第6回
関連しない二つを結び付けてその間に意味の繋がりを確信する。こうした妄念の支配を許すと止処がなくなる。部屋に戻ってベッドに横になった。電気スタンドの黒いコードが白い壁にくっきり浮き上がって見える。ここはどこであるのか? 質問を変えよう。ここはどこである意味があるのか? jGがとても遠く感じられ、この場所がどこであっても構わない、どこだっていいじゃないかと思えてくる。白く化粧をした窓外の風景は現実を離れた異世界を形作り、孤を強調する。ただここにこうしている安定感が心地よく、一時間遅らせて貰いはしたものの、シャーマとの約束が煩わしく感じられた。眠りは少しも訪れず、身に慣れぬ緊張が体中を駆け巡っては疲労困憊を土産として置いていく。心の深い部分に沈殿した地下の風景は埃っぽさとともに言葉にならない脅迫を突き付け、安易な日常への回帰は逃げと同等だと烙印を捺す。
成長とともに身につけてきた衣がある。鎧とも言える。自我という鎧。それを脱ぎ捨て去るのは今だ。長い間立ち塞がる壁だと思っていたものが扉で、鍵は自分で持っていた。混乱の中から気付きが芽吹き、進める確信が生まれる。躊躇は他人への漠然とした怖れに基づき行動を抑制してきた。もういい。自由になるのだ。部屋の扉が酷く煩わしく思え、廊下に出て深呼吸をする。旅立ちは時を選ばず、今だっていいと顔を見せないまま背中を押す声が聞こえる。それでも約束通りシャーマには会いにいく。ミソサザエと違って笑顔のシャーマは車のドアまで開けてくれ、向かった先はクレアだった。きのう一人で行ったとも言い出せず、案内されるがまま彼女に付き従う。新鮮味はないが視点が変わる。シャーマに薦められて黄色いカードセットを買い、まるで観光気分になる。
旅の途中で長逗留を思い描いていたjGだったが、意味が色褪せた。予定を変えてまでここに来る意味があったのかどうか。昨日ピアノ演奏を許してくれた女性が擦れ違いざまにウィンクを送ってくる。幸いシャーマに気付かれはしなかったが、心に蟠りを持って話すと声がくぐもる。シャーマには悪いが「気分が優れない」と案内を途中までで断り、片隅の椅子に身を潜めた。その様子にシャーマは酷く心配をしてくれ、セラフィカの照射を奨めてくれた。