萌える、青葉
「行ってきまーす」
ピンクの花びらが枝から、風に乗って旅立ちました。
空には白い雲が航海にでかけています。
木陰でグランドでゲートボールをしていた叔母さんたちが、奥の暗いベンチを指さしています。
人が集まってきました。救急車のサイレンが、東から響いてきました。
風は一日中吹いていました。
不安な顔をした若い女性が歩道を、通り過ぎていきました。
担架に乗った、オジサンは、もう帰ってくる頃です。
星が輝く歌のような夜空です。
グランドの道では、もう、野球が始まっていました。
オジサンは、叔母さんに叱られていました。
「太りすぎよ、もっと素早く動いて、私を背負って」
若者二人がそれを横目で見て犬を連れて散歩していました。
オジサンは、若い二人に
「しっかりがんばろうな」
と声をかけました。
「はい」
若者は答えました。
「何やっているの、早く背負いなさい」
オジサンは叔母さんを背負いました。
「これが現実だよく見ておくんだ」
「はい、おじさん」
むこうから子供の男の子の声が聞こえてきました。
「そうか君が聞いたか」
「はい」
「そうか」
オジサンは急に涙が出てきました。
「オジサン泣いてるの」
「ああ、つらいときは我慢しないで泣くんだ」
「僕男の子だからけんかしても泣かないんだ」
「そうか、強いね」
オジサンは叔母さんを背負って、よいしょっと、ベンチに背負って運びました。
若者二人はそれを見て、
「お手伝いできますか」
「いや、大丈夫だ」
「少し休ませて冷たいアイスを食べてもらうよ」
桜の樹は、緑の日傘になっていました。
乾いた道は、優しく、商店街に向かっていました。
樹の上で、キツツキが音を鳴らしています。雀が降りてきて、木の実を啄んでいました。
「もっとしっかり運んでよ」
オバサンは怒鳴りました。
「はい」
オジサンはゆっくりオバサンを運びました。
若者は手をつないで犬の散歩に出かけました。
「大丈夫そうね」
「ああ、男の子は」
「飛んだように走っていったよ」
「元気な男の子だね」
「うん」
「ゆっくり行こう」
「はい、わたしたちらしい速さで進むわ」
鳩が降りてきて頭を揺らして歩きながら、木の芽を食べていました。
雀は慌てて飛び立ちました。
カラスは急降下して、ネズミを咥えて飛び立ちました。
モグラは慌てて、地面に顔を出してサングラスを付けました。
モグラは思わず手を伸ばすとありをつかみました。
「イテー」
モグラは鋭い顎で噛まれてしまいました。
モグラはたまらず手を地面に、叩きつけると、アリはつぶれそうになったので慌てて逃げました。
「おい、止まってるぞ」
オバサンは怒鳴りました。
「すみません、ちょっとモグラを観察していたので」
「まじめにやりなさい」
「はい、すみません」
「謝って済むわけないだろ」
「はい」
「ではちゃんと動け」
「はい」
「オジサン大変だ怒られてる」
「オバサンは怒ってないんだよ、しつけをしてるんだよ」
「なんだか怖い」
「え、あとでアイスを買ってげるから、黙っているんだよ」
「出たー、大人の、ずるいやつ」
「怖いね」
若者たちは、犬のリードを引っ張って走っていきました。
叔母さんは二人をにらみつけました。
「いわれてしまったな、安いんもので人の心を動かす卑怯な手は、ばればれだな」
「うるさい、黙ってちゃんと動け」
「はい、すみません」
おじさんは、涙声で返事をしました。
「まだ痛みますか」
「当り前だ馬鹿野郎」
「それほど痛むなら、病院に行きましょう」
「馬鹿、用意してないわ」
「でもいちどいきましょう、ベンチで休んでから」
「ごちゃごちゃいうな、言うことを聞いてれば幸せになるんじゃ」
「はい」
ベンチの上の桜の葉は太陽の光を空かして葉脈が美しい幾何模様を描いています。モミジの若葉はまさに赤ちゃんの手でパーをしています。ベンチで一時間座っていると、雀がやって来て、
「おい、おにぎりぐらい食えよ」
と言いました。
「腹減った」
「痛みは大丈夫ですか」
