ショートケーキ
夜明け前の西の空に浮かぶ月が明るい朝でした。
自転車が走る音がしています。
「ニャー」
ベンチに、叔母さんたちの人影が見えています。
「ねえ、キャベツ」
「高いねー」
「食べないわよ」
「白菜も」
「だったら高原レタスにすればいいのに」
「それってパンが食べれないならケーキを食べればいいのよ、と同じよね」
「いやーね」
「ねー、なんでも高くなるの」
「失礼」
犬を連れて散歩をしているおじさんが通りました。
「お早う」
叔母さんが挨拶すると犬は叔母さんを見上げて不思議そうな目でしっぽを振っていました。
ベンチの隣に立っている樹から、木の実がポトンと落ちてきました。
ようやく空が白くなってきました。
朝です。
猫が走っていきます。
鳩が首を振って歩いています。
木の葉が落ちています。
梅の木の花が咲き始めました。
いい香りです。
私は静かに目覚めていきます。
グランドから、
カチ。
乾いた音が響いてきました。
ドシ、自動車のドアが閉まったようです。
自転車は走っていきます。
チラシを持った叔母さんが、ハンドルを握って、
ペダルをがに股で漕いでいきました。
[高いなー」
「そうよ、天狗の鼻と同じよ」
「赤なのに安くなってない」
「店長商売やる気ないのよ」
「そうよ」
「ブルジョアだけで商売ができると思っているのよ」
「そうね」
「肉も食べたいしお魚も食べるのよ」
「ケーキも食べるしパンも食べるわ」
「安いとな」
「そうよ」
「見てあのおじさん」
「のり弁をポケットに入れたわ」
「わかるー」
「買うものじゃ、ないみたいよ」
ニャオー
「あら、今日も来たのね」
「食べるものないわよ」
と言いながら。猫は昨日の焼き魚で残った骨を置いていきました。
ニャオー。
「痩せ猫ちゃん」
ニャー。
「これから出かけるの、あなたお留守番よ」
猫はドキドキしました。
「行ってくるね、水は飲んでおくのよ」
ニャオー。
猫は世界が終わりそうな気持になりました、
「行ってくるね」
ニャオー。
「庭に出ちゃあだめよ」
ニャオー。
ガタン・
ニャーニャーニャー。
猫は大泣きです。
「おじさん、やったね」
「店長ー」
叔母さんは呼ばないで心の中にとどめました。
明日は我が身という言葉があるよ。
自転車のハンドルが冬の日差しに輝いています。
「アイス買おうっと」
叔母さんは、30円の棒アイスを探して買って食べました。
「オー寒い、北極よ」
[一、二、三、四、二、二、三、死ぬる。三、二、三、四」
「おい真面目に動かさんと」
「腰に来とるけえ、精一杯じゃ」
「ホ~、黄金の右打ちがか」
グランドで、おじさんたちが円陣になって、体操を始めました。
「足がつる」
「辛抱しろ、タバコを吸ったろ」
「ああ朝カラオケに行ったからよ」
「血圧は」
「200の大台じゃ」
「血が吹き出たら公園の噴水に負けんよ」
「おーい、あんたら朝から、呑気ですね」
「やばい、怖いのが来た」
「黙ってきたんか」
「ああ飯を食ってそのままトイレからここに来たわけよ」
「苦労するの」
「肩身が狭いだけの毎日じゃ」
「犬の散歩をやらんと」
「こらー、太郎がまってたよ」
叔母さんは長いリードを握っていました。
今日も普通の朝が始まりました。
「ワン」
太郎はおじさんを見てしっぽを振っていました。
太郎は、鳩が首を縦に振って歩いているのを見つけて走り出しました。
「はい、これ」
叔母さんはおじさんにリードを渡しました。
「オッと」
おじさんはつまずいて前のめりになりましたが、何とか持ち直しました。
「ワン」
太郎は、
「早く」
とオジサンを呼びました。
空には白い雲がゆっくり歩いています。
「ゴミ出しの日よ」
「おーい、さきにはじめてくれ」
「かなわんの、あとで来いよ」
おじさんたちは野球を始めました。
「あとでくるわ」
おじさんは犬を連れてごみ袋をもって、トボトボ歩いています。
「今日のお昼は抜きよ」
「はい」
「二度と黙って出るな、戻るところはないぞ」
叔母さんの顔は真っ赤です。
「はい」
おじさんはごみぶくろとリードをしっかりもってゴミ捨て場まであるいていきました。
「そのあとは階段の掃除と草抜き」
「多くないか」
「サボってるからだよ」
「はい、お茶は?」
「うるさい、贅沢言うな、赤いシールでもお茶は高いんだぞ」
叔母さんは手に菓子袋をもってぼりぼり食べていました。
「おいそれ」
「なんだ」
「それ」
「なんだ」
「一つ」
「え」
「ごみ捨てに行くよ」
「当たり前だ」
ゴミ捨て場に向かう道には黄色い花が地面で揺れていました。
おじさんはゴミ捨て場の引き戸を開けて、
「燃えないゴミじゃ」
「缶はポリバケツで、キャップは小さい青いバケツで、ペットボトルは、ネットじゃが」
「はて、しょうゆとみりんはのボトルはペットボトルと一緒でいいかの」
ゴミ捨て場のそばにまだ管理事務所のおばさんがいたので。これもここですかと聞きました。
叔母さんはうなずいて草取りをしていました。
ゴトゴト
太郎がごみをあさりはっじめました。
「こら」
おじさんはりーどをおもいっきりひっぱって、反対の出口に飛ばしてしまいました。
ジャージャー。
「こらー」
遅い、まいった。
太郎は気持ちよさそうにこっちを向いて、うなずいて、そっぽを向きました。
おじさんは、家のに戻って、バッドとグローブの手入れを始めました。
「糞爺、まだ掃除が済んでない」
「お茶は」
「あるわけないぞ、稼ぎのない奴は出ていけ」
「はい」
おじさんは、とぼとぼとグランドに向かいました。
「ごみは出したんか」
「ああ」
「醤油とみりんのペットボトルは、資源ごみだよ」
「知ってるのか」
「それがさっき、困ってしまって、叔母さんに聞いたら、ネットのほうでいいらしいんだ」
「え、コンピューターで確認することでいんか」
「いや、ゴミ置き場の網のことじゃ」
「そりゃあ、やねこいの」
「ごみいうのは、哲学じゃの」
「なんでじゃ」
「ごみは、賢者か、愚者か」
「それはわしらのほうが愚か者よ」
「ごみは賢いの」
「そうじゃ、腐ってもゴミじゃ」
「行き場があるだけ賢い」
「わしは帰るところがないんじゃ、追い出されてしもうた」
「どうする」
「わからん、ベンチに寝泊まりするしかないな」
「昼は」
「しばらく飯はなしじゃ」
「そりゃあ、野球をやってる場合じゃあないぞ」
「スーパーで清掃の仕事をして来い、小銭が手に入る」
「そうか」
「はよういけ」
「今日は解散じゃ」
「つまらんのう」
「仕方なかろう」
おじさんたちはグランドの入り口のベンチに集まって、缶のコーラを自動販売機で買って
「つまらんのう」
「あいつ働いとるんかの」
どかッと座ってグランドの空を見ていました。
「のう」
「あー」
「わしの腹は立派じゃろ」
「まあまあ」
「あんたの腕はどうなんかね」
「やりますか」
「よっしゃ」
「あの切り株で」
「負けんで」
「レディー、ゴー」
「う」
「一撃じゃ」
「あんたらまだ遊んで、夕飯が無しになるよ、早くしないとみそ汁がまずくなるよ」
「ありゃ」
「そりゃー」
「大変じゃ」
「帰るで」
「ダメじゃ」
「グランド整備ができとらん」
「やねこいの、腰に来る奴じゃ」
「腕相撲なんかやっとる場合じゃあなかったんじゃ」
おじさんたちはグランドにおりてローラーとトンボをもって、のっそりのっそりグランドの整備をしました。
「いけん腰に来たー」
「歩けんか」
「あー、コブラも上がったわ」
「蛇使いを呼ぶか」
「ああーア」
おじさんたちは大笑いしました。
「あんたら、いったいいつまで遊ぶの、もう夕飯は抜きよ」
「追い抜かれたぞ」
「そりゃあよかったの、気持ちよかったろ」
「それはもう、空っぽよ」
「しょうがないの、歳が、歳よりじゃあの」
おじさんたちはまた大笑いでした。
「一、二、三」
若者の男女がやってきてボールを投げてスクワットをリズミカルに始めました。
おじさんたちは、トンボを背中の支えにしてたってそれを眺めていました。
街灯が、煌々とグランドの周辺の樹木の枝を照らしていました。
「しょうがないね」
叔母さんはあきれて家に帰っていきました。
「おい」
「あんまん、コンビニで買ってこよう」
「肉まん」
女性が息を切らしながら言いました。
「唐揚げつけるか」
「おでん、大根がんも、こんにゃく、卵」
「今日はあれは」
「ワッフルも」
「じゃあ買ってくるよ」
男性の一人が、コンビニに走って向かいました。
「続けて」
女性が言いました。
男女の二人は、ボール投げのスクワットを得延々と続けています。
「夕飯抜かれたぞ」
「しょうがない」
「ビールの時間じゃ」
「1000円持ってるか」
「ああ」
「10人」
「居酒屋で飲み食いで満腹じゃ」
「ベンチで飲むんじゃあないのか」
「それは邪魔じゃろ、若いものに毛嫌いされてもかなわんからな」
「思いっきり、もう嫌われてますよ」
「おい、これは参ったよく見たら美人さんじゃ」
「角の居酒屋にしよう」
おじさんたちはグランド整備を切り上げて居酒屋に向かいました。
「電話ぐらい入れておこう」
「10円玉がない」
「誰かケータイは持ってないか」
おじさんたちは顔を見合わせて呆然と突っ立って空を見上げました。
「よしそれじゃあ、わしが家に帰ってかみさんに言って電話を入れてもらうわ」
「すまんの」
「ちょっと待っとれ」
一人のおじさんが家に急ぎました。
「あいつ顔面ぼこぼこになるぞ」
「タオルを水で冷やしておくか」
「あいつ馬鹿な、でも助かった、犠牲は一人ですむぞ」
「世の中甘いかの」
「厳しいで」
「一人もうすでに家を追い出されたのがおるじゃろ」
「警備が終わったらやつも1000円ぐらい持っておるじゃろ」
「頃合いを見て呼びに行くか」
「しょうがないの」
「ヒェー」
顔が腫れたおじさんが帰ってきました。
慌てて濡れたタオルを、腫れた顔に投げつけました。
「しみるー」
「しばらく冷やしておけ」
若者たちはコンビニで買った、おでん、に、あんまんにワッフルを、ベンチに広げてチューハイで、乾杯しました。
おじさんたちは、
「若いうちだぞー、しっかりな」
と言いましたが、
若者たちはベンチで静かに食事をしていました。
「違うな」
「わしらの頃も少しは、面倒くさいと思ったが、無視はしなかった」
「今のは完全に無視だ、帰った時のかみさん以上だ」
「いいから、行こう」
「カラオケの音がするぞ、席がないとは入れん」
ガラ、
暖簾をくぐってガラスの引き戸を開けると、奥に席が残っていました。
「ビール5本にコップ10個」
「あんたたちいいのかい」
居酒屋の女将はあきれた顔で眺めていました。
「もう追い出された」
「どうするの、うちは、居酒屋旅館じゃあないよ、12時には追い出すよ」
「薄情なことはいわんでくれ、金はそろえた、1万じゃ」
「何ボケたことを、それじゃあお通し一品で帰っておくれ」
「ベンチのほうがよっぽど豪華じゃ」
「のう、わしら屋根がないと落ち着かん」
「しかし、高い屋根代」
「何ゴトゴト行ってるの、飲まないなら、出て行って」
おじさんたちは、しょぼしょぼと、奥の席に着きました。
「おいあと1000円ずつ出せるか」
「2000円にして一人3000円が相場だろ」
「いやー、まいった」
「会長、ごちそうさまです」
「わしは出さんぞ、ほれ」
会長は目を固くつむって、わに革の、財布をパタンとテーブルに置きました。
「見ろ札束が1センチになって膨らんでるぞ」
「ごちそうさまです」
「女将、特上の鍋二つ」
「うちは、鍋は一つだよ、会長、甘やかさないでよ」
「悪い、わしが食いたいんじゃ」
「まあ、待っててよ」
「ああ、地の果てまで待ってるよ」
おじさんたちはようやく胡坐をかいてくつろぎました。
「今日は朝からテレビのニュースも見てないぞ」
「もう今日は帰れそうにないな」
「どうする」
「店は他もあるで」
「まあそうじゃ」
おじさんたちは急に気持ちが大きくなってしまいました。
「はい、ビール」
「栓はこっち」
「抜くか」
「気持ちええの」」
「抜くぞ」
おじさんたちはビールをグイっと飲みました。
「あー、美味い。天国じゃ」
「札幌よ」
「胡さんはこんか」
「キリンが運んでくるよ」
「サン、トリのがじゃ」
「あんたたち面倒よ」
女将はあきれ顔です。
[乾杯ー」
おじさんたちはもう顔を真っ赤にして食事を始めました」
「おいやつを呼んで来いよ」
「スーパーの仕事」
「行ってくるわ、万引きじゃあない、清掃じゃ」
「お前、帰れよ」
「もう追い出された」
「行ってくるよ」
おじさんはすくっと立って、
「自転車はだめだぞ飲酒運転はすぐ駐在にやられるぞ」
「ああ」
おじさんは、大股で歩いていきました。
「いい月だ」
「いい酒だ」
おじさんはすっかり酔いが覚めていました。
ベンチで若者たちは静かに食事を続けています。
オー美人さんだ。
おじさんは黙って横を通り過ぎました。
「おじさん、食べなよ」
若者は唐揚を一つおじさんに皿に乗せて渡そうと立ち上がりました。
「いいのか」
「ええ」
「ありがとう」
「どうぞ」
「スクワット格好いいな」
「やりますか」
「ああ」
「では、はい」
「はい」
「はい」
「はい」
5球でくたくただ。
おじさんはベンチに崩れるように歩いて行って
唐揚げを食べました。
「美味いな」
「おじさん、若いね」
「いやー、歳だよ」
「居酒屋混んでるでしょ」
「ああ」
「今日は満月だから」
「かぐや姫が来るかの」
「ええ」
「ではわしは仲間を迎えに行くわ」
「気を付けて」
バイクが
ドドドババーンと音を立ててはしていきました。
「おー、危ねー」
おじさんは歩道を大股で歩いていきました。
「おーい」
「おう」
「終わったか」
「ああ」
「3000円できたか」
「7000円だ」
「会長が出してくれるから、来いよ」
「かみさんに、言ってからな」
「お前追い出されて帰れんのだろ」
「まあそうだが」
「帰るのか」
「ああ話してくる」
おじさんはとぼとぼ家に帰りました。
「この役立たず、何をしていた」
「働いていました」
「稼ぎは」
「これです」
「珍しい、今夜雪になるな」
「いい月だよ」
「一緒に歩こう、居酒屋に行こうよ」
「馬鹿もう真夜中だ」
「まあそうだが」
「馬鹿ー」
げんこつが顔面に飛んできました。
「今夜は納豆ご飯だ、残ってしまうじゃないか」
「帰って食べるよ」
「固くなるぞ」
「湯漬けにするよ」
「贅沢言うな」
「行こうよ」
「もう出ていけ」
「はい」
「ちょっと待て」
「はい」
「化粧をするから」
「はい」
おじさんと叔母さんは、月明かりのもと手をつないで居酒屋に向かいました。
「良かった、よかった」
迎えに行ったおじさんは、大笑いです。
三人は、月を眺めて、
「いい、月ですね」
「何言ってるの、今更なのよ、蹴るぞ」
「あんた、旦那なんだから、もっと私を楽にしなきゃあ」
「あー言われてる」
パンチ。
奥さんはご主人の顔面にグーパンチを決めました。
ご主人は、鼻血ぶっひゃーです。
公園の噴水に勝ったぞ。
10めーとるとんだでしょうか。
「あんた何やってるの、事件じゃない、きれいに血を拭いて、跡を消してよ」
「ご主人、夜が明けたらみんなで消しましょう」
「すみません」
「だめよあんたがちゃんと、やりなさい、ごめ迷惑をおかけしてすみません、こいつがだらしないので困っちゃいます。ハハハハ」
ミャーオ。
ミケ、めざしが転がってないな。
「ミャーオ」
「おじさん間抜けよ」
「間が抜けたら歩けないじゃあないか」
「た、ま無しのだな」
「今度(また)のことではなく、足と棒の付け根だな」
「違う、頭のどこかが抜けてるやつだニャー」
「オーそれはあたりじゃ、三歩歩いたらなんでも忘れることができる才能にあふれた人間だ」
「能天気で長生きするな、俺はこの間お前が寝ぼけてわしの自慢のひげをちょん切ったのが忘れられん、どうやって懲らしめようかと考え始めたら眠れん」
「わしは羊を三頭数えたら気持ちよく眠れるぞ」
「道理で昼間よく寝てるニャー」
また寝てしもうた。
「どうするんニャー」
「飲むよ、いい気持で」
「居酒屋でー」
「歌うか」
「デュエットで、銀座の恋の物語」
「こっちで、一つ、あっちで一つ、併せて二つのおにぎり」
「食べたはなーし」
「いい気持ですね」
「ああ」
「奥さん、若いね」
「まあ、そうですよ」
「銀座いきましたか」
「ええ」
「イタリア亭とかライオンホールとか、いろいろ、白ワインでした」
「では缶チューハイは」
「大好きです。レモンハイ」
「ゆっくり飲みましょう」
「足りん」
「えー」
「ご飯がない」
「すみません米びつ一つ」
「はいよ」
「ありがとうございました」
納豆の匂いがぷーんとしました。
ご飯茶碗で顔を隠してかき込んでいます」
「お肉がなくなって春菊を食べました。
「卵は」
「つけないよ」
「ネギ」
「うん」
箸の音が続いています。
「食べた」
