濡れた緑と赤いつつじ
道のベンチに二人の少女が座っています。
「今日も晴れたね」
「うん」
「曇ってきたね」
「雨」
「うん」
「今日はかえってお茶にしょう」
「うん」
「奇麗な緑が見られたね」
「つつじの赤もきれい」
「なにか、つくる」
「いいわ」
「パンケーキはどう」
「うん、バターとメイプルプルシロップでね」
「騒ぐ鉢に舞う蝶々。緑の小径」
「そうね」
「蜂はあぶないわ」
「いきましょう」
「はい」
二人の少女はスカートの裾をつかんでたちあがりました。
「靴が濡れる前に帰りましょう」
「蜂は静かよ」」
「ねえ、チラシみた」
「うん、アイスの店がオープンみたいね」
「あのね」
「私のうちの、ネコがね」
「うん」
「雨が止んだら、歩こうね」
「ネコ、とりをたべちゃった」
女の子ははしゃいで、グランドにいきました。
「おい」
「なんだ」
「昼は食べているか」
「食っているよ、たいてい卵かけご飯だけど」
「贅沢しているな」
「俺は、しょうゆかけご飯だ」
「俺はしょうゆは使えないよ」
「貧民だな」
「笑うか」
「笑うしかないな」
「貧民やろー」
「飯も食えんか」
「飯は食うがおかずがない」
「お前、お茶は飲んでいるか」
「茶なしの梅干し茶だ」
「それは白湯」
「し湯で、風呂に浴びるか」
「なんだそれは」
「ユダ」
「宗教じゃないぞ」
ベンチにゆったり座った中年の男性が、ふと空を見たようです。
「聞いたか」
「なんの話だ」
「今歌ったろ」
「誰が」
「メジロかな、鶯の声」
「それか、聞こえたよ」
「眠くなるな」
「ここがいい、向こうで将棋を始めたら面倒だ」
「一寝入りするか」
「いい風だ」
「そうだな」
「昼は」
「寝てから帰ってから食べるよ」
「抜かないのか」
「食べるよ」
「梅干しか」
「キュウリもつけるよ」
「贅沢だな」
「白いご飯は抜きだけどな」
「なんだ」
「なんだとはなんだ」
「こちらは、昨日の残りの、焼き飯握りだ」
「贅沢をすると長生きしないぞ」
「わかった、ありがとう」
ベンチのオッジさんは、ゆっくり立って歩いていきました。
「おい、暑くないか」
「薄いよ」
「違う、寒くはないだろう」
「まあ、温かい」
「熱くはないか」
「薄くはないよ」
「じゃあ、太くないか」
「細くないよ」
「じゃあ、暑くないか」
「薄いよ」
「着てるものがな」
「来てるのか」
「あー来てるよ」
「いかないのか」
「来るんだろ」
「来るならいい」
「行くよ」
「行くのか」
「来るからいい」
「進むよ」
「あー歩くよ」
「立つのか」
「あー少し運動をしよう」
「いいことだ」
二人の男性は、ベンチの背に手を当ててゆっくり立ち上がりました。
そして二人は昼を食べに自宅に帰っていきました。
「打ってくださーい」
「捕るよ」
「あー」
男の子たちが、飛び上がってベンチに並んで座りました。
「いいよ」
「終え買いしまーす」
「はい」
「やりました」
「捕りまーす」
「抜けるぞ」
「捕りました」
「走りまーす」
「回っていいです」
「ありがとうございます」
「入ります」
「よろしくお願いします」
「いけるよ」
「投げます」
「行け」
「すごいぞ」
「あー」
子ども達の歓声がグランド委響いていました。
ベンチ御後ろのつつじが赤く燃えて笑っています。
「なあ、晴れたな」
「ああ」
「始まるぞ」
「ああ」
「自転車でき始めたな」
「ああ」
「やるのか」
「やめとく、腰がいたい」
「商店街のベンチに行くか」
「ハトポッポ」
「なんだ」
「パンの耳をやりたいけど、わしが差を食べてないわ」
「なんだ、おまえもか」
「新聞よんだか」
「今朝は拾ってない」
「これだ」
ズボンの腰ポケットからおじさんは新聞を出した」
「これはいつのだ」
「昨日で消費期限切れのやつだ」
「コンビニの芽で拾ったな」
「ああ」
「商店街で読むか、ここはもううるさい」
「ああ」
「腹減ったな」
「ああ」
「飯は一食分あるぞ」
「お前くえ」
「クエか、ぜいたくだな」
「ああ」
「歩けるか」
「まあ」
オジサンはベンチの背もたれに手を添えてゆっくり立ちました。
オジサン達は杖を突いてゆっくり道を歩いていきました。
あかいつつじの花が笑っていました。
「おい」
「なんだ」
「笑ったか」
「いや」
「そうだ、若い女性の笑い声だった」
「今度は笑い声か、ソーダのことか」
「ソーダのむか」
「それはまだいい」
「そうか」
「100円あるかな」
「のみたいんじゃないか」
「まあ、水を」
「みずあら、じゃぐちがむこうにあるよ」
「助かるな」
「飲むか」
「ゆっくり飲むよ、コップはなしだな」
「拾ってくるか」
「いい」
「じゃあ、飲め」
おじさんはゆっくりじゃぐちをひねりました。
「おお」
「口を近づけろ」
「気持ちいい、頭からびっしょりだ」
「地下水だから、シャワーするな、もったいない」
「オジサン達、服が濡れていますよ」
「水が滴るいい男たち」
「オジサン、風邪ひかないでね」
「おーい、おえさん」
「なんか、涼しいでしょ」
「嗣は何になるのか」
「オジサン達は碁か、将棋でしょ」
「おええさんたちは」
「もちろんフラダンスよ」
「あー、そうか」
「お前笑らったは、あの姉さんか」
「違う、このつつじだ」
「つつじか」
「赤いほうのやつ」
「赤か」
オジサン達は杖を突いてゆっくり歩いていきました。
「そういえば、白いおもわらったな」
「あーあの美人お若いほうのお姉さんね」
「え、誰だ」
「見ないのか」
「美人さんと言えば、髪の長い、白い服の若い女性か」
「お前よく見ている、じゃないか」
「見てるよ、美人だな」
「そうだよな」
「つつじの白じゃないのか」
「多分美人大江江さん」
「お前、ついて歩いてるのか」
「たまに」
「え、球はまずいぞ」
「うまい球があるのか」
「とにかくまずいぞ」
「オジサン達、なにをやっているの」
「もう将棋が始まっているよ」
「おめやるおか」
「やらない」
「フラダンスのお姉さん、やらないよ」
「やらないんですね、水をちゃんと占めてください」
「あーびしゃびしゃだ」
「飛車か、角はいいのか」
「それはやらない」
「そうか、仕方ない」
「商店街のベンチに向かうのだが、どうするよ」
「服を乾かすんだ」
「クリーニング屋さんはなくなっているぞ」
「クリーイング屋さんってなんだ」
「コインランドリーとは違ってちゃんと洗濯して、アイロンをかけてくれるんだ」
「それはブルジョアの店だろ」
「平民でも使えるんだ、岡江を出せばね」
「自動販売機みたいなものだな」
「それはコインランドリーだ」
「違ったか」
「あそこの八百屋さん見たいいきちんと丁寧に漬物をつけている店のようなものだ」
「なんだ、話せばわかる店なんだな」
「店というのはわかったみたいだな」
「その店がどうしたんだ」
「服を乾かすだろ」
「そうだよ」
「それをしてくれる店だ」
「なんで店に行かければいけないんだ、商店街のベンチに行くだろ」
「売れたまま座るのか」
「座っていれば乾くだろ」
「それでは、お姉さんに怒られてしまうぞ」
「白い服のか」
「面倒くさいほうの人だ」
「緒音そこの二人、そこから離れて、子供も使うのよ」
「ほら聞こえたろ」
「聞こえた、壊れたバイオ理と壊れたクラリネット音だ」
「仕方ないな、ほかに行こう」
オジサン達はゆっくり歩いて広場に戻っていきました。
「水を飲むか」
「浴びるのか」
「あびるのもいい」
「乾かすんだろう」
「飲むよ」
「浴びるよ」
「浴びると気持ちいい」
「やめとけ」
「飲むよ」
オジサンは蛇口をひねりました。
「おー」
「おー」
「飲んだか」
「冷たくてうまい」
「語は持ってきて、冷茶漬けにするか」
「コメあるのか」
「一昨日の残りがある」
「オー豪華だな、ブルジョアか」
「まあな、茶碗は欠けているけど」
「それは利休茶碗だな」
「つないでないよ」
「桔梗さんと譲二さんの手はつながっているよ」
「誰だ」
「白いほう」
「あー美人さんか」
「それはもう」
「そうか」
「隣町に引っ越した」
「コメ梅干しはつくか」
「お前ブルジョアだな」
「では、魚を焼くか」
「ブルジョアめ」
「コメだけで食うんだ」
「冷たいお茶だな」
「よもぎちゃにしよう」
「よもぎ、とるのか」
「ああ」
「無帯すぎて新芽はないぞ」
「ないよりいいぞ」
「水を取ってくる」
「あびるおか」
「もういい」
「腹が減って売ヨモギ鳥もできん」
「お姉さんを呼ぶか」
「あれは、嫌いだ」
「子供たちと一緒に採るか」
「そうしよう」
「おーいあつまれ」
「なんだ、あのーへんなおじさん」
「みんなでよもぎとりをしよう」
「ヨモギ―」
「採ったことある人」
「おりまーす」
「だいじょうぶでーす」
「やります」
「ありがとう」
「みんなそのおじさんのいうことをきいちゃあだめ」
「来た、いやなお姉さん」
「オジサン達だめですよ」
「みんないいよ」
「おばさんがやってくれるって」
「まあずうずうしい」
「ちがいましたか」
「やりましょう、ヨモギは使いますから」
「ありがとうございます」
「お腹が、すいてできなかったんです」
「ヨモギ雑炊にするのですか」
「いえ、食べものにするんです」
「雑炊ですか」
「ゾウ、だって」
「たべきれん」
「ブルジョアだな」
「残り御ご飯に水を入れて、食べるんだけど、ヨモギを入れたらいいなと思ったんだ」
「まあ、これ、食べるんですか」
助成は指さしました。
「ここには、うちの、りりーのおしっこがかかっていますよ」
「なあんだアルコールの味がついているのか」
「いいえ、アンモニアです」
「なんでもいいけど味がついているんですね」
「いいえ、排せつ物です」
「とにかくお腹がすいたから、ご飯にするおだ」
「おじさんこれ食べるおですか」
「ああ」
「お餅に入れるんですよね」
「そんあぜいたくはしない」
「あなたたち、犬がおしっこをかけるものをたべるんですか」
「駄目なのか」
「話しているとお腹がすくから、とりあえずこれを取っておこう、これだけで十分だ」
「おじさんたち」
と女性が指をさして笑いました。
「君たちありがとう、もう、採ったからいいよ」
「おじさん、またね、おばさん指をさして歩く大母子里ですね」
「君たち」
じょせいはこどもをゆびさしました。そして歩いていきました。
「早く帰って食べよう」
「残りのご飯持ってきて水を入れるよ」
「みずをとってかえればいい」
「お椀がないよ」
「そうか」
「水をくむのか」
「飲むんだ」
「水をかけるんだろ」
「梅干しにな」
「飲むのか」
「かけるよ」
「走るのか」
「食べてからな」
「そうだろ」
「よもぎをとったから」
「ごはんをとってくる」
「はしな」
「走るのか」
「走れない、腹が減った」
「水を飲む」
「とりあえずそれで、もつ」
指さしおばさんは、指をさして
「あっちですね、これいいですか」
「はい」
「これおいいしいですよ」
ゆびさしおばさんは、あかい実を枝からとって、食べました」
「おー」
「おー」
「あれを食べよう」
「助かった」。
「捕れるか」
「倒れそうだ」
「杖をしっかりツイてれば大丈夫だ」
「掴んだ」
「口に持っていくんだ」
「あー」
「やったな」
「シャツにひっかかった」
「いつになったら食事になるんだ」
「しばらく、水にしておこう」
「浴びるのか」
「飲めばいい」
「よっし」
「実はもう取らない」
「ヨモギもういい」
「シャツを買えるぞ」
「買えない、替える」
「捨てるのか」
「髪を拾って着る」
「紙か、ブルジョアだな」
「当たり前田だ」
「ブルジョアはめしはいらない」
「水で十分だ」
「水は飲めるのか」
「浴びる」
「お前、また浴びるのか」
「服を乾かすんだ」
「パンツは売れたのか」
「パンは守っている」
「「水では足りん」
「昼を食べたいなあ」
「みをたべたろ」
「シャツに全部落ちた」
「お前また汚したか」
「浴びるか」
「浴びるのか、水を」
「乾かす打」
「コインランドリーはなくあったぞ」
「自動販売機か」
「洗濯機だ」
「桶と洗濯板じゃないんだ」
「危機だよ」
「機械か」
「指さしロボットだ」
「嫌なおばさんだ」
「お前、聞かれたら、木の枝でやられるぞ」
「実をくれるのか、いらん、汚すだけだから」
「汚すか」
「しょんべんはしない」
「当り前田」
「赤い実で腹を満たせ」
「見るのか」
「満腹になれと言っているんだ」
「甘いといいが、口に入れたとたん、汁が飛んでいくから、皮を食べたみたいだ」
「川一杯の水なら満腹になるだろう」
「皮だよ」
「獣か」
「あー、今日はやめた」
「そうなの」
「あれ、来てた」
「さっきね」
「いい単車じゃない」
「まあ、ようやくローンで買った」
「アイスよ」
「汚すなよ」
「ケチ」
「別に、座れよ」
「いいクッションね、ゆっくりすわれるわ、たかくあってできもいい」
「まだ走らないよ」
「いいよ」
「オー、若いのが集まってきた」
「そろそろ、いくか」
「帰って食べよう」
「歩けるか」
「水でなんとかなったよ」
「君たち」
ゆびさしおばさんが、バイクのタイヤを指さしました。
「おばさん、指さすなよ」
「タイヤが汚れている」
「タイヤ、洗うよ」
「雨はなし」
「飴もってるよ」
「歯は、ある」
「これは食べるな」
「おい、葉はあるだろ」
「歩か愛で食べるか」
「おばさん、また指をさしている。
「食べていいだろ」
「食べるな」
おばさんは、指をさしてあるいていきました。
「おい、たべるなって」
「食堂か」
「タベルナだろ、スペインの」
「やっと朝飯たべたのに」
「水でんとかなったけどな」
「水かけご飯」
「梅入り」
「贅沢するな」
「水だけか」
「それがうまい」
「グランドを眺めてる」
「いつもの、緑を眺めている」
「お前、水は大丈夫か」
「ズボンは濡らさない」
「あめはこあいかな」
「つつじの赤いのが揺れている」
「よもぎと、どんぐりでたべるか」
「お湯は沸かすのか」
「火は使わない」
「日は照ってるか」
「照りやきにするか」
「真っ黒になるのか」
「そうだ」
「ブラックか」
「黒いほうの美人さんか」
「砂糖とミルク無しのほうだ」
「お湯はどうする」
「もって来る」
「沸かさないんだな」
「コインランドリーのポットにあるかも」
「100円だ」
「小銭がポケットにないな」
「葉っぱのお金はだめだぞ」
「お前、やっぱり狐だったか」
「たぬきさん、葉っぱでは買えないよ」
「ばれたか」