「ああ、もう少し休む、腹減った、せんべい持ってこなかったのか」
「はい」
「今誰としゃべっていた」
「雀です」
「馬鹿、寝ぼけてるのか、雀がしゃべるって、天と地がひっくり返ってもないことだぞ」
「ひっくり返ったようです」
「だから目が回るのか」
「気分が悪いですか」
「大丈夫だ腹減って死にそうだ」
まずい、怒るぞ、なにかたべさせよう。
せんべいでも買ってくるか、オジサンはコンビニに行ってカップ麺とあんまんを買ってきて、叔母さんに食べてもらいました。
「はい缶コーヒー」
オバサンは美味しそうに一分でカップ麺とあんまんを食べて、缶コーヒーを飲みました。おじさんは、サービスでもらった、お菓子をかじって、雀にやりました。
「叔母さん食いすぎだろ」
「あれでは少ない、すぐに怒り始める」
「怖いな」
「し」
「聞いてたらまずい」
「まだ何か食べてるぞ」
「ああ」
オジサンはもう少しオバサンを寝せておきました。
「オジサンたち、仲いいのかな」
「いいんだよきっと」
「オジサン辛そうだよ」
「辛いんだよ」
「そうか」
「どうする」
「うん」
「朝食を食べに行こう」
「うん」
二人は手をつないで犬のリードをもって喫茶店に向かいました。
「鳴ってるよ」
「ちょっと待って」
「はい」
「うん、すぐ行くよ」
「どこに」
「スポーツジム」
「朝食は」
「後ですぐ行くから待っていて」
「食べ終わったら帰るよ、待ってられるか」
「わかった」
二人は手を放してそれぞれの方向に向かっていきました。
男性はスポーツジムに向かいました。
「やあ」
「早かったね」
「ああ」
「グローブ」
「これから」
「うん」
二人はシャドーボクシングを始めました。
タイマーを30分に設定して二人は汗をかきました。
「ねえ、剛」
「はい由美さん」
「一緒だったの」
「うん」
「そう、純子さんどうしたの」
「朝食を食べに、喫茶店に行ったよ」
「朝まだ食べてないの」
「うん今日は寝坊してたから二人で」
「そう、行かないの」
「おいてけぼりだから、いつでもいいんだ」
剛は、運動を終えて、歩いて喫茶店に行きました。
「いた」
入ってすぐに後姿が見えました。
「帰るよ」
純子は席を立って出ていきました。
剛は席に座って、
コーヒーとパンケーキを頼んで
朝食をゆっくり取りました。
剛は、一時間ほど喫茶店言いました。
ビートルズの曲が流れていました。
剛はベースの音を聞いて、
ビルの屋上に行ってみようと思いました。
純子、怒っているよな。
バラでも買って、絵に描いて贈ってやろう。
オジサンはオバサンを抱えて病院に運んでいきました。
オジサンは受付を済ませて、待っていました。
診察室に呼ばれてオバサンを背負っていきました。
「痛い」
「ちょっと横になってろよ」
「先生は聞きながらカルテを書いてレントゲンを撮ります、骨は大丈夫だから痛み止めを出しておきますよ」
「はい」
それからレントゲンを撮ってオジサンは叔母さんを背負って帰りました。
「ちゃんと背負え、痛い」
剛は、帰りにオジサンがいたので、
「手伝います」
と言ってオバサンを背負いました。
「いいね、ありがとう」
「ありがとう、重いだろ」
「うるさい」
「ええ大丈夫です」
剛はオバサンを家まで送りました。
オジサンは
「すまない」
といいました。
「困ったときにはお互い様です」
剛はにこりと笑いました。
「いいことね」
純子がいつの間にか来て立っていました。
「二人とも家で紅茶でも飲んで帰ってくれ」
オジサンは言いました。
助かった、剛は、ほっとしました。
「ありがとうございいます」
剛と純子は、
オジサンの家に行って、紅茶をいただきました。
オジサンは言いました。
「辛いときはあるよ、困ったこともたくさんあったよ、二人は手ををつないでいたほうがきれいだよ」
剛と純子はこれは喧嘩できないな、
と思いました。
「ここ」
「うん」
「今日は食べないでいいよ」
「アイスだよ」
「今日はいいの」
「うん」
剛と純子は,手をつないで広場を渡っていきました。広場の奥の噴水で二人は後ろに向いてコインを入れて笑いました。