「うん」
「魚も」
「ネギを食べるよ」
「ご飯お代わり」
「はい」
米櫃のコメはすでに半分以下です。
「ダメ男,早くつげ」
「はい」
「しゃもじを必死に動かしました」
「ご飯をつぶすな馬鹿」
「また足のキックが飛んできました。
「おや飛んできたね。
女将は両手に皿を抱えて店の土間に落ちたっ爺をけり起こしました。
「ヒェー」
「まだ食べるの」
「腹減った」
「お菓子、リュックから菓子袋を五つ取り出しました。
「家内は、ご飯を食べ終わってすぐにお菓子をポリポリ食べています。
口をとがらせて、怖い顔です。
「おやじ何見てる」
「これか、いるのか」
「美味そうじゃの」
「ちょうどつまみが切れた」
「くれ」
おじさんたちも狙っています。
「お銚子お代わり」
「はーい」
女将が明るい声で、言いました。
「喜んで」
女将は燗酒を5本急いで温めて、お盆に持ってテーブルに運びました。
「じゃま」
「まだ寝てる、飲まないなら帰ってよ、うちは旅館じゃあないよ」
「お腹すいた」
「食べるなら席に戻れ」
「あそこは怖いトドが座っている」
「獣を連れてくるのがいけないんだ」
女将はもう一度おじさんを蹴りました。
バッゴーン。男はお尻を抱えて飛んで出ていきました。
「あれ」
綺麗な満月です。
東の空も暗いままです。
「まだ飲めるな」
おじさんはとぼとぼと取居酒屋ののれんをくぐりました。
「いらっしゃーい、なんだあんたか、目は冷めたか」
「酒ー」
「座りな」
「はい」
男はよろよろと歩いて座敷の空いてるところに座りました。
まだぼけてるな。
バッゴーン。
太い足キックがっ飛んできました。
オッと危ない。
おじさんはかがんでキックを避けてぐびっと、一杯飲みました。
「パチンコに行くか」
「働けー」
「チャンと打って働きますよー」
「それが仕事か」
「はい、朝の9時から夕方5時までの仕事です」
「昼は抜きだぞ」
「はい」
バッゴーン。
強烈なパンチが飛んできました。
おじさんは顔をあんパンのように膨らませて、
へらへらと笑いました。
「このおやじ」
「はいー」
「まだ飲むか」
「はいー」
女将はやっぱりやーめた。
こりゃあやってられん。もう店はしまいじゃ、
ろくなことはないよ。
会長さん出て行って。
「そうか」
会長はのけぞって店の外をのぞきました。
「コーン」
おう来たか、
化け、キツネめ、
「踊りますよ」
「おうやってくれ」
「コラー、営業妨害だ」
しっぽは八つだ。
「化け狐、お稲荷さんにしちゃうよ、店の看板娘よ」
「コーン」
月の裏からウサギが、ばんざーい、とうとうキツネも、摑まった。
「あのおばさん、大蛇だよ、溶かされてしまうよ」
ボタ雪が深々と降り始めました。
道に会小さい足跡外直線に坂の上に上っています。
「チュー」
小さく鋭い鳴き声です。
ホ~。
バサ、
キキキキキ。
フクロウはようやく夕飯を捕まえました。
「お母さーん」
子ネズミが、雪に埋もれて泣いています。
フクロウはしめしめと思って、子ネズミを腹で温めました。
「美味しいお肉に育つんだよ、かわいい子ネズミさん」
「あんたたちもう店は、閉めるよ、暖簾はもう納めたんだ。これから一分10000円のチャージだよ」
「出たー、ぼったくり居酒屋、横丁名物、とってもまずーい居酒屋」
「お前らだべさせてもらっただけ感謝しろ」
「しょうがない、朝までわしの家で飲みなおすぞ」
「オー」
「おじさんたちは目を輝かして、店を出ていきました。
「静かになったね、これで私一人だ」
女将は散らかったテーブルを見て、20万の夜か」
と言って、テーブルに残ったビールをコップに注いで飲みました。
「おばさん、おわり」
若い女の子がのれんを上げて顔をのぞかせました。
「いいよ早く暖簾を入れて戸を閉めて」
「後二人、いるの」
「いいよ早く」
「はい」
三人は、居酒屋に入って、テーブルを片付けて、
「女将、いいの」
「いいよ、一緒に飲もう」
「イェー」
「スケベおじさんたちは」
「追い出したよ」
「ふーん、家に帰れるのかな」
「奥さんにみんな追い出された人たちよ」
「まあいいや、ベンチは雪で真っ白だから」
「残り物で鍋よ」
「はい」
「あれ、牛肉」
「当り前よ」
「出汁は鶏か豚だと思ってたけど」
「あんたたちテールスープは知らんのかね」
「コンビニにはないけど」
「コンビニは無理かもね」
「ちょうど残ってるからテールスープのシチューにするよ」
「はい」
「冷蔵庫から好きな飲み物をとってのみな」
「はい」
三人は経って、奥の冷蔵から、缶のスコッチハイをとってきて、席に座って飲み始めました。
「聞いたか」
「うん」
「短期留学できるんだ」
「うん」
「北京」
「いや、もちろん、ブランデンブルグ」
「ドイツ文学か」
「いや、哲学科で遊ぼうと思う」
「隆一も行ってるよ」
「私も」
「ついてくるなよ」
「いいじゃない」
「ドイツでスクワットか」
「うん、サマースクールでスコットランドに行くの」
「ああ寝て考えろ」
「うん」
「闇鍋だな、これは」
「美味いな、テールスープのシチュー」
「ご飯があったら最高よ」
「世界の終わりが来るのか」
「その時はお握りよ」
「梅干し入りで俵でいいな」
「コメが一番」
「君たち何言ってるの」
「粟に,稗の五穀米にしようよ」
「玄米入り」
「お茶は、ウーンまずいの青汁」
「飲むの」
「うん」
「叔母さんは好物なのよ冷蔵庫に1ダースあるよ」
「取ってくるよ」
「カンパーイ」
ドドド。
雪が落ちた。出口がふさがったよ」
この建物はスカスカだからガスはたまらん、火を使っても大丈夫だよ」
「みんなは青汁を飲んで、
「うーんまずい」
と叫びました。
「楽しいね」
「やー」
「熱湯風呂ごっこやるか」
「死ぬるー」
「やー」
「ごみを集めなきゃあ」
「夜が明けたらゴミ出しだよ」
「おじさんごみは」
「奥さんが片づけてくれるよ」
「キツネのえさになるよ」
「違う狼みたいな野犬が平らげるよ」
「そうだな」
ふくろうはねずみのこどもがうごくので、いい肉になーれホーホーと言って木の枝に連れて飛んでいきました。
おじさんたち、出てきたよ。
「やっぱり奥さんに追い出されたんだ。
かわいそうに、ダウンのチョッキの方にもう雪が積もっているよ。
「ベンチに寝ることはできないね。
どうするんだろうか。臨時の避難所の開設をしよう。
っ青年会館の横に段ボールハウスを作ろう。
「やるぞー」
「オー、ねー、ガー、いします、凍えて死ぬる」
おじさんは凍えて背中をまるめて眉毛に雪を積もらせています。鼻水も凍っています。
若者たちはケータイで留学に行った友達に写真を送りました。
「やべー、おやじ何やってんだ」
「おまえのとうちゃんか」
「ああ」
「十分にスケベーだな」
「まあな、俺が生まれたんだぞ」
「そうだな」
「すけべーでいいだろ」
「事件になってない合法的な奴だ」
「お前も気をつけろよ」
「大丈夫だ」
「こっちの娘は、オープンだ、ピストルを懐に持ってるんだ。本物だぞ」
バッゴーン。
「聞こえたか」
「ああ」
「あれが現実だ」
「厳しいの」
「おやじは」
「これから段ボールハウスに入れるよ」
「わかった、ありがとう、めんどうをかけてすまん」
「おかんには電話するな」
「ああ」
「おやじのためだ」
おじさんたちは次々と雪の中を、段ボールハウスに向かっています。
頭には雪が積もってとんがっています。
「おう、きたか」
「ああ」
「箒でたたかれて逃げてきた」
「わしはぞうきんをなげらえれた」
「わしは花瓶でバッゴーンだ」
「しまった木刀を置いていたのが間違いだ、きっぱり切られた」
「わしは金槌だ」
「みんなかなわんのう」
「出がけにうまそうなお茶の匂いがしたよ」
「わしも」
「わしも」
「やられてしもうたの」
「全員、宿無しじゃ」
「かなわんのう」
「持ってきたで」
「わしも」
「わしも」
おじさんたちは缶チューハイを開けて乾杯しました。
「カンパーイ」
雪はやみません。家々の屋根から氷柱が長く伸びています。
おじさんはポキポキ折って、砂糖をつけてなめ始めました。
「寒いのう」
「わしら凍え死ぬかの」
「大丈夫じゃ、のんどりゃあ、なんとかなるわ」
「飲んで寝たら朝が来るよ」
若者たちはすっかりあきれてしまいました。
「炊き出しは」
「いらないね」
「何とかなるらしいよ」
雪はやみそうにありません。
月明かりで雪原が輝いています。
「コーン、コーン」
キツネが鳴いています。
「化かしキツネじゃ、あの娘が化けといるぞ」
バッゴーン。
必殺キック。
「スケベおやじ、奥さんが泣いているわ」
「奥さん、誰」
「ボケおやじ」
「誰,わしか、もう一杯焼酎」
バッゴーン。
「雪でも拾って飲め」
「オー、すくっての、こうやって飲めば」
コクコクこく。
「うぷ。これがうまいことうまいこと、えへへへ」
「そこで落語をしてるなら仕方ない」
「段ボールハウスから、追放よ」
「寒いの」
「ちょうどいいわ頭を冷やして」
「酔いはさめんぞ」
「うぷ、いい気持じゃ」
「出て行って」
「はいー」
「こうやって歩く」
「滑る」
「お、転ぼうとしたら」
「杖で止まった」
「扇子は化けるの」
「勝手にやってろ」
若者たちはあきれてもうこのおやじたちは見捨てた。
と決めました。
若者たちは、介護ボランティアは、もうやめた、と思いました。
「わしらもどうする、あれらの施設を維持しとるんじゃがの」
「いいからそのままのしとればいいよ、いずれあれらも同じじゃ」
「でも、飲む酒の銘柄はキリンの首は長いのじゃあなくて、極寒落としの札幌でもなくて飛んでる鳥ではなく二の酉でも産の鶏でもないみたいじゃ。密造でもないが、地元で作るのがいいらしいぞ」
「密造でない、自前ビールとは」
「わからんが流行っていて、ほら米屋もコメのビールを始めたろクラフトビールというやつ」
「わしは瓶のキリンじゃがの」
「居酒屋のやつでいいんじゃが」
「女将も出て行けと、いったろ」
「飲んべえじゃあ、ダメなんだよ、今はやりの、いやな客」
「違うぞあれはいきなり怒鳴るやつで鷲らは酔って騒いでるだけじゃ」
「そうじゃの、今のうちに道の雪かきでもしとこう」
「ああ」
おじさんたちはスコップを持ち出して、車道の雪を櫂て、側溝に入れていきました。
これは解けないぞ、湯をかけるか、薪じゃ焚火じゃ、落ち葉焚き。
「おじさんサツマイモ」
「おう」
10本投げ込んで、薪を足して焼こう。
「いつまで遊んでるの、寝ないとまた、明日仕事に行かない気」
「明日か」
「明日はもう一つ夜を超すからまた飲めるぞ」
「おじさんたち、死ぬよ」
バッシャーン。
熱いー。
道の雪がたちまち解けていきました。
「おいトラック」
「どこに用があるんか」
「ローソンのぶんか」
「通してやれよ」
「本当にもう仕事に行かない、気ね」
「仕事があればやるよ」
「嘘は聞き飽きたよ」
「そうかわしは、嫁の顔に飽きたわ」
「同じのを返すよ」
道の真ん中で、バトルが始まりました。
若者たちは焚火に当たって焼き芋をかじって眺めていました。
「うまい」
「ああ」
「腹減った」
「おじさんにやるか」
「ああ」
「熱い石」
「手が焼けるぞ」
「軍手」
「軍手」
「アチチ」
「ほら」
「はい」
「ほら」
「はい」
ストレッチができた。
「やったー」
「ほい、おじさん」
「オッと、アチチチチ」
「アッチ、アッチ」
「郷ひろみ」
「やけどした」
「雪で冷やせ」
「美味い」
「もう食うたか」
「ベロがやけどした」
「雪を食らう」
「寄ってしまうぞ」
「sりゃあ自転車はだめじゃの」
「おじさんたち馬鹿」
若者たちはあきれてみています。
「段ボールは撤去」
「何だ、もうすでに生活道具でいっぱいだ」
「おじさんたちに撤去してもらわないと」
「そうだぞ泥棒だよ」
「不法占拠ですよ」
「そうか、わしらのほうが犯罪じゃ」
「困ったの」
「早いとこ荷物を片付けるんだ」
「よっしゃ」
「リュックにしまい込んでしまおう」
「お前馬鹿だなこんなに散らかして」
「エロ雑誌まで持ってきたんか」
「必需品じゃ」
「もういらんじゃろう」
「使えんのにの」
「片づけるか」
「ああ」
「大切に持っておけよ」
「ああ」
「エロおやじ」
若者たちはあきれてみていました。
「片付いたぞー」
「まだ転がっています」
チュー。
名済みが一匹出てきました。
コーン。
きつねが、飛びついて咥えました。
食品ごみを片付けてくれてるよ。
化け狐。
「美人でしょ」
「ああ」
「世界一」
「宇宙一だよ」
「こら」
「いつまで遊ぶ」
「ほら来たぞ」
「奥さんたち、大変だ」
「ついでだから、ジャケットはとるかな、バスとよ」
「ヒェー」
おじさんたちははなじぶーでした。
「いつまで、基地ごっこをやるんだ、働け」
バッゴーン、ぶっといアームパンチが、おじさんたちの顔面に、棒の跡ができるぐらい鵜に飛んできました、
「オットー」
おじさんたちは仏恩で壁にピタッとつぶれて張り付いてしまいました。
「気持ち悪いデブな、ヤモリ」
「おい、このまま干してお行こう」
「いいオブジェだ」
「これで完成」
「やったー」
「あんたたち」
「はい」
「ちゃんと見張ってるんだよ」
「糞をたらしたら臭いぞ」
「がまんできーん」
「やばいぞ、うんちの壁で有名になったら」
「外人が写真を撮りに来る」
「こら、おむつだ」
「ヒェー」
おじさんたちは、缶の酒をぐびっと飲みました。
「これを便所にするんか」
「しっかりためてやるわ」
「やばい、おじさんたち本気だぞ」
「簡易トイレ設置」
「結局そうなるんか」
「しょうがない段ボールハウスは、」
「撤去」
「うん」
「おじさんたち降りてトイレを順番に使って」
「それでまた壁に張り付くのか」
「ええ」
「わしらさらし者になっても生きていくわ」
「ええ、お願いします。これから壁に絵をペイントします。
テーマは、家庭と街にします」
「居酒屋と生肉店は、はずさないでくれ」
「銭湯も入れておきます」
「いらんわつぶれても困る」
「銭湯はいるんですよ、コインランドリーを叔母さんたちみんな使ってるんですから」
「時々ちょっと出かけっるのがそれだったか」
「洗濯ものの量が多すぎて困るのよ」
「下着だけだろ」
「家、ズボンも上着も酒とおしっこの匂いで汚いのよ」
「そりゃあわしらの生活のすべてじゃ」
「おじさんたち、お風呂に入ってください」
「まあ銭湯の一語ミルクをぐびっと飲みに行くか」
「あんたら、仕事は」
「あるなら行くよ」
「探せ、バカ、生活が苦しいんだよ」
「そうだったかの、毎日楽しく生きとるから気が付かなかった」
「平和だな」
若者たちはあきれて呆然と眺めていました。
わしらは日雇いで元気でないと飲めんのんじゃ、ボランティアに厄介になんかなるか。
若いもんは勝手に生きればいいじゃろ、いちいちわしらに手を出すな。死ぬときはわしの勝手で死んでやるで。
昔から言う、老いては、天命に従え、いうじゃろ。
全然つまらん、おっぱいのふくらみの形が違うんじゃ、そういうようなのはわしらはつくッとらんで、どういうわけかそれになってしもうた。コンビニ弁当が作っているんじゃ。
違うか。
のう、違うか。
おうてなくてもいいぞ、
壁に張り付いて生きていく。
死んだら勝手に落ちて腐っていくから邪魔するな。
「いい月ですね」
「ええ」
「今日はお昼は外でベンチに座って食べましょう」
「ええ」
「桜のつぼみが固くついていますね」
「梅の香りがしますよ」
「すいせんが、ほら」
「ええ」
「久しぶりの香りで生き返ったよ」
「ええ」
「歩くよ」
「ええ、ボケるなアホ」
「はい」
「働け」
「はい」
「すき焼きぐらい食わせろ」
「はい、頑張ります」
また、大きなトドが怒った。
土が乾いて土ぼこりが舞っています。
ほら、ミミズが動いている。
水を探してるよ。
「春はもう少しだね」
「うん、腹減った」
「早く食べに行こう」
「ぼけ、アホ」
バッゴーン、
こん棒足キックだー。
おじさんはけられて壁にへばりつきました。
初めに戻る。
「行ったり来たりだ」
若者はポカーンと眺めていました。
おじさんは、ミミズの足跡を追ってゆっくりと土に腹ばいになって、見ていました。
ミミズは湿った落ち葉に向かっていきました、ミミズは落ち葉の下の朝露がたまった、土の中にもぐって土を食べました。
いい肥料になるな、耕してサツマイモを植えて育てよう。
コメは高級なので芋で、腹を満たそう。おじさんは、市の許可をとって、グランドの落ち葉がたまった日理植え込みを鋤で耕していきました。
「また陽が暮れるの。朝も昼も飯はなかったが、土を耕すのはいい汗じゃ」
「まだ働きに出かけんのか」
「今、市民課は開店休業じゃ」
「なら仕事を作ったらどうじゃ」
「オー、ホールも使ってないのはまずいな」
「ピアノコンサートを企画しよう」
1000人は来るだろう」
「そろばんが合わん」
「貧乏でパンも食えん、美味いアンパン」
