桜
まだ、かおをだしてくれない。私は毎日眺めている。枝を伸ばして、なまめかしく、話しているようだ。
「わたしはここよ」
「今朝寒かったろ」
「また会えたね」
「あともう少しで、日差しが温かくなるよ」
「まちどおしいわ」
「乾いた土も暖かくなるからきみはきれいになるよ」
「冬も大切ね」
「そう、雪も君をきれいにするよ」
「ありがとう、おじさん前を見て歩いてね」
「けさのきみもきれいだよ」
「ありがとう、ほっぺがあかくなるわ」
「君はここを通る人の暮らしを輝かせてるんだ」
「ほんとかなきのうこどもにけられたわ」
「それは見ていたけど、それは君を蹴ったんじゃあなくて、友達とじゃれてた時バットを勢い良く振って、君を蹴ったみたいだったよ」
「そうだったのかな」
「怒って妖怪になったらいけないよ」
「おじさんのつごうでいきてないわ」
「ごめんいいすぎたかな」
「おじさんいいからもういって」
私はとぼとぼと歩いて離れるしかなかった。
「桜さん、また明日。もう夕陽もしずんでしまった」
月が明るく桜を照らしています、
細くてしとやかな枝が踊っているようです。
「桜さん、もうすぐ夜明けですよ」
「おはよう、桜さん、今日もきれいだよ」
私は帰ってから、
「今日も君を描いてみるよ」とはなしかけて、スケッチをし
今日やっと君の姿が見えたようだ。君は美人な人間さ。
「桜さん、また会えるね」
「おはよう。今日もきれいに腕を伸ばしているね」
「おはようございます」
「やあ、やっとはなせたね」
夕陽がもうすぐ、季節が変わると言っていたよ。
桜さん、また明日。
桜さん今日もまた月明かりで踊ってるね。
この後また君を描いてみるよ。
「おじさん、ベンチが開いてるよ、こないの」
「今日もここから君を眺めてるよ」
「ごめん、あしたまたゆっくりきみをみるよ」
君はまた外灯と月あかりで踊っているね。しばらく雨がないからのどが渇いて歌うのも忘れたんだね。
「おはよう、今日も元気だね」
「おじさん、今日も杖を持って歩いているの、おかしいよ」
「それじゃあ杖をちょっと浮かして歩くか、ほいほいはいっと」
「そっちがいいよ」
夕陽もわらっていました。
「桜さん、そんなに笑って楽しいのかい」
「ええワンちゃんもはしゃいでいますよ」
「それではステッキのように腕にかまえるか」
「おじさん、こんどみずをのんだら、さとうなしで」
今朝のお月さまも君を見て笑っていそうだよ。
「ということはブラック」
「おじさん健康に気を(笑)」
桜さんも冗談がきついな。
「おじさんいまわたしのわるくちをいったでしょ」
しまったばれた。
「桜さんは美人だよ」
「今言ってもダメ」
「ごめんまた明日」
「おはよう、とおりすぎたけど、今日もしっかり踊っていたね」
「おじさん、ブラックよ」
「ブラック、黒」
「そうよ、おじさん」
「そう、腹黒いよ」
「やっぱり、まちがいなくそうよ」
今日も君の枝には星の雫が光っているね。
がく。
「おはよう、桜さんブラックのコーヒー飲んだよ」
「おじさん、馬鹿か」
「桜さんの枝はきれいだよ」
「枝だけか」
桜の枝はこちらをにらんでいました。
「蹴られろ。子供に」
「おじさんまた言った」
「奇麗だと言っているのに歌でも歌え」
「らーらーらー」
「わかったもういい」
子どもたちが私を見て笑っていました。
桜さんは、グランドの表面を揺るがして朗々と歌い続けています。
桜さんの根元で涙した若い旅人思って歌っていました。
「大丈夫よ、私の香りで怪我も治るよ、ブラックよ」
「なんじゃそれ、桜さん、そのままの香りでいいよ」
「おじさんまた聞いた。面倒くさい」
あー夕陽だ。そろそろ帰るか
「おじさん二度と来るな」
「またくるよ」
「砂糖入りでいいがからしも入れろ。笑わせろ」
「およ」
私は杖をあげて笑いました。
「つんまらんぞ。修行してこい」
「桜さん、美人なのに、歌でも歌え」
「ホーホーほー」
いぬがびっくりしてとびあがって桜さんをけってしまった。
なによ。
通りかかったおばさんが、指さして
「ちゃんと濡れてる」
と言いながら上を見て歩いていきました。
桜さん
「やられてしまった、くそおばさんが」
「桜さん美人なんだから言葉に気を付けようね」
「おじさんがまた言う」
夕陽が根元を乾かしていきます。
桜さん
「時々君は歩いてるね」
「いいわ、私は美人よ」
おばさんは、歩きながら指差し確認をしていきました。突然
ここの実は食べていいのかしらんと聞いて私はびっくりしてうなずいたら私の目を見てうなずいてしっかり拾って口に入れました。桜さんは「犬のおしっこかかっているよ」といったのでわたしは「だまっとけ、し」と言って、後ろを向いて向こう森を杖をついてみていました。