「何をお願いしたの」
「え」
「私は最高においしいアイスを作るよ」
「僕は美味しいコーヒーに出会うよ」
「本当」
「うん」
「私お願いしたの二人が幸せでありますように」
「きみをいつまでもまもれますように」
「嘘つき」
「嘘は、泥棒の始まりだよ」
「うん、もう盗んでるわ、私のハートのど真ん中を」
「当り前だ」
夕焼け空が、寂しく輝いていました。
二人は、ドーナツ屋さんをみつけて、プレーンのドーナツを二つ買って食べました。
「コーラ」
「うん」
自動販売機にコインを入れてボタンを押すとガタっと感が落ちて、かがんでそれをとって、二人はコーラを飲みました。
「夕焼け小焼けってこうゆうの」
「うん」
二人は歌って歩きました。
「夕焼け小焼けの赤とんぼ」
「カラスが泣くから帰ろうよ」
二人は帰ってシャワーを浴びて夕食の支度をしました。
「今日は魚の香草焼きにバゲットにしよう」
「野菜スープも作るわ」
由美は夕食の準備を始めました。
剛もキッチンに立って魚をさばきました。
「塩をを振ってラーララ」
「人参の葉を出しに使うのよラーララ」
二人はキッチンではもって歌い始めました。
「ワインワイン」
「ウメッシュは、無しよ」
「白白赤赤」
「白よ、もちろん」
二人はテーブルに料理を並べて夕食をとりました。
デザートは、バニラアイス。
でなくて、チョコレートがあるから、パンケーキを作ってバニラとチョコのソースで食べよう。
ワインは、デザートワイン。
「ラーララ」
二人はゆっくり食事を楽しみました。
二人は洗い物を済ませると、洗濯物を洗濯機に放り込んで、スイッチを入れてソファーに座って、本を読み始めました。
「ラジオつけていいかな」
「珍しいね」
「うん、さっきケータイを見たら、気になるニュースがあったから」
「うんいいよ」
二人はしばらくソファーに並んで座っていました。
ガチャガチャガチャ、オジサンは皿を洗い終わって、テーブルに座ってラジオを付けました。
オバサンはテレビの音を大きくして、菓子袋をもって、パクパク食べながら、テレビを見て文句を言って笑っていました。
風の音は静まりました。
さっきまで、窓を揺らす風が吹いていました。
ラジオから、ボブディランの曲が流れてきました。
オジサンは本のページをめくりました。
やっと夜中だ、
オジサンは目をつむって寝ようと思いました。
ぐっすり眠って、いつの間にかもう朝になっていました。
オーこれはまた怖い朝が来たぞ。
ゆっくり外を散歩しよう。
オバサンはぐっすり寝ています。
まだまだおきしそうにありません。
剛は
目が覚めてキッチンに向かいました。
由美ははっと気が付いて
「ごめんね、やるよ」
「いいよ寝ていて」
剛は、スクランブルエッグとフレンチトーストを作ってコーヒーを入れました。
オジサンは、起きてラジオ体操をして、散歩に出かけました。
もうすでにグランドで、グランドゴルフが始まっていました。おじさんは、緑の香りをかいで、一時間ゆっくり散歩しました。
家に帰るとまだオバサンは寝ていました。
オジサンは、ごはんをよそって、お茶漬けにして食べました。
「ふー」
オジサンは深呼吸をしました。
「おい、ゴミが残ってるじゃあないか」
「はい」
オジサンはゴミをまとめてごみ袋4つ持ってゴミ置き場に向かいました。
そういえば若者たちは起きて仕事に行ったかな。
「あ、ホ~、日曜日だぞ」
「え、ゴミ大丈夫」
オジサンは焦って脂汗をかいてしまいました。
グランドから、子供たちが野球を始める声がしてきました。
「今日は休みだ」
ということは、怖い一日の始まりだ。
オバサンは家の窓からオジサンを監視して、
帰ってきたら洗濯をさせようとにらんでいました。
オジサンは、恐怖に震えながらごみを捨てて帰っていました。
犬が自分のしっぽを見て追いかけっこしていました。
いい遊びだな。
オジサンは笑いました。
オジサンが家に帰って、
靴を脱いだ時、
「洗濯」
オバサンの声が響きました。