「それならイチゴのショートケーキを食べればいいじゃろ」
「オーお姫様よ」
「またぼけて」
「ケーキなら、スーパーで赤いシールで、100円じゃ」
「100円なら食える」
「企画はどうする」
「暇で、貧乏でできん」
「おじさん、私ピアノ弾きますよ」
「オー美人さんやってくれるか」
「ええ、薄着のドレスで」
「たまらんの、赤いガラスのヒールじゃ」
「いえ、それではペダルの感覚が良くないので素足です」
「えー、肌を露出するんか」
「ええ」
「それは売りじゃ」
「すけべー」
「きらきら星か」
「変奏曲よりも、ラベルの、ソナタにします」
「予算はなくてすまん、ただ弾きになるが、ポスターもわしの手書きでチラシも白黒のコピーじゃが、やってくれるか、4月1日で」
「エイプリルフール、嘘みたいでいいわ」
「そうか、それなら忙しいの、施設課と、文化局と教育委員会に話を通して許可をとらないと、町長のやつに話さんと、いけんのが一番難儀なことじゃ」
「まあ少しは仕事になるかの、グランドのごみ拾いを始めとかないと、とっさにパワハラじゃ」
「それじゃあ、かかろう」
「いや、耕すのをやらんと、夜中じゃし」
「あーそうか」
「すこし汗をかいたら、おくさんも気がおちつくじゃろ」
「そうじゃの、わしらおかみのとこでビールじゃ」
「おじさん、今日は帰ったほうがいいよ」
「また若いのがいいことを言う、ありがとうそれはそうじゃ」
おじさんたちは畑を耕して、空を見上げました。
「みぞれじゃ」
「濡れて帰ろう」
「オー男じゃの」
「この、ちんたら野郎め」
げんこつ爆弾が飛んできました。
「ねえ聞いた」
「なに」
「役場のおじさんやったみたい」
「くびよ」
「そうみたい」
「100円拾って、自分の机に隠し持っていたって」
「笑うね」
「まあな」
若い女性二人がベンチで話していました。
「それで」
「聞いたよ、美幸ちゃんピアノリサイタルするみたい」
「応援カード作ろうよ」
「面白いね」
「おい、聞いたか」
「わしらのことじゃ」
「まあ喜んでもらえそうなんで気張ってみるか」
「そうじゃの」
「そろそろ切り上げて家に帰って茶漬けでも貰って寝よう。
「馬鹿たれ、お茶漬けほど高価な飯はない、砂でも食え」
「ミミズになれって」
「モグラでなくて良かった」
「まあそうじゃが夕飯もなしだぞ」
「貧乏にはかなわんの」
「貧乏との戦いは、戦争じゃ」
「しょうがないの」
「魚も食べれんかの」
「ニャー」
「ミケ、やれんわ」
「少しづつ」
「うん」
「ちょっとでいいな」
「朝起きて」
「ちゃんとたべれたらいいな」
「失敗はあるよ」
「事件にならなければ」
「警察が来るとやばい」
「摑まってしまう」
土埃が舞っています。
誰もいません。
広いグランドです。
今日yも長い影が延びています。
長いリードを持ったおじさんが走っています。
団地の朝は静かです。
風に舞った落ち葉が商店街に飛んでいきます。
鳩が歩いています。
誰もいない。
この時間が大事です。
この時間にスケッチします。
今日も無事です。
青い空です。
グランドの木の枝が静かに揺れています。
ゲートボールの音がもうグランドで響いています。
私は、呆然と立って眺めています。
今日も、事件が起きました。
新聞は今日も届きました。
電気代が跳ねあがって、怒られました。
私はこれから体操です。
寝て起きて、用を足す日々です。
グランドの植え込みに立っている樹木は。寒い北風で、震えています。
ビリビリビリビリ
電機が走りました。
枝の先で硬いつぼみが、
「いいね」
とほほ笑んでいます。
地面のミミズは、
「ヤバイ、逃げろ」
と言って土にもぐりました。
アカゲラは「逃げても無駄だよ」
と言って嘴を土にさしてミミズを咥えました。
「ピー、ヒュー」
「ヤバイ、アカゲラは木の幹の裏にぴったりとへばりついて隠れました。
ガブ。
鳶の嘴がアカゲラを挟んで飛び上がりました。
「スッゲー」
「飛ぶっていうのはこういうことか」
鳶は、北風の中大きな円を描いて飛びました。
「どうだい、立派なリングだろ」
誰も答えません。
鳶は悲しくなって、目から涙を流しました。
私はジャケットが飛びそうになったので慌ててかがみました。
「う」
蛾か、口に何か飛んできたぞ。
ぺ、
私は思わず吐き出しました。
私は、大口を開けていたようで情けなくなってしまいました。
わたしは、ゴミ収集場の前に立っていました。
今日は燃えないゴミの日でした。
ペットボトルを緑のネットに入れました。
透明なペットボトルたちは、ハンモックの上でよく寝ています。
起きたらまた立派なペットボトルに成長するようです。
ふとみたら、膝ぐらいの高さの丸い腰掛椅子がありました三本の足で、短い背もたれがある椅子です。
ちょうど暖炉に薪をくべるときに据え割っ座って、作業できるような椅子です。
これは儲けものとおもってわたしは、管理人の人にもらっていいですかと聞いて、
「捨ててあったものだろ」
と言われました。
「そうかと思って私はそれを自宅に持って帰りました。ちょうどカード立てに使えそうだと悦に行っていました。
私は私がごみになった日でした。
とうとうゴミ捨て場を頼ってしまいました。
「おじさん」
「なんだい」
「あれ」
「いい匂いだね」
「ちがう、青虫」
「採るかい」
「怖い」
「いいにおいだよ、こうすると角を引っ込めるよ」
「気持ち悪い」
「そうかい、悪かった、口笛を吹こう」
「うん」
「上を向いて」
「だっさーい」
「これだよ」
「パプリカ、パプリカ」
「ありがとう」
「ばいばい」
「こら、仕事は」
「忘れてた、やります。すみません」
しまった怖いのがやってきた、陸に上がった、トドが牙をむいている。
「私は慌ててひょっこひょおこと歩いて帰りました。
「仕事はこれからです」
「電車に向かうまでご飯は」
「ないよ、馬鹿脳がからっぽで」
「オレンジ色」
「怖ーい」
「これから一晩過ごすのに」
「逃げておこう」
「飯は」
「なーし」
「ラーメンは」
「あるわけないだろう、働け」
「食えんのか」
「食うな」
「はい」
「食うて出して」
「寝る」
「いい加減にしろ」
「ごめんなさい」
「何回も言うな」
「はい」
「すみません」
ごみ置き場のアジサイの葉っぱが枯れていました。
バスが着ます。
「ごみはちゃんと出したか」
「はい」
「だめ」
「すみません」
「ケーキ食うか」
「はい」
「イチゴはなーし」
「はい」
「でも朝ご飯は食べれないよー」
水仙が笑いました。
ボケの花が見下してきました。
梅がホホホホと笑います。
橙の実が頭を下げました。
「お早う」
「お早うございます」
バス通りにファラオがやってきました。
私は手を合わせて拝みました。
「何やってる」
バッガーン。
「仕事をやれ」
私の右の眼に青あざができました。
朝が逃げていきました。
とうとうトドがまた牙をむいたのでした。
子ザルがやってきて柿を拾ってかじりました。
トドは右手で子ザルを払いのけました。
私は椅子をヘルメット代わりにして急いで自宅に戻りました。
やっぱりご飯はありません。仕方ないの、と思ってテーブルに座ってトドの帰りを待っていました。
天井を見上げると蜘蛛が歩いていました。
糸を垂らしたではありませんか、食われるかもと思いながら私は糸につかまって登りました。すると蜘蛛は仏様になって私の下に凶悪犯がついてきているのに気づきました。
私はどうぞと言って、道を譲りましたが、無残に糸を切られてしまって真っ逆さまに落下しました。やっぱりあるのは地獄の日々だけでした。
針の山です。ドカッとトドに似た仏様があっちに座っています。
「どうしようもないので」
「それで」
「なんでもありません」
「その目はなんだ」
「いいえ」
これから恐怖の夜が始まります。
まだまだ夜はできたばかりです。
どこまで行ってもおびえています。
ふわふわとホコリが飛んできました。
うまい具合に逃げて行っています。
ダメでした。
バッゴーン、一発食らいました。
私はベッドにぶっ倒れました。
私は、月に飛んでいきました。
トドが、横たわって寝ています。
「食うか」
「はい」
「生意気だな」
「ええ」
「何だって」
「すみません」
「私はトドのお尻に押しつぶされました。
ギョエー。
「今日も一日飯抜き」
「当り前だ、働け」
「はい」
「ゴミは」
「捨てました」
「それはなんだ」
「はい」
「何だ」
「キャンバスの枠です」
「お前捨てたろ」
「そうでした」
「椅子は」
「拾いました」
「馬鹿」
ギュー。
「重い」
「死ねー」
「はい」
「どうするんだ」
「死にまーす」
「それは」
「ここに置きます」
「このくそ馬鹿垂れ」
「はい」
今朝も月が輝いています。
グランドは今日も静かです。
犬を連れた美人さんが今日も歩いていきました。
「おはようございます」
「あ、おばさん」
「今朝は風が静かね」
「はい」
「かわいい犬ですね」
「ええ」
「7歳」
「10歳です」
「ワン」
「はい」
私は持っていた飴を投げました。
「わん」
「だめでしょ」
「わん」
「毒よ」
「ワン、おじさん悪い人、嚙みたい」
「いいよ」
「わん」
私は思わず逃げました。
道が続いています。
霜が光っていました。
「行ってきまーす」
「小学生の子供がようやく学校にランドセルをしょって、出かけています」
自転車も走っています。叔母さんも走りました。
わたしは、エジプトの砂漠を呆然と眺めました。
ファラオがケーキをつまんで食べています。
「野菜はとれたの」
「はい」
「豊作」
「はい」
「小麦粉もブドウも大丈夫ね」
「はい」
「では行きましょう」
「はい」
「祈りの間に向かいますよ」
「はい」
私は目がくらんでしまいました。
天井から太陽の光があふれています。
恐ろしいことに、毒蛇が床を埋めていました。
柱の彫刻はにらみながら蛇をまとっています。
祭壇の前に、金の棺があります。
私はふたを開けました。
バッゴーン。
太い脚のキックを受けてしまいました。
すると祭壇の奥のほうから、
「針の山をさぼったな、血の池地獄だぞー」と太くて大きな声が聞こえてきました。
私は、拾ってきた椅子に私の描いた絵のカードを射て祈りました。
「どうか、悲しむ子供のいない時間になりますように」
「お前、ボケてるな、そのためにお前が針の山に登って血の池地獄に入らないといけないんだオー」
「オー恐ろしい、ファラオの魔術だ」
美しいファラオは宮殿の外に出て、オリーブの花を摘んでいます。
甘い香りが宮殿に漂っています。
宮殿の前の、大通にはの商人の列が通っていきました。
「ファラオ様こちらです」
と言って、商人は砂金の入った袋をファラオに差し出しました。
「あら、小さいわね」
「中身は純金です」
「いらないわ」
「少ないですか」
「ええ、全く足りません、通行できませんよ」
「それでは、もう一つ」
「いりませんわ」
「強欲な方ですね」
「ええ、ケチって出す商人は信用できません」
「ではダイアをちりばめた香水瓶を」
「いりません」
「いい加減機嫌を直してください」
「ええ、そもそもこの大通りは、誰でも通れるのです」
「先月、おとといまでは税がかかっていましたよ」
「今、キャンペーン中で、しばらく、税は、無しにしました」
「しばらくとは、明後日までですか」
「いいえ、わかりません、私のヒールの音の響きが濁ったらですね」
「では、通ってよいですか」
「駄目です。まだこの通り」
ファラオは石畳をけりました。
コーン。
キツネの鳴き声が響きました。
「怪しい、キツネに騙されてたまるか」
商人たちは、隊列を進めました。
きらびやかな、蔵を付けたラクダが、二十頭、荷物を鞍に載せて通っていきます。
ファラオは、ほくそ笑んで眺めていました。
「誰も買うまい、住人に私の札がない商品を商う商人はインチキだと徹底して教えてあるからな。
商人は市場に向かいました。そしていつもの場所で商品を並べましたが、今回はこんなに人がおおいいのに誰も来ませんでした。
「お困りのようですね」
冠をかぶった痩せた男が商人に声を掛けました。
「ええ、今回は全くダメなんです。超一級の香辛料を扱っているんですが」
「えーどれどれ、、ファラオの札は、あ、ない」
「ええ、ここは自由市場ですよね」
「まあさようですが、どれどれ」
と言って男は香辛料を議の小さい匙ですくって、においをかいで、口に入れました。
「アーこれはだめだ」
「あんたケチをつけるために来たのかい」
「いえ、丸ごと買おうと思っています」
「いくらにしてくれますか」
「銀二袋で」
「それは高い」
「じゃあ売れませんね、金一袋の価値があるものです」
「では金一袋で」
「買っていただけるなら喜んで」
ハヤブサが飛んできました。金一袋を運んできたようです。
「では、これで」
商人はしまったと思いました、金一袋ではもうけが出ません。
「ありがとうございます」
では香辛料一袋で」
「いえ全部です」
「アーそうでした」
商人は手ぶらで帰るよりはましと思って香辛料を全部男に売りました。
上物の油もありますが、
「どれどれ」
男はツボに指を入れて油をなめました。
「この壺、二つ売ってくれますか、金一袋で」
「はい、小さい壺これも少し違う油を付けます」
ハヤブサは香辛料を運んで、金一袋持ってきました。
商人は帰りが楽になったと思いました。ここで買うものはないな、西の国で安い、布でも仕入れて帰るかと思いました。
ファラオはそれを見届けて、執務室に戻りました。
床の蛇がざわつくので、油を、撒きました。
男は、市場で、食事をして宮殿に帰ることにしました。
私はファラオは美人だが、したたかだなと思ってみていました。
市場はにぎわっています。
ファラオは宮殿の執務室からそれを見つめていました。
ファラオは床の蛇がざわつくのを油で鎮めてハヤブサを飛ばしました。
ハヤブサの目は勇敢な瞳で、ファラオを見ました。
「いいね、人々が嘆いてないか、しっかり見てきてね」
ハヤブサは、一礼して市場に向けて飛んでいきました。
市場にはブドウや、イチゴに、リンゴにスイカやザクロにヤシに、バナナなど豊富な果物やパンが並んでいました。
ハヤブサは、若い女性が並べている美しい果物を使ったお菓子の前で止まりました。
「あら、これショートケーキよ、食べてごらん」
女性は一かけらフォークでとってハヤブサの嘴にやりました。
「ハヤブサは、目を丸くして喜びました。
「これファラオに」
と言って女性は、ケーキを紙箱に入れて、ハヤブサに持たせました。
ハヤブサは、ファラオにケーキを持ち帰りました。
ファラオはフォークでケーキをひとかけら取って食べました。
「パンは」
「豊富にありました」
「果物に野菜は」
「みんな満面の笑顔で、手に取って選んでいました」
「そう」
「ええ」
ファラオは、落ち着いて、今日も一日太陽の神にお祈りね。
と思い、やせた手を見つめました。
蛇がざわついています。
ハヤブサは床に剣をさしました。
蛇は、動きが止まって、時間が消えました。
遠くから、太鼓の音が響いてきました。
私はそろそろ夢を消して、朝食をもらえるかな、わからんが帰ろうと思いました。
バス通りにいたファラオは、にっこり笑って、
「お祈りしましたよ」
と言ってちょうどついたバスに乗って、出かけてお行きました。
ピーポー
トンビが鳴きました。熟した柿がボタッと落ちました。
キャッキャッキャと言って猿の次郎がやってきました。
カニは慌てて、土を掘って隠れました。
次郎はにやっとにらんでいました。
自宅に帰りました。玄関を開けたとたんです。
「このくそおやじー」
分厚い本の束を投げつけられました。
私は、何とか受け取って抱えました。
「ごめんなさい捨ててきます」
「やることがとろいんだよ。バッゴーン。
太い脚のキックが飛んできました。
私は階段落ちを見事に演じ切りました。
ファラオー、
私は思わず叫んでしまいました。
バス通りの街灯が輝き始めました。
「民衆はもう眠るのよ」
「はい」
「ケーキを食べてね、パンは高いでしょ」
「いいえアンパンは100円です」
「100円、ケチね」
「2000円でないとパンにならないの」
私は月を見上げました。
「ないよー、こっちを見ても出ないよー」
私はアジサイの葉っぱを見ました。
カタツムリが目を伸ばして、
「葉っぱを食べたらいいでしょ、美味しいよ」
私は地面を見てしまいました。
ミミズは「土は栄養満点だよ」
と教えてくれました。
私は、土をなめました。
「とうとう土を食べる人間一号です、あーあ」
バッゴーン、また丸太の足キックです。
私はぶっ飛びました。バッタン、グランドの芝生にダイノジで寝ました。
流星が
「みっともない、死んでしまえ」と言って飛んでいきました。
私は夜明けの空を見上げていました。月明かりの中、ボタ雪が舞ってきました。
深々と降ってきます。