「道理で神社によくいると思ったら」
「お前も床下によくいるな」
「なんだ、獣か」
「人間だと思っているが」
「葉っぱのお金を使うんだろ」
「まあ、かわいいしっぽ」
おばさんは指をさして笑いました。
「魚を釣るか」
「カエルにする」
「ザリガニはめんどうくさいぞ」
「ああ、一度鼻をつかまれた」
「あの、ハサミにか」
「そうなんだ図々しいんだ、三日間、鼻が赤く晴れた」
「タヌキのトナカイか」
「魚釣るのか」
「魚屋でな、海も川も無いから」
「それは高くつくぞ」
「葉っぱならたくさんある、今なら新鮮なのが沢山ある」
「人間は葉っぱのお金は使わないぞ」
「葉っぱじゃないお金なんかあるもんか」
「日本銀行発行のお金があるんだよ」
「なんだそれは」
「だから、紙でできたお金」
「自動半引きに入れる、銭とは違うのか」
「銭はわかるのか」
「時々道で拾って使うから」
「お前、それはまずいぞ、駐在に届けるんだ」
「注射をするのか」
「交番に届けるんだ」
「工場か」
「違う、病院の前にあるだろ」
「バスが止まるとこか」
「そこにある、赤いランプのある建物だ」
「そこで作っているのか」
「工場じゃない、お目が捕まる場所だ」
「恐ろしいな、閻魔様のいるところか」
「まあ、そんなところだ」
「なんでそこに行くんだ」
「お前が拾った銭を届けておくんだ」
「え、銭を取られるのか」
「捕られるんじゃない、お前が持っていたら盗んだことになるだ」
「結んでないぞ」
「と一句、拾った銭を使うと、お前が、地獄に落とされるんだ」
「ひろっやあいけないのか」
「そうだ」
「それじゃあ、釣りもできんのか」
「そういうわけだ、やめておこう」
「余計なことを言うな」
「それでこれからどうする」
「飯を食おう」
「釣るだろ」
「魚はやめておこう」
「また赤い実か」
「またシャツを汚してしまう」
「赤い花でいい」
「鼻か、それは痛いぞ」
「花だ、赤い」
「これは甘いですよ」
「出た、指さしおばさん」
「お前、危ないぞ」
「花もダメか」
「おばさんは、ダメだ、お姉さんにしろ」
バーン、枝バットがキツネの痛いところを打ちました。
「あー、石の銭ならいいな」
「だまっておけ、ひとつだけにしておけ」
「また駐在か」
「やりすぎると、花泥棒だ」
「鼻が盗まれると、痛いな、蟹か」
「つつじ、ひとつだけにしよう」
「食べるんだな」
キツネは一つつまんで食べて幸せそうに笑いました。
「おい、俺も食うぞ」
タヌキも一つつまんで食べました」
「痛い」
蜂が飛び出しました。
「なんだ、これは、水にしよう」
キツネは指さして大笑いしました。
「この葉っぱをつけて」
指さしおばさんがヨモギを指さしました。
タヌキはたまらずヨモギの葉っぱを鼻に押してました。
「おなかすい。べるぞ」
「お前、タ抜きでしゃべったな」
「ヌキ、だ」
「お前、田(タ)がないとこまるぞ」
「蜂が、(タ)をとっ(タ)」
指さしおばさんが、鼻を指さして大笑いしました。
「(タ)ヌキでしゃべってしまう」
「お前不便だな、自分のことが言えなくなった」
「わしは、立派な、(タ)ヌキなんだ」
「タをなくしたな」
「駐在に行くと戻ってくるか」
「蜂に取られたんだろ」
「それはまずい、蜂が駐在に預けられるのはよくない」
「でも、おまえからタを抜いたら、立派なヌキになるぞ」
「タ、はいるな」
「もどった」
「タ、があった」
「タ、でつなぐな」
「腹減った」
「た、か」
「いった」
「田が戻った」
「もどった、タヌキは出ていくか」
「出ていくのか」
「タ、ヌキだからな」
「抜くのか」
「タケノコがでてるから抜く」
「それはいい話だが、お前、前にタヌキ汁にされそうになったやつだろ」
「そうだった、あの時子供にしっぽをつかまれたんだ」
「鼻は無事だったんだな」
「まあそうだが、やっぱり、抜くのもやめた」
「ヌキは、無しか」
「ヌキの無い話の事か」
「タを抜かないといいいんだ」
「抜かない」
「タアリさんになるのか」
「アリは食べないよ、さっき働いていたからな」
「鼻は食べないんだな」
「タ、ヌキになるのはごめんだ」
「お前、タヌキだろ」
「あもぐると、安全だ」
「穴にか」
「穴にはクマがいる」
「悪魔がいるのか」
「それではしかたない」
「私は稲荷神社にいくよ」
「そうか、では、わしは、茶釜のある寺にいってみるよ」
「お前、また茶釜に化けて、火をつけられて尻尾を出すだろ」
「そうだった、茶釜も失敗だった。石の銭を拾って、温泉に行くよ」
「石の銭を見せたら、猿に引っかかれるぞ、爪痕が、残って痛いぞ」
「おめえ、やられたのか」
「私は、石の銭は使わん、揚げを、使うんだ」
「揚げで,買えるのか」
「買わない、揚げが守ってくれるんだ」
「だますんだな、化けるんだろ」
「揚げがあったらな」
「不便だな、葉っぱでできるのに」
「それだからしっぽが出るんだ」
「じゃあ、揚げを使うか」
「揚げは高いぞ」
「それは拾えないのか、向かいの豆腐屋のオヤジの頭をつついたら、落としていくだろ」
「それは、豆腐屋のおじさんにいつも分けてもらっているよ」
「葉っぱはいらないんだ」
「手伝っているんだよ、毎朝ラッパの音が聞こえるだろ」
「ああ」
「あれは俺の鳴き声だ」
「自慢か」
「まあな」
「俺は太鼓を打てるぞ、金の鈴もブラブラでなるぞ」
「お前、蕎麦屋の前に立っているだろ」
「お前は、うどん屋だな」
二人は思い出したように蕎麦屋とうどん屋に向かいました。
「今日は人が少ないな」
「救わないのか」
「救うよ」
「メダカか」
「メダカだ」
「揚げるのか」
「揚げる」
「食うのか」
「店で出す」
「見せるだけか」
「お前、しっぽがみえてるぞ」
「子供につかまれて、投げられる」
「また、ぶらぶら揺れているぞ」
「わしは、立って眺めているだけだ」
「坂徳利をもって酔っているのか」
「これは、水だ」
「浴びたか」
「浴びるよ」
「びしょびしょだぞ、酔っているだろ」
「酔ってない」
「蕎麦は打ったか」
「高く飛んだ、ホームランだ」
「コーン、コーンか」
「行くよ」
「来ない、コーン」
「だから行くって」
「行くのか、来ない、だけか」
「お稲荷さんの鎮守の杜に来い」
「恋したか」
「コーン」
「とうとうまたゲートボールだ」
「店の警備は、もういい」
「お前、金の玉をフリフリしすぎだろ」
「タ、ヌキじゃないぞ」
「お前、そのしっぽは何なんだ」
「赤い実のそばでやられた」
「揚げのうどんがいいんだ」
「食えたのか」
「まだ、働きの時間が足らんと言われた」
「食う気だったんだな」
「空気は、自動車の排気ガスで臭かった」
「わしも蕎麦が食えなかったよ、子供がしっぽをつかんで怒ったら、もう出て行けと言われた」
「また、子供か」
「そうだ、鎮守の杜で寝るか」
「またお前住処を変えるのか」
「葉っぱで、買えるか」
「お前、買う気はないだろ、下水管で寝るんだろ」
「そこはだめだ、臭い水でビシャビシャになる」
「飛車になるのか」
「角だ」
「オー、それはいい手だ」
「詰めでなくて、崩す奴だ」
「お前、また掘るのか」
「彫らない、痛いのは嫌だ」
「とにかく鎮守の杜にいこう」
「あそこは、指さしおばさんの生息地だぞ」
「あいつはどこにでもいる」
「そうか、行くか」
二人は、鎮守の杜につきました。
「おお、獅子」
「熊じゃないぞ」
「獅子」
「黙れ」
「おー、獅子が、ほえた」
「吠えたか、おめでとう,当たりだ」
「くじでもしたか」
「した、した、下には観音さまだ」
「面倒だ、わしは茶釜になるぞ」
「観音様にお茶を出すのか」
「嫌だ、炭に火をつけられたら、熱いじゃないか」
「仁王様がにらんだぞ」
「嘘ではありません、お茶にします、コンビニでお湯をもらってきます」
「おい、おい、風呂屋の隣のコインランドリーのストーブの上のやかんでもらってこい、茶釜に入れてくるんだろ」
「いやそれも熱いので、やかんごと借りてくる」
「お前バンダイに座っている、風呂屋の娘をだますだろ」
「娘がいるのか」
「いるいる、すごい美人さんだ」
「おい」
「は、仁王様」
「うるさい」
「すぐ持ってきます」
「二人とも、静かに」
「はい、観音様」
「恵比寿様が、葉っぱはだめだといっていますよ」
「恵比寿様にまでばれていましたか、心を改めます」
「お前改めるのは心だけだろ、またやるな」
「やらない」
「あれ、雨か」
「変だな、とても晴れているよ」
「そこの美人さん」
若い、いい男が声を掛けました。
「なんでしょう、いい人」
「やったな」
タヌキはつぶやきました。
「若い人、その美人のしっぽが見えませんか」
「また指さしばあさんめ」
「オー目が覚めた、狐の嫁入りか、ちょうど茶釜があるから、お湯でも書けるか、火をつけよう」
「おー、何をする」
「タヌキまでいたか」
「オー、また火が付いた」
「窯がしゃべったぞ」
「これのお湯歩石井よ」
「指先ばあさん、助けてくれ」
「コーン、コーン」
「また、来ないのか」
「雨はやむぞ」
「飴になるみたいだが」
「この杜の参道の祠に猫がいる」
「虹が消えた、コーン」
「花嫁さん、今度お茶でもしましょう」
「ヨモギですか」
「オレの、鼻からとるな」
「お茶します」
「若い人、狐ですよ」
「わかっています。働いて盛ります」
「えー、働くのか」
「俺たちのんびり行こうよ」
「お茶はのみたいな」
「釜にあるぞ」
「お前の湯をおむのか」
「炭をたくんだな」
「た、いてるよ」
「いま、た、をいったな」
「タ、ヌキにな」
「雨が止んだら尻尾を出すのか」
「お嬢さん、嫁になったので、昼ご飯の用意がまだよ」
「本当に働くのか」
「機織りも」
「鶴に織ってもらったほうが、高く売れます」
「しっぽを売るかな」
「やめてくれ、ウナギをと獲ってくるから」
「働いてくれるんですね」
「わしは、一人になるのか」
「猫がいるだろ」
「狐さん、あなたは、私のお使いよ」
「白狐になります」
「よかった、踊れますね」
「夫、わしが太鼓を打とう」
「私が笛を吹くよ」
「オー、わしも舞うぞ」
「獅子踊り、と、キツネ舞」
「猫ダンスもります」
「タンスはいらない」
「ダンスです」
「にぎやかだな」
「縁日になるぞ」
虹が空高くで笑っていました。
「きつねさんや、わしの釜は暑くてたまらん、火を消してくれ」
「淡々タヌキ御何を抜く」
「火を抜いて湯をぬく」
「抜いたら、どうなる」
「気持ちよくなる」
「お前、それをいまいうか」
「熱いのはたまらん」
「熱いのがそんなにいいのか」
「よくないから抜いてくれ」
「抜くのはお前の特技だろ」
「特技jy内、蜂に抜かれたんだ」
「蜂か、それは痛いだろ」
「あーとっても、二度とやりたくない、ヨモギの葉っぱが聞いてよかった」
「ヨモギの葉っぱは、揚げるとうまいぞ」
「揚げか、豆腐屋の娘は美人だな」
「銭湯の番台の娘はどうだった」
「行ってみてくる」
「おい、消さなくていいのか」
「いい、美人を見てくる」
「また雨にあるぞ」
「ちょうどいい、冷めるかも」
「それは、何度か」
「丁度だ」
「それは高いな」
「丁度だ」
「数字で言えば何度だ」
「二度もいわん」
「一度いっただけだ」
「それはいい、ではもう一度、5度だ」
「五度も言うのか」
「丁度いい温度だ」
「それはアイスのブラックだぞ」
「ミルク、砂糖なしだ」
「梨か」
「梨だ」
「梨を食うと泥棒だぞ」
「お前たち閻魔大王に合ってこい」
不動明王さんがどなりました。
二人は鳶がって鳥居の上に立ちました」
「こら」
指先おばさんに石を投げられました。
「いて」
「まちゃられた」
「飛び降りろ」
猫が下から見上げていました。
祠から
「早く帰ってこい」
と男の人の声がしました。
「しまった、働かなければ」
「狐さん、お願いだから火を消してください」
「おー、火科、日が沈むぞ」
「穴に帰ります、火を」
「雨が降るから待っておけ」
「桶に水を」
「また、めんどうなことを」」
「熱い、暑い」
「どっちだ、もうすぐわたしは仕事だ」
「綱渡りをしなくては」
「落ちるな、やけどするぞ」
「太鼓もたたくし」
「私は、笛を吹きましょう」
「扇子を用意します」
「綱を渡しますよ」
「やーい、やーい」
子ども達がはしゃいでいます。
「お湯が」
指さしおばさんだ。
「降りて捨ててきます」
「捨てるな、お茶にする」
「そうだった、日本一の」
「ふつうでいい」
「わしの湯だぞ」
ピーヒャラピーヒャラピヒャララ、鎮守の杜は、夏祭りになりました。
「これ、あれ、それ、こっちもあっちも」
指さしおばさんお目は真ん丸になりました。
「おい、今日は祭りか」
「そうなったみたいだ」
「ずいぶん早いな」
「わしらにこえがかからんままはじまったぞ」
「だいたいにして、太鼓の囃子がなってない」
「なんだ、あのオヤジ、わしにけちをつけたな」
「一寸、撥を貸せ」
「蜂か、痛いぞ」
「痛く打つのは、下手だからだ」
トントコトントコトントコトン。
軽快な囃子が、森に響きました。
「綿あめ、食べる」
「りんご飴」
「梨飴もあるぞ」
「雨だらけになったら大変だ」
本殿の鈴が、ガラガラと、鳴りました。
「大当たり」
「今年は富くじを出したのか、しまった」
「買ってなかったのか」
「きがついてなかったから」
参道の奥から、歓声が沸いていました。
「おい、静かな朝のはずだったのに」
獅子が笑っていました。
ネコはネズミを追いかけました。
人の群れが、急に一方に集まって
「おい、危ないぞ」
「駐在を呼べ」
「押すな」
「鼠だ」
「猫に食わせろ」
「おい、なんか俺達には、何もないのか」
「しっぽが出たらおしまいだ」
「おまえ白狐にあらんのか」
「観音様にしっぽを取られてしまった、8本りっぱなのがあったのに」
「そうか、妖怪になれなったんだな」
「お前の金の玉は、鈴のようにはならんのか」
「そういえば、鈴が鳴れば、お前しっぽを8本にしていたな」
「だからよ、白狐には鈴の音がいるんだ」
「お目たち、いい加減静かにしろ」
「また、不動明王だ」
「ここは、天照大神のすみかだぞ」
「難民キャンプだろ」
「タヌキ、それはまずいぞ」
「あ、へそを取られた、太鼓が鳴らない」
「おーい、祭りは終わったぞ、焚火にしよう」
「消防団を読んで来い」
鎮守の杜は、めちゃくちゃです。
「おい、狐さん、なんでわしはここに来たんじゃろうか」
「個々は、廊下ではないぞ」
「分かってる、鎮守の杜だろ」
「わしは何で太鼓をたたいて、綱渡りをしてたんじゃろうか」