オジサンは、洗濯物袋にたまった服を洗濯機に入れて洗剤を洗濯機に入れて、スイッチを押して、叔母さんのほうを向くと叔母さんが、せんべいをかじっているのが見えました。おじさんは思わずお湯を沸かして、叔母さんにお茶を入れました。
オジサンは仕方ないのでバナナをかじりました。
「おじさん」
「あー」
「ゴミ袋が破れてるよ」
若い男性が走ってきて教えてくれました。
「エー」
オジサンは慌ててごみ袋を一枚持って、ゴミ捨て場に向かいました。
カラスが一羽、ゴミ捨て場ではしゃいで、袋をちぎって、中から夕べの魚の骨を出してしゃぶっていました。
オジサンは思わず石を掴んで、カラスめがけて投げました。
カラスは飛び上がって、
「おじさんやったな、とにらんで。おじさんの頭目指して緑の糞を落としました。
「アーすっきりした」
カラスは、
「アホー」
と大声で笑いました。
声は空まで届きました。
雲の上で居眠りしていた雷鬼はびっくりして目を覚まして、
太鼓をたたいて雷を放ちました。
ドドドドドド、バッギーン。
稲妻が柿の木のてっぺんに落ちました。
止まって柿を食べていたカラスは、びっくりして、飛び立って柿を投げました。
「キャッチ」
剛は柿を掴んで、手で拭いてがりっとかみました。
「渋い」
剛は口に含んだ柿を吐き出しました。
それを見ていた由美は大笑いしました。
オジサンは、
「もう絶対に許さん」
と怒鳴って、カラスめがけて、泥団子を投げつけました。
「ストライク」
オバサンは手をたたいて大笑いしました。
バッサー、ザー、
大きな音を立てて大量の雨が降り出しました。
「糞、部屋干しか」
オバサンは、
「部屋に紐を、つなげ、早く」
とオジサンに怒鳴りつけました。
オジサンの顔に緑の糞が垂れてきました。
オジサンは上を向いて、雨で顔を洗いました。
「早く洗濯が終わりそうだよ」
オジサンは敗れたごみ袋を新しいごみ袋に入れて縛って、ゴミを置いて、その上からネットを置いて、辛子を塗って、家に帰りました。
剛はグランドの子供たちに、
早く団地の階段に逃げるように、怒鳴りました。
「行きまーす」
子供たちは、走って団地の階段に逃げ込みました。
「賑やかだねー」
オバサンはソファーに寝そべってピーナッツをつまんで食べながらテレビを見ていました。
オジサンは部屋に帰って、洗濯用のひもを部屋に、張り巡らしました。
「バカヤロー、目障りだろ考えて張れ」
オバサンは、真っ赤な顔に目とまゆを吊り上げて怒鳴りました。
まずい、これはほんかくてきな、完全な怒りモードに入ってしまった。
おじさんはなさけないの。また怒られてしまった。
わしがさぼっても世の中は平和じゃの。
「またさぼったのか、もう一度雑巾がけ、トイレからやれ風呂も洗え」
「サボったのハレバレじゃったか」
わしは今日これからゆっくり本を読んで過ごそう。
「コラー、さっさと掃除を始めろ。さぼるな、ご飯抜きだ」
「え、わしは昼は作って食べるが、叔母さん抜いて大丈夫か、また怒ってばっかりの一日になるぞ」
「さぼるなー、さっさと始めろ」
「はい」
オジサンはトイレ掃除を始めました。
オジサンは額に汗を流して涙と鼻水を下で舐めました。
オジサンは、
「お腹すいたノー、今日も飯抜きか」
「バーカ、働け」
オバサンは怒っていました。
「また怒られた」
オジサンは情けなくなりました。
オジサンは、もう動けん、腹すいた。
「ア、ホ~」
カラスがミケを見つけて急降下を始めました。
オバサンは、ワッフルの予約に向かいました。叔父さんはお風呂を汗びっしょりになって掃除しました。
ヌルヌルを全部取りました。
ようやく床を拭けた。
これでようやく、におわない。
オバサンは、まだやってる。
とろいぞ、とどなって、ソファーに座って美味しそうにワッフルとアイスを食べていました。
そろそろわしも、食べるぞ。
カラスはミケにつかまってしまいました。ミケは振り返ってカラスをぎゅっとつかんで、たたきのっめしました。
「このネズミ泥棒」