「おじさん、なにみているの、失礼ね」
「いや、みなかったよ」
「逃げるの」
「ごめん、また」
「おじさんは卑怯者」
「ブラックで」
「ミルクと砂糖なしでしょ」
「今日は砂糖入りのブラック」
「違うよ、砂糖とミルクは両方入れるの」
「それでブラックなの」
「そうミルク入りブラック」
「じゃあ、それにするか、でも砂糖は少なめに」
「わかんないの。決まっているの」
ワンワン
おまえおしっこしていばるなよ。わたしはあたまをなでてやりました。
おばさんはまだゆびさししながらあるいていました。
「桜さん、本当にブラックコーヒーが好きなんだよ」
「ブラックね」
「桜さん今日も霜が降りて寒かったね、もうすぐあたたかくなるよ」
「そろそろつぼみを出してよ」
「痛いのでいやよ」
「まあいいけど、犬が来てるよ」
「失礼な奴」
「また後で、ブラックコーヒーを飲んでくるよ」
「桜さん、ブックコーヒーで目が覚めたよ」
「当然よ、私は美人よ」
「そう美人」
「おじさん、美人だけなの」
「おしとやかであたまのいい」
「それだけ」
「コーヒーで面白い人」
「人って言ったね」
「あ、桜さん」
「まあ今日は、見逃しておくわ」
「やっとかえっていいのかな」
「いちいち聞くな」
「では、また」
「おはよう、桜さん今日も霜がついている絵」
「コーヒーは砂糖入り」
「いらない」
「みるくは」
「いらない」
「ということはブラック」
「そう」
「ブラックで」
「ちょっと待って」
慌てて桜さんカップを引き上げて、
「はい」
「また入れたな」
「コーヒーはミルクと砂糖入りがいいの。おじさんが変」
「桜さん、また私の荷物をチェックしたでしょう」
「おじさんが不審者だからよ」
指さしおばさんが、笑って歩いていきました。
「ブラック早く出せ」
「はい」
私はとりあえずベンチに座ってゆっくり飲んだ」
「ぬるいぞ」
「寒いので早く飲んで、くそおやじが」
「わかったから、きみは美人なんだから、しずかにしていてよ」
「あなたには、私の花はみてほしくないの」
「まいったな、君の花が一番好きだったのに、花を咲かせるのをやめるのか、おばさん」
「おじさん、ジジイになったね」
「君はおばさんになってもきれいだよ」
「おじさんコーヒーが、さめるよ」
「熱いのをもう一杯ください」
「砂糖入りのブラックね」
「それでいい、後で歯を磨くから」
「おじさん、はい、砂糖だけ入りブラックね、面倒くさいやつ」
「では、ゆっくり味わって飲むか」
私はゆっくりベンチに腰掛けた。
若い女性が犬を連れてきた。
犬は桜の枝を見上げて喜んでいた。
指さしおばさんがまた根元をさして私の目を覗いてうなずいて、ドングリを拾ってまた食べました。
「おじさん、止めてよ」
「おばさんはにがてなんだ」
「駄目オヤジが」
「桜さん、もう一度言うけど言葉は優しくね」
「くそ」
「桜さん、ブラックコーヒーはおいしくいただいたよ、カップはここに置くよ」
「おじさん笑えるからまた来てね」
「はいよ」
私は今日も桜さんをスケッチした。
「おじさん、いつも描いているの、こんどみせて、ふとっていたらなぐるぞ」
「じゃあ見せない」
「出ていけ」
桜さん、また怒ったな。
「美人なのにもったいないブラックもう一杯」
「親父笑わせろ、歩け」
私がベンチを立ったら若い女性が来てケータイを開いて立ち止まった。
「名前は」
「ないの」
「では君の名前は美保さんにするといい」
「はい、おじさん」
「え」
「おじさん、私の知り合い」
若い女性が驚いていた。
「ごめん、私はこちらの美人の桜さんと話していたんだ」
「そうか」
「美保待った」
若い男性がやってきた。
「おじさんへんなの」
「なになにかしたかこのじじいい」
「おじさんこの桜とはなすんだって」
「ああそれか、この桜僕が通ると時々こんにちわと話しかけるんだ」
「え、あなたもなの」
「いいから食事に行こう」
私はほっとした二人が歩いていく後姿を送った。
「なあ美保さん、これからは、あまり若い男の子をだますなよ」
「爺うるさい、でも私は美保でいい」
「では美保さんまた今度ブラックを」
「またそれかめんどうなおじさん」
「わたしは死ぬぞ、長生きしたいから」
「このじじい、狂ったか」
「狂ったか、ようやく子供たちが集まってきたな」、私は帰るか、コーヒーはブラックで」
「はやくいきなくそじじい」
私はゆっくり歩いて帰った。」
子ども達は夕方遅く暗くなるまで元気に遊んでいた。