「ですから、廊下ではありません、いろいろ痛い目に合うので、ここにきて休もうとしたんですよ」
「しかし、………。熱いし死ぬる思いをしたよ」
「ついてないな」
「着かれたんじゃないか、何か悪い神様に」
「いや、飯脇男にもあった」
「あいつか」
「いや、違う、もっといい男だ」
「あいつだよ」
「あんな部男ではないはずだ」
「俺には同じ男に見えるけど」
「そうか、やっぱり、あいつも化けたんだな」
「同じだよ」
「そうか、悪い神様のいたずらか、狐の嫁入りだったのにな」
「お前の話も信用できんな」
「お前をだましても特はないよ」
「わしは、徳のある、タ、ヌキと呼ばれている」
「特になるなら,もっとうまく、だますよ」
「ところで指さしおばさんは」
「富くじが、おおあたりだったんじゃないか」
「こら、そこおコーンとぶらぶら」
「ひゃー、出た」
「なんか、パワーアップしたな」
「わたしゃ、これでござんすよ」
「なんか、高価な扇子に見えるけど」
「そうでござんすよ」
「おい、あれ同じ指さしババアか」
「失礼しごく、天罰じゃ」
バシッ、
「あ、やられた、枝まで高級になっているぞ」
二人は一目散に本殿の裏に逃げました。
「おい、いい名があるな」
「くまいたりゃばいぞ」
「蜂はいなそうだから、のぞいてみよう」
「覗くのか、助べえの介、タ、ヌキさん」
「わしは寝たいんじゃ」
「寝れるのか、わつぃはまたお腹がすいた」
「おい、中はすいてるぞ」
「そうか、広いか」
「広い、奥に鏡がある」
「おい、それはまずいぞ、魔法の鏡だ」
「やられた、鼻が晴れて、みっつになった」
「三つか」
「そうだ」
「四でないならいい」
「死ではない、恐ろしい鏡だ」
「あれ」
ゆびさしおばさんが鏡をゆびさしたとたん、いきなり、落雷と大雨になりました。
「オー、悪魔の鏡だ」
「どういたしましょう、蛇の目をさしていただけますか」
「狐さん、わしのでいくよ」
「お前鼻、みっつのままだ」
「あー、ヨモギをもらったお礼だ」
「そうか、ハスの葉のじゃお目を取ってくるよ」
「きつねさん、祠に行かなくても大丈夫か」
「蛇の目がないと、指さしおばさんだまらんからな」
「ハスの池は上野まで遺憾とないだろう」
「大丈夫だ。裏の集会所あたりにあるだろう」
「お願いします」
「あれ」
指さしおばさんがキツネのしっぽを指さしました」
「一本、二本、三本、四本、ご本、六本、七本、八本、まあ、ようかいきつねさん、赤の蛇の目がよかったのに」
「緑じゃあだめか」
「わしがなんとかあかくしてみるよ」
「ほらダヌキ、め」
「ほら、と言われても、早くしてくれ」
「生意気だな、めいれいするな」
「すみません、おねがいします」
「しょうがないわ、クスの木の下で雨宿りしています」
「鏡は見ないでください、雷の呪文を読んで、呼んでしまわれたら、死にます」
「まあ」
白狐は走って、集会所に向かいました。
「トコトン、トコトン、トン、トコトン」
タヌキは、腹太鼓を打って、応援しました。
キツネは、
「この辺なんだけど」
駐車場のそばの茂みを見て回りました。
「無いな、困ったな、まっているだろうな」
そうだ、狐は、団地の怪談あたりを見て回りました」
「狐がいるぞ」
「しまった見つかった、化けるのを忘れていた」
「タヌキなら汁にできたのに、狐は、ころしてもやくにたたない、でもだますやつだからこらしめてやれ」
人間たちは、追いかけようとしましたが急な雷雨で、遠くで観察していました。
「皆さーん、お願いがあります、指さしおばさんが鎮守の杜で雨になって困っています。買い蛇の目をかしてあげてください」
「狐は必死に呼びかけました」
「おい鎮守の杜、今日にぎやかに縁日を始めていたな、こどもたちもいっているぞ、みてこよう」
「赤い蛇の目だな」
「狐よ、ありがとう」
「社殿の裏にいます、タヌキが一緒に舞っています」
「おい、タヌキもいるらしいぞ」
「綱渡りがあったらしい」
「へそを取ってしまえ」
「オジサン達、社殿の裏の穴にある鏡を見ないで、魔術がかかります」
「あの神社にそんな恐ろしい呪術がつたわっていたのか」
「困りましたわ」
指さしおばさんはもう一度穴を指さしてしまいました」
ゴーン
ものすごい音が響きました。
「指さしおばさん、いけない、危ないですよ」
「おい、神社のほうからものすごい音が響いてきたぞ」
「子供が沢山言ったはずだ」
「とにかく傘を集めて急げ」
「狐よ、ありがとう、おしえてくれて」
狐は、助かった、だまさなくてよかったと思いました。
「あら、たくさんの蛇の目がきたわ」
「助かった、さして差し上げます」
タヌキは、赤い蛇の目を借りて、指さしおばさんに、傘を差しました。
「いい音」
「太鼓はならしていませんよ」
「シャリン、シャリンと、車輪の下ね、ヘッセよ」
「まずい、球が鳴ったか」
「オータヌキだ」
「へそを取ってしまえ」
「ヒェー、いきなりそれか」
「あのー」指さしおばさんが、また指さしました。
「みんな逃げろ」
タヌキはさけびました。
ドッカーン。
穴からもの杉音が響いてきました。
「タヌキめ、なにをした」
「おーい、違うタヌキは何もしてない」
追いかけてきた狐は汗をかきかき叫びました。
「指さしおばさん、穴を指ささないでください」
「だってたのしゅうございますもの」
「指さしおばさん、無事でよかった」
「指さしおばさん、雷ですよ」
「え、神在」
「そうですよ」
「鏡の力です」
「おーいだいじょうぶか」
「助かった」
「大丈夫です、ありがとうございます」
「おへそは晴れちゃいました」
「汁にできの」
「お茶を淹れます」
「茶釜になるおか」
「はい」
「綱渡は」
「やります」
「雨が止んだら、円一の続きをやろう」
「民阿讃、絵子ちゃんを助けてください。
手水のやねでふるえています」
「ニャーゴ、ニャーゴ」
「オー、もう大丈夫だ」
「お腹すきました」
「もうすぐサンマが焼ける」
「ありがとうございます」
「鼠を頼むよ」
「分かりました」
「コーン、コーン」
やっとまた晴れてきました。
もう人間の姿に、化けることはやめよう。
ススキの草むらで遊ぶのが楽しい。
「タヌキよ、銭はもういいだろ」
「銭が無くても飯は食えるか」
「あんとかなるさ」
「よかった」
「蕎麦は、は足りて食おう」
「働くのか」
「そうだ、太鼓をたたいて、わしは笛を吹く」
「鳴り物屋をするのか」
「僕は、鈴を鳴らします」
「オーネコも鳴り物屋になるのか」
「ぼくらは、ひげを弾きますよ」
「あ、ネズミさん」
「君も鳴り物屋の仲間だ」
「さあ、はじめるぞ」
ジャンたらトントンすーいすーい
「おいにぎやかで楽しい囃子だ」
「踊るか」
「あー、えーいえーい」
「歌で調子もつけるぞ」
「みんなで後でそばを打って食おう」
「おい、狐さん食えるみたいだ」
「にこ」
狐は笑いました。
「おーい、皆々様、アマテラスは笑っていますよ」
「あー神様」
「岩戸から機嫌を直して出てくれた」
「奇跡」
「今日は、蕎麦で祝いだ」
「狐の嫁入りではないぞ」
「あれわたくしの嫁が消えてしまいました」
「あれですよ」
指さしおばさんが、狐を指さしました。
「危ない、鏡の方向だ」
「あらようござんしょ」
「危ないですよ、アマテラス様にお叱り受けてしまいますよ」
「アマテラス様ですか、あちら」
「あ、また指さした」
「ようござんしょ、あれは、わたくしおずいぶん下級生の方ですよ」
「え、指さしおばさんも神様界のかたですか」
「ええまあ、そのようなところにもおりました」
「指差しの神、どうぞ、祠でおやすみください」
「そろそろそうしましょう」
「アーやっと鎮まった」
鎮守の杜は、みんな穏やかに縁日を楽しんでいました。
「りんご飴たべたい」
「綿あめはいいの」
母子が楽しそうに歩いています。
狐は、楠の幹の裏に隠れて、
「よかったな」
とつぶやきました。
「お前、この節でたたいたら、吹けるか」
「トコトン、トン、トコトン」
「ヒイー、ヒャララ」
「お母さん、お囃子」
「今日は獅子舞があるのね」
「おい、獅子頭」
「蔵の奥にあるのを取ってくるよ」
男の人たちが境内で獅子舞を奉納しました。
「まあー、厄をはらってくれてありがとう」
アマテラスはニコっと、うなずきました。
「あら、私歌わなくては」
「やばい指差しの神に気づかれた」
「マイクをくださいませ」
「指差しの神、ここはマイクは禁止です」
「そんなこと聞いてません」
「アマテラス様に嫌われますよ」
「なんで下級生に遠慮しなくてはいけないんですか」
「困ったな指差しの神を鎮めなくては」
「南無阿弥陀仏」
「それでよかったっけ」
「いいよ」
一斉に
「波阿弥陀仏」
というこえがしました。
「あら、待っているのね、歌いますわ」
「鎮守の杜に、湯武左氏の神の歌声が響きました」
「おい、また雷だ」
「誰も鏡は見てないのに」
「指差しの神だよ」
「あの神様をここに祀ってなかったとおもうけど」
「あれは神ではない」
「指さしおばさんだ」
参道大地蔵さんがあきれて口を開けていました。
「子の参道は、れきしがあるのにな」
「いろんなひとがとおったけど、神様になった人は初めてだ」
お地蔵さんは、しかめっ面で、祠をみつめました。
「まずいな」
「獅子舞の方、囃子を続けますか」
「お願いします」
「指差しの神にも、厄払いをしますから」
「おい、太鼓の節を変えろ」
「まかしておけ」
「トントッコトッコとトントン」
「ヒュー、ヒュー、ヒーラララ」
「カックカック」
獅子頭が、勢いよく祠を噛みました。
「狸さん、狐さん、ネコは助けたよ」
「ネズミもかわいがってください、僕たち食べるのをやめたので、チーズをあげてください、ひげの音がきれいなると思います」
「これ」
「あ、また指さし」
「チーズ、たっぷりのパンです」
「たべていいですか」
「ヨモギ入りですよ」
「ありがとうございました鉢も元気です」
「僕たちはそばを食べたので」
「鼠さんちょっとⅮ家食べて」
「あー助かった」
「わたくしうたいますわ」
「えー」
「だねで消火、あれです」
「指さした」
「鏡の歌です」
「ゴーン」
また雷が落ちた、火事になるぞ」
「消防向え」
「シュ」
日は一瞬で消えました。
「指差しおばさん、もう」
お地蔵さんたちは、大笑いしました。
「民でそばを食べよう」
「腹減ったな」
「ネギ、できてるだろう」
「今年は雨で出来が悪いけど」
「無いより、たべよう」
「タヌキ鍋は」
「彼はいい人だから、かんしゃしよう」
「酒をふるまうか」
「いいけど」
「やるよ、きっとフリフリを」
「一緒に踊ってやろう」
「囃子、鳴り物屋がいるからな」
狐は、喜んで、篠笛を高くつきあげて」
「ピーヒャラピーヒャラピヒャララ」
と吹きました。
「ちびまる子だ」
子どもたちは大喜びです。
「棉飴」
「雨はもう止んだ」
「tぬきは、おどけて、ふってしまいました」
「おーいやるな、うんち出すなよ」
「子供たちは、集まってボールを蹴って遊びました。
「わたくし、歌います」
「やめろおばさん、僕たちが歌うよ」
「まあ、なんでござんしょう」
「おばさうるさい」
「まあ」おばさんは、地蔵を指さしました。
「子供たちの歌を聴こうよ、おばさん、指をささないで」
「まあ、赤い蛇の目も来ないのに、どうしてこどもたちのうたをきくのでしょう」
「蛇の目はさっきタヌキがさしてましたよ」
「あなた」
おばさんの指はお地蔵さんに向かって、飛んでいきました。
「おばさん、落ち着いてください」
「何」
「静かに」
「山の~、山の~」
「子供たちが歌い始めました」
「なんて、下品な歌なの、拳がぜんぜんないでしょ」
「山~の~、こうでしょ」
「おばさん、今の名に、もっと一緒委歌おう」
子どもたちは大喜びでした。
「まあ、やっとわかったみたいね」
「おい狸、ネズミさん、お囃子隊もくわわろう」
「おっと、こちらも祠を噛んでおこう」
獅子踊りがまた始まりました。
「お母さん、もっとみていい」
「いいよ、後でちゃんとお参りしますよ」
「大当たり」
また男の人が大きな声で手を打ちました。
「あら、わたくし」
「お母さん、これ」
「女の子は富くじをお母さんに戻しました」
「あたったみたい、後でアイス食べようね」
母子の家はそれからとても豊かになり生活が楽になって、女の子も学校に行けるようになって、一生懸命に勉強をしました。
「おかあさん」
「なあに」
「白いご飯たべていいの」
「そうね、でもぜいたくはできないわ」
「何、あのお母さん、ちゃんとご飯は当たり前に頂くものよ、尾頭付きお魚の焼き物にお味噌汁が最低よ」
と指差しの神様が悲鳴のような声で指をさしました。
お母さんはそっと目にハンカチを当てて涙をウグイました。
「お母さん、また泣くのね」
「いいえ、ごめんね」
「あの指さしババアなによ」
「この小娘しつけもされてないな」
「指差しの神様、あのおかあさんいつもわたしたちにまんじゅうをわけてくれて、マフラーと防止をかけてくれるんです」
「地蔵の君たち、そんな物貰いでどうするの」
「これも修行です」
「何をそんな半人前なことを言っているの、わたくしはそのようなことは許しません」
「指差しの神様、どうも、私たちは違う世界を生きているようです、道か、この境内に来ないでください」
「あなたたちでていけば」
「ゴーン」
「出ていくのはお前だ」
「何よ下級生の癖に、生意気なことを言うの」
「分かりました、先輩、川向うに寝床をご用意しますので、ご案内します」
「川向う、あそこなら、栗も梨もあるから、でもスーパーが安っぽいところよ」
「私たちは、諸王店と緑の木陰があれば幸せなんです」
「何をそんなに貧しいことを言うの、大体この鏡緑の錆で使い物にならないわ」
「あ、また指さした」
消防団はびっくりしました。
「ごめんなさい大丈夫です、あの指さし御魔術は封印しました。
「この小生意気な奴、指は使わないわ、この枝で十分よ」
空に稲妻が上がっていきました。
「危ない、逃げろ、グランドに走れ」
「うるさいな、落ち着かん」
不動明王の弦具が、指さしおばさんの枝を断ち切りました。
「何よ、この部男目、この帯で締めて差し毛真する」
「まだそんなことを言えるんだな、お前に明日はないぞ」
「不動明王様、おばさんは私たちが、おもてなししますので勘弁してください」
「あれ、いい男ね、これに」
指さしおばさんは盃を手に持っていました。
トクトクトク。