カラスは唐草模様の風呂敷を抱えてコソコソとした目で逃げようとしました。
「泥棒目、またお巡りさんにつかまるぞ、臭ーい」
カラスは、かなわん猫じゃ、羽をバタバタしているうちに鳶がやって来てカラスは食われてしまいました。
オジサンは、あれじゃあお陀仏だ。
ゴミ袋も大丈夫だ。
と、オジサンはほっとしました。
カラスは、
こんちくしょう。
といって飛び上がって、緑の糞をどぼっと、落としました。ちょうど白い車が通ってフロントガラスにカラスの糞がビチャーと着きました。
オジサンはしぶとい奴だ、もう一度戦うしかないな。と言って風呂場の掃除を続けました。デッキブラシを握る手が強くなっていきました。
カラスは、言いました。
「おい、風呂掃除は、そんなに楽しいのかい」
「烏の行水ばっかりのだから臭くなるんだよ」
「オジサン知っているのか、俺が風呂ギライだということを」
「それはお前たち先祖代々当り前だのことだ」
「何代前だ」
「だいぶ」
「縄文時代か」
「そのまえの時代に、すでに鳶にやられて風呂に入るのをやめた見たいだ。
カラスは、
羽をパタパタ降って悪臭を散らかしました。
「風呂はどうした」
叔母さんはソファーに横になってピーナッツをかじりながら怒鳴りました。
オジサンはもう一度便所の掃除をして舐めました。
「やったか」
「はい」
「着た切り雀、臭いぞ」
窓の外で、緑の木々が揺らいでいます。
オジサンは情けないノーと叫びました。
剛は、
「あれ」
と思いました。
また由美が消えてしまいました。
ベッドで寝ぼけていました。
由美は
自転車で、急いでコンビニに行きました。
「剛は、また食い物を買い込むんだなと思いました」
「由美はコンビニでワッフルを三つ頼みました。
ついでにドーナッツを買いに自転車を走らせました。
ドタンドタン自転車が子供用のサイズに見えています。
剛はしょうがないなと思って、家の中を歩きました。
オジサンは便所掃除が終わって、
ようやく昼になるな食べようと思いました。
グランドから叔母さんたちの声がしています。
賑やかすぎて大変です。
オジサンはこれから体操をして、本を読もうと思いました。
長い時間読んでる本ですが、まだまだ内容がよくわからないままでした。
子供の声が元気にグランドから響いています。
オジサンはようやく目が覚めてきました、
オジサンは、やってしまったなと、情けなくなってきました。
グランドの道で、コリーが、こっちを向いて
「何」
とにらんで笑いました。
つつじの花が赤く咲いています。緑の若葉が芽吹いています。
アリさんがつつじの蜜を、食べに行列を作って登っています。
コリーはそれをにらんでしっぽを振りました。
遠くのほうで街の騒音が響いてきます。剛と由美は、スーツに着替えて手をつないで、出かけました。
「あれパンプス」
「うん時にはいいかなと思って」
「じゃあ僕は、茶色の革靴にするよ」
「うん」
「今日は昼を食べて、日本庭園に行こう」
「うん」
由美は明るく返事をしました。
二人はバスと電車で街に向かいました。
電車の車窓から見えるビルの壁は、くすんでいますが、街路樹の緑は明るく揺れていました。
「カツカレー」
「ハンバーグ」
「それ」
「いいね」
二人はハンバーグ目指して、二人は電車の駅を降りました。長い坂道を二人は手をつないで歩いていきました。
「オジサン」
「どうしてるかな」
「叔母さんが強いからな」
「そうよ、覚悟はできてる」
「え」
由美はにやっと笑いました。
剛は事態が呑み込めていなくて、ぼーっとしていました。
実は背中がぞっとするくらい寒い事態が起こっていたのです。
「熱出てない」
「いや、ハンバーグはミディアムで」
「やっぱり熱が高そうね、硬くしたらまずいのよ.ボケ」
剛は急に背中がぞくっとしました。
店の中はサラリーマンで満席になってきました。
二人は水を飲んで支払いを済ませて、店を出ました。
二人はとりあえず古本屋さんに向かいました。
大学のキャンパスから、管楽器の音が鳴り響いていました。