もう2センチ積もりました私の眉も髪の毛も真っ白です。
ファラオは、
ゆっくりと歩いています。
帰ったんだ。
「おかえりなさい」
「ええ、お買い物はできました」
「はい」
「長ネギが高いのね、またお祈りします。民が豊かに食べれなければ私は生きていけません」
「はい」
ファラオは突然大きくなりました。
私がぶっ倒れてるからでした。
ファラオは私を見降ろして、
もう勝手に出かけてはなりません。
土を食べていきなさい。
土の泥団子は腹にたまっていいです。
腸の細菌にもいいみたいです。
大村博士に報告します。
「そうですか」
「はい」
「少しは役に立つことをやってください」
「はい」
わたしは積もった雪を掴んで食べました。「ギョエー冷たい」
唾を道にばらまいてしまいました。
「この役立たず」
ファラオの巨大なサンダルが私をせんべいにしました。
ファラオはもう一度ハヤブサを呼びました。
ハヤブサは白い衣装で黄金のサーベルを腰に立って直立してファラオと話しています。
ハヤブサが突然私を羽でさして。
「こいつはこの国の民にしては貧乏すぎます、消してしまいましょう」
というではありませんか、
「ファラオは、しょうがないナイルの川の船頭にしましょう」
と言って私に、縄をかけました。
ナイル川の船頭、死ぬる。
地獄だー。
私はファラオを見上げました。
おー、いいおっぱいの美人だ。
ハヤブサは私を掴んで、ナイルの船の小屋に運びました。
私は、ナイルの濁流の前に立って呆然としました。
「おい、船頭、そろそろ乗せろ、南の国に金を運ぶんだ、早くしろ」
私は細い一本の竿を持っているだけでした。帰りはナイルの逆流に乗るしかない旅です。
私はもう一度お握りを食べたかったなと思いました。
「ファラオが決めた時間は守るよ」
私はそう言い聞かせて船に乗って商人たちが乗り込んでくるのを待ちました。
「おい、船頭」
「茶を出せ」
「へーい」
「モロヘイヤじゃが熱い茶だ」
「こら、船頭、大切な商人を困らせたらもう返さんぞ」
「はい、帰れるなら、ミルクティーを」
「うん美味い」
「いい船じゃ」
私はそのまま流れに任せて船を操作しました。
バシャン、
大きな白い魚の頭です、
「おいあれ、売れるぞ、船頭捕まえろ」
「へーい」
私は船を飛んで魚の頭にしがみつきました。
私は、
「おい魚、おとなしくしてくれ」
と言いましたが、魚も必死に川にもぐって水中を悠然と泳いでいきます。
ナイルの川底は、砂の道が広く長く続いていました。私は竿を川底にさして、魚から手を放したとたんにびよーんと竿がしなって、船に着きました。
「おい魚は」
「泳いでます」
「何やってるんだこのボケ船頭め」
「はい」
「すぐに捕まえてこい」
「ええ、でも泳ぎたいんですよ」
「馬鹿、あれは金の袋10個になるやつだ」
「私は、船で、荷物を運ぶのが生業です、魚を捕る,術はもっていません」
すると笛の音が、流れてきました。ファラオの笛です。
魚は船のそばをゆっくり泳いできます。
「はいこれで」
商人たちは大喜びでした。
ファラオ、ありがとう。
「ボケ、安心するな冒険はこれからだ、黄金のカバが来るぞ」
「はい、もう来ました」
私は竿を川底にさして何とか船がひっくり返らないように、こらえました。
カバは何度も船の腹に体をぶつけてきました。
目を丸く開けて耳をくるくる回して楽しそうです。
「こいつ、遊んでるぞ」
「牙を磨いてやれ」
カバは大きな口を開けて、嬉しそうに向かってきました。
商人の一人が、持っていた大きなブラシで。黄金のカバの牙を磨いてやりました。
わたしはなんとかこらえて、川の流れに乗って船を走らせました。
「ちゃんとできていますね」
ファラオの声です。
私は、民謡を歌いました。
商人たちは大喜びです。
「おい向こうに、紅色の鳥だ、羽があったら拾ってくれ。
今度は美しい鳥です。
ハヤブサが白いスーツをまとって飛んできました。
「ファラオからです、食べてください」
イチゴのショートケーキでした。
「パンは」
「また後で」
私は商人たちに切り分けてあげました。
「フラミンゴだ、羽を落としたぞ」
「拾った」
「オー砂金の袋三つだ」
商人たちは喜んで、ケーキを食べました。
商人たちは喜んで船を揺らすんです。
私は思いっきりまたナイルの意流れに、ドボーンでした。
向こうから大きな口を開けた、わにが泳いできます。
猛スピードです。私は言いました。
「空(から)でかっこいい財布になーれ」
「オー、財布を作るのか、砂金半分じゃ」
「空というのは良くない、銀一粒は入れておけ」
「あったら入れます」
「まったくの空か」
「はい」
「それなら、この果物を売ってこい」
「いえ、それも私の才覚にはありません」
「しょうがない」
「竿職人さん」
「はい」
「空(から・そら)が笑っとるのう」
「はい」
ワニは、腹を出して大笑いをして痙攣しておぼれました。
私は皮をはいで、財布を作りました、中は空っぽです。
「おまえ、またむだなことをしたな」
バッゴーン。
エルボードロップが飛んできました、
私は竿を必死につかんで持ちこたえました。
私は
「ごめんなさい、さぼってしまいました」
必死に謝りました。
トドのような、体重が一挙にのしかかってきました。
「出ていけ」
「はい」
私は冒険の続きをしようと思いました。
そう思ったとたん、おながすいてきました。ファラオがくれたケーキはもうすべて商人に渡したので、私は、岸で拾った種をひいてパンを焼きました。
「香ばしい匂いだな」
「はい」
「それもサービスか」
はい。私は焼いたパンを商人に分けてしまいました。
私は船を流れに任せて南に下っていきました。
バヲバヲの木の林が見えてきました。
その手前には、野菜畑が広がっています。遠くの丘まで小麦が実っています。
畑には、熱心に働くおじいさんにお婆さんの姿がありました。
「おい船着き場がったら止まってくれ、少しビールでも飲んで休む」
「はい」
私も何か食べよう」
二日ぶりの食事ができしそうだ。
バヲバヲの木のそばには、手の長くて目が円い銀の毛をした。大きなサルの群れが、のっそのっそと歩いています。
「いて」
石を投げてきました。
「やるか」
商人たちは、短剣を抜いて走っていきました。
私と一緒に残った商人たちはパチンコで石を打ちました。
サルたちはキャッキャキャッキャと喜んでいます。
不思議な午後です。
サルの群れの奥には首の長いキリンが走っています。
長い舌で口をなめています。
商人たちは、
「アッチに、飯屋があるぞ、ビールを飲もう」
と言って走っていきます。
私も、歩いて向かいました。
「おい」
「はい」
「サルの毛皮で財布はできるか」
「それは毛皮の袋しかできません」
「役に立たんのう」
「商人たちは大笑いしました」
「袋ではだめですか」
「ああラクダならいいが」
「サルの睾丸のふくろは立派みたいですよ」
「いるか、サルの」
「はい」
私は、のどが渇いたと初めて思いました。
キリンは気持ちよさそうに走っています。
決して火をつけて走っていません。
ゆがんだ時計なんか絶対にありません。
ギターを枕にした、商人を寝かしつけてる、黒いライオンも
絶対にいません。
黒い肌の蛇使いも大きな赤い唇も落ちていません。
当り前です、空想を芸術だと言ってるような甘いものではありません、生きるか死ぬかですこの冒険は。
私は、ようやく、ご飯にありつけそうです。
バオバオの木のそばに飯屋がテントを張って、やっていました。
もう商人たちであふれています。
私はようやく、パンを食べました。
バオバオの木の向こうの平原に、
ライオンの群れと、ハイエナの群れがいます。
「おい、食ったか」
「はい」
「急ごう」
「はい」
「南の国が大雨だ」
「雨」
「ああ」
「黒い雲に柱ができてるぞ」
商人たちは、南の空をながっめて言いました。
遠くにかなり高い山がたっています。山の頂上は真っ白です。
あの山のふもとには水が豊かな国があるんだ。
私は慌てて、川に戻って船に乗りました。
「おい、船頭、サルの股の袋をとってきたぞ」
「丈夫で砂がたくさん入る、贋金になった」
「私はそれはいりません、砂金二袋です」
「足元を見たもんだな、後悔するぞ」
「はい、航海にでます。砂も公開しますよ」
「これ嗚呼、更改じゃ」
「変えませんよ、それじゃあ、買えません」
私は、お土産に、フラミンゴの羽を拾いました。
「出港しますー。ゆーらゆーら揺れる、ナイルの川、流れ流れて、スフィンクスの口に落ちていく」
「何じゃ、その歌」
「有名なヨハンシュトラウスの曲です」
「知らん、どこで有名なんじゃ、ギリシャか」
「いいえアルプスのふもとのオーストリアです。知らないんですか」
「そのような国があるなら、商売に向かおう」
「これからとは真逆ですよ」
「南の先端で金とダイアを手に入れてからだ」
「南の果ては、一つの点で億年前の水が凍っています」
「それも金になるな」
「ええ、でも失敗です南の極みにはナイルはいきません、戻ってインド洋に出なければ」
「それなら、いけ」
「この船でですか」
「ああそうだ」
「命はいりませんか」
「命は守るよ」
「警告したんですよ」
「ああ、行け」
「はい」
商人たちはビールで乾杯しました。私は竿をさしてナイルが流れるのを待つことにしました。
「おい留めるな、ナイルの南の端に行け」
私は竿を抜いてナイルの流れに船を任せました。
しばらくナイルの川は穏やかでした。ファラオの国は広大でした、どこまで行ってもファラオのスタイルの女性が仕事をしています。
川が、急に深くなりました。向こうに警告が見えてきました。ピラミッドも、石の家も消えていきました。商人は、ここらだと言って、荷物をまとめ始めました。
「おい、向こうの船着き場で降ろしてくれ」
私は、石積みの船着き場に船を寄せて、船を止めました。
ここは石と金の国のようです。
商人たちは小麦と、香辛料をまとめて降りていきました。
不思議な節の太鼓が聞こえてきます。
もう夕陽になっています。今日はここで一晩を過ごすことになるなと私は思って船をしっかり船着き場の船止めにつなぎました。私の持ち物は竿だけです。
私は船着き場の岸に座っていました。子供たちが集まって小石をけって遊び始めました。
商人たちは、村のほうに行ったきりで姿は見えません。また川を上って、海に出て南に向かわなければなりません。
私はうとうとと寝てしまいました。
川面に走る風の声がかすかに聞こえてきました。
私は、目を開いて驚きました。知らない大きな星座が煌々と輝いています。
商人たちはまだ戻ってこないな、夜明けまで長いぞ、船はつながっている。大丈夫そうだまだ逆流になってない。
暗闇の中に松明が小さく揺れているので、商人たちはまだあそこだな、魚はつれない。竿は持っている。
話し相手がいないのも退屈だ。
でもブットい脚の棒キックが飛んでこないだけ安心だ。
「何か文句あるか」
「いえ」
「いるのかこれ」
「いいえ」
「いらんのか」
「はい」
「じゃあこれだ」
ウエスタンラリアット。
バッゴーン。
私は、脳震盪を起こして、ああすっきりしたと感じました。
私は船に戻って毛布をかぶって横になりました。竿は手放しません。
「夜が明けたら商人をマーケットに戻してね」
ファラオの声です。
私はそのまま眠っておきました。
ファラオの宮殿は、遠いかなたです。聞こえるはずもありません。
太陽神は夕闇の中は宮殿で瞑想しているのでしょう。
でも商人は一度マーケットに連れ帰らないといけないようです。
不思議な太鼓の音が響いています。闇の部族の、会話だと聞いたことがります。
こんな夜中におしゃべりするんだな。
トン、トン、トッコトッコ、トッコトコトン。
ハンパンパンパカパン。
高いぞ、
安いもんだよ。
闇の世界のマーケットのようです。
闇の世界の生活が、動いています。
私は船の上で寝ています。
まだ商人たちはきません。
わたしには、ファラオがいます。
怖いかみ(神)さんがいます。
私は船で戻れません。逆流が始まる前に商人たちが帰ってこないとまずい。
私は焦ってきました。
私はまだ寝ています。
起きなくていいのです。
夜明けになってで、いいのです。
ようやく東の空がうっすらと明るくなってきました。
雨にはなっていません。
商人たちは、
「売れた売れたの」
と大喜びで、戻ってきました。
「サルの袋に砂金がたくさん入ったわい」
「草で編んだ布も売れそうじゃ」
「ダイアまであったわ」
商人たちは大喜びで船に乗りました。
「みんな乗っていますか」
「船頭さん数えてよ、四十八人じゃ」
「ロックですね」
「ああ」
私はひいふうみいや、と指をさして数えました。
「四十八証人います」
「何じゃそれは」
「揃いました」
「落ちないように、摑まってください。
もうすぐ逆流が始まります」
ゴー、バシャー、
ナイルは静かに逆流が始まりました。
「おい、岩も積んでおかなければ、商人たちは慌てました」
「これからはだめだ、次にしよう」
私は、
「出発です」と言って竿をさして船を船着き場から川の中央にこぎました。
私は、逆流に乗ってファラオの住む都市に向かいました。バオバオの木の林のはるか彼方に山のような、建物が見えました。
ナイルの川は、とても、早いスピードで逆流していました。
お昼にはもうファラオの都市に着きました。山のような建造物が迎えてくれました。
商人たちは市場に向かっていきました。
みんなで宴会です。
ファラオは、宮殿から出て。
商人い一人ずつ握手をしました。
私のところに来ておでこにキスをしてくれました。私はびっくりして飛び上がってしまいました、山のような建物の上にいました。
私は急降下して、広場の真ん中に落ちて、せんべいのようになりました。血が空まで飛んでいきました。
このことを鼻血ブーと言います。
私は気絶していました。
「腹減った」
私はつぶやきました。
ファラオは、今度はパンを焼いてくれました。
私はミルクとパンをようやく食べました。
「お前も人間だな」
「食べるんか」
「はい」
「糞生意気な」
バッゴーン」
巨大なサンダルが私を踏みつぶしました。
私は餃子の皮になってしまいました。
私は電撃光線の中に大きなトドがたっているのを見ました。
「ごめんなさい、悪うございました」
「ごめんといって済む事か、返せ」
「はい」
「何だ」
「はい」
「お腹が悪いか」
「いいえ」
「頭は」
「悪いです」
「とっても悪いな、空っぽだから痛くもないだろ」
「はい」
商人たちがざわついています。
ファラオが賞金をくれたみたいです。
「南の大陸の氷をとってくるぞ。船頭頼むぞ」
海の流れはわからないのに、きっと腹ペコになるぞ。
バス通りの街灯がともり始めました。
ゴミ捨て場には、キャンバスの枠がまた大量に捨てられています。
ただでこれだけ手に入れれば何とかなります。
私は、拾って持ち帰りました。
「またゴミ、椅子はどうするの」
「あれはコーナーに置いておく」
「座るぞ」
「気を付けてください、足が折れるかも」
「馬鹿、使えないものはイラン、お前も使えん」
「はい、すみません」
広場の市場から、琴や太鼓の音が聞こえてきます。
美人のファラオが竪琴をひいて、
月のうたをうたっています。
セレナードです。
次の太陽の唄を歌い始めました。
神の唄です。
わたしはリンゴの絞り水をテラスに置いた壺から、盃に入れて、泡が立っていました。
丁度、飲み頃です。私は歌を聴きながらゆっくり椅子に座って飲みました。
「折れないな」
「ええ」
「座らせろ」
「がくがくですからやめてください」
「はーらららー」
トドは聞かなかったかのように歌を歌って踊りながら椅子に座りました。
バギ。
「音だけだ、折れてないぞ」
トドは座ったままハーラララと歌って踊っていました。
さっきまでたくさんご飯を食べていたので、狂暴にはならないみたいです。
「ハーラーラーラー」
立って踊り始めたと思ったら体操を始めました。
広場では花火が始まりました。
ナイルの川は静かになっています。逆流は収まったようです。
海に出るまで竿で船をこがないと出れない。
やねこい(しんどい)ことになった。
私は今のうちに寝ておこうと思いました。
「寝るのか、ハーラララ」
「はい」
「よし」
ドーン
トドの尻が私にのしかかってきました。
バッゴーン。
ベッドの足にひびが入ったようです。
「ハーラララ」
トドは歌いながらせんべいを食べています。
いつになったら、おなかが落ち着くのでしょう。
「アイス、アイス、アイス」
トドは歌って、アイスを冷蔵庫からとってきました。
パチパチパチ、花火が夜空に広がっています。
夜は長そうです。
ファラオ、
セレナーデがいい。
「はい」
もう一度琴を。
「お前なんだ」
ズッキーン。ケツの重さで私は息苦しい。
遠くでファラオの竪琴と歌声が聞こえています。
優しい夜空です。