タヌキの徳利からお酒を注ぎました。
「この酒は、今年最高のできなんだ」
「まあ、この程度で、銅賞にもならないわ」
「わしは、選外ので、いいんじゃ」
「さあ、参りましょう、スーパーも新しくなりますよ」
「車は」
「はい、参ります」
指さしおばさんは自動車のドアを指さして、座席に乗りました。
「では、まいりましょう」
「シートベルトをおねがいします」
「失礼な、安全運転でいきなさい」
「すみません法令で決まっていますので」
「下世話な世界絵」
「発射します」
「行くのですね」
指差しの神は、スーパーを指さしました。
「明日新規開店です」
「田舎のスーパーね、安物しか、あつかっていないのよ」
「私は助かっています、いつも夕方6時過ぎの値下げを待って買い物をします」
「タイムサービスは嫌いです。品物がいい午前中にうかがいましょう」
「いいですね、私は昼は、おにぎり2個ですましています」
「この貧民、黙れ」
「はい」
「もっと、豪華にしんさい」
「給料日前なんで」
「アマテラスがけちっているな」
「いいえ、感謝しています」
「お前騙されていないか」
「いいえ、私を助けてくれました」
「あー騙された、あの娘わたしを追い出そうとしてるんだぞ」
「騙された、というのは、何か、証拠があるのですか」
「うるさい、お前狐か」
「いいえ、タクシードライバーです」
「まあいい、ちゃんとラグジュアリーに運転しろ」
「なんですか、それ」
「いいから静かに運転しろ、エンジンの音がうるさいぞ、まだガガスのやつか、貧乏くさいせめてハイブリッドで電気にしなさい」
「トラクター上がりなんで、ハイカラ、なことはできません」
「田舎の貧民か」
「いいえ、ただの人です」
「わたくしは神ですよ」
「アマテラス様からお送りするように、言いつけられましたので、発車します」
「アマテラスめ、鏡を砕いてやる」
指差しの神は小枝を天に向けました」
ドッカーン。恐ろしく強い光線が落ちてきました。
瞬間車が大きく揺れました。
目の前の建物が崩れそうです。
この日、指差しの神は伝説になりました。
「消防団、市につけ」
「最大の災害にするな」
「祠に穴が開いただけだ、火を出すな」
「消化」
「消化はじめ」
鎮守の杜は守られました。
「つきました、ここです」
「まあ、杉の匂いがする大きな部屋ね、気に入ったわ、ここにしばらくいます」
「おーいみんな、指差しの神は川向うだ、みんなで手を合わせて拝め」
「波阿弥陀仏、波阿弥陀仏」
「これでいいのか二礼二拍手一礼でなくていいのか」
「それは神様にするんだ」
「指差しの神はちがうのか」
「そうだ」
「南無阿弥陀仏」
「波阿弥陀仏」
「風が止んだな」
「日が照ってきた」
「温かくて寝ちゃいそうだ」
「どうぞ、飲んででください」
「あー、いつもお世話になります、ありがとう」
女性は、ベンチに座った人たちに、紙パックの飲み物を配っていました。
「お、こぼした、うまいな」
「これは真直ぐ抱えて飲むんだ、背中を椅子につけて寝そべったらこぼして、ほらズボンを汚している」
「あー、これ一本だけなのに」
「天気がいいから選択したらすぐ乾くよ」
「そうだな」
ベンチの上で鳩が、羽ばたいていました。
飛行機お音が空の向こうから聞こえてきます。
広場には、母娘が、おいかけっこをしています。
戻りの木々は、緩やかに風になびいていました。
遠くから太古の音が聞こえてきました。
「なあ、今日縁日だったろ」
「ああ」
「今度、あそこでガラクタを並べてみようと思っているんだ」
「ガラクタ、か」
「いい壺に、皿だ」
「なるほど」
「向けはいいんだ、並べてみたいだけなんだ」
「いいだろう、私も何か探してみるよ」
「じゃあ、今度の縁日で」
「毎月第三日曜だろ」
「そのはずだ」
「じゃあ、来週の日曜だ」
「やってみるか」
「ああ」
「面白くなってきたな」
「宮司にひとこといっとけばいいだろう」
「あれは、古物商の許可がいるじゃないか」
「駐在に聞いてみるか」
「ああ」
「めんどうにならんといいが」
「めんどうにはならんよ」
「うまな」
「ゆっくり、飲んでくださいね」
「お嬢さんありがとう」
「ゆっくりのんでください」
「これは、ばななかな」
「いろいろありますので、もう一本飲みますか」
「だいじょうぶですよ」
「うまいな」
「うまい」
「今度、買い物に行こうか」
「買いも尾ですか」
「はい」
付き添いをしますよ。連絡ください」
「お嬢さん、次の絵に血で、壺を見に来てください」
「へー、壺ですか、鑑定団みたい」
「貴重なものなんです」
「見たいです」
「ぜひ来てください」
「おい、誘ったな」
「ああ、見てもらいたい」
「私も古い着物があったと思うので、並べてみるよ」
「駐在はぢ丈夫だといったよ」
「店にしければ大丈夫だ」
「もう一本のもう」
「お嬢さん、もう一本ください」
助成ヒ素が思想に広場のベンチを行ったり来たりしていました。
穏やかな広場の昼です。
「いただきます」
「おい、次の日曜だろ」
「ああ」
「天気になるかな」
「ティッシュあるか」
「ああ、最近配って二からな」
おじさんは、ポケットにてをいれて、
「あーあった、これだ」
「ずいぶんへたっているな」
「これじゃあ、ダメか」
「作れんことはない、こうまるめて」
「おじさん、それなああに」
「見ていてごらん」
「かわいい」
「テルテル坊主よ」
「お母さん知っているの」
「そうね、最近作ってないね」
「彫れ、これをつるして、お願いするんだ」
「あーした天気になーれ、よ」
「お母さん、面白い」
「明日も日本晴れよ」
「日曜まで持ってくれるといいな、ところで次の日曜に鎮守の杜御縁日においで、珍しいものを見せてあげるよ」
「わー、縁日、わた飴食べたい」
「行きましょうね」
「うん」
「楽しみにしているよ」
「綿あめに、りんご飴ね」
「やったー」
「おい、テルテル坊主ちゃんとつるしとけよ、女の子をがっかりさせえてはいけんぞ」
「まあ、そうだな、ズボンが乾いた」
「軒下、鎮守の杜の宮司に頼んでみよう」
「これから行くか」
「ゆっくりな、遠いぞ、商店街をぬけていかなくては」
「よいっしょ」
「大きな背中をずっしりと上げて立ちました」
「荒木をつけてください、どちらですか、手をもちますよ」
「お嬢さん、鎮守の杜に用事ができたので、大丈夫です」
「気を付けてください」
「はい」
「まあ、テルテル坊主」
「これを社殿の軒下にかけてもらうお願いに行きます」
「まあ、神主さん、知っていますから一緒に行きましょう」
「では、お願いします」
「はい、いきましょう」
「お願いします」
「バイバイ」
「またかえってくるから、おかあさんと遊んでいてね」
「はい」
「すみませんね、おじさんありがとうございます」
「では、いきましょう」
「よっこいしょ」
二人はゆっくりと歩いていきました。
「今日は安売りになってないな」
「少し時間が早いんだよ」
「宮司にあってからもう一度みてみよう」
「4時を過ぎてタイムセールのはずだ」
「総菜はまずいけど、おにぎりはいいから、シールをはってくれていればいいけど」
二人は、交差点で信号待ちをしていました。
「おい、魚屋、うまそうな塩焼きが見えるな」
「今日はよそう、年金前だから」
「そうだな」
「おいわたるぞ」
「鳥居までもう少しだ」
「坂の向こう御空が夕焼け色になってきました。
「オー、鳥居だ」
「狛犬ににらまれた」
二人は社務所に向かいました。
「お嬢さんありがとう」
「宮司さんおひさしぶりです」
「あれお嬢さんどうされました」
「一つお願いがあります」
「願い事ならアマテラス様イお祈りしますよ」
「いえ、このテルテル坊主」
「はい」
「これは私らがこさえて、道か、今度の絵に血の日が晴れてもらえますように、お願いしたものです、よかったら社殿の軒下にかけてください」
「分かりました、アマテラス様にも伝えておきます」
「ありがとうございます、お願いいたします」
「お嬢さん、仕事羽津ですか」
「はい、おかげさまで楽しんでいます」
「それはよかった」
「宮司さん、私ら、今度の縁日で、珍しいものを新部陽と思っています」
「ほう、ありがたい、なんでしょう」
「私は、古い壺と皿です」
「あー、骨董ですね」
「え、古いガラクタです」
「私はぼろ布です」
「面白そうですね」
「はい」
「先日の縁日は、指差しの神が暴れて大変でしたが、アマテラスとうまく折り合ったようで静かになっていますので、ゆっくり楽しんでください」
「はい、皆さんに見ていただければと思っています」
「オジサン達、わしらも楽しみだ」
「わたしたちずっと参道をながめているだけだから」
「お地蔵さん、近くで富士山が見られるんですよ」
「それは楽しそうですね」
「宮司さん、よかったら今度の縁日でお地蔵さんを連れて歩いていいですか」
「そうですね、お地蔵さんもう案十年も歩いてあいので、気をつけて歩いてください」
「わたしたちも杖をついてあるきます。ご案内をよろしく」
「私も手をお引きしますよ」
「お嬢さん、よろしくお願いします」
「楽しみができました」
「ありがとうございます」
「あーいい天気になった」
「机を借りてこよう」
「茣蓙でいいんじゃないか」
「そうだな」
「茣蓙、ございます」
「そうでございましたか」
「ひきましょう」
「はい」
「でも困りました、わたしは、椅子が必要です」
「分かったよ、私が並べるから見ていて」
「おじさん、遅くなりました」
「あ、お嬢さん」
「やりますよ」
「わたしがやりますから、こいつをみていてください」
「すまないな」
「多分貴重なものだ、個々の鏡ができたころの皿と壺だ、土のかたまりだけれど」
「面白いですね」
「此処でいいか」
「はい」
「では私の布を出します」
「わー、奇麗、これは、大正時代の着物です」
「面白い」
「皆さん、一段落したらこちらでお茶でもどうぞ」
「宮司さんありがとうございます」
「オジサン達、もらってきます」
「そうですか、ありがとうございます」
「待つか」
「待つわ、は、あみんだ」
「あみん、うれてたな」
「みたか深夜番組でのデビューのいきなりパンチラ」
「まあ、それが当たり前だの時代だった」
「結構テレビの前ですっぽんぽんになってたな」
「あの鶴瓶、公共放送でレギュラーをやってていいのか」
「まあ、つづいているからおまえみたいにみているひとがいるんだろう」
「俺は、鶴瓶威を見てるんじゃない、ゲストで出てくる若い女優さんを見てるんだ」
「わかった、それであみんの」
「待とう」
「待っているよ」
「帰って来いよもあったろう」
「その前に酔っ払いが天国から帰ってきたろ」
「アーあいつら競馬にはまったな」
「そうだった、そのあと岬めぐりをしたみたいだ」
「あいつも天国に行ったな」
「オジサン達楽しそうですね」
「ええ、あみん、をしていました」
「安眠ですか」
「いえ、待っていたんです」
「持ってきましたよ、あったかいのにしました」
「ありがとうございます」
「あみん、わかりませんか」
「わかりません」
「知らなくていいんです。大昔のアイドルです」
「戦後ですか」
「そこまではいきません」
「なんだかわかりませんけど楽しそうですね。どうぞ」
「ありがとうございます」
「あー生き返った」
「安眠してたんですね」
みんな大笑いしました。
「おやおや、楽しそうですね」
「宮司さん私たち、あみん、をしてたんです」
「待ってたんですね、お嬢さん、待つわ、って曲知りませんか」
「あー、そういうことでしたか、私安眠ってきいてしまいました」
「今日の縁日、狐と、タヌキ、来てくれるといいんですが」
「囃子屋さんですね」
「ええ、三平さんです」
「林家さん、娘さんたち大変ですね」
「その林家さんが来るんですか」
「お嬢さん、失礼しました、鳴り物屋さんでした」
「鳴り物ですか、それはすごい人たちなんですね」
「お嬢さん、鳴り物違いです」
「え」
「トンツクトンツクトントントンのやつらです」
「そうでしたか」
「お茶、ありがとうございました。お嬢さんのは」
「ごめん浅い私はポットのコーヒーを飲みました」
「よかった。
「おい、始まるぞ」
「並んだ」
「奈良、のだ」
「ホンマカ」
「宮司に聞いてみろ、鏡と同じ年代だから」
「分かるのか」
「出土品だから間違いに」
「お前これを使っている時代を見たことがあるのか」
「あるわけないだろ、そちらの太陽のやつ着てあるいている若いお姉さんを見たことがあるのか」
「あ、日本橋で歩いていた。多分三越の売り出しで買ったやつだ古着の売り出し日はにぎわっていた」
「高島屋、白木屋で、帯と小物をそろえてたんだろ」
「お前見たな」
「当り前だ」
「お前の皿、これはドングリを乗せたやつか」
「そうだ、一緒にどんぐりがついていた」
「それは奈良じゃあないだろ」
「いや、奈良だ、青森や静岡や、おおいたではない」
「お前、1000年ずれてないか」
「絶対にこれは縄文土器じゃあない、奈良三彩の、出来が悪い奴だ」
「できがわるいんじゃあ、見世物にならんだろ」
「いいんだ、この出来で、立派に奈良のものだ」
「昨日作ったやつじゃあないのはわかる」
「そうか、それならいい」
「おじさん、これなら時代の焼き物なんですね」
「間違いない」
「きれいですね、もっていいですか」
「いいよ、落とさないでね」
「はい」
「きれい」
「形が面白いね」
「色も素敵」
「よかった」
「ぬおもみていいかしら」
「どうぞ」
「これを着てたのね」
「ああ」
三越の前の道でよくみかけていたよ」
「きっと、楽しかったのね」
「それはむう、蕎麦とてんぷらを食べるのが、楽しみで」
「いってみたいわ」
「丸善で本と、鉛筆を飼っていたよ」
「本ですか」
「そういえば便利堂の便箋も、女性に大人気でした」
「そうですね、もう少し足を延ばすと、カフェもありました」
宮司さん、モダンだな」
「楽しそうですね」
「お嬢さん、どうですか」
「土のぬくもりが心地いいです」
「1500年前の人と握手ですよ」
「わー」
「お嬢さんは追ってください」
「一寸待ってください、これを置きます」
「どうぞ」
「ふー、なんか楽しい」
「お嬢さん、大正美人さんですよ」
「美人」
「はい、切れ長の目に細面で、とても評判なお嬢さんですよ、新聞に常連で写真が載っています」
「はい」
「どうぞ、ゆっくり」
「着ていていいですか」
「皆さんに見てもらってください」
「はい」