「学生たち練習しているね」
「そうねうるさい」
二人は坂道を下っていきました。
学生街の古本屋さんはカフェが流行っていました。
「コーヒーは」
「うん、ネルドリップの店に行きたいわ」
「しばらく歩くと、香ばしい、薫りがして豆を挽く音が聞こえてきました。
剛は中をのぞくと小柄な女性店員が、美しい所作でコーヒーを入れていました。
「入ろう」
「まだよ、もう少し小川の辺を歩いてから」
剛は、仕方ないな、
「そうだねもう少し歩くと、ちょうどいいね」
由美は、鈍いな。
丁度いいところなのに、わかってないなと思いました。いつまでこのままなのよ、この鈍感野郎。
「何かイラついてる」
「どうかな」
剛はまた背中がぞくっとしました。
「由美さん」
「何」
「今度」
「今度じゃなくて今なの」
「いいの」
「そうよ」
ブー。
「くっさーい」
「ごめん」
「アッチに行って」
「はい」
剛は公園のベンチに腰掛けました。
あれああこれはもうだめじゃ。
オジサンは思いました。
由美は、向かいの砂場から
「そろそろ行くよ」
と声をかけました。
剛は、
「いますぐって言ったからだしたのに」
剛はを手で拭いて、由美のほうに向かいました。
オジサンは、ようやくページを一枚めくりました。
面白いのを見たな、とつぶやきました。
オジサンは、
一行読みました。
臭いものにはふたをしろ
なるほどやばいものは隠すべきか。
剛君早く気持ち鵜を伝えないと由美さんは待っているのに。
「オジサン、叔母さんが怒っているよ」
「おお、おなかが減っているのか」
「苦労しますね」
「寒気は取れたか」
「はい」
「もう少し温まります」
剛はコーヒーショップを探しに由美の手を握って歩き始めました。
公園のそばには小川が流れています。
桜の若葉が、春の光で気持ちよさそうに笑っていました。
「まだ」
「うん」
「向こうのほうに行けばコーヒーが飲めそうだよ」
「うん」
「由美さん」
「え」
「綺麗だね」
二人は手をつないで歩いていきました。
オジサンは、そろそろ、コーヒーを入れよう。
「何か食べさせないと怒るぞ」
「おい」
「来た」
「何さぼっているんだ」
「パンを用意して掃除をしろ
「はい」
「トイレから」
「はい」
「玄関もきれいにしておけ」
「はい」
オジサンはトイレ掃除を済ませて、ゴミ袋を持って出かけました」
「奴目、逃げたな」
オバサンは目を吊り上げました。
オジサンは今日はゴミ袋を二枚重ねて出しました。
カラスがすかさず飛んできました。
足元を見るとネズミとミケが追いかけっこをしています。
オジサンは、カラスめがけて、小枝を投げました。
「ア、ホ~」
カラスはオジサンの顔めがけて飛んできました。
来たな。
空手チョップ
オジサンはカラスを空手家で、殴ってやりました。
ミケがすかさずカラスにとびかかって、
「臭ーい」
と大声を上げてかみつきました。鼠も
「俺より臭い奴がいた」
と言ってカラスを噛みました。
オジサンはゴミ袋をゴミ捨て場に置く前にカラスの頭をゴミ袋で押し付けました、
「いてー」
「やっぱり重いな」
「何て贅沢な人間だ」
「今日は紙くずをたくさん詰めたんだよ」
カラスは食い物がなさそうだと思いました。
オジサンはゴミ袋をゴミ捨て場において、家に帰って風呂の掃除を始めました。
「そろそろ朝食の用意をしろ」
「はい」
オジサンはサラダにトーストと野菜スープを用意しました。
「まだか」
「もう少しです」
今日の空は青空になりそうです。
ようやく朝です。
「オジサン」
「ああ」
「決まったよ」
「美味しいコーヒーを飲むんだな」
「はい」
オバサンはダイニングのテーブルに座ってすでにサラダとパンをパクパク食べていました。
パンとサラダは日常の朝の風景です。
ミルクがそろっていれば満点です。
オジサンは今日はゆっくり過ごそうと思いました。
「あのねー」
「ぎく」
「ゴミ袋は一枚でいいの」
「だってカラスが」
「カラスがどうした、またうんちでも被ったか」
ぎく。
オジサンは今日も覚悟を決めました。