もうすぐ朝になりそうです。
ファラオはパンを焼いてくれました。
また今日も白い朝です。
野菜も食べてよさそうです。
ゴミ置き場の横で柚子の実が揺れています。
その下に水仙の黄色い花が揺れています。
やっぱりトドは階段のエントランスで踊りました。
私はそのままもう一度船着き場に向かいました。
ヤバイ、ナイルの逆流が始まった。
私は船を紅海に勧めました。
ファラオは奇跡を起こしてくれて、昼間のうちにインド洋に着きました。
トビウオがびょんびょん飛んできて船の横に穴をあけて遊んでいます。
海水がたまってきました。
もうそこに穴をあけるしかないようですが、やっぱり沈むとまずいので、たまった海水を救って海に捨てました。
「おいまだあるぞ」
商人たちは口々に不満を言ってきます。私は、アーアこれか、仕方ないと思いました。陸を眺めると高い山の頂上が白くなっています。
あそこに、エンジンが住んでるのか、と思いました。商人は、あの山にいる獣の毛で、糸をとって、布を紡ごうッと言い始めました。
山の姫が笛を吹いてやってきました。美しい姿で穏やかなほほえみを顔に含ませて、たっていました。
山の姫は、
「獣の毛は、崖の岩についていますよ、どうぞ丁寧に拾って」
と言いました。
商人たちは、半分に分かれて山に向かいました。
商人たちは獣の白い毛を集めてきました。
山の姫は、
「ふもとの娘たちに織ってもらって」
と言いました。商人たちは感謝して、パンと、極上の葡萄酒を姫に贈りました。
「まあ」
山の姫は、とても喜んで、葡萄酒を飲みました。
「万歳」
商人たちは両手を上げて喜びました。
「まだ、停泊しておきますか」
「行こう」
商人たちは、大喜びで、娘たちのところに向かいました。
娘は、
「これだけ」
と言ってがっかりした顔をしました。
商人たちは、
山の姫に教えてもらったんだ、と娘に言いました。
「いいわ」
娘たちは毛を受け取って糸を拠ってスカーフを織ることにしました。
「ありがとう」
商人たちは、銀の袋を一つ、娘にやろうとしましたが、娘は
「そっちのガラスの宝石をください」
と言いました。
商人は、
「こいつか」
と言って手のひらにのっけて娘に差し出しました。
「いいえ」
「じゃあこれか」
「いいえ」
「こっちか」
「いいえ」
「本当かこの三つは高価なものなんだが」
「ええ違います、私が欲しいのは使っていて落としても平気なものです」
「こいつは割れるぞ」
「ええ、割れてほしいのです」
「それではこれを」
商人たちはスカーフをもらって戻ってきました。
「おい、あのガラス、南の国で仕入れた高級品だぞ」
「しまった、やられた」
「こいつの価値はそれ以上だ東の国でダイア四つと砂金、十袋にはなるぞ」
「損はしてないな」
「商人が損をしてなるか」
「でもあの娘のひとみは真剣だった。価値を知ってないんだ」
「買い戻すか、銅、五枚で」
「悪党ですね」
「何をいう子の船頭、この袋でも受け取って早く船を出せ」
私は竿を立てて南に船を進めました。
目の前には深い黒の海が広がっています。トビウオもいなくなりました。
船に突き刺さったトビウオは、口をパクパクしています。
「食べましょう、塩を付けたらおいしいですよ」
「塩は高価だ」
「でも海の水を干したらすぐに取れます」
「なら安いな」
船の乾いたところが白くなっている、なめたら」
「しょっぱい」
商人たちは一斉に喜びました。
すぐにナイフで、トビウオをさばいて、塩をつけて食べ始めました。
私は船を進めました。
「おじさんたち」
「娘の声だ」
「スカーフもっと高いのよ」
「やるな」
「もう払ったからこれは頂いた」
「ええ、ですから大事に売ってください、私たちの宝物です」
「ああ、伊達男に売ってやるよ」
「やめてください、誠実な方しか使えないものです」
「そうか」
「わかってやってください」
山の姫も言いました。
あの美人の姫が言うことだ。
「いっそのこと買ってくれませんか」
ドン
大きな袋が船に置かれました。
「砂金とダイアでした。
白いスカーフがスーッと持ち上げられました。
「売れたな」
「早すぎんか、東の国の王子に売れば倍になったぞ、美人がおったといえばこの十倍だったのに」
「売れたんだ、損はしてない」
商人たちは、トビウオを食べながら、ビールを飲みました。
「おい、酔いが回るな」
「穏やかな波なので、ごゆっくり」
わたしはいいました。
「美美、美ラララ」
商人たちは歌い始めました。
私は竿をさして南に船を進めました。
大きな魚が飛びました。
真っ暗な海に白い水しぶきです。
私はぶつかるなよ」
と船に言いました。
「大丈夫」
「波はまだ穏やかです。
向こうの空から嵐がやってきそうです。
山の姫が「気をつけなさい、ファラオが守ってくれます」
と言ってくれました。
船は
「まだ大丈夫」
と言ってくれています。
私は竿をさしてゆっくり押しました。
魚は近づきましたが船の脇を喜んで飛びながら泳いでいます。
商人たちは
「素晴らしい」
と喜んで一斉に拍手をしました。
「船頭、この魚を連れ帰ろう、逃がすなよ」
「へい、できるだけやります」
「頼りないのう」
「はい」
私は深い海の底にもう一度ゆっくり竿をさしました。
船は、元気に泳いでいます。
私は竿を落とさないように船に寝せて座りました。
「酔ってきたぞ、歌え」
商人たちが、
騒ぎ始めました。
大波がドボンときました。平らな陸のような流氷が流れてきました。
商人たちは、
「よし氷をとろう」
と言って流氷に手を伸ばして氷をつかんで、ジョッキに入れました。
ビールをぐびっと飲んでからになったグラスに強いバーボンを入れて飲み始めました。
「温まるの」
「氷をとって早く東の国で商売をしよう」
商人たちは、大喜びです。
私は、もう一度竿をさして南に向かいました。
嵐です。
とうとう悪魔の海域に来ました。
私は氷河や海底に竿をさしながら何とか船を浮かせて置きました。
すると大きな船が近づいてきました。大砲を積んだ立派な船です。
海賊でした・
商人たちは私を海賊に差し出して言いました。
「こいつはファラオの家来です、こいつと戦ってください」
私は竿を持ち上げて、一気に海賊を投げ飛ばしました。
大砲がどっがーんと打たれましたが海に飛んでいきました。
氷河がやってきて海賊の船をバリッと壊しました。
商人たちは大喜びです。
私は竿をもう一度氷河に押し当てて、南の大陸に向かいました。
ペンギンがおいでと言ってくれています。
海賊たちはまたペンギンを連れ帰ろうとしましたが。
「もうすこしものれないです、誰か下船してください」
と言いました。
「そうかそれならお前が降りろ。
私は商人に蹴り飛ばされて海賊船に落ちてせんべいになりました。
「こいつ食えるか」
「ファラオの手下、の割には栄養が行き届いてない、ペッちゃんこだ」
「そういって海賊は私をペンギンに食べさせました、右手が食べられました。
ペンギンのやつ獰猛です。
私は左手でペンギンに魚をやりました。
「おじさんありがとう」
ペンギンはにっこりしました。
ペンギンはソリを運んできてくれました。
私は立ち上がってソリに乗って竿を立ててそりを動かしました。ペンギンはソリに寄り添ってペンギン歩きでついてきてくれました。
商人たちはそれを見て、ペンギンに魚をとってやりました。
ぺんぎんはガムをもらってクールミントだといってよろこびました。
「包装紙に僕たちが三人並んでいると幸せが来るんだ。どうだい」
商人たちは競ってガムを噛んで包装紙をためていきました。
まだ三人並んだものは出てきません。
するとおお菓子のお化けがにょきッと出てきて、
「お菓子をおもちゃにしないで」
と怒りました。
ヘンゼルとグレーテルがお菓子を慰めて、熱いスープを菓子に上げました。
スープを飲んだお菓子のお化けは、背が高くなりました。
「魔法のスープだ」
商人たちは鍋に近づいてスプーンですくってスープを飲みました。するとおなかがおおきくなって、服がぱんぱんになりました。
ペンギンははあわててガムをあげました。すると商人たちは元の姿に戻りました。
わたしはそりでこの大陸の中央に向かいました。地球の真南に向かうのです。
「着いたら竿を突き刺して」ファラオが言いました。
オーロラが出たら、太陽の神の力が戻るの」
「はい」
私は竿を必死に動かして大陸のおへそに向かいました。
ペンギンたちが案内してくれて助かりました。
時々大きな亀裂があったので危うく落ちそうになりましたがペンギンがソリを押してくれたので落ちなくて済みました。
商人たちは、ソリをつくって、氷を集めていました。
私はようやくこの大陸のおへそに着きました。突然ものすごい嵐になりました。
私は思いっきり竿をさしました。すると嵐は収まって上空に虹のオーロラが出てきました。
「太陽に祈ります、災いが来ない明日でありますように民が不自由なく食事ができますように野菜に小麦が育ちますように」
ファラオは静かに祈りました。
南十字星が大きく輝きました。
大空の星座は、整ったようです。
ようやく地球も落ち着きました。疫病も消えていきました。
私は竿をしばらく握って立っていました。
私は空を見上げて、大声で
「ありがとうございます」
と叫びました。
すると、
南十字星が大声で、
「お前殺すぞ」
と言いました。
「なぜ」
「竿をさしたな」
「はい」
「お前のところに雷を飛ばす、仕方ないんだ、オーロラの力を調和させるんだ」
「はい、地球は残りますか」
「ああ、しっかりと美しく」
「冬将軍は」
「ちゃんと行くよ」
私は竿をつかんでそのまま突っ立っていました。
ペンギンたちもみんな喜んでくれています。
バリバリ、ドッカーン。
竿に雷です。
私は、ばひーんと吹っ飛びそうでした。
ソリは無事です。
商人たちは熱心に氷をとっていました。
私の髪は逆立ちです。
ブッヒーな感じです。
オーロラの踊りも落ち着いてきましたのでわたしは竿をぬいて、石ころを置きました。
オーロラは美しく待っています。
「大丈夫よ」
ファラオと山の姫の声です。
私はソリに乗って戻ることにしました。
商人たちも、またグラスにウイスキーを入れて飲んでいます。
「船頭、帰るぞ」
「はい」
「東の国に行って一儲けだ」
「はい」
「ペンギンたちが、帰り道も案内してくれています。
私はソリを杖を突いて、大陸の船着き場まで走らせました。
私はポケットから、キャンディーを出してペンギンたちに配りました。
目の前に大きな白い壁が現れました。
「良くもやったな、俺の出番が減ったじゃないか、年収を返せ」
「えー」
お菓子のお化けが巨大な壁になったようです。
「今はないよ、東の国で商人から砂金の袋をもらえるはずだから、
「でもなんで年収が減るんだ」
「出演料が減るだろ、フジテレビもつぶれそうだし、早く返せ」
「何でテレビに出ないんだ」
「オーロラがわしの邪魔をするんだよ」
「石を置いたからオーロラの舞も静かになったよ」
「そんなの関係ない」
「お化けさん、ファラオに会いますか、すっごい美人ですよ」
「そんなのお化けに関係ない」
「では、ここで」
「どうするんだ」
「おならが出そうです」
「中身は」
「大丈夫です」
「お前スカンクか」
「はい、あ、でました」
「一番臭いのをやったな」
「ペンギンの口臭よりもいいと思いますが」
「おじさん飴をなめてるよ」
ペンギンたちが一斉に文句を言い始めました」
「しおまった。ごめん」
「謝って済むなら警察はイラン」
「どれ、ちょっと。事情聴取を」
「東署のペンギンデカだが」
「準備が良すぎるよ、これで」
「私はミントチョコを差し出しました。
「君こういうことはいかん」
とペンギンはにっこりとして受け取って食べました。
お菓子のお化けは、これはねたになる、
「日テレに、いや、cnnに売り込んでやろう」
といって、飛んでいきました。
「ちょっと待て、わしは受け取っておらん」
ペンギンデカは大慌てで飛んでいきました。
「ごめん、私の臭さは、1000年先の未来に伝説に残るすかしっぺだ、君たちのは、さわやかだといっただけだ」
ペンギンたちは一斉に
「言い訳になってない」
と言って羽でかわるがわる私の顔面をたたいていきました。
商人たちはそれを見ていて、大笑いです。
私はソリを押して船着き場に向かいました。
ペンギンたちは一列に並んで私を監視しているようです。平に見えた大陸も振り返ってみると小高い山がいくつもありました。
「ここは、住人はいないのか」と聞くと、
「時々、隣の大陸から人は来るけど、住んでる人はいないよ」
と答えてくれました。
良かった、隣の大陸に寄ったら食料と水が、手に入るかも
私はそう商人に話すと。
「じゃあ寄ってくれそこで商売もできる」
というので、私は船に向かいました。
商人たちは、雪原にすわってまだ、宴会をしています。
私は船で休むことにしました。
「オーロラが落ち着いたわ、お祈りもまだ続けていけるよ」
ファラオの声です。
ナイルに戻るのはずいぶん先になりそうです。
ゴミ捨て場は、夾竹桃の木の枝が延びてきています。
はなみずきはまだまだです。辛夷もモクレンもまだです。梅の木にはつぼみが膨らんできています。
木瓜は赤い花を咲かして可憐な姿になりました。
ア、見た気になった。寝たな。
私は寒さも忘れて寝てしまいました。
「こら、また寝たな、ゴミは山ほどあるぞ」
トドがお尻を押し付けて私をつぶしました。
私は驚いて目を覚ますと、船のそばでトドが頭を出していました、大きなひげが輝いています。
「わしも腹減ったよ」
トドがお腹に響く声で言いました。
私は、やねこいのと思って船に忍び込ませておいたファラオからもらった紙箱を開けました。
イチゴのショートケーキでした。
「これならあるけど」
とトドに見せると、目を輝かせて、
「食う」
といいました。
どこのトドも同じだな。
「何か言ったか」
ア一番面倒なトドの声だ。
私は仕方がないので、トドに一つ上げました。
トドは美味しそうに食べました。
「こいつがいたんだ」
と、サメを持ち上げて見せてくれました。
「お前を食うところだったんだ。
私は、あらためて感謝の言葉を伝えました。
「ありがとう」
商人たちは、すっかり酔って船に乗ってきました。
私は人数を数えると、四十八人でした。
「みんな乗りましたね、隣の大陸に向かいます、サメが隣にいるので暴れないでください」
と私は言って竿をさしました。
船は静かに氷の大陸を離れていきました。海は流氷で閉ざされていました。そのむこうの空は真っ黒で、雨の柱がナイアガラの滝のように立っていました。
商人たちは、まだグラスのウィスキーはお好きで、飲み続けています。サメが、頭に来たみたいで、
「飲ませろ」と怒鳴って、商人の腕を噛みました。
商人は、
「オーサメじゃ、皮をはいで、今度は空(から)でなく札束で膨らむ財布を作ろう」
と言って、サメを抱きかかえて船に載せました。
アーアしらんぞ、流氷にぶつかってしまうぞ。
ドッスン、
私は竿を流氷にさして何とか転覆だけは止めました。
商人たちは、
「おい船頭、のろまだな、服が濡れたぞ、弁償だ」
と騒ぎ始めました。
だからサメには気をつけてといったのに。
「服は仕方ないので大陸に着いたらサメの皮を剝いで財布を縫い合わせます」
「いつサメの皮といった、それじゃあ割に合わん、馬の皮にしろ」
馬なんて姿はありません。
「馬がいなそうですので、人間の皮にしますか」
「お前の皮を剝いでも一円にもならん、ワニぐらいいるだろう」
「トドの皮なら大丈夫です、分厚くて、光沢のある皮が取れます。」
そいつも銭になりそうにないな、しかたないサメにしろ」
サメは目を真ん丸にして、固まっていました。
商人の腕の中のサメは、真っ青になったのです。
まずい、ここは伝説の荒海だ。
「皆さん船につかまってください」
「サメは、ますますあおくなっています」
「ここは前におぼれたところだ、早く逃げろ」
サメは大声で言いました。
これがサメが言った最期の言葉でした。
その時大波がやってきて船は木の葉のように海をぐるぐる回ってしまいました。
サメはすでに気絶したようです。
商人はサメを腕から決して、離さないでいます。
嵐はますます暴れていきました。
私は杖を改定にさして船を何とか大陸に向けました。
仕方ない、このまま竿を指しながら進むしかない。
「かーちゃんのためなら、よっこいしょ、とーちゃんのためならよっこいしょ、これじゃあどっちもこっちもよっこいしょ」
私は思わず歌いました。
「おい船頭、そいつはヨイトマケの唄じゃ、わしらの人生じゃ、わかっとるの」と喜んで暴れ始めました。
船はもう少しで転覆でした。私は何とか竿をさして持ちこたえました。雨がすごい勢いで私の肩をたたくのです。
もう少しで嵐は抜けていきそうです。
サメは
泡をはいて眠ったままでした。
空が少し明るくなってきました。