「おい、動くマネキンにしてはいけないだろ」
「やー、お嬢さん素敵なモデルさんです」
「宮司さん、恥ずかしい」
「もしいたら、夢二さんがすぐに描いたよ」
「表紙絵、美人」
「そんなにいわれると、嘘っぽく聞こえてしまいます」
「あのー、私スケッチしていいですか」
「はい」
「ありがとうございます」
私は持っていた鉛筆と紙で、お嬢様の姿を描きました。
「これです」
「もう出来たんですか」
「これでよかったら後で水彩で仕上げます」
「ええ、お願いします」
「ありがとうございます」
「あなた、絵を描くんですか」
「ええ」
「それは、一度相談に乗ってください」
「はい、宮司さん」
「おい、お前、ちょっと図々しいだろ」
「そうか」
「わたしにも記念に一枚ください」
「お嬢さん、もう一枚いいですか」
「はい」
「着物の柄を覚えておくよ」
「頼むよ」
「それにしても、閑散としてるな、鳴物屋、来ないのかな」
「網すぐ昼時だから、そろそろ来るよ」
「もう少し並べるものが、あったらよかったのに、少し寂しかな」
「お前、何言ってるんだ、お嬢さんの姿で十分だ」
「そうだけど、奈良の焼き物を見てもらいたかったんだ、鏡の仲間だから」
「おじさん、鏡ここにだしてやりましょう」
「え、大丈夫ですか、指差しの神、来ないですよね」
「来ませんよ」
「では、並べてみましょう、博物館みたいになるな」
「あなた今、なんて言いました」
「博物館みたいだって」
「そうですね」
宮司さんは、境内の一角を見ていました。
「あそこに、そういうのを作って見たいと思っていたんです」
「いいアイデアですね」
「宮司さん、私は布を調達しますよ」
「鏡と焼き物、そろってるだろう」
「わからん」
「本当に奈良か」
「見てきた」
「嘘つけ」
「お前も対象御三越で見たのか」
「お前見たといった炉」
「縄文は見たことないが、奈良はいった」
「遠かったか」
「意外と近い」
「大正は大変だった」
「そうだな、地震がきたしな」
「いたのか」
「ああ、火事で死ぬところだった」
「奈良はどうだった」
「穏やかで、緑いや、青がよかった」
「まだ緑といわなかったんだろ」
「ああ」
「奈良、にぎやかな舞をしていた」
「鳴り物屋さん、ようやく来たよ」
「雅楽が、始まるといいけど」
「それは奈良だろ」
「東京は東京音頭だ」
「獅子舞が始まった」
「あ、来たね、飴食べようね」
「お嬢さん、ゆっくり」
「もう一枚できました、これですが」
「よろしくお願いします」
「出来たら一枚進呈するよ」
「良かった、後でそばを食おう」
「ああ、タヌキ」
「え、わしか」
「鳴物屋、がしゃべった」
「タヌキはわしじゃ」
「そうか、道理で囃子の音が軽快だ」
「あったり前田い」
「おお、いなせだね」
「とうぜんだい」
「ヒーヒャラ、ヒーヒャララ、キツネうどんもおいしいよ」
「うどん、冷やしで食うか」
「昼は蕎麦にしよう」
「夜はうどんに、お稲荷さんで一杯やろう」
「いいな、お嬢さんどうですか」
「たのしそう」
「おじさん」
「なあに」
「このお皿と鏡、洗わないの」
「洗わなくていいんだよ」
「汚れていますよ、使えません」
「そうだね」
「洗わないの、私やりますよ」
「いいんだよ、このままで」
「とても長い間で着いた汚れなんだよ」
「長い間」
「そう、とても大昔の人が使っていたものなんだ」
「大昔」
「そう、ひいおじいちゃんのひいおじいちゃんのひいおじいいちゃんのひいおじいちゃんの又そのひいおじいいちゃんのいたころだよ」
「わからない、ひいおじいちゃんの写真は見たことあるけど」
「そう大昔の人が使っていたものなんだ」
「そうなんだよ、だからとても大事な鏡なんだよ、この鏡は、この神社の神様なんだ」
「神様、じゃあこの皿は」
「このお皿は、神様のお食事に使ったものなんだ」
「あー宮司さん、これ本当に奈良のものなんですね」
「鏡がそういってますから」
「わかりました、おもしろい」
女の子はにっこり笑いました。
「ありがとうございます」
おかあさんも、ほっとしたようです。
「おじさんこの着物は大正ですよね」
「そうだよ、ひいおじいさんのお父さんのいたころだよ」
「へー、奇麗、着てみたいな、着物」
「そうね、もうすぐ浴衣の季節ね」
お母さんは、女の子の手を握りました。
「お嬢さん、そろそろ、いい時間です」
「え」
「夕焼けと富士山を見に行きましょう」
「はい、遠いですか」
「近所の駐車場です」
「おい、あそこか」
「あそこって、恥ずかしい部分じゃないぞ」
「違う、参道の斜め向こうの駐車場のことか」
「そうだけど」
「お前知っているだろ、あそこは、別種の指さしおばさんがいるとこだぞ」
「ああ、でもお地蔵さんを案内するから、変な魔力は封印してもらうよ」
「おじさん行きましょう、私、お地蔵さんの手を引きますよ」
「はい、ご案内します、ゆっくり歩いてきてください」
「オー、ずいぶん久しぶりの散歩ですねお地蔵さん」
「宮司さん、久しぶりですよ」
「富士、見えるといいですね」
「はい、行ってきます」
「わー、お地蔵さんが歩いている」
「そうね、いってらっしゃい」
「いってらっしゃーい」
「行ってきまーす」
「朝のご挨拶みたい」
「そうね」
「よっこいしょ」
「よっこい正一さん」
「なんですか、それ」
「横井正一さん、のことです」
「南方戦線の生き残りの兵隊さんです。戦後ほぼ50円ぶりだったともいますが、終戦を知って帰国した人です」
「へえ、この着物の後の人ですね」
「そうですよ」
「いってきます」
「気を付けて」
「よいしょ」
よいしょ」
おじぞうさんたちはゆっくりあるいていきました。
夕陽が鳥居のうえで輝いています。
「あれ、そばを食べたよな」
「食べたよ」
「ということはやっぱり今日の縁日はもうすぐおw理だな」
「ああ」
「後でうどんとお稲荷さんで、いっぱいだな」
「ああ」
「もう少し見てもらいたいな」
「奈良をか」
「まあそうだ」
「オジサン達、もうすぐですか」
「杯道を渡ります」
「はい」
「行きますよ、もうすぐ右に曲がってすぐに右に駐車場があります」
「はい、いきましょう」
「よいしょ」
「よいしょ」
「あれ、おじぞうさんたち」
向かいのうちからおばさんが顔を出してこちらを見ています」
「でた、別種の指差しおばさん」
「今日は大杼奥部だ、ほら向こうの雲の下に見えてる」
「今日は富士山見えていますか」
「はい、よく」
「はい、よくみえています」
「お地蔵さんたちは、ニッコリと笑いました」
「おじさん、よかったわ」
「おじょうさん手をひいてくれてありがとう」
「お地蔵さんたち、よく見ましたか、もう夕陽が落ちるので帰りましょう」
「はい、またお願いします」
「縁日にまた」
「はい」
「おじさんこの着物、後で買います」
「売らないよ」
「え」
「別なのをもう少し見てください、それは記念に差し上げます」
「え」
「さあ、鎮守の杜に、帰りましょう」
「お前、着のほかにもあるのか」
「つづらに入れてある」
「大正、か」
「大正だ,火から、逃れたやつだ、ばあさんの若い時着ていたやつだ」
「後で仕上げるけど、これ描いたやつだ」
「おー、ありがたい、仏壇におくぞ」
「あー、わかった」
「鳥居が見えた」
「鳥居が見えた」
「お地蔵さん、疲れましtか」
「いえ、わたしは、宮司に、お礼をしなくては」
「帰ったらご挨拶しましょう」
「あ、お地蔵さん、お帰りなさい」
「ただいま」
「夕方のご挨拶です」
「まあ、お地蔵さん、この布で足を拭いてください」
「お預かりします」
「お願いしますお嬢さん」
「お地蔵さん、気を付けて足をあげてください」
「はい」
「汚れを落としましょう」
「ありがたい、気持ちいい」
「お嬢さん、ありがとうございます」
「あら宮司さん、いい富士が見えました」
「良かったですね、アマテラス様も喜んでらっしゃいます」
「宮司さん、久しぶりの散歩を許していただいてありがとうございます」
「これからも、参道をみつめています」
「はい、いつまでも、お疲れ様です」
「宮司さん、たまには散歩するのもいいですね」
「お地蔵さん、すみませんでした、人手がなかったので、100年じっとしたままでした」
「宮司さん、また、いつでも読んでください、私が手をつないでご案内しますよ」
「お嬢さん、それは助かります、狛犬や、不動明王様も、ときどきおねがいしていいですか」
「それはありがたい。わたしらもここから空をみていただけだから、100年だぞ」
「それは申し訳ない」
「縁日も30年ぶりだから」
「宮司さん、テルテル坊主、一度引き取って又持ってきます」
「はい」
「また縁日で、並べて居ですか」
「はい、よろしくお願いします」
「おじさん、着物一度脱ぎます」
「まだいいですよ、選んでからにしてください、つづらを持ってきます」
「いいのですか」
「はい、ぜひ」
「ありがとうございます」
「選んでください」
「沢山ですね」
「はい、決めてください」
「おじさん、これにします」
「帯も見てください」
「はい」
「大正の女性、この柄を見て心がときめいたんですね」
「そうですよ」
「私もときめきます、違う私みたいです」
「奇麗ですよ」
「ありがとうございます」
「いつっも、着てみたいですね」
「きっと生活が潤いますよ」
「あーそうだ、わたしもこれを持ってきたんだ、昭和のだけれど」
「оそれは、シャーベットグラスだな」
「そうだよ、なかなかの形で残っていないんだ」
「お前、それ銀座で使ったんだろ」
「いや、ソフト祖母のデートの時のだ」
「見たのか」
「いや、聞いた」
「おじさん、それなら使えるね、あらわなくてもいいね」
女お子は目を丸くしてみていました。
「あー沢山あるんですね、博物館、建てましょう」
「宮司さん、体壊しますよ」
「いえ、夢は追いましょう」
「お嬢さん、着てみてください、そしてシャーベットグラスでアイスを食べてください」
「宮司さん、驚きました」
「足ふきありがとうございました、わしらも、恩返しします」
「まあいいこと」
観音様もほほえんでいました。
「あ、不動明王さんに狛犬さん、今度この着物で散歩しましょう」
「お嬢さん、サイダーです、境内の水で作ったものです」
「お地蔵さん、ありがとうございます」
「おい、それは俺たちも守っているものだぞ」
狛犬に不動明王さんも笑っていました。
「宮司さん、また、縁日で並べますよ」
「縁日からはじめましょう」
「そうだな」
「葛籠の中身をふやしておこう」
「葛籠二つ」
「オジサン達私また、きますえ」
「サイダー生き返りました」
「いい水」
「湧き水だからな」
「わしは水で生き返るよ」
「水はいい」
「だからいい水」
「集会所の水は甘いぞ」
「こっちの水はすっきりだ」
「しょっぱいのはない」
「水を汲んでおこう」
「いいな」
「おい、また集会所に戻るのか」
「ああ、そこの水もいい水だ」
「蛍は来ないぞ」
「蝉が来る」
「まだまだ泣かないな」
「蚊は飛んできてる」
「水溜まりがあるからな」
「あえうぁ本当に奈良か」
「そうだよ」
「分かるのか」
「見てきたからわかる」
「見ていたのか」
「ああ」
「本当に奈良にいたのか、お前いくつだ」
「1300、と1時間だ」
「化け物か」
「木綱やタヌキじゃあないぞ」
「数をおみてきただけだ」
「おかずを見てきたのか」
「沢山の量の奈良三彩を見てきたんだ、博物館で」
「なんでそれをお前が持っているんだ」
「もらった」
「大丈夫なものか」
「大体あっている、ぬすんだものじゃあない」
「だいたいじゃあ、だめだろ」
「大体でいいんだ」
「そうか」
「誰も見ていない」
「それはそうだが」
「なあ」
「奈良はいいぞ」
「おならの話はいい」
「そのおならの話で、いいことがあるんだ、おなら名人がいたんだ」
「でっかい音か」
「大きさより美しい旋律でなるんだ」
「そいつは臭い奴だ」
「嘘くさいといったな」
「いや」
「奈良はいいんだぞ」
「分かった、奈良だな」
「ああ、いってみるといい」
「公家が歩いて、威張ってやがる」
「私はそいつを説教してやった」
「それでもらったのか」
「そうだ」
「それは説教強盗だろ」
「いや、感謝されたよ」
「奈良でもらったのなら、奈良だ」
「当り前だ」
「わかったよ」
「おじさん、このグラス持っていいですか、アイスを載せます」
「どうぞ、ゆっくり」
「お嬢さん、このアイスで」
「宮司さんありがとうございます」
「自家製です、牛乳は、牛久のです」
「新鮮でおいしい」
お嬢さん、スプーンをなども口に運んで、笑顔でした。
「喉が渇くといけないので、このみずをどうぞ、すっきりしたやつです」
「宮司さん自家製のアイスを作っているとは」
「まあ、季節ですから」
「宮司さん、来れ、売り物になりますよ」
「それは面倒です、消防署長とはかかわりたくないです、保健所とも」
「おみせにしなきゃあいいんですよ」
「でもうりものにはしません、あなたたちも見せるだけでしょ」
「ええ、駐在とかにかかわりたくないです」
「いいですか、はくぶつかんも、そんなものにしたいんです」
「いろいろ、申請書類が必要ですものね」
「オジサン達のように、茣蓙を、敷いてみてもらう感じがいいです、屋根をつけてね」
「それがいいです、鏡は由緒ありますが他は大体ですから」
「それくらいでいいです。たのしめますから」
「おいわしらも、奈良ものとおなじだぞ、背中の文字が見えんのか」
「不動明王さん、狛犬さんにお地蔵さん、楠もみんな同じですね、おもしろいです」
「わたし、このお宮が楽しくなりました。初詣に来るだけでした」
「宮司さん、縁日で行きましょう」
「そうですね」
「鳴り物屋さん、お願いします」
「おっと、トンと子トントン」
「ヒーヒャラヒーヒャラヒ―ヒャララ」
「パク」
獅子踊りが始まりました。
縁日の始まりです。
「お母さん、綿あめ」
「買いましょうね」
「りんご飴も」
「お腹壊すから、綿あめだけね」
「はい」
「わー、お面がかわいいですね、私、買います」
「おじょうさん、ひょっとこ、ですか」
「はい、髪飾りです」
「お似合いですよ」
「わー楽しい」
「お姉ちゃん奇麗」
「ありがとう」
「私も着物を着るよ、大きくなったら」
「お姉ちゃんの様になったらね」
「はーい」
「宮司さん、茣蓙でいきましょう」
「いいでね」
「晴れてよかった、テルテル坊主、頑張ってくれたな」
「はい、任せて」
「オーしゃべった」
