ」
「枯葉さん、一緒に遊ぼうって」
「わかった。練習開始」
「枯葉集め頼むぞ」
「さぼらないでよ」
「わかっている。次は勝つぞ」
雲はにっこりと笑いました。
少年たちはボールを追い続けています。
「おい、サッカーのれんしゅうもやるぞ」
「がんばって、落ち葉さんたちはあつめたよ」
「けるぞー」
「ゴールはあっちだ」
「いくぞ」
「がんばって、かっこいい」
「ゴールだ」
「まけないぞ、蹴り返せ」
「キーパーはいるぞ」
子供たちは駆け巡りました。
枯葉は走れなくて残念でした。
「おねがい、みんながおわったらぼくたちをとばして」
おんなのこは、「わかっているよ、たかくとぼうね」
といってくれました。
「4年ぶり」
「また勝つぞ」
「真っ暗でボールが消えた」
「ほらあそこ」
高く飛んだ枯葉が教えてくれました。
「とったぞ」
「アウトだ」
「もう、おなかすかないの、私たち先に帰るよ」
「ありがとう。がんばるよ」
「ありがとう、また遊ぼうね」
枯葉はにっこりとあいさつしました。
男子は、暗くなって、
「枯葉さん、また明日遊ぼうね。おなかすいたー」
といってかえっていきました。
枯葉は、ぐっすり眠っていましたが、夜の星と月が、
「とんでおいでよ」
とさそったので、
「夜にかけっこだ」
「まけないぞ」
と遊び始めました。
枯葉は翌朝もグランドで子供たちを待っていましたが、
「こないね」
「もうすこしまってみようよ」
「今日もいい風が来てるよ」
「飛んじゃう」
「そうする」
「いくぞ」
「まけないぞ」
「でもちょっと体がひりひりするよ」
枯葉の体は、いつの間にか破れていました。
「ちょっと休憩」
「そうだね」
枯葉たちは、木の根元で静かに眠りました。
「ぼくたちたのしかったね」
「また飛べるよね」
「虫に気を付けて寝よう」
「おやすみなさい」
「おやすみ」夜露は枯葉の体に水をやりました。
「おはよう」
「具合はどうだい」
「とべそうだよ」
「もう少し寝てよう」
「枯葉君たち、これから遊ぼう」
「いいよ、飛ぶよ」
枯葉は風に乗りました。
「いけ、やっぱり早く飛べない。足が痛いよ」
「大丈夫。怪我をしているよ」
「うん、僕たちそろそろ冬のお休みになったみたい。やすまないとつよいかぜにのれないんだ」
「ぼくたちゆっくりあるくから」
「うん、今日はもう無理だ」
「わかった、君たちをゆっくり休めるところに運ぶよ」
「ありがとう」
「まだ頑張れるよね」
「うんぼくたちはここできみたちをみているよ」
「息が苦しいの」
「もう眠い」
「わかった、今日は僕たち野球の練習さ」
「がんばれ、春になったら空から応援するよ」
「春になったらって、明日は」
「あしたはもうだめみたい、とりあえず春になるまででさよならさ」
「せっかくなかよくなったのに、きみたち元気になって。時々お見舞いするよ」
「ありがとう」
枯葉は静かい目を閉じました。
木枯らしは高い声を出して飛んでいます。
春は遠いけど春のにおいはもうすぐきそうだ。
枯葉はぐっすり眠りに尽きました。
「お休み、枯葉さん楽しかったよ」
「始めるよ。投げるよ。僕等も春には優勝さ」
「はい」
子ども達はあかるいこえではしりました。
枯葉は静かに眠りました。春を待っています。
「今日は、調子いいぞ」
「もっと走るぞ」
枯葉は静かに聞いていました。
枯葉は、静かに
「さよなら、また春に」
と言って目を閉じました。
2023/12/15