オジサンは、もう一度散歩をしてこようと思って、玄関で靴を履きました。
「どこへ行く」
「外」
「逃げるな、拭き掃除が残っているぞ洗濯もしてない」
オジサンは仕方ないなと思って、掃除と洗濯をやりました。
お昼近くになってしまいましたがオジサンは、散歩に出かけました。玄関で三毛がこっちを向いて、「ふん」
と言って横を向きました。おじさんはポケットからめざしを出して、下に落としました。ミケは、「何だ」
と言って、めざしを咥えました。
オジサンは玄関を出て住宅街の細い路地を歩きました。苔のついたブロック塀の向こうから背丈の高い草が顔を出してクスノキが、立っていました。楠には、椋や、コガネムシやアリたちが住んでいました。目を凝らすと、キツネの、影や、天狗の髭が見えてきました。
オジサンは上り坂を歩いて、坂の上の広場のベンチに着きました。おじさんはそこで持ってきた本を読むことにしました。
「おじさん」
剛と由美が帰ってきました。
「お早う」
「ええ」
「コーヒーは美味しかったかい」
「ええ」
由美は、履いていた靴をスニーカーに履き替えていました。
オジサンは気づきました。この坂道を通っているのは私とこの若者二人だけだ。
見下ろす街の景色も日ごとに代わっているようだ。
ここはどこなのかわからなくなってきました。
オジサンは、ゆっくり街の風景を見渡しました。
「オジサンその本」
由美はオジサンが持っていた赤い表紙の本が気になりました。
「かわいい本ですね」
「かわいい」
オジサンは戸惑いました。
「この本、しばらくゆっくり読んでいこうと思っているんだ」
「今日古本屋さんで同じ色の表紙の本を見かけて気になったんです」
由美は、オジサンの本をもう一度見つめました。
「そうかい」
「今日、古書店街を歩いてきたんです」
「ああ、いいところだ」
「ええ」
「コーン」
楠からキツネの鳴き声が聞こえてきました。
坂道が消えていきました。
「あれ」
剛は一歩歩きだしました。すると道は森の中に続く道になっていきました。
「ゆっくり歩いていくといいよ」
オジサンは手を振りました。
「またお会いしましょう」
剛は手を振って由美の手を握って道を歩いていきました。
オジサンは、消えた坂道を眺めていました。
この道は私の道なのか。
いつも迷わない日常の道です。
オジサンはゆっくりと坂の上のベンチに座って、街を眺めていました。
大きな川が街の中央を大きく蛇行して水面を輝かせて流れています。
オジサンは、この景色は消えないと思いました。なぜならそこに生活がるからです。
この坂道はきっと、神社に通じた坂だったんだ。ということはこの丘は天壇か。おじさんは思わず、
明日いい天気になーれと祈りました。気が付くとやっぱり道は消えていました。おじさんは見えないだけで、歩くと道になるんだなと思いました。これを科学で説明するようにしなければ、オジサンは謎を発見してしまいました。とにかくオバサンの課題はこなしてこの道の研究をしなければ、オジサンは日記に書いておこうと思いました。
気が付いたら丘から虹の橋が架かっていました。
これが明日の天気への道か。そうか、気象庁やウエザーニュースの予報はこの虹の作った転機を観測してるんだな、科学にならないな。おじさんは驚きました。地動説のガリレオになってしまうな。
あの青年たちが歩いて行った道は、私の歩く道とは、全く違う。それは必然のことだったようだ。
剛は
「あのさ」
「何」
「明日も一緒に歩こうね」
由美は、はっとして、
「うん」とうなづきました。
森が次第に明るくなってきました。空の雲が途切れてきたようです。
由美は剛の手をぎゅっと握り返しました。
オジサンは振り返って、ベンチに座って本をを読み始めました。
丘の上に風が吹いてきました。
乾いた風だな、雨にはならないな、とオジサンは思いました。
「ねえ剛」
「え」
「手を放すよ」
「うん」
「由美は小川の隅にかがんで、ハンカチを水に浸してぎゅっと絞りました。
「ごめん、休まなきゃ」