「長生きしても君は美人だ。もうすぐつぼみをつけるよ」
「ありがとう、コーヒーを飲むよ」
「名前は気に入ったかい」
「まあまあね、笑わせろ、歩け」
私が歩き始めると、桜の美保さんが
「はははは」と大笑いした。私が歩くのがそんなにおかしいのか。
美保さん笑ったな。犬がそろそろ来るぞ、また子供に蹴られてしまうぞ。
「おじさん、名前は」
「おじさんでいい」
「おじさん、コーヒーブラックで」
「あーありがとう」
「おじさん、おじさん」
「美保さんまたお願いするよ、今朝も元気そうだね。また犬が来てるけど」
「飲まないの」
「ベンチに座っていただくよ」
「ありがとう、あー美味しいよ、美保さん」
「さっさとのめこのくそじじいめんどうくさいやつ」
「私はやっと一息ついたよ美保さん」
「いちいちうるさい」
「わかったから、静かに風の音を聞こうよ」
「おじさん、聞こえないの、風も笑っているよ」
「聞いてみるよ」
私は、コーヒーを味わって、目を閉じた。
「美保さん、おはよう、今日もまだ寒いね。つぼみは膨らんでいるね」
「美保さん、紅茶はあるの」
「また、面倒くさいことを言う、やばい犬だ」
「美保さん、ダージリンブラックで」
「うるさい、早く行け、歩け」
「美穂さん珈琲もいただくよ」
「まだ飲むのか、歩け」
「お姉さん、何か言った。僕キャッチボールをするよ」
通りがかった少年が美保さんを見上げていった。
「おじさんが、この桜の木のお姉さんと話してたんだ」
「嘘だ、撲に行ったよ、歩けって、ごめんかけっこしすぎた」
「君、そのおじさんを殴ってやれ、喜ぶぞ」
「桜さん、そんなことできないよ」
「君は賢い子だ、そのおじさんはめんどうくさいおじさんだよ」
「このおじさん、いつも僕たちを応援してくれているんだ」
「面倒くさい、コーヒーを入れたから、早く飲んで歩け」
「美保さんまた笑うだろう、くそ」
「美保さん、雷と雨だ、わたしはかえるよ」
「逃げるのか、このくそ爺」
「この雨は美保さんも助かるね」
うるさいくそ爺早く歩け、笑えないぞ」
そうか私は帰ろう、雨に濡れるのは嫌だからね。
「美保さん、昨日の雨できれいだよ」
「雪は私大嫌い、少年野球もうるさいし」
「わかったからコーヒーブラックで」
「じじい、また飲むのか、紅茶じゃないのか、めんどうなやつ」
「そうかコーヒーの後紅茶でおかわり」
「図々しいだろただ飲みして」
「料金があったのか、使用料ははらっているはずだが」
「私が今私が、料金を決めた」
「105円」
「イチゴか」
「当り前だ」
「払わんといけないな、手錠は嫌だから」
「入れるから早く飲んで歩いて行け」
「お願いします。飲んだら歩きますよ。おじゃましました。また来ます。」
「来るなと何回も言ったのに面倒なくそ爺」
「またきます。ほいほい」
「くるなといっているのに、ついかりょうきんは1005だ」
「はいイチゴ一つ持ってきて食べます。美保さんはなしね」
「どこまでもばかオヤジめ」
「歩くかな、杖をついて」
ちょうど走ってきた小さな子供が私の姿を見て不思議な顔をして笑っていました。
「美保さん、子供の笑顔は、素敵だね」
「まだそこにいたか、ボケ爺」
「またね」
「美保さん、昨日の雪は、奇麗だったね、君のようだった」
「あたりまえよ」
「また、コーヒーをね」
「ブラックで」
「歩くか」
「ボケるなよ。くそ爺」
「美保さん、スタイルがよく見える朝だよ」
「爺まだ来ないのか、コーヒー淹れたぞ」
「美保さん、ごめん今日はいけそうになうにない、君は描いたよスタイルがきれいだよ」
「顔は、ダメってこと」
ナイフを手に持っていた。
「ごめん、君は何度も言うが、一番の美人だよ」
「当り前です。その血筋ですから」
「よく二人並んでいる人の一人でしょ」
「そう美人のほうが私」
「美保さん、今日は行くからコーヒー、ブラックで」
「来るのか、くそ爺」
「美保さん.今日は行ったんだけど、ゆっくり通らなかったから気付いてくれなかった」
「しょうがない、くそ爺」
「美保さん、今度は歩いていくから、コーヒーよろしく」
「くそ爺、何か言ったか、またくるのか」
「頼むよ、コーヒー」
「砂糖入りか」
「いいえ」
「ミルクはいるのか」
「いいえ」
「というとまたブラック」
「はい」
「この馬鹿、またか追加料金取るぞ」
「イチゴ一つね」
「100万円だ。5はなしだ、くそ爺」
「美保さん、頼むよ」
「くそ爺、それですむか、歩け」
「しかたないほれ」
「ベンチでゆっくりいただきます」
美保さん今日も機嫌が悪いけど、いつもきれいに立っているね。いつも見てるから大丈夫だよ。
2024/1/19