「テルテル坊主さん、おはなしするの」
「なんだい」
「あしゃべった」
「テルテル坊主さん、寒くない」
「大丈夫だよ」
「お腹すかないの」
「うん、お腹がすいたら歌うんだ、あーした天気になーれ」
「それでお腹いっぱいになるの」
「満腹だよ、お仕事だから」
「お仕事」
「そうだよ、お願いごとをすると幸せでお腹一杯になるんだ」
「遭難だ、私もお願いごと」
「奇麗な着物をいっぱい着れますように」
「あのね、みんなのお願いをお願いするのよ」
「みんなの、難しいンあ、お母さん」
「みんな一緒に遊ぶと楽しいでしょ」
「うん、お願い、明日もみんなと沢山、遊べますように」
「そうね」
「お腹いっぱいになったよ」
「テルテル坊主さん、いいことを教えてくれたね」
「ありがとう、テルテル坊主さん」
「あーした天気になーれ、これでまたお外で遊べるよ」
「やったー」
「テルテル坊主さん、もうしばらくこの軒下にいてくれるかな」
「宮司さん、いいのか」
「大切なお仲間ができました」
「おーい、テルテル坊主、俺は雨の使いだ」
手水舎の、竜が困ったように言いました。
「そうですね、雨がいるときは僕たち休みますので、行ってください」
「おーそこのかたたち、わしがこの社をまもっているから、ちゃんとしごとをしてくれ」
「ぬらりひょん、を知被けないでください」
「何、ぬらりひょん、だと」
鏡が叫びました。
「清らかなるアマテラス様、鎮まりますことを誓います」
宮司さん思わず祝詞をとなえました。民静かになりました。
「-びっくりした」
「みんな、ここをまもっているのよ」
「そうんだ」
「テルテル坊主、また会おう」
「おじさん、ありがとう僕も助かりました」
夕日が沈んで縁日は、静かに終わりました。
「おじさん、またね」
「はい、お母さん御ゆうことを聞いて遊んでね」
「はーい、バイバイ」
「バイバイ」
「ありがとうございました」
お母さんは静かにお辞儀をして女の子の手をにぎりました。
「ぎゅーっ」
「ぎゅーっ」
「お母さんの手、大好き」
「おじぎをして」
「ありがとうございました」
母子は帰っていきました。
円市の終わった境内に、おじさん二人がぼーっと立っていました。
「暗くなったな」
「もう、夜だ」
「夜の縁日も楽しかったな」
「夜はだめだよ、すぐにご機序さんから、苦情が来るよ」
「そうだな、それで夏祭りも中断したままだ」
「腹減ったな」
「ああ」
「きつねうどんと、お稲荷さんに行くか」
「そうだな、でもそれは商店街だろ」
「まあ、少し遠くなるけどチェーン店の讃岐うどんの店があるだろ」
「ああ」
「そこの稲荷はうまいかな」
「まずくはない」
「商店街はだめなのか」
「いや、もういいともう。いつも将棋とかしているだろ」
「ああ」
「ちょっとあれが、落ち着かないんだ」
「それもそうだな」
「じゃあ、そろそろいくか」
「商店街にとりあえず行ってみよう」
「ああ」
「行くか」
「歩こう」
「暗くあったな」
「鬼火だ」
「嘘をつけ」
「嘘じゃない、駐在お世話にはならない」
「うどんでいいだろ」
「ああ、団子やはしまっていたな、お稲荷さんは、セットでついていると大思うよ」
「米屋の隣の店でいいんだな」
「ああ」
「将棋はもうやっていない」
「ゆっくりたべよう」
「ああ」
「こんばんわ」
「いらっしゃい」
「気杖二つにお稲荷つけて」
「はい」
「ビール一本とグラス二つ」
「はい、今日稚樹の杜の縁日、楽しかったですね」
「ええ、またつづくそうですよ」
「いいことですね」
「着物見て下さい、サイダーも一本」
「サイダー、一本承りました」
「さいですよ」
「さいですです」
「満席だな」
「郵便局前の店も、満席だった」
「けんかか」
「いや、接触事故だろ」
「おまえここだ」
「ちがうだろ、郵便局前だろ」
「あやまるのか」
「おまえだろ」
「巡査を呼ぶか」
「呼んだらすぐ来るだろ」
「お前明日会社で、電話登板だ」
「外回りに行くぞ」
「お前に営業できるか」
「ンでお前に言われる」
「ぶつけたろ」
「おめがよってきたんだ」
「あのこおひとたちもりあがっていますね」
「あれは怒鳴ってストレス発散してるんですね」
「怪我煩瑣そうなので」
「巡査来るかな」
「事故だと一応穂報告書ぐらいは作るだろ」
「巡査、夕飯を食ってるいるよきっと」
「いや、食い終わってテレビを見ながらお茶をすすっているよ」
「まいい。うどんが来た」
「伸びる目に食おう」
「ゆっくりでいいよもうすでにふやけてるやつだ」
「いい、出汁だ」
「はらにしみるな」
「まあ、今度の縁日も、楽しもう、や」
「気杖うどん、腹にしみいる、油揚げ」
「オー面白い」
「月見の川に浮く、うどんかな」
「おい、筆と紙」
「いまはないよ」
「割りばしの袋に書いておこう、鉛筆」
「かまぼこや、うどんに浮かぶ、ススキかな」
「3首でやめておこう」
「食べよう、べちょべちょいなるぞ」
「おい、声が大きいぞ、みせのひとにわるいだろ」
「うどんとかけて」
「腰がない、ひとはいない」
「そのこころは」
「こしがだいじでしょ」
「おい声がでかいってば」
「食べよう、だしはうまい」
「スープうどんだな」
「お稲荷さんもいい味だ」
「駐在来たようだな」
「ああ、外が静かになった」
二人は席で大笑いしました。
「お客さん、お水のお替りです」
「ありがとうございます」
「さっき面白かったですよ」
「え」
「うどんとかけて」
「そう、腰がない人はいない」
「その心は」
「こしがだいじでしょ」
「はい、ご名答です」
「もう一つ私どもが大事にしているのが、あたたかいおもてなしです」
「戦いのおもてなしですか」
「はい、出汁鋳込めています」
「なるほど」
「昆布とカツオの戦いのいい塩梅です」
「表になしですね」
「はい温かいおもてなしです」
「いやーまいりました」
二人はまた大笑いして、うどんのスープを飲み干しました。
「お客さん、どうですか」
「満足です」
「それだけですか」
「いいません大変美味しいなんて」
「そうですかまずいですか」
「美味しさがうまく言えなくてまずいです」
「ごゆっくり、どうぞ」
「腹いっぱいになったな」
「混んでいるな」
「これからみんな家でテレビを見るんだろ」
「お前、鑑定団に出しとけよ」
「いやだ、みてきたものだから、値段はない」
「いいのか」
「宮司の博物館に置く」
「そうだな」
「今度の縁日は来月、梅雨なるな」
「もう夏だからソーメンにしよう」
「流すのか」
「流そう」
「梅雨で食べるやついしよう梅雨だから」
「境内の水でいいか」
「集会所の水もうまいからあれならつゆなしでいける」
「梅雨がないと竜神が、怒るぞ」
「水はながすので」
「じゃあつゆなしの梅雨か」
「もうみんなゆかたの季節だから獅子舞より盆踊り」
「それはまずい、うるさいとまた、指さしおばさんに指さされるぞ」
「お人は川向うで祀られているから封印されたはずだ」
「地蔵さんたちには、傘をかけよう」
「明日、竹をいただきに、農家さんにお願いに行かなきゃあ」
「作るんだな」
「そうだ」
「ソーメン流しの竹の竿と、つゆのそばチョコと橋」
「チョコと橋は20組あれば、あらってつかえるか」
「水飲み用もいるからもう少しお汚名チョコを作ろう」
「お地蔵さんの傘も5つ」
「一か月でできるか」
「毎日やらんとおいつかんぞ」
「まあ、大体でやろう」
「大体でな」
「今日h月明かりだから、帰ってからでもできる」
「ばか、竹を乾かしてからだ」
「そうか」
「お客さん、ちょうどタケノコを似ました、どうぞ」
「これはありがたい」
「うーん、うまい」
「出汁だ」
「後出汁で負けた」
「同じ出汁ですよ」
「カツオと昆布の」
「そうです」
「いい塩梅のやつ」
「この出汁ソーメンいつ買っていいですか」
「みせののぼりをおいてくださったら、お分けします」
「宣伝か」
「いいよ、にぎやかにみえるから」
「はい」
「では、おねがいいたします」
「おい、保健所と消防はだいじょうぶだろうな」
「支所に確認しておこう」
「面倒だな」
「親切ですよ、ダメとはいわないとおもいます。地域活性化ですから」
「新設の地域活性課ですか」
「いえ、窓口のどこでも大丈夫です」
「そうですか」
「ええ」
「明日行ってみよう」
「明日は農家にもいくんだろ」
「そうだな、手みあげがいるな」
「そういえば、お稲荷さん、明日でも大丈夫ですか」
「ええ」
「では8個ぐらい折につめてください」
「はい、3つからありますよ」
「そうですね、8つは多いか、5つにしてください」
「承知しました」
「お願いいたします」
「はい」
「風呂敷」
「あるよ」
「よかった」
「明日朝の10時でいいか」
「農家ははやいから、もっとはやくにしよう」
「8時だな」
「ああ」
「暗くなったな」
「ああ」
「暗くなってきた」
「帰るか」
「カエル、買えない」
「帰らんのか」
「帰るよ」
「分かった、歩こう」
「いっしょ」
「よいっしょ」
「いい月だな」
「ああ」
「グランドの道に行くか」
「ああ」
「キツツキがやってるみたいだ」
「コンコン、ジャナクテトトトトト」
「もうなつまつりはないだろう」
「ぼんおどりはなしにしないと」
「しずかにおどるやつでいいだろおう」
「公民館で、女性たちがやっているだろ」
「まあ、囃子屋が、やってくれたらな」
「ああ」
「いい月だ」
「キツツキ」
「ツキはいいかな」
「運しだいだ」
「ウンか」
「まあそうだ」
「歩こう」
「ウンか」
「踏むなよ、臭いぞ」
「そのウンか」
「運だ」
「運がいいと、拾うものもあるかもな」
「拾わなくてもちゃんと作ればいい」
「お稲荷、落とすなよ」
「運はおとさない」
「そうだ、ウンはおとすな」
「少し肌寒くなってきたな」
「おい、ちゃんと歩けよ」
「ヘッドライトがまぶしいな」
「お前、クマに間違えられたら、撃たれるぞ」
「バーン」
「やられた」
「明日、8時だな」
「違う、ラジオ体操を押してすぐだ」
「7時になるな」
「朝飯時だろ」
「農家さんは早いからきっとそれくらいで大丈夫だ」
「じゃあそれで行くか」
「お前、竹細工やったことはあるのか」
「お前ないのか」
「お前はあるんだな」
「お前がやったことがあるんだと思っていた」
「やったことないのか」
「ないよ」
「どうする」
「宮司さんに相談するか」
「ああ」
「明日農家で聞いてみよう、たけがどんなものかぜんぜんわからん」
「わからんおだな」
「そうだ」
「お前、やっぱり大体でやりすぎだよ」
「大体で何とか形になるものだ」
「あー、素麺流しの、仕掛けが崩れたら悲惨だ、誰か左官はいないか」
「左官は金をとるだろ」
「そうだな」
「ホームセンターで図面を見てもらうか」
「まあ、宮司さんに相談するので大体になるよ」
「あー冷や汗をかいた」
「描いたのか、もう図面」
「冷や汗だ」
「冷やしのではなかったんだな」
「だいたいすぎるだろ」
「大体で、思い出した、一人大体で何とかしそうなのがいる」
「そんな大体でいいのか」
「大体で、いいよ」
「明日の朝は」
「大体で、グランドのベンチで待っているよ」
「大体では困る」
「お前ラジオ体操の時間は知っているか」
「朝6時30分だろ」
「大体それを終わって待っているよ」
「そうか」
「ああ」
「お稲荷さんはお前忘れるな」
「あーそうだった、これ朝食べるやつを持っているんだと思っていた」
「本当に大体すぎるよ」
「ああ、だいたいでなんとかなるからな」
「大体でいいから、お稲荷さん忘れるなよ、忘れたら狐憑きにやられるぞ」
「そうか、面白そうだな」
「忘れるなよ」
「狐憑きだろ」
「そうだ、月影の油揚げ、葉っぱになって滑って、転ぶ」
「それは痛いな、忘れんよ」
「やっとわかったな」
「何を」
「痛いんだよ」
「そうか、それでなんで痛いんだ」
「もういい、帰ろう忘れるなよ」
「何を」
「お稲荷さんだ」
「これは食うやつだ」
「馬鹿、それは明日の手土産だ」
「そうだったラジオ体操の後公園のベンチだな」
「そうだよ、危ないな」
「転ばんよ」
「そうだよ」
「ところでいくつ入っているんだ」
「3つ」
「おまえ2こたべようとしてるだろ」
「そうだよ」
「3つからといったから8つでは多いから5つにして2つ食えば同じことだろ」
「お前、まだ腹がすいているのか」
「ああ、うどんが少なかった」
「2つたべてもいいからかいつぃて5つにしておけ」
「はい、あじのないみそしるとかけてなんととく」
「味噌と塩ではダメな汁と説く」
「そのこころは」
「出汁を足すがいい」
「おまえいまそういったろ」
「ああ、でもたべなきゃいいんだ」
「お腹すいたままで明日起きれるか」
「しょうがないあそこでおにぎりをかってやるよ」
「稲荷じゃあないんだ」
「でっかいい切りだ」
「オー寿司ならいい」
「おにぎりだ、とにかくそれを食って手土産はそのまま持ってこい、いや、俺が間違っていた、それはわしが持っておく」
「そうか、しかたない」
「しかたないのはこっちだ」
「粉子としてたら夜が明けちゃうよ」
「運東が明るい」
「あれはビルの光だ」
「分かった、ビルの昇るのか」
「いや、帰ろう」
「おにぎりは」
「買うよ」
「わるいな」
「わるいよまったく」
「怒ったか」
「怒らないよ、孫になるだけだ」
「金を落としたか」
「損した気分になるんだよ」
「損した気分は気持ちいいのか」
「ああ、とっても、イライラして、面白いよ」
「良かったな」
「お前が言うか」
「言って悪かったか」
「無いいよ、おにぎり買ってきたから、食おう」
「ああ、いつ行ったんだ」
「いまだよ」
「今田さん、にか」
「ああ」
「おい切りな、酢飯じゃないんだな」
「ああ」
「食おうか」
「もうすこしでよあけになっちゃうぞ」
「早すぎるだろ」
「さっきから、グランドをぐるぐる回っているんだよ」
「夜明けか」
「もう少しでラジオ体操だ」
「じゃあこのまま行こう」
「顔ぐらい洗っていこう」
「そうだな、集会所の水でな」
「そうするか」
「ああ」
「歩こう」
「夜明けだ」
「明けたな」
「いやけてない」
「手土産は大丈夫だ」
「食うなよ」
「顔を洗っていこう」
「眠くないか」
「大丈夫だ」
「おにぎり、食うか」
「食っていこう」
「農家さん、突然訪ねてもいいのか」
「大丈夫だろ」
「あの門をくぐっていくんだな」
「ああ」
「じゃあ行くか」
「ああ」