「うん」
「気分悪いの」
「大丈夫よ少し休んだら大丈夫」
二人は木陰に向かって、木の株に座って休みました。
せせらぎが、明るく輝いて落ち葉の船にアリさんが乗ってこいでいました。
由美はそれを眺めて、
「乗りたいね」
と言いました。
「うん海に行こう」
剛は由美を抱きかかえました。
「気分は」
「もう少し安いむ」
「水を飲もう」
「うん」
剛は自販機でペットボトルの水を買ってきて飲ませました。
「ありがとう」
由美はにっこりとほほ笑みました。
オジサンはまだ朝ご飯にありつけないでいました。
味噌汁で冷やご飯でも食おうか。
味噌がないの、それじゃあワンで作る澄まし汁で食べよう。
オジサンは、お湯を沸かし始めました。
「掃除は終わったの」
オバサンの怒鳴り声が響きました。
「やるよ」
オジサンがつぶやくと
「何だその態度は、働かざる者は食うべからず、というのが社会の決まり事だろ」
「はい」
オジサンは情けない、と足を引きずってご飯をよそいました。
オバサンは、
「冷蔵庫の中のもやしを食べておけ」
と叫びました。
おじさんは冷蔵庫を開けると、ボイルしたもやしが一袋冷たくなっていたので、これを生か、
オジサンは、お茶漬けの具にしてしょうゆをたらせば立派なおかずだ、とおもってようやくひるをたべました。
「おう、これか」
「うん。例の」
「え」
「例のよ」
「食べるか」
「うん」
「クリームがたくさんだな」
「マロンとイチゴよ」
「え」
「いいでしょ紅茶よ」
「贅沢過ぎないか」
「いいの、稼ぐから」
「え」
「稼ぐのよ」
「俺が」
「そうよ」
「へーおれが」
「当り前よ、家族が増えるの」
「え」
剛は思わず立ち上がりました。
「驚かなくていいでしょ自分のしたことよ」
「うん、まあ」
剛はコリーのリードをもって広場を一回りしました。
明日の現場は、コンクリートの基礎だな。
「今夜は、肉じゃがで」
「うん」
由美はにっこり笑いました。
剛は、明日の準備で靴を手入れしました地下足袋の底も確認しておきました。
オジサンは、本を読み終わって坂道をちゃんと下って家に着きました。
「遅いぞ、イカは買ったか」
「イカ、蟹は買いました」
「馬鹿腐らす気かイカでいいんだ」
オバサンは、頭のてっぺんが燃え上がっていました。ものすごい勢いで右手の拳を上げて走ってきました。
するとキツネが
「コーン」
と鳴いてオジサンの道を消しました。
オジサンは消しゴムを落としたかなと思って消しゴムを探しました。
あった。道の石に挟まっていました。
オジサンは消しゴムを拾って、目の前の景色を消そうと消しゴムでこすりました。
するともう一枚下の広場が広がっていました。
緑の森が広がっていました。
大きな川の流れの真ん中で大きな岩が空を向いていました。
船がゆっくり船頭の竿で、下っていました。
二人の若者が乗っています。
楽しそうに笑っています。
オジサンは、本のページをもう一枚めくりました。
若者たちは。
若者たちは、
生活するでしょう。
私もご飯を食べて一日を過ごしていくでしょう。
オジサンは消しゴムをポケットに入れました。
消しては書いて消しては書いて、いくでしょう、
「コラー、早く掃除とゴミ出しをやれ」
「はーい」
オバサンは怒鳴り声です。
やばい。
オジサンは家に戻って、便所掃除を始めました。
「次は」
「風呂をやります」
「次は」
「はい台所をやってゴミ出しです」
「袋は」
「一枚丈夫にくくります」
「次は」
「お湯を沸かして、ご飯の準備です」
「早くやれ」
「はい」
恐ろしい朝が始まりました。
緑の森は風に揺れています。
キツツキが起きて樹をたたいています。
寝ていた虫さんは慌てて飛び出して桜の葉の上に乗りました。
小鳥のさえずりが心地よく響きました。
私は今日もゆっくり散歩します。坂道を上って街を見下ろします。
道のそばの小川のせせらぎがボゴボゴと歌っています。
緑の葉っぱは、アリの船頭が、漕いで流れを泳いでいます。黄色い花が揺れています。
白い花が咲いてきました