大陸が見えてきました。
私は竿をさして船鵜を動かしました。
わたしは、大陸の目の前までようやくつきました。
トドがまた来ました。
「おう、やったな」
「ああ」
「サメはにがしてやれ」
「ああ」
「財布は、ユーカリの木の皮にしろ」
「ああ」
「商人たちは酔ってげろを海に履いていました。
「汚したな」とトド入って商人の頭を一人ずつたたいていきました。
「モグラたたきみたいで楽しいや」
トドは大笑いして屁をこきました。
踊るなとおもったら、ハーラララと歌い始めました。
踊りもドスンドスンと踊っています。
機嫌よく自転車で出かけました。
私は大陸の船着き場に向かって竿をさしてい置きました。
波はすっかり穏やかで、海の青も住んでいます。
サンゴが白い泡を出して海がぷくぷくと言っています。
商人たちは、
「腹減ったな」
と言って、大陸を見つめています。
ゴトン、砂浜につながる岩場がったので私は船をつけました。
商人たちは、
「どっこいしょ」
と船を降りていきました。
すると、向こうから小麦色の肌が輝いているおばさんたちが巻きスカートをはいてやってきました。
手には木の枝を握って拳を上げています。
商人たちは慌てて両手を上げて、袋を取り出してガラスの粒を取り出しました。
叔母さんたちは、
「どこの男だ、ここは男が入れない浜だ」
と大声で怒鳴りました。
「こいつのせいでここに来たんだ」
と商人たちは、私を指さすのです。
おばさんたちはわたしをつかみあげてはまにひきずりおろして、コテンパンにたたきました。
「アー南無南無」
「火あぶりの刑、とお告げがった」
叔母さんたちは、薪を集めて処刑台を作り始めました。
わたしは、ファラオにたすけをもとめましたが、
「食事中だ後で」
と言われました。
間に合わないよ。
私は半べそになりました。
すると山の姫が、
「浜の神の怒りを鎮めるお祈りです」
「南無法蓮華経」
と唱えてくれました。
突然突風が吹いて、
叔母さんたちは、薪をかたずけ始めました。
「ようこそ、食事をしましょう」
と言ってくれました。
商人たちは大喜びです。
私は山の姫に、お礼をいいました。
「たすかりました、ありがとうございます」
叔母さんたちは、私たちに塩をまきました。
「汚らわしい、砂浜から出ていけ」
商人たちは、慌てて船に乗り込みました。
「ガラス助かった、でも、そうじゃ、船頭、お前ユーカリの木をとってこい」
「これからですか」
「ああ」
「見てたでしょ、叔母さんたち私が死なないと静かになりませんよ」
「ふーん、なるほど、では死ね」
「エー、」
私は悲しくなってきました。
商人たちは、ここは商売にならん、東の国へいこう」
と言い始めました。
「飯は」
「食ったケーキ」
「はい、私はまだですが」
「何か言ったか、急げ」
「はい」
私は大陸の海岸沿いに杖を突いて移動していきました。
穏やかな波でした。
もう暗くはありません。
私は大陸に着きました。
トドが笑っています。
叔母さんたちがおいでをしています。
商人たちはもう一度大陸に上陸して、
叔母さんたちに、
布と交換だと言ってガラスの球を見せました。
叔母さんたちは、にっこり笑って私をにらみました。
やっぱり焼かれるみたいです。
私は凍ってしまいました。
叔母さんたちは私を丸太にはりつけにしました。
「焼くぞー」
「いい魚だ」
私は焼かれてしまいそうです。
カンガルーが飛んできて私をけってくれました。
叔母さんたちは大喜びです。
浜の神は私を焼かなかったようです。
叔母さんたちは代わりに料理を作り始めました。
商人たちは大喜びです。
「これいかがですか」
「もらうよ」
「ドレスは」
「ないけど、毛皮があるよ」
「はい」
「商人が見ると、最高級の、鳥の毛皮でした。
「交換できるな」
「商売になるな」
「水と食料と交換だ」
商人たちは、袋の荷を解いて叔母さんに近づいていきました。
叔母さんは笑いながらグーパンチのポーズを決めています。
叔母さんたちは作った料理を皿に盛ってフライパンや鍋をたたいて踊り始めました。
商人たちは陽気に踊っています。
私はカンガルーにパンチを食らってしまいました。
ダイノジでぶったおれたら、青い空が広がっていました。
赤い岩の山が静かに立っています。
叔母さんたちは、横に一直線に並んで、手をたたいて一二三四、一二三四で、ステップを踏んで踊っていました。私は、あーあ、また生き返った、どうしよう。と思いました。
ゴミ置き場の前の歩道は、自転車が、しっかり走ってるんだろうな。あーあ。
商人たちは、料理をたんまり食べて、いつの間にかビールを手に入れてたっぷり飲んでいます。
「そこのお兄さん」
「はい」
「この浜は神聖なんだよ、汚いな」
「はい」
「臭いぞ」
「ちびったか」
「汚い奴は、海に捨てるのももったいない、やっぱり焼いてしまおう」
「焼かれるんか」
ここのおばさんしつこいな、もう太陽に焼かれて干からびてるよ。
水があればな、
「そうか」
ウミガメがやってきて、ぴーってしょんべんをかけてくれました。
こいつっ昔助けたやつか、
「ボケるな、お前は竜宮城で破産した奴だろ」
私は気持ちよく寝てしまいました。
叔母さんたちの姿が、上記の中で揺れています。
コーヒーができたな。私はようやく家に帰れたみたいだ。
「おい、船頭」
「はい」
「夕陽になる前に東の国に向かうぞ」
商人たちは怒鳴っています。
私はウミガメに
「ありがとう」
と言って手をついて立ち上がりました。
叔母さんたちは腹を抱えて大笑いです。
東の国、私は指をなめて風の方向を確かめました。
吹いてるな、よっしゃ、船だ。
私は船に向かいました。夕陽までには着くだろう。
「水」
赤い岩の山に滝が見えました。
「しかたない、船にある箱の中の水をなめよう。
ふぁらをが暮れたやつだから、毒になってないだろう。
私は砂浜の端を歩いて船をつけた岩に向かって歩いていきました。
岩の上に、こちらを見ている、ペンギンがいます。
トドが襲いそうなので、
「おーい」
と呼びました。するとトドは、
サメをビョーンと投げました。
ドッスン、
サメが私の横に落ちてきました。
「お前食うぞ」
とサメは私をにらみました。
サメは弱っていたので私はようやくサメを抱えてやって、浜を歩いて海に返してやりました。
カメはそれを見て、
「馬鹿、あいつはもう死んでいる」
というので、海を見ていると背びれが泳いでいました。
「あいつは、悪党失格のサメでもう死んだよ」
とウミガメが言うのです。
「悪党でないサメはだめなのかい」
私はウミガメに聞きました。
「そうさ、悪党でないサメなんて聞いたことあるか」
「そういえば聞いたことはない」
「だろ」
とウミガメは得意顔です。
私は、浜辺をぐるっと回手船をつけた岩場に向かいました。
私は船に乗って商人を待ちました。
東の国、知らないな、
「お前東の国に行くのか」
「ああ」
「竜宮城で挟んだぞ」
「もういい、行かない」
「行かないのか」
「東の国にはいくよ」
「行くのか」
「ああ商人達が行くんだ」
「いい客だな」
「ああ」
「案内するよb」
カメが案内してくれるらしい、助かった。
私は船に乗って、商人たちを待つ間に箱の中のビンの水を一口飲みました。
助かった。
しばらく待っていると商人たちが、一二三四、とステップを踏んで、大笑いで歩いてきました。
「おい船頭」
「はい」
私は人数を数えました。四十八人、全員そろった。
「揃いました」
私は大声で
「出航」
と言いました。
私は空を見上げました。遠く東の空に明るく白い雲がぽっかりとのどかに浮かんでいます。
ファラオの笑顔が見えてきました。
宮殿の床の蛇たちも静かなようです。
山の姫はにっこりと笑ってくれました。
私は竿をさして東に向かっていきました。
「これから北上だよ」
ウミガメが言ってくれました。
海は静かに凪いでいます。
遠くに火を噴く島が連なっています。
向こうから、始めて船がやってきました。
ウガチャカ、ウガチャカ、ウガウガウガ、と腕をたらして頭にはの冠を載せた男たちが踊っています。
商人たちは、
「商売だ」
とまた眼の色を変えて、ウィスキーをがぶ飲みしています。
「鳥の毛皮、上物だ、履物を作れば喜ぶぞ」
商人たちは色めき立ちました。
「おい、船頭、悪いがこれでは着物を縫ってくれ」
「どこかの島に船を留めて、やります」
「悪いがあの船の男たちと行くことにしよう、話してくれ」
「言葉が違いますよ」
「船頭ならできるだろ、時々、幻と話してるじゃないか」
船がちかっずいてきたので。
「近くに島はないか、そこで、宴会をしよう」
というと、
「おいそのウミガメ、神の使いだぞ」
「どうしてそばを泳いでるんだ」
「実は古い友達なんだ」
「お前何者」
「ただ、の船頭」
「料金なしの船頭は、貧乏だな」
「はい」
「では、その亀に島まで案内してもらっていこう、もうすぐ見えてくるはずだ。
「頼むよ」
「ああ、でも商人たちに騙されるなよ、また破産するぞ」
「死ななければいいよ」
「勝手に生きていろ、付いてこい」
と言ってカメは泳ぎ始めました。
私と、男たちは、船を進めました。
ウガチャカ、ウガチャカ、ウガ、ウガ、ウガ。
男たちは踊っています。
商人たちは、
「川の流れにー、一つ一つ」
と歌い始めました。
静かな海は波でリズムをとってにぎやかです。
「東の国も大きな川が流れている、象もいる」
と商人たちは言うのです。
亀は、
「ではそこからと言って、向きを少し西に向けて北上を始めました。
「いや違う、近所の島によって、彼らと商売をするんだ。
緑の島が見えてきました。
巨大な石像がこちらを向いてにらんでいます。
船の男たちは、
踊りをやめてお祈りを始めました。
「ハメハ、ハメハメハ、ハハハハ」
男たちは天を見上げて涙を流しています。
わたしは、もう一度はこの水を出して、一滴指に着けて唇を濡らしました。
私の口はからからに乾いて干からびていました。
「おい、船頭、お前はどこの国の人間なんだ、猿か」
「私は、昔の人が日の出ずる国といった、島国にいます。人間です」
「そうか、顔が汚いので猿かと思った」
「いいえ、人間です」
「そうか、猿も酒は飲むんだから、お前も飲むか」
「いえ、下戸です」
「つまらん」
「いいえ、詰まってしまいました」
「詰まったか」
「ええ、皆さん、もうすぐ島です、上陸はどこがいいですか」
「カメが神の思し召しを伝えてくれるよ、亀に教えてもらえ」
「はい」
亀は、正面の白い砂浜に向かっていきました。
私は不安になって、
「おいあそこで、火あぶりにされることはないよな、いきなり叔母さんに怒られないよな」
「お前は少し、死んだほうがいいよ」
亀は、真顔で言うのです。
「やっぱりおばさんたちがいるんだな」
「いないよ」
「じゃあ、大丈夫だろ」
「それは、お前次第だ」
亀は、いい加減にしろというような顔で私をにらみました。
「おい気をつけろもうすぐ、浜に着くぞ」
男たちが声をかけてくれました。
私は慌てて竿をさしました。
船は、浅瀬に乗って静かに止まりました。
私は仕方ないので船を降りて、船を引っ張って船を砂浜に着けました。
商人たちは。
「おい揺らすな」と言って、
波間で降りることはありませんでした。
亀は
そろそろ船を留めてくれ、商人を下ろして、船で浜を、荒らさないでくれ」
と言いました。男の人たちも波間で船を降りて砂浜に静かに船を留めました。
私は商人たちに、
「すみません降りてください、船を砂浜にあげるので」
というと、
「船頭、失礼な、支払いを減らすぞ」
とぶつぶつ言いながら降りてくれました。
私は鶏の毛皮をもって降りて、
あの人たちには、コートじゃあないな、マントを羽織ったほうが似合うな、と思って、
私はマントを縫うことにしました。紐の長さも適当です。
私は砂浜の奥に転がっていた白い大きな石に座って、マントを縫っていました。
「おい」
私はぞくっとしました。
叔母さんの声です。
「それ、買うよ」
「はい、でもこれは向こうでお酒を飲んで騒いでいる商人たちに頼まれて塗ったものですので、あの人たちに聞いてください」
というと、
「あんた欲がないね、黙ってこれを縫って渡せばわからないよ」といって、毛皮を見せてくれました。
「ごめんなさいばれたら殺されるので」
と私は断りました。
叔母さんたちは黙って満期を積み上げています。
やっぱり焼かれるのか。
わたしはにげるかくごをきめましたが、
叔母さんたちは商人たちのところに行って何か話しています。
叔母さんたちは戻ってきて、
「この毛皮でマントを作ってよ、島で一番の料理を食べてもらうから、そのマントと今縫っているマントを交換することにしたんだ」
すると商人が一人やってきて、
「聞いたか」
「はい、これできました」
「そうかでは頼むぞ」
と言ってマントをもっていきました。
叔母さんたちは、
「わかったかい」
といって、薪に火をつけて、
料理を始めました。
亀は、
「ほらね、お前次第だ」
と言って笑いました。
叔母さんたちは亀に気づいて、
「あー神様の思し召し」
と喜んでいます。
私は二枚目のマントに取り掛かりました。
「お前、一人前に仕事をしてるな」
天から、一番怖い声が響いてきました。どうしてわかるんだ。
「お前のやってることぐらい知ってるよ」
帰ったらまた怒られて殴られて出て行けと言われるのかな、と思ったら、
「何か文句があるのか」
と言われてしまいました。
私はゆっくりとマントを縫いました。
この皮、トドか。
「そうだよ、あんたの奥さんみたいなやつ」
叔母さんは言いました。
どうしてわかるんだ。
私はぞっとしました。
「あんたの頭の中はスケスケだよ」
叔母さんたちは大笑いしました。
私は、カニが歩いているのをじっと見ました。
カニか・・・・。
トドが食べたいやつ、
蒸して食べるやつ、
焼かれんですむんか、
「お前次第だ」
亀は言いました。
私はマントを編みました。
「そこのおやじ」
「はい」
「できたか」
「はい」
[そうか、では焼こう」
「良く燃えるよ」
「薪を足して」
「はいよ」
叔母さんたち、やっぱり焼くのか。
そう思ったとき、カモノハシが、私の足を口で噛んで、私を投げ飛ばしました。
ドッスン,ベチャ、
私は、また、チジミの生地は嫌で、広島焼の生地になってしまいました。
「おや、カモノハシと亀」
「虹も出てるよ」
「これは、奇跡の日になるよ」
「仕方ない、ないこの雑巾のような男は寝かしておこう」
「助かったのか」
「おい、いつまで寝てる、早く、縫って船を出せ」
「商人たちは、ダチョウの羽と、コアラの爪と、インコの羽を男たちからもらって、マントと交換しています」
私は起き上がって船に向かい始めました、
「おい、待て」
叔母さんたちが、すごい勢いで走ってきて、柄杓を振り上げて、
「食べていけ、この薄ら馬鹿垂れ」
と言って私の頭を柄杓で百たたきしました。
「曲がったよ」
「こいつの頭は、中身がないのか、よく響く」
叔母さんたちは大笑いして踊り始めました。
私は、焼かれないで済みました。
叔母さんたちは、鍋にわたしをいれようと、一度私を持ち上げました。
すると、インコの大軍が飛んできて、
「馬鹿、馬鹿馬鹿しい、臭い奴を焼いたら、くさや、なら美味いがこいつはまずいぞ」
と一斉にしゃべり始めました。
「インコにまで汚い臭いと言われてるよこの男、一度あぶって、海の塩で洗ってやろう」
と言って私を薪の炎であぶって、海に漬けました。
「イテー」
私は思わず悲鳴を上げてしまいいました。
叔母さんたちは私を海に漬けて、ブラシでごしごし磨きました私は便所の便器のように、隅々までしつこく、磨かれてしまいました。
「この男少しはましなのになったかね」
と叔母さんたちは、私を海に漬けておくのです。
もう息苦しい、死ぬ。
ともった途端私は気持ちが楽になって、宙に浮いているようでした。
私は思わず口を開けました。しっかり深呼吸できました。いつの間にか海の上を浮いていました。
「中身がないと何とも軽いね」
叔母さんたちは、腹を抱えて大笑いしました。そしてハメハハメハメハとフラダンスを踊り始めました。
亀はあきれて、「いつ出航するんだ、俺は飽きたぞ」
と怒りはじめました。亀の案内がないと私は、かじがとれなくなるとあせってきました。頭の中でサイレンが、ガンガンに鳴っています。
「ちょっと待て、なんか食べないといけないみたいなんだ」
「ああ知っとるよ、マグロとカニとエビのブイヨンだ」
「叔母さんたちがとおしてくれたら船を出すよ、商人たちもそろって待ってるんだ。
「叔母さんか、仕方ない、わしもよく、脅される、どっかどっかと砂浜を歩く、あのダンスの振動も自信と歩な次男だ」
「何か言ったか」
叔母さんたちが怒鳴っています。
「お前早く言って食べてこい」
「叔母さんをか」
「ああ、できるならやってみろ」