「おはようございます、突然すみません、近所のも尾です、ちょっと竹を分けて井田抱ければと思っています」
「どうぞ、お入りください」
「早くからすみません」
「丁度仕事が終わって、朝を取ろうとしたところです。ご一緒に」
「おい、もうけもんだ」
「失礼なことを言うなよ」
「ああ」
「ありがとうございます、これつまらあないものですが」
「おい、つまらんものじゃないぞ、うまいお稲荷さんだ、これ5つそろってるやつだ」
「いいから黙ってろ」
「まあ、どうぞ上がってゆっくり食べましょう」
朝餉の、いい香りがしていました。
「すみません、ごちそうになります」
「どうぞ」
「ところで、お願い事がありまして、今度縁日で流しそうめんをしようと思って、鎮守の杜の境内です。それで竹で仕掛けと蕎麦猪口とお箸を作ろうと思ったんです、こちらで竹があったらわけていただけないかと思いまして」
「そうですか、どういうご事情か知りませんが、鎮守の杜御宮司さんにはお世話になっていますので、皆さんのお役に立つなら、ところでソーメン一杯いくらにするんですか」
「そんな、お金はいただくつもりはありません、私たち縁日で昔御物を並べてみてもらおうと思って、来た皆さん居楽しんでいただこうと思っています」
「それは大変なことを」
「竹の細工はしたことがあるんですか」
「実はやったことがないんです」
「それで作るんですか」
「ええ、ホームセンターとかで聞いてみようと思っているんです」
「それなら、私の家の作業場で、やってください、私が空いた時間でお教えします」
「え、ほんとうですか」
「ええ」
「ありがとうございます」
「ご事情は分かりましたので、ゆっくり朝を取ってください」
「ありがとうございます。いただきます」
「お味噌汁とてもおいしいですね」
「ええ、とても時間がかかるんです」
「え、それをいただいて、もうしわけありません」
「味噌も野菜も、ほぼ一年がかりです」
「一年かかって料理した朝ごはんですか」
「おい、ちゃんと聞かなくては、一年かけて育てた野菜と、味噌をつかったりょうりということだ」
「そうか、おまえよくわかったな」
「お二人とも、ごゆっくり、後でお代わりをお持ちします」
農家のご主人は大笑いしました。
「おい、おい、なんとかなりそうだな」
「来大祐の朝から、一度も寝てないのに疲れてないよ」
「わしは眠いよ」
「腹は大丈夫か」
「大丈夫だ、稲荷は食べてない」
「そうだよ、もう渡したから」
「竹細工、やるか」
「せっかくだから一度帰って寝て、お昼過ぎにまたくることにしようか」
「いや、今日は寝たら明日御朝まで起きないよ」
「そうだな、ご主人の都合もあるからあとで聞いてみよう」
「そうだろ」
「どうですか、お腹いっぱいいなりましたか、おかわりです」
「ご主人、明日から来ていいですか」
「そうですね、「今日は私も一休みして畑仕事をしますから、明日のお昼前に来てください」
「すみません、ありがとうございます、何か用意したほうが良いものがありますか」
「いえ、汚れていい服出来てください」
「ということはこれでいいということです」
「実は一年中これなんです」
「ところで先ほど古いものと言われましたが」
「ええ奈良の皿と壺です」
「それに対象の着物です」
「私のこの家は、江戸のものですよ」
「えー、まいりました」
「明日よろしくお願いいたします」
「良かったな」
「腹いっぱいになった、あしたひるまえっていったろ」
「ああ」
「じゃあ、明日の昼もただ飯が食える」
「馬鹿、乞食じゃあるまいし、キチンと握り飯ぐらいは持ってこい」
「なにも用意するものないって言ったろ」
「飯ぐらいは用意しろ」
「飯か、おかずは卵焼きにしよう、2時間前に起きなければ、10時に起きたら大丈夫だろ」
「とにかく昼の12時前には来いよ」
「案でそうなったんだっけ」
「今度の縁日で流しそうめんにしようって言ったろ」
「わしがいったけ」
「そうだ」
「面倒だ、やめるか」
「宮司にやるって言ったろ」
「わしがか」
「そうだ」
「大体でいいんじゃあないか、やんなくてもいいんだよ」
「農家のご主人居間でごちそうになって辞めるのか」
「やめちゃあいけないのか」
「わしは納得いかん」
「納豆を食うのか」
「納得いかん、承知できんといってるんだ、今更やめるというお前に切れてるんだ」
「あきたのか、いいよ」
「おい、とにかく明日、昼の12時に来い」
「お嬢さんがいたら行くよ」
「お前、いなくても来い、めんどうだからもういわん」
「面倒だろ、面倒なんだよ」
二人は月あかりの下で黙って歩いて帰っていきました。
「あのな」
「あー」
「もうすこしでなぐってやるところだった」
「あー、あでるのか」
「あー、おまえいいやつだな」
「すこしやりかたがわかってきたよ」
「大体でな」
「そう、だいたいがわかってきたよ」
「だいたいでいい」
「私の代替でやってみるよ」
「そうか」
「明日の昼から大体でな」
「ああ」
「あのうち江戸に建てられたんだよ」
「大体だろ」
「まあ」
「柱と梁をゆっくり眺めてみるよ」
「何か書いてあるのか」
「もしかしたら」
「大体だろ」
「ああ」
「そうか」
「なあ、ゆっくりやろう」
「ああ」
「ほら見ろ、柱が話したろ」
「そこのお二人さん、竹は機嫌が、悪くなると大変ですよ、親切にね」
「本当だ」
「竹は大変みたいだ」
「お客さん、たけでなにでしたっけ」
「ご主人、流しそうめんの仕掛けと、蕎麦猪口と、橋と、地蔵さんの傘3つです」
「傘も、ですか」
「杯お地蔵さんが喜んでくれると思うので」
「それは大変だ、乾いた竹を見繕ってみます」
「すみません、お世話になります」
「いいえ、皆さんに喜んでいただけると私もうれしいですよ」
「はい」
「おい、おなかすいたな」
「お前きたそうそういうな」
「でも腹が減ったら戦にならん」
「おにぎりもってきたろ」
「ああ、食うよ」
「緒夫待ってください、お茶とお漬物を持ってきます」
「申し訳ありません」
「さあ食ってから、しっかり細工づくりだ」
「お前、また大体でやったな」
「大体というのとは違う、今のは、本当の事だ」
「そうか」
「本当でも役にたつんだな」
「大体だけどな」
「大体なのか」
「そう大体本当の事なんだ」
「大体は奥深いな」
「何の奥なんだ、億円か」
「やっぱり大体だな」
「だから代替と言ってるだろ」
「さっき本当の事とも言ったよ」
「だから、大体本当の事なんだ」
「おまたせでした、お茶をおもちしましたので、どうぞ」
「ありがとうございます」
「腹ごしらえだ」
「細工でなくて腹をこしらえるんだな」
「お前がそういったんだよ」
「橋は飯を食わんと、勝負にならんといったんだよ」
「いいから食べよう」
「食べるよ」
「お二人、食べたら、小屋の前に来てください、竹を見繕ってみましょう」
「おい、とうとう、やってきたな、きんちょうするな」
「すみません、お願いします」
「見繕うんですよね」
「はい」
「修理ですか、繕うんですよね」
「はい、修理でなくて程よいものを探すんです」
「なんだ、大体のことですね」
「すみません、こいつ変なことを言って」
「ええ、だいたいほどよいたけをさがしましょう。でもよく乾いてるやつですよ」
「ややこしいんですね」
「ええ、鳴れてないと、なかなかできません」
「そうですか、鳴れなんですね機械では買ってもダメなんですね」
「そうですよ」
「器や箸も、寸法は大体です。使いやすい大きさに作ります」
「ほら大体で何とかなりそうだ」
「でも、教わらないと竹の切り方は、大体でのこぎりなんかな」
「まず二人でここにある道具で箸を作ってみましょう」
「おい、いきなりだな」
「いいじゃないか、やってもよう」
「この武荒乾いているのでこれでやってみてください」
「長さはふしひとつの長さだろ大体」
「そうだな、それを目安にして、この鋸で切ろう」
「よし、切るか」
「切れたぞ」
「次は、たぶん大体の大きさで、鉈でわるんだな」
「そうです、気をつけて使ってください」
「これも大体か」
コツ、スー、
「出来た」
「まぐれにしては、うまくいった」
「とりあえず5本は作ろう」
「順調ですね、後は削って箸のかたちにととのえてください、こんきよくやってください」
「なんとかなるかな」
「とにかくやってみよう」
「大丈夫そうですね、私は奥の部屋にいますので何買ったら読んでください」
「いろいろご親切にありがとうございます。
ご主人は部屋に戻りました。
「おい、ご親切って言ったが何も教わっていないぞ」
「お前、竹を選べたか」
「嫌ご主人が選んでくれた」
「そうだろ」
「まあ、そうだ、作ろう」
「ややこしいな修繕じゃないぞ」
「繕うんじゃあない」
「作ろう」
部屋には小刀で削るシューシューというおとがひびいています。
「竹ひごやったか」
「そういえば、竹トンボ作ったな」
「箸、素麺をつかむからかどはあったほうがいいかな」
「俺は削ったぞ」
「そのほうが格好いいな」
「一度使って試すか」
「そのほうがいい」
「ご主人に何かお願いするか」
「ああ」
「ご主人、すみません」
「はい、なんでしょうか」
「申し訳ありません、作った箸を試してみたいので、何かつまんで口に入れるものをお願いできれば」
「ああ、できたんですね、緒音見せてください」
「はい、この二本です」
「あー出来ましたね、削るの大変でしたか」
「ええ、あっという間でした」
「もう少し削ったほうが、使いやすいかもしれません」
「そうですか、角があるのとないのはどっちが、素麺にいいと思いますか」
「好みと思いますが、なにかみつくろってみます」
「すみません」
「丁度大根を取ってきたので、千切りにしました、ためしてみてください」
「ありがとうございます」
「いただきます」
「後で交換しよう、じぶんでつくったのでまず」
「ああ」
「サクサク」
「おい石井ですね」
「何もつけなくても大根をしっかり味わえます」
「とれたてですので」
「使えるか」
「つかめるな」
「箸だから」
「交換してみよう」
「はい」
「サクサクサク」
「やっぱり過度の無いほうがつかみやすいな」
「そう思うか」
「ああ」
「じゃあ、角を落とそう」
「でも、好みとご主人が言われたように、角のあるやつも混ぜておこう」
「ああそうしよう」
「決まったようですね」
「はい」
「ではまた何かあったら」
「ありがとうございました」
「はしはなんとかなりそうだが、蕎麦猪口はきるだけでいいのかな」
「まだそれはいい、橋を5つは作ろう」
「削っていくうち言出来るよ」
「大体な」
「大体か」
「大正だろ」
「ああ、お前のは、奈良だ、ここは江戸だ」
「この道具も江戸かな」
「そういえば古そうだな」
「いちど、ご主人そうだんしたら、あにかおもしろいものがありそうだ」
「hらみろ、あれ」
「蓑傘」
「あー、お地蔵さんに上げるやつ」
「あれを手本にこさえるしかないな」
「あれもやるだっけな」
「そうだよ」
「箸のほうがおもしろいから、わしは箸を作るよ」
「そんなこというな、一緒にやろう」
「ああ」
「削る」
「削る」
「先を丸くするやつ」
「こっちは角のあるやつ」
「そっちは角か」
「こっちは丸だ」
「これで4本だ」
「あと一本二人で削る」
「違うあと一本ずつで、6本だ」
「削るのか」
「削るよ」
「おっちら」
「すーすー」
「サーサー」
「おい日が暮れてくるぞ」
「あと2本」
「箸は今日でできるな」
「ああ」
「夕飯はどうする」
「魚にしよう」
「ああ」
「もうひと仕事だ」
「日が暮れるのが早いな」
「やっているうちにくれてしまった」
「おい、ひるはたべてないぞ」
「そうだん」
「寿司でも食べて帰るか」
「ああ」
「お稲荷さん」
「小僧寿しによるか」
「ああ、すし屋のほうが安くつくぞ」
「じゃあ、集荷所の裏の店行ってみるか」
「ああ、しまっていたrほかでなんとかなる」
「はらへっているkら、とりえずたいやきをくってからにしよう」
「あと2本つくってな」
「出来著、丸い奴だ」
「こっちは角のあるやつだ」
「できたか」
「ああ」
「じゃあかたずけよう」
「ああ、蕎麦猪口はいいけど」
「傘は教わろう」
「ああ」
「よっこいしょ」
「蜂起があるから履いておこう」
「よいしょ」
「よいしょ」
「床をきれい慰すると気持ちいいな」
「そうだな」
「夕餉は、ちかくでいいな」
「あ」
「蕎麦猪口、あしたこさえるぞ」
「ああ」
「だいたいのでな」
「ああ」
「素麺が入ればいい」
「そうだな」
「たびも、きれいなままだから、助かる」
「おまえたびは、それ一味だろう」
「ああ」
「そろそろ竹ノ内で買ったらどうだ」
「最近100円尾がないからな」
「貧民は素足でいいんだ」
「夕餉はがまんするよ、きのうののこりがあるから」
「おまえにぎりめしのこしておいたのか」
「ああ、貧民は、3かいにいっかいくうていければいい」
「倒れるなよ」
「いたいのはいやだから」
「倒れんのか」
「ああ」
「はき終わったな」
「ああ」
「昨日の夜から、縁日の言葉かエイダ」
「今夜は月見にしよう
「ああ」
「団子も買うか」
「かうかえポケットにある、ひろったやつだ」
「jちゅうざいにもっていかなかったのか」
「ああむ
年前のやつだ」
「ならつかってもばれんだろう」
「大体でいいんだ」
「コンビニでぁうか」
「とおいいけど、団子屋にいってみるか」
「遠いいぞ、交通公園の間の店しか残っていないからな」
「いってみよう、ずっとすわっていたから、あるいてみたい」
「じゃ行こう」
「行きましょう」
「みたらし団子本」
「はい、レ縁日にいた方ですね」
「はい」
「おせわになりました、一本サービスでつけます、みたらしだんご3本」
「サービスされたけど」
「何かやったか」
「昨日縁日にいたのは確かだけれど」
「何か失礼なことをやりましたか」
「いえ、久しぶりに盆踊りができました」
「そうでした、しずかにやったやつです」
「盆踊りはもう何年もしていませんでした」
「獅子踊りから盆踊り委囃子を変えてもらっただけです」
「ですからうれしかったので、一本多めに召し上がってください」
「この小銭でいいですか」
「はい、500円ではおつりがあります」
「釣りはしません」
「おつりです」
「釣りですか」
「おい、葉来が多すぎた部を返してくれるんだ」
「そうか大体だな」
「家計算はあっていますから、はい100円」
「そうですかありがたく頂戴します。これでお茶が飲めます。これから広場で月見をするんです」
