グランド・公園
私は、四季の移り変わりをグランドから教わる。
グランドを歩いていると土が季節の変わったのを教えてくれる。
冬は霜柱をバリバリとつぶし、春にはアリがいきなり歩いて巣穴が見えて、夏の前に露は、靴を汚し、夏は土埃でにおって、秋には落ち葉が杖を滑らす。
グランドはしずかにわたしたちをみまもってくれる。毎日ラジオ体操をしている。
今朝もグランドの道は小枝が落ちて、きのうのかぜがさむかったことをおしえてくれた。
夕方になった今日は暖かくて子供の声がグランドに響いて冬休みが近いのを教えてくれる。
木立の影が長くなると夕陽の季節冬が深まってくる。タンポポの花が咲くと春が近づいたようにおもえる。ドクダミの花が咲きツユクサの青い花が咲くと梅雨の季節。もうすぐ夏。
あるかないと気づかない季節の味わい。古人の都人がめでた、四季は今もここにある。
グランドは、教えてくれる。普通の営みを。おおくのひとがグランドで憩いのゲームや運動をしている。
「今年も咲いたね」
「桜もまじかだよ。梅や蝋梅はもう咲き始めているよ」
「ありがとう。いい香りだ」
やはり、夕日は毎日沈んでいく。もう少し日常の時間が穏やかに動いてほしい。
グランドから木々の枝を揺らす風の音が聞こえてくる。
枯葉が枝の先で揺らいで頑張っている。街灯がその葉を照らしている
冬には霜柱が懐かしい。
グランドの土が固くなる。
「足元にはどんぐりが転がっている。
グランドの木は、いつも話しかけてくれる。
「寒くないかい、葉はみんな枯れておちたね」
「大丈夫、枝の先を見て」
「あーふくらんでいるね」
「僕らには冬も大切な季節なんだ」
「ありがとう、君と会うのが楽しみなんだ。また明日」
「おじさん気を付けて」
夕陽の影が長く伸びていた。
冬の匂いは、曇り空に広がる、グランドを見上げてしまった。
茶色くなった葉が枝で数枚揺れていた。
「気持ちよさそうだね」」
「うん、今日はあまり寒くなくていいよ」
「元気でいたね、また明日」
「また明日」
今日の枝さんも元気に手を振ってくれていた。
「おはよう」
「げんきにがんばって」
薄紅色に膨らんだ枝が、土の上で恥ずかしがっているように見えた。
「おじさんも気を付けて歩いてね」
「ありがとう」私は見上げて行った。
「おじさん前を見て、危ないよ」
枝の葉は今朝もゆっくり揺らいでいました。
グランドのみちは、すっかりかわいていた。
落ち葉たちは今日も植え込みに集まっていた。葉っぱの陰に枝が落ちていて、杖を取られしまった。この感覚はヒヤッとする。すってんころりんは、嫌だから。
「今朝も元気だね」
「うん、朝の空気が気持ちいいよ」
グランドは、大きな声で答えてくれた。
「どうだい、寒くないかい」
「そろそろ、霜柱で肌が荒れてかゆくなりそうだ」
足元が声の響きで揺らいでいる。
「それでは、少し、歩いてマッサージしてみよう」
「ありがとう」
低い声が長く響いてくる。
芝生も少し困った顔をしている。
遠くで、冬の雷がうなったように思えた。
グランドは、日常の時間が移り変わっていく姿を見つめている。少年から老人まで、いろんな声を聞いてすましている。
「おじさん、また会いましたね」
若い夫婦が、犬を連れて散歩していた。
「息が白くなって、眼鏡が曇っている」
「二人はまたにこやかに手を振ってくれました。
わたしは、ゆっくり歩いて
「おはよう」
といった。
「おじさん、いまなにかはなしていた」
「うん少し、グランドと」
「えっ」
「グランド」
「グランドって」
「グランド。地面」
「地面って、ここ」
「そう、足元」
「話せるわけ」
「話せるよ、何か聞いてごらん」
「退屈じゃないの、いつもここで」
「みんなが来てくれるから毎日面白いさ」
「おじさん、面白い。聞こえたよ」
「よかったね」
ワン
「犬も喜んでいるね」
「おじさん変」
おかしい。ハハハハハ。
「おいグランド君、みんなよろこんでくれたよ」
「わーい」
低い響きがまた長く続いた。
わかいおくさんはわらってあるいていきました。グランドは、長い影をくっきり今日も映していた。少年野球が朝早くから始まっていました。
「おじさん、ありがとう」
わかいおくさんはわらっていきました。
霜柱がにょきっと出ています。町内の清掃で汗をかいている人たちもにこやかです。
グランドに集まっていた少年野球の子供たちは、にぎやかに帰っていきました。グランドは少し寂しそうです。
「おーい、元気か」
「夕日が気持ちいいよ」
「ゆっくり休みな」
「もうすぐみんなまた来るから、たこ焼きを食べてくるそうだ」
「おなかすいたな」
「おじさんも食べなよ」
「ゆっくりお茶を飲むか」
今日は、みんなケーキがたのしみだろう。チキンも食べるだろう。
「おはよう、今日は元気かい」
「よく眠れたよ、みんなも来るよ」
朝食が済んだおじさんおばさんがさっそくゲートボールを始めました。道の向こうに光がさしてグランドの霜は白く光っていました。
今は静かに夕陽を待っています。
2023/12/25