「それは、ハラスメントだよ、ブイヨンを救って食ってくるよ」
「早くしろ、潮の流れが悪くなるんだ」
私は焦って走っていきました。
「おい、貧乏野郎、煮えたぞ、お前を煮たら仕上がりだ、お前の汚れがいい出汁になる」
「はい私をなめてから食べます」
「ほら、と叔母さんは杓子を投げてくれました」
私は指をなめて、鍋のブイヨンをすくって、食べました。一杯飲んだらやめられないで、百杯飲んでしまいました。
「よっぽど貧乏なんだな子のブイヨンを百杯も飲むとは、
「ぶち、火文字いい奴だな、男でいられないやつだ」
「それ差別です」
「お前みたいな糞みたいなのは早く出ていけ」
叔母さんたちはこちらを向いてにらんでいます。
股も追い出されてしまいました。
私は船に乗って、ようやく海に運び出して竿をさしました。
「ちゃんとついて来いよ、送れても知らんぞ、今度の海は、ぶち、広い奴じゃ」
私はまた遠くで魚が飛んでいるのを見て、やっと、海に帰ることができたと思いました。と思ったとたんにナイルの川の流れが懐かしくなりました。高くて白い雪をかぶった山も見てない。氷の大陸の、オーロラは、
「祈ってるのよ」
柔らかい、ファラオの声です。
世界の秩序は大丈夫みたいです。夜が来て朝が着て晴れた日もあれば嵐の日もある、普通の、時間があるみたいです。亀も気持ちよく海を泳いでいるようです。
「おい、遅いぞ、送れるな」
「カメが首を長く伸ばして振り返って険しい目でにらんでいます。
私は竿を何度もさして船を進めました。
四十八人の商人は飲みつかれてみんな熟睡して鼻から、提灯鼻水を出しています。
この人たち、青い帽子をかぶってないと海賊だなと思いました。
私はまだ海賊が近づいていることに気が付いていませんでした。
大きな波が突然船鵜を揺らしました。
ゴー、
大きな音がして船は木の葉のように積んでしまいました。
大砲のある船です。
ひげを生やした大男が船のデッキで剣をかざしてこちらをにらんでいます。
商人たちは船底に隠れて、
「船頭お前言って話してこい」
というのです。
わたしはしかたなく、
「おーい」
「何だ汚いの」
「貧乏です」
「お前はそうだろう、死んでしまえ」
「ええ死にました何回も」
「ほら」
剣が飛んできて私の足に刺さりました。
「イテー」
私は悲鳴を上げてしまいました。
「どうだ」
「はい、気持ちいいです」
「気持ちの悪い奴だな」
「幽霊船だ」
「海賊たちは、ざわついて」
「火ケー」
と言って船を下げていきました。
来たb無くておどろおどろしい。船です。
私の船です。
私は竿をさして船を進めました。
「お前次第だな」
亀は笑いました。
「貧乏人め」
「ああ」
商人たちは、船底で、
「お前、使えるな」
「来たな言うんだってな」
「ええ」
「貧乏人だってな」
「ええ」
「パンも買えんのか」
「はい」
「ケーキを食っとけ」
「えー」
「船底にまだあるだろ」
「ばれてますか」
「とっくにだ、間抜け」
「あく」
「まを抜いたな」
「開きます」
「ああ悪魔め」
「はい、まを抜いたやつです」
すると大きな波が開いて、船は急に進んでいきました。
「船頭」
「はい」
「歌え」
「はい」
「川は流れてどこどこ行くの」
「っどっこいしょ」
商人たちはまたウィスキーをがぶ飲みし始めました。
船は大騒ぎです。
わたしは大洋の太陽を浴びて不条理をカミュのように描けなくて腹減ったと思いました。
私は、船底のパンはないので、ショートケーキもないのでクリームがついてるのを指でとって舐めました。
殺人は起きません、
殺害はされそうです。
これは、まっとうな、摂理です。
アーア。
私は、大声で、
「お腹すいた」
と叫びました。
「こら船頭、うるさいぞ」
酒に酔った商人たちは私をにらんでナイフを手に持っています。
「とうとうだな」
亀がにやっと笑いました。
そのときシャチがとんできてわたしをくわえて、海にどぼんです。振り向くとナイフが空を切っていました。
私はシャチの口の中で、深呼吸をしました。
「臭い、この馬鹿垂れ」
シャチはこらえきれず私を吐いて飛ばしました。
貧乏臭の勝利でした。
私は波の間で、立ち泳ぎをして船に向かいました。
「お腹すいたよー」
「お前はバカだ、海は食材の宝庫だぞ」
と商人たちはバカにするのです。
私は悔しいので浮いていたクラゲをつかもうとして、やめました。イカがクラゲを狙っていたので、タコをタコ壺で捕まえて、イカをつりました。
私は塩を指でとって、
イカを刺身にしてようやく食事ができました。
タッコハは、塩ゆでにするのも、陸の鍋がいるので、やっぱり生で食べました。
商人たちは、
「よこせよ」
と言って、食べてしまいました。
私はしょうがないので船を進めました。
オッと商売だ。と商人が怒り始めました。
海賊が来たので男たちの船はもう消えています。
商人たちはしょうがない東の国で、商売だといいました。
私は竿をさしました。
「船頭とろいぞ」
商人たちはまた怒り始めました。
私は、空を見上げて涙をぬぐいました。
広い海原が続く日々でした。
もう船に出会うことはありません。
西を見たら、懐かしいナイルの匂いがやってきました。
商人たちは、すっかり酔って、丸々と太ってきました。
船が少しずつ沈んでいます。私は亀の導きに従って船を進めました。
ある朝、突然陸の向こうに白く高い山が見えて、ボートに乗った人々が出てきました。
海の上に住んでる人たちのようです。
商人たちは、
「おい、もっと早くいけ」
とうるさいのです。お腹ペコペコです。
「おい、もうすぐ大河になるが行くか」
亀が面倒くさそうに言いました。
「そこは、大陸だな」
「ああ。とっても巣神聖な川だ、死体が流れてる、ありがたい川だ」
「ワニは」
「いる、トドは、」
「もちろん横たわって寝てるよ」
ボートから、
「野菜だよ、パンもおいしいよ」
と叔母さんたちの声がしました。
「あのおばさんたちは安全か」
「お前次第だ」
またか、
私はパンを買うことにしました。
私は商人に、
「少し前払いはないか、パンを食べないともう動けん」
と言いました。
「ならお前はクズだ、落とすぞ」
と言って商人たちは自分たちの食料を叔母さんたちからたっぷり買いました。
「こら船頭、船が沈んでるぞ、ちゃんと浮かせろ」
私は必死で竿を海に立てました。
商人たちはまた宴会です。
私は、もう慣れてしまいました。
もう涙も出ません。
「おい、笑うな」
私はへらへらでした。
もう空には南十字星や、南の大三角形はみえなくなってしまいました。
ほくとしちせいに、白鳥に事とかに北の大三角形と北極星が光っています。
私は、しょうがない、やねこいが、
「一本入れて、はい、と、押す、とーちゃんのためなら、えんやとっと、かーちゃんのためなら、こわーい」
私は、リズムを保って押しました。
「おいといろいぞ、何歌ってるんだ、ヨイトマケはとっくに放送禁止の唄だぞ」
また商人たちが騒ぎ始めました。
「おい、ゆれたぞ、金はやらん」
「ヒェー」
「パンならわしらが買って食う」
しょうがないダチョウの毛一本と交換してもらおう、これが全財産だ。
「叔母さん、これでパンください」
また汚いものを見せるね、臭いよ。
「みただけでおぞましい、パンが買えないなら海に浮いてる、海草のきれっぱしでも食べな」
と叔母さんは怒りました。
また怒られた。
私は、やっぱり仕方ないと思って、船を進めました。
「かわいそうに、何か芸でもしてくれたらパンを焼いたのにね」
叔母さんたちはひそひそ声で話しながら、また薪を焚き始めました。
―汚さや、鼻水垂らす、ダメ男―
「季語がない」
叔母さんたちは笑い始めました。
商人たちは、
「実に下らん」
と言って腕を組んで、
「あいつに何かいい薬はないか」
と商人たちは言いました。
芸をすれば助かったのか、パンが食べたい。
美味しい奴。
わたしはしかたないので、サルのものまねをやりました。
キャ、キャ、キャ
「全くダメ男はどこまでいってもダメ男。
叔母さんたちは、
「パンは焼くな、あの汚いのを焼いてしまえ」
と言って薪を集めています。
私は仕方ないのでそのまま船を進めました。
「もうすぐ東の国だ」
亀はこちらを向いて、
「ついてこいよ」
と言ってくれました。
私は竿をさして船を進めました。
「船頭、向こうに見える宮殿の前の広場に行け」
商人たちは顔色を変えて叫んでいます」
私は何とか船を宮殿前の船着き場に止めました。
商人たちは、
「暑いな、といって、上陸していきました」
「私は、汗をぬぐって空を見上げました。
飴にはならない、コトはないな向こうで雲が大きくなっている。
「気を付けてください、嵐が近づいています」
叔母さんたちは薪を足して、今度は本当に焼かれそうです。
その時象が走ってっ着て私を鼻で捕まえて、空高く飛ばしました。
わたしはきもちよくそらにむかってとんでいます。
スードスン。
落っこちちゃいました。
わたしはまたうすやきせんべいになってしまいました。
男の子がきて、
「臭い、汚い」
と言って私を足で割って楽しんでいます。
私は、もうすでにかけらになっていました。
男の子は私を拾って食べようとしましたが、
「臭ーい、汚い」
と言って投げ捨てました。
するとおじさんが犬を連れて来て、
犬がわたしに、べろべろのつばをかけて、足で踏んでいます。
鼻を近づけると犬はぎゃーんと言って飛びあがって振り返って逃げました。
男の子は、指さして、
アハハハと大笑いです。
気持ちのいい朝です。
私はとうとうバラバラになって、犬に食べられそうです。
そのときへびつかいがへびをつれてきました。
商人たちは私に蛇皮で、バッグを作ってくれよ、と言って川の水を汲んで、私に馬車っとかけました。
亀が、「無茶苦茶羅」
とおまじないをかけてくれると、私の体はつながって、元の体に戻りました。
私は蛇使いに蛇側はありますかと聞きました。
踊ってくれたら今朝脱皮したのが一枚全身のがあるよ
と言ってくれました。
わたしはしかたがないので、ふにゃらふにゃらどんどコドンと山仕事の踊りをしました。
「臭ーい」
蛇使いは鼻をつまんでにらみました。
私は踊りを続けて広場の真ん中に立っていました。
「見ろ、あの汚いの」
彼らは私に、石鹸を投げつけて、象の毛でできた硬い毛のブラシで私の全身を磨きました。
「臭ーい」
こいつの悪臭は本物だ、湯唯一無二だ。
広場の人たちは私に石を投げつけて騒ぎ始めました。
「おい、早くバッグを作れ、ここで商売をして持っていくんだ」
商人たちは、私を振り回して、岩に投げつけました。
ヘビ皮です。
私はそれでバッグに見える袋を作りました。
カレーの匂いがしてきました。
お金が、まるっきしないんだ。
私はあきらめました。
すると突然岩が動くではありませんか。
そして長い鼻の先にリンゴがついています。
大きな耳をパタパタと動かして、岩は飛び上がっていきました。
「パヲー」
高い声を張り上げて喜んでいます。
私は像の背中に乗っていた趙です。
宮殿の広場に、オレンジ色の夕陽がさしてきました。
広場の人は急に増えて、川のほとりまで人であふれています。
亀は川のほとりで眠っていました。
私は袋を商人に渡して、何とか少しお金になるものを恵んでください、と言いました。
商人たちは、
「自分で稼げ」
と言います。
私は仕方ないので、石鹸で洗濯の仕事をすることにしました。
「おい、あの汚い男が洗濯屋だと、ぞうきんをタダで洗わせるしかないな」
と広場の人たちは口々に言っています。仕方ない、宮殿に行ってトイレ掃除の仕事をもらおう、
私は宮殿に向かって歩き始めました。
宮殿の前には透き通った真水の池が広く広がっていました。
私はこの下の下水管の匂いのことはすぐにそうぞぷできました。
白い石畳の道が池ノ上の日宇都筋の線でした。すぐに崩れてしまうようになってるやつだなと思いました。
ガタ、来たかと私は身構えました。道の向こうの、青い扉が開いて、緑のスカーフを頭に巻いてロングドレスをまとったたぶん女性が出てきました。私は腕を鼻に近づけて、石鹸の匂いだ大丈夫と自分に言い聞かせました。私はそのまま道を歩いていきました。いつの間にかシタールの音で音楽が奏でられていました。私は、上のほうを見ましたが音の聞こえてくるところには、白い鳥が飛んでいるだけでした。
「ようこそ」スカーフの人物は、瞳の大きな女性でした。
私はしまったと思いました。貢物は何もありません。
「トイレ掃除の仕事をください、もう一か月お金がないままで食べてないんです、差し上げるものは何もありませんが、仕事をください」と女性に伝えました。
「ちょっと待ってね」
女性は口元を緩めてにこやかな笑顔になりました。
「あなた、この建物の塔に上って、雑巾をとってきてくれる」
わたしは、
「はい、お邪魔します」
と言って会談に向かいました。二千段よ、今日中に戻ってきてね」
と女性は言いました。
私はそれを聞きましたが、お空腹で、ただひたすらに上っていきました。塔の壁には美しい、細密画が描かれていました。
階段は固い木で、出来ていて、幻のお香、蘭奢待と思われるかぐわしい香りがしています。
一段ずつ上っていくごとに、天に火寄与されていくようでした。香りで、空腹は忘れていました。天井と思われる、光のさすところに、白い箱の部屋があるようです。私は、手すりも持たずに、ただ足を動かして上っています。おそらくもう少しと言っても随分と歩いていけばあの部屋にたどり着くだろうと思いました。誰も出てきません。シタールの音は、前よりも大きく響いています。部屋の荷は誰もいないのでしょうか。いきなりまた叔母さんが出てきて薪を、持ってるようです。扉が開いて叔母さんが、薪をもって出てきました。私は事情を話せば雑巾を探して持っていくことができるだろうと思いました。ここで火あぶりか、仕方ない。私は階段を上っていきました。
私は、とうとう、天井の部屋の前に着きました。叔母さんは、この世のものとは思えないほどの、真っ赤な顔をしてこん棒を振りかざしていました。体は緑でとらガラの下着を着て出べそを出していました。
「来たb無くて使えん男じゃ、ゴミ捨てが終わっとらんじゃろ、便所掃除がまだじゃ」
「はい、なんでもやりますのでパンを買うお金をめぐんででください」
「馬鹿、働いて稼げ」
「はい、すみません」
「パンがいるのか」
「ええ食べたいです」
「じゃあ働け、市場に行ったら仕事の一つや二つあるはずだ」
「はい」
「情けない使えん男じゃ、出ていけ」
「すみません、雑巾ください、便所掃除します、きれいなご主人が今日中に取ってこいと言ってくださいました」
「何だ、鼻の下が延びとるぞ、ご飯抜きだ」
「すみません」
「雑巾だけ」
「やるか、自分で自分のシャツで作っ拭けばいいだろ」
「はい」
私はとうとう一歩も部屋に入れないまま、階段を下りるしかありませんでした。
私は下りながらシャツをちぎって、前の三分の二がなくなったまま、やっぱり寒い脳と思いながら階段を一段ずつ織りました。
「あら、早いね、雑巾は」
「これです」
「嘘はいけません、泥棒ですね、わかりました」
「はい」
制服を着たお巡りさんらしい男の人が私の手を後ろ手にして縄でくくりました。
私は、情けないのう、自分で稼ぐことはまるっきし駄目じゃ、と思うと涙があふれてきました。
私は、鋼板らしいところに連れていかれて、牢に入れられました。
もしかしてここでまっとうに過ごしたら食事ができるかも、と思うと少し助かったと思いました。
「おい、お前、あの船はお前のか」
「はい」
「商人たちが待っているぞ」
「はい」
「出すから早く帰って、仕事をしたらどうだ」
「えー」
私はとうとう食べることがこの国でもできそうにありません」
私は仕方ないので、船に向かいました。
途中犬と猿が遊んでいました。リンゴをけって遊んでいるのです。
私は仕方ないので、猿と犬のダンスを見せてやりました。
すると喜んで猿と犬は、りんごをくれました。わたしがうけとろうとしたら、長い鼻の先がリンゴを奪って、パクッと食べました。蛇使い委が蛇を連れて笛を吹いてやってきました。蛇使いは、
「ありがとう」
といって、蛇の脱皮した皮をくれました。
私はそれを縫ってバッグを作って、市場で売ることにしました。
私は市場の橋の裏口あたりに立って目立たないようにバッグを持っていました。
すると宮殿帯所がやってきて、
「あら、もう釈放」と言って私のバッグを見つめています。
「これ盗んだの」
「いいえ私は泥棒もできません、これは、蛇使いが暮れた蛇の脱皮した皮で私が作ったものです」
「嘘はいけませんよ、本当ですか」
「ええ確かに蛇の皮はお礼に渡しました」
と蛇使いは言ってくれました。
「こんなにすごいバッグになったとは思えんません」
「盗んだり拾ったりしたものでないのですね」
「ええ」