「春の月見ですね、月が浮かぶ菜の花畑かな」」
「おかみさん、いい句ですね」
「ちょっとおもったもので」
「丁度筆と紙があるので、
サラサラサラ、
「「お皿の用味になりました、よかったら受け取ってください」
「まあ、ちょうど月見菓子ができている尾でとなるに置いておきます。
「おい、得したな」
「折を和すrwルナ」
「ああ」
「広場に行こう、暗くなるぞ」
「「明日も昼時か」
「ああそうしてみよう」
「今夜は、夜中目に帰ろう」
「下らん話はするなよ」
「くだらん道は昇るよ」
「それだ」
「小刀を持った手が疲れたな」
「そうだあな」
「箸はなんとかなった」
「あと傘と、流し素麺の仕掛けが、やねこいの」
「屋根来るのか」
「八重子位、は面倒だということだ」
「だいたいでなんとかしよう」
しかけはじょうぶにしとかないとな」
「ああ、左官に聞いてみるか」
「農家のご主人に知り合いがいないか、聞こう」
「そうだな」
「ご主人、いい人だな」
「ああ」
「お世話になろう」
「明日もお昼前でいいのかな」
「まずい何も言わんまま出てきた、一度寄ろう」
「そうしよう」
二人はまた追うか野茂に向かいました。
「ご主人」
「はい」
「今日はお世話になりました、私たちこれで切り上げます」
「はい、お疲れ様です」
「あの、明日もお昼前でいいですか」
「はい、どうぞ」
「それで、すみません、素麺流しの仕掛けと、蓑傘の作り方を教えていただきたい尾ですか、お知り合いで、どなたか、教えてただけそうな方はいますか」
「はい、さがしてみますが、お二人で大丈夫ですよ」
「またか」
「大丈夫ですよ」
「杯何とかやってみます」
「明日も同じ時間でいいですよ、しばらく同じで大丈夫です。留守にするときはお伝えしますから」
「ありがとうございます」
「おきをつけて」
「失礼いたします」
二人は、グランド裏の広場にむかいました。
道はすっかり暗くなってしまいました。
「おい、月は見えないな」
「もう少し待ってみるか」
「あー向こうの樹の上に心月が出ている」
「満月じゃあないんだな」
「お茶を買っていこう」
「おつりが会った炉」
「なんか小銭をもらった。団子屋のおばさん良かったのかな、サービスしてくれた上に銭をくれた」
「そう言うしくみだから、いいんだよ」
「大体なんだな」
「大体でも損はしないようになっているからいいんだ」
「自動販売機でかうんだな、あ、ここにあった」
「いろいろあるだろ」
「あーお茶だけで2段もある」
「美味しい奴にしろよ」
「ぜんぶのみくらべんとわからん」
「どれにする」
「いしできめるか」
「石で」
「地面に番号を振って、いしをほうっておちたばんごうのところにあるお茶にしよう」
「大体すぎないか」
「お前抱いた愛でいいだろ」
「ああ」
「じゃあ、そうしよう」
「まず地面自動販売機の列を書いて、番号を振る」
「石は探すか」
「一寸茂みに入って探そう」
「ああ」
「おー、」
「なんだ」
「狸がいた」
「しょうがない団子を分けてやろう、鳴り物屋さんだ」
「わけるのかせっかく一本得をしたのに」
「ケチを言うなよ、タヌキも人間だ、情を分けていいだろ」
「狸は狸だろ」
「まあそうだが」
「狸、緒音教えてくれ、流し素麺をやりたいんだが鎮守の杜で水はあるのか」
「あるよ、手水の水は井戸水だ」
「そうかそれがあれば、なんとかなるな、集会所から水をはこんでおやねこいだけだ」
「とにかく竹で水を流す竿を作っておこう」
「だいたいなんとかあるだろう」
「狸、ありがとう、団子一つだ、食ってくれ」
「いらないよ、いまはまんぷくだ」
「そうか、みたらしのうまい奴なのに」
「この葉っぱにおいてくれ後で食う」
「そうか、これだ」
おりからくしを一本とってだんごをひとつぬいてはっぱのうえにのせると、しょうゆ御香りが広がって、急にお腹が鳴った。
「石をひろえよ」
「なんで石がいるんだ」
「お茶を決めるためだ」
「あーそうだった、でもなんで決めなきゃ、いけないんだ、お茶だろお茶に決まってるだろ」
「14種類ぐらいあるんだ、うまいやつにしたいだろ」
「なんでもいいよ、のめるやつなら」
「とにかく決めなきゃ、石を探してくれ、タヌキはもういいから」
「石ならこれ」
狸が手を出して形おいい石を差し出してくれました。
「おーいい形の石田」
「みつけたか」
「もらった」
「よこせ」
「あーあげるか」
「しげみのむこうに投げてみろ」
「あー、よいしょ」
ことン」
「あーきまった。5場目だ」
「碁盤に会っているのか」
「5番目にあるお茶を買う、戻って自動販売機に小銭を入れてぁってみろ」
「小銭な」
「お時差西の銭は使えないよ」
「石の善意もあるだな」
「さっきやったのが石の銭だ」
「銭をくれたのか、すまん、もう一つ食べてくれ」
「いいよ、わしは寝たい」
「置いとくからあとで食べてくれ」
「おい、かってみるよ、どうするんだ」
「小銭を恋の穴に入れてくれ、わしが5番目御ボタンを押す」
「あー」
「はい」
ゴトゴトゴト
「なんて音だ、とりだすぞ」
「あー、」
「お茶」
「団子は無事か、2個タヌキにやった」
「2本やったか」
「いや、2個だ」
「串から手でとったのか」
「べちゃべちゃだけど舐めたら腹が落ち着いた」
「串は無事なんだな」
「ああ」
「暗くなってきたのでベンチに座って食べよう」
「ああ」
「オジサン達、また縁日で」
「ああ、今度は流し素麺をするよ」
「では私は文武区茶釜で甘茶を出そう」
「それはありがたい」
「狐がいたら、だまされているよ」
「狸も化けるだろ」
「化けるが、だまさんよ」
「石の銭は助かった」
「狐は八パオ銭がいいというんだ」
「狐も囃子屋だよな」
「ええ、生意気に笛を吹く」
「釜で素麺をゆでていいか」
「いいよ」
「じゃあもう一個たべてくれ」
「ああ」
狸はおいしそうに団子を食べました。
「コーン、コーン」
「お、狐が来たよ、だまされるな」
「オジサン達、今度の縁日、お稲荷さん頼むよ」
「稲荷は無理だな」
「あばれるぞ」
「脅しか」
「踊らんよ」
「団子をやるから食えよ」
「これから会月見なんだ、茶もあるから」
「じゃあ、ゆっくりしよう」
「おい、あしたもおひるまえだろ」
「ああ」
「何をやるんだ明日」
「蕎麦猪口作りだ」
「ふーん」
「のんきなもんだな」
「わしらは、食いもの探しだ」
「まあ、勝手にやってくれ」
「とりあえず踊るよ」
「ああ」
「このお茶、ちょっと変わった味だな」
「5番の茶だ」
「魏藩の茶、だとよかったのに」
「まあいいのもう」
夜が更けてきました。
「おいそろそろ今日は帰ろう」
「ああ」
「わしらは帰るよ」
「そうか」
「暴れるなよ。駐在が来るぞ」
「駐在か、あいつは騙せん」
「恋塩銭を預けておこう」
「小石の銭をまだ持っているのか、葉っぱじゃないと使えないんだぞ」
「ふたりでやってくれ」
「またな」
二人は暗い道をゆっくり帰っていきました。
「おじゃまします」
行く実二人はお昼前に農家に向かいました。
「お二人お見えになりましたか、ちょうど今日、お嬢さんともう一人お見えになっています」
「あ、出た、指差しの神」
「お久しぶりね」
「ええ」
「なんだか楽しそうね」
「ええ、今日はそばチョコ図栗です」
「おじさん、素麺でしょ」
「ええ、ですがちょっと問題がありまして」
「なんですか」
「食品管理し各社がいないんです」
「それならわたくしですよ」
「指差しの神、髪だー」
「オジサン達市要約書で許可を取っておきますよ」
「もう仕方ないね、今度の縁日で私が素麺を流しますわ」
「私お手伝いします」
「お嬢さん」
オジサン達、二人は目を丸くして顔をみつめあいました。
「ではすみません、二人では手が回らないのでどうしようかと思っていたんです。宮司さんにも手水の水を頼まあいといけないし、素麺どれだけ勝っておかなければいけあい丘と思っていました」
「それなら頂き物の素麺がひと箱残っているからそれを使いましょう」
「いいんですか」
「悪くなってないから大丈夫です」
「良かった、後は梅雨を、うどん屋に分けてもらうだけだ、店のはとぉ建てておけばいいんだ」
「後は仕掛けをうまく作ることだ」
「ご主人、今日は、蕎麦猪口を作ります」
「分かりました、よい竹を見繕ってみます」
「お世話になります、よろしくお願いいたします」
「ちょっとお待ちください」
そういってご主人は、隣の小屋に向かいました。
「あなたたち、よくここまでできたね、それお箸でしょ」
「ええ何とかこさえました」
「縁日で、素麺流し、盆踊りはお休みね」
「一応、囃子屋の二人も来ますよ」
「わかったわ、わたくしの時間で踊りますわ、アマテラスに文句は言わせませんよ」
「はい」
「お待たせしました。この竹あたりでどうでしょう」
「ありがとうございます。今日はふしのところで5つきればいいだろう」
「多分それで梅雨は漏れないけど、今考えたら深さは、蕎麦猪口の高さにしなくては」
「そうだな」
「とりあえず切っていこう」
「お二人で何とかなりそうですね、部屋にいますからまた何かありましたら読んでください」
「オジサン達、全部手作りにするのね、コンビニに紙の容器があるのに」
「素麺には竹でしょう、コンビニで使う小銭がないんです」
「オジサン手作りのお箸、みんな喜ぶと思いますよ」
「そうですか」
「ええ、よろこびますよ」
「あなた方、たまにはいいことしますね、これ」
指さしおばさんがお箸と猪口を湯武左しました。
「こんいちわ」
「え」
「姫」
「いつの間に」
「ツキに帰るんですか」
「ええ、指差しの神がよんでくれました」
「夕べ心月でしたよ」
「はい、帰ります」
「あー驚いた」
「竹の精」
「お供が来るぞ」
「ああ」
「とりあえずこさえよう」
「かぐや姫、切らせていただきます」
「はい、優しくね」
「おじさん」
「ええ」
「嬉しいです」
「縁日で使います」
「指差しの神、お久しぶりです」
「かぐや姫、またわがままをいっているのね、ダメでございますよ」
「まあ、怒られてしみました」
「いいえ、大きくんっれて驚きました」
「もう、15になりました」
「今夜は晴れるでしょうから、月まで気を付けて帰ってください」
「はい」
「切りますよ」
「ええ」
「蕎麦猪口5つ口は削ろう」
「ああ」
「やるぞ」
「ああ」
「縁日までにもう一度宮司とかいろいろあるな」
「ああ」
「宮司さん」
「はい、準備はできていますか」
「ええお嬢さんに指差しの神に、農家のご主人いお世話いなって、あとおうかがいとねがいがあるんですが」
「ええ」
「境内で、素麺流しをやるんですが、手水の水を使って、参道のそばに、素麺アガシの仕掛けを作っていいですか、それと商店街のうどん屋さんの小堀を立てていいですか、つゆをいただくので」
「あー大変なことになっていますね、いいですよ、手水お水火度水ですが、検査の合格が出ているので、使ってくd際」
「ありがとうございます」
「オジサン達、私はこれから市役所で、出店の閣員を取ってきます」
「すみませんよろしくお願いいたします」
「良かった、今日中にめどがつくぞ」
「後で仕掛けの竿を作ろう」
「ああ、その前の腹がすいた」
「そうか」
「一寸、お稲荷を団子屋で買って食おうか」
ああ、狐にもくれてやれ」
「狸は」
「もう十分だろう」
「そうか」
「買いに行こう」
「楽しそうですね」
「宮司さん、ありがとうございます」
二人は団子屋で、お稲荷さんを買いました。
「食おうよ」
「ようやく、昼を食べることができた」
「準備は出来そうだ」
「そうだな」
「テルテル坊主を用意しなければ」
「縁日の日に仕掛けをうまく作らなければ、早めに農家を訪ねて、竿を取ってこよう、ご主人に朝早めに行くと伝えておこう」
「朝が早いのか」
「ああ、縁日の日は早めに起きていこう」
「梅雨はどうする」
「前の日に幟ともらっておこう」
「やねこいの」
「やってみよう」
「ああ」
玖珠沖から朝の木漏れ日が参道に漏れていました。
「おい、流す竿を手水に据えて素麺が流れるようにするんだが、がやっぱりなにかささえが必要だな、宮司さんに奥にある木箱を借りてこよう」
「宮司さん、向こうにある木箱、お借りしていいですか」
「ええ、中派からですが重いですよ」
「重いって、やねこいな」
「重いときっと丈夫だからいいよ」
「ああ」
二人は汗をかいて箱を運びました。そう目長塩竿を仕掛けて水を流すと、ちょうどいいように水が流れました。
「これでなんとかなるだろう」
「ああ」
「後は狸活きてもらって釜を用意してくれれば、指差しの神が素麺を何とかするだろう」
「あら、もうできてますね」
「ええ、指差しの神、これで素麺が流れると思います」
「釜がまだね」
「お待たせ」
「釜がやってきました」
「湯を沸かすんだろ、水を入れてくれ」
「ああ竿の策に行けば水が入るよ」
「わかったわ滓よ」
「まあ、では素麺をゆでましょう」
静かに、素麺が茹で上がってきました。指差しの神は、素麺を水でさらして少し流しました。
「おい箸」
「ああ」
「流れた」
「救えるぞ」
「箸も使えそうだ」
「おじさーん」
「やあもう北のお嬢さん」
「ええ、お手伝いします」
「試食お願いします、つゆはこれです」
「はい、おいいしい」
「何とかなりそうだ」
「大正の樹も尾用意してますので」
「はい着替えます」
「あらいいじゃないですかわたくしのはありますよね」
「はい」
「わしは奈良のをン並べるよ」
「囃子もやります。コーン」
気杖が来て笛と鈴を鳴らしました。
「わーい、素麺が流れてる」
「食べていよ、箸とおつゆよ」
「はい、よいっしょ、冷たくておいしい」
「良かったですね」
「宮司さん」
「市役所の方も見えていますよ」
「美亜さんお疲れ様です、この地域の名物ができました」
気が付いたら大勢の人が並んで待っていました。
境内は一日多くの人でにぎわいました。
「おい、朝も昼も食べてないままもう夕方だ」
「まだ少し怒っているようだ、並んで一口食べよう」
「ああ」
「うまいな」
「やねこかったな」
「またお願いって多くの人が言っていましたよ」
「そうですよ、ぜひ、続けてください、市のほうも応援します」
「応援」
「どんな」
「人が多く集まるので、見守りをします」
「はあ、お願いします」
「おい又だと」
「またか」
「またの下はよくない」
「そうだな」
「柳の下と同じか」
「ああ」
2024/6/1