「では私がもう一枚こちらの蛇使いから皮を買うので、もう一つ作ってもらっておなじものなら、買うわ」
と女性は言うのです。
もう一個作るのか、私は仕方ないと思って、
「はい」
と答えました。
私は女性から皮をもらって、バッグを作ってみました。
「やっぱり」
女性は疑惑の目で見ています。
「あなたなぜ雑巾をとってこなかったの」
「あのおばさんが」
「どうした」
「いえ、」
「はやく掃除をしてほしいの」
「はい」
「バッグはそのあとに買うわ、よく調べてね」
「はい」
「私はボロボロのシャツを着たまま宮殿に向かいました。
船頭たちが、
蛇使いからバッグを、香辛料と交換したようです。
私は宮殿に入って、まず、私のシャツの一部で床を拭き掃除しました。
2ミリぐらいのほこりをとっていくと、白い大理石のタイルが表れてっきました。
天井の箱の部屋から、叔母さんたちの声が聞こえます。
「おいさぼると今度こそ焼いてやる、その床は銀色に輝く床だ、早くやれ」
私は、左の炭から床を拭き掃除していきました。腕が黒くなってしまいました、私は一度、手を洗うために外に出て、池の水をバケツに組んで、手を洗いました。
「水代」
女性が手を出しました。
「お金ないんです」
「やっぱり嘘つきね、バックはもらうわ」
「はい」
「ちゃんと掃除はしてね」
「はい」
私は右の床に行くまで、拭き掃除をしていきました。
三往復して初めて、銀色のように見えてきました。
船頭たちが、市場のレストランで食事を始めたようです。
私は、まだまだ床掃除をしないと叔母さんたちに焼かれてしまいそうです。
空腹はもうすっかりどこかに消えてしまいました。
何度目か吹き終えると床は美しく銀色に輝いて夕陽で茜色の光を浮かせています。
「ようやく戻ったわ」
女性は、穏やかな笑顔で喜びました。
私は思わず外に出て大の字に横たわりました。
良く晴れた、青空です。
私は目を閉じて、寝てしまいました。
「バッグは偽物ね」
「やっぱり嘘つき」
女性は、私を見降ろしています。
とうとう私は、一か月食事できないまま舟をこぐことになりました。
でも掃除はできました。
何とかまともなことが一つできたようです。
じょせしの美しさときたら、息ができないほどです。
その時空から、雪が降りてきました。
山の上から、ゴーっという音が響いてきます。
「起きろよ」
亀の声です。
「私は目を開けました。
「行こう」
「ああ」
私は起き上がろうとしました。
亀は私の背中を持ち上げてくれました。
その時女性の白く柔らかい手が差し出されて、私を起こしてくれました。
「臭ーい」
「すみません」
「パン、これ」
「ありがとうございます」
私は一口ちぎって食べました。
私は何とか立ち上がりました。
たまにはいいこともあるな。
と私はしみじみ思いました。
私は船に戻っていきました。
船に戻ると商人たちが騒いでいました。
「おい、びっくりした素晴らしいバッグだこいつは高く売れるぞ、
西の王国の婦人に買ってもらおう」
というのです。
わたしは、
「一度ナイルの帰ってファラオの許しを請います」
と言いました。
商人たちは、
「とにかく、進め」
と言って酒を飲み始めました」
亀は、
「ナイルだな」
といって
「ついてこい」
と言ってくれました。
私は海に竿をさして船を動かしました。
川には美しい女性の死体が流れています。
ひげを生やした痩せた老人が川岸で逆立ちをして腕立て伏せをやっています。
この川の主は、正気か。
すると宮殿の美女が、
「掃除はまたすぐに来てください、私は正気です、泥棒に言われたくありません」
と怒っています。
船はようやくナイルに進めています。
そろそろ海です。静かな波の海が広がって太陽の光を反射して輝いています。
向こうから、漁師の船が数隻やってきました。
私は竿をさして網を破らないように操縦しました。
海は穏やかです。
漁船のおじさんが、
「おい」
「はい」
「氷あるか」
「はい」
商人が、
「お前は黙っておけ」
と怒鳴りました、
「氷はあるが南の大陸の高級品しかないぞ」
と商人は言いました。
「イルカの頭の肉、高級品だ、これで交換はどうだ、氷で冷凍しておけば一年持つぞ」
と漁師は言いました、
「その肉と銀貨二枚ないか、ヘビ皮のバッグをつけるぞ」
もう売ってしまうのか、私は美人の区宮殿の女性を思い出して悲しくなってきました。
漁師たちは、
「いいだろう」
と言って船を寄せてきました。
「これだ」
「いいものだな、交換だ」
と漁師たちは言って、イルカの頭の肉を一握り商人に渡しました。
商人は、
「もう一つ」
と怒って言いました。
漁師たちは仕方ないと言いながら、クジラの肉だと言って商人に大きな肉の塊を渡しました。
商人たちは、
「おお」
と言って受け取りました。
「おい、ナイルに向かえ」
商人たちは、また酒をぐびっと飲んで、船にドカッと腰掛けました。
「行くぞ、付いてこい」
亀が勢いよく泳ぎ始めました。
紅海に向かう海峡が見えてきました。
ようやくナイルです。私は何とか生きて帰ってきました。
山の姫が、唇を、にこっとして、
「おかえり」
と言ってくれました。
「おみあげです」
私は蛇側の小銭入れをっ一つ、山の姫に渡しました。
商人たちはそれを見て、
「おい、それは、」
というので、
「やりくりですよ」
というと、
「俺たちの大切な流儀だ」
と言って大笑いしました。
「ありがとう」
山の姫は優しい笑顔でした。
するとナイルのイルカがダンスをして迎えてくれました。
「俺はここで待ってるから行ってこい」
と亀が言ってくれました。
私は、船を進めて宮殿に向かいました。
ファラオが入り口まで出てきてくれていました。
私は、ヘビ皮の小銭入れをファラオに差し出しました。
「あら、蛇使いにあったのね、東の国にまで行ってたのね」
「ええ」
「大変でしたね、それでどうして服が半分ちぎれているの」
「色々でした」
「あら、ゆっくり休んで」
「はい、いただいたパンとケーキはみんな商人がおいしくいただきました」
「お腹すいてるでしょ、パンを焼きましょう、コーヒーも用意しますよ」
「ありがとうございます」
私はファラオ見上げました。
なんと神々しい人なんでしょう。
冒険でした。
山の姫が、記録を残して後世に伝えましょうと言ってくれました。
私は船に戻ってファラオがパンを焼いてくれるのを待ちました。
商人たちは広場に行ってイルカの肉とクジラの肉で商売だと言って出かけました。
私は船で商人たちを待ちました。
ファラオがパンを焼いてくれました。
私はそれをもらいにもう一度宮殿に向かいました。
私はへとへとです。
服もボロボロです。
私は宮殿の入り口で突っ立ってしまいました。あまりに巨大です。
ファラオは私を見降ろして、
「もう一度冒険ね」
といってわたしにパンをくれようとしましたが
「あら」
白い鳥が飛んできて、ファラオはパンを鶏にやりました。
私はまた食いそびれてしまいました。
「冒険に出かけます」
「いいわ、箱に入れておくよ」
ファラオは言ってくれました。
私は仕方ないので、這って、川まで戻って、船に乗りました。
商人たちはまだ広場の食堂で宴会をしています。
私は船に乗って、箱を開けました、
すると焼き立てのパンがぎっしりです。
助かった。私は涙で目の前が見えません。
「ファラオ、ありがとう」
「生意気に食べるのね、きちんと働くのよ」
「ええ、私の仕事は昼寝です」
「あのね」
「はい」
「もう、無しよ」
「はい」
ファラオの手が箱のパンをとっていきました。亀が全部食べてしまいました。
私の手に一つだけパンがありました。
私はようやくパンをかじることができました。
商人たちは西の国に行くと言ってたな。
今夜出かけるか、夜明けに西の国で風呂に入れたらいい。
「ファラオありがとう、今夜出かけるよ」
「ええ、気を付けて北から嵐がやってきてるよ」
「炎のほのうでなければなんとかだいじょうぶだよ、」
「今度の嵐は、一億年に一度の嵐で世界の終わりを読んでるものよ」
世界が終わるのか、しかたない、げんこつおにぎりが最期に食べれたら、泣くな。
私はゴミ捨て場に呆然と立っていました。
アジサイの葉っぱにおにぎりがのっかっていました。
「ゴミは、部屋に、山ほどあるよお前自身もだ、全部捨てて」
丸太のような腕が飛んできました。
バッゴーン、私は一発で、地面に倒れてっぺちゃんこです。
世界の終わりのおにぎりだ、私は口から泡を吹いて寝てしまいました。
「寝るな」
私はドキッとしておきました。
でっかいトドがたってにらんでいます。
私は恐怖に震えて死んだふりをすることにしました。
一分は六十秒で長針が一つ進む、ですが私の心臓はもっと長く止まりました。
トドの影があまりに怖いのです。
私は急いで船に逃げました。
そして、私はファラオが閉じた箱を抱えて、しょうがないのと大泣きしました。
大泣きしてるうちに一年三百六十日の時間がたちました。
「おい、泣くな、西の国で大儲けだ」
商人たちが戻ってきました。
「おい行くぞ」
亀も怒って首を長くしてこっちを見て言いました。
私は
「四十八人、います、でます」
といって、竿をさして、船を出しました。
商人たちはまだ肉を食べてワインをがぶ飲みしています。
「ああ出かけよう、西の国に」
「蛇の皮のバッグをそろえて」
商人たちは、意気揚々です。
「一本さしてどっこいしょ、二本さして、親のため、三本さして、おっかさんのため」
「またヨイトマケか」
「かーちゃんのためなら、」
商人たちも歌い始めました。
西に向かって海は穏やかです、水平線の向こうから星が降ってきています。白い虹も出ました。
「ついてこい、スピードを上げるぞ」
亀は、ものすごいスピードを一搔きで出しました。
私は竿を思いっきりさしてぐっと強く推してっ船を進めました。
新月が笑ってくれました。
長い針が一つ進ん見ました。1000年たったみたいです。
いくつもの戦争が始まっていくつもの国が生まれて消えました。
長針が一つ進むごとに世界の終わりが来るみたいです。
拍子が進んでいます。
私はファラオのくれたパンを少しちぎって食べました。
「おい、働け」
「ええ、歌います」
「違う、まだバッグが足りん」
「皮は、」
「仕方ない、トドの皮を使おう」
商人たちは荷をほどいて、出しました
「おい、島が見えたら、一度そこで休んでバッグを10作れ、報酬は売れたらだ」
一円もまだくれてないのに。
私はぐすっと泣きました。
私は、
島が見えたので
「あの島で少し作業だ」
と亀に言いました。
「あの島は神話の国だ、面白いぞ」
と亀は言うのです。
近づくと白い箱型の柱が立った宮殿が見えてきました。
秒針が一つ進みました。
夜明けが近づきました。
「おい、目を見るな」
正面からヘビの髪をした女性がこちらを向かってきています。
私はぞくっとしました。
鬼だ。
私は目を閉じて竿をさしました。
島からレモンの花の香りがしてきました。
私は香りの方向に竿をさして船を進めました。
船は島の港に着きました。丘に向かって白い建物がたくさん建って、緑豊かな赤い土の見える島でした。
亀は、泳ぎを留めて、長い首をこちらに向けて、
「あそこ」
と指さしました。
石で組んだ堤防のむこうに、広くて、石づくりの堅牢な船着き場がありました。
私はそこに向かって船を進めて、船着き場に止めました。
「こちらで」
「おう」
と商人たちはゆっくり立ち上がって、船着き場の階段を上って広場に向かっていきました。
私はしっかりと錨を下ろして、縄で船着き場の、縄留めにしっかり縄を縛って船を留めました。
私はトドの皮を取り出して、船着き場で、皮をなめしていきました。
夜はすっかり明けて朝になりました。一日が過ぎて一日が生まれたようです。
私はトドの皮で、しっかりしたかばんを作ってみました。商人たちの荷物を入れても、大丈夫なように作ってみました。
広場から戻った商人がそれを見て、
「これか」
と不機嫌な顔になりました。
「使いやすい鞄ですよ軽くて丈夫でたくさん詰めることができます」
商人はカバンを取り上げてしげしげと、いじっています。
「売れん」
「え」
「トドはだめじゃ」
「もう一つだけ作って、ここで、紙でも仕入れてもっと見栄えのするものを作ってくれ」
というのです。
また支払いなしの仕事です。
私は仕方ないのでもう一つかばんを作りました。
お昼になって、商人たちが、起きて、
「できたか」
「はい」
「これか」
「はい」
「少し軽くなったな、でもあんまりにも見栄えが悪い」
「何かアップリケでもつけますか」
「いや、トドの皮の、質と皮膚の質感がまったりしてダメみたいなんンじゃ」
「じゃあトドの皮は無駄でしたね」
「まあ、そういう失敗はよくあることだ、お前、ちょっと海の貝でもとれるか」
「貝はたくさんいるよ」
亀が言ってくれました。
「潜って採ってきます、食べるんですね」
「いや少し多めに採ってきてくれ」
私は海に潜って、二枚貝や、サザエのような巻貝を網に入れて採ってきました。
商人たちは、それらを焼いて食べて、貝殻を、きれいに、剝いで、皮のようなものにしていきました。
「おい、これで、バッグを作ってくれるか」
とそれを私に渡しました。
わたしはなんとかそれを加工しようとしましたがこれはやはり、トドの皮でバッグを作って貝を貼り合わせたほうがいいなと思い、
丁寧に作ったカバンに貼り合わせてみました。
しばらくして商人が着ました。
バッグを見た商人は、
「あー、だめか」
と言いました。
その時、広場の上から見ていた男が、
「その大きさなら荷物入れにできるないくらだ」
と大声で聞いてきました。
商人は、
「来rは、最高級の鞄です、使いやすく、長持ちしますよ、金の袋一つなら安いものです」
と言いました。
「銀の袋三つでどうだ」
と男は言いました。
商人は
「金の袋一つで、アフリカのガラスのビーズをつけるよ」
と言いました。
「金でないとダメなんだな、金は大きなコイン二つしかないんだ」
「コインなら一つでいいよ」
珍しく商人は、がめつく言いませんでした。
男の人は、悪いが持ってきてくれ」
というので、
「おい船頭一緒に運んでくれと商人がバッグをもって階段を上っていきました、私はもう一つのバッグも持ってついていきました。
男は
「二つあったのか、ではこの金の袋一つでどうだ」
と商人に見せました。
商人は笑顔で大きくうなずきました。
男はバッグを受け取って、
「これは言い、使える」
といいました。
私は、驚いて
「売れたんですね」
と商人に言いました。
「ああ最高級品だ」
商人は振り返って、にっころと笑いました。
「おい、戻るぞ」
私たちは船に戻っていきました。
「この島の住人は、物の価値が分かる人だ」
と商人はいいました。
「この金で、もっといいものを仕入れてもう一度ここにこよう」
商人は、満足気でした。
突然、ウオーン、という鳴き声が聞こえてきました。
声のほうを見ると、
翼をもった、ライオンがたっていました。
茂みのほうから、大きな角を持った牛が飛び出してきました。
ヘビの髪をした女神が恐ろしい形相でにらみました。
「目を見てしまった」
商人はそう叫ぶと、
体が岩になってしまいました。
私はこれかと思って、
商人の体を支えて、運びました。
私は止めた船を、離して船をこぎました。
私は西の国に向けて船を出しました。
商人たちは、
「こいつ、生き返るぞ」
「魔法を解けばいいんだ」
「獅子の像の前で唱えよう」
ヘビの髪の女性は、嫉妬の塊でした。
「いいかい、メデューサはこの海のいたるところにいるから気をつけろ」
とカメは言いました。
「ああ」
私は空を見上げました。
私は西の国でもッと様々なものを見てみようと思いました。
海は穏やかです。
突然、大きな船が出てきました。
大砲を載せた船です。
私は文明とはこれかと驚きました、
でも、おまじないは文明に負けません。
私はほぼ一か月食べないで生きていましした。
わたしは太陽に向かって、祈りました。
すると石になった商人の魔法が解けて元気に生き返りました。
大きな船から、顔を出したのはこの島の軍隊のようでした。
さっきの鞄は軍隊の荷物入れになったんだ、
商人は、荷物から野菜と小麦を出して、
「これは銀の袋三つでいいぞ」
と言いました。
軍人たちは日焼けした顔で屈強な体をしていました。
私は恐ろしくなって逃げようとしましたが、
商人につかまってしまいました。
私は。
「お腹減った」
と大きな声で言いました。
長針が一つ進みました・
世界の終わりがすぐそこに来ました。
「やあ」
「ああ」
「いい世界の終わりになるね」
「そうさ」
「夕陽も終わりだね」
「ああ特別公演はないよ」
世界の終わりはニコッと笑って背中を向けて、歩き始めました。
世界の終わりが小さくなっていきました。
「又すぐに来るよー、君たちは仲間じゃないか」
2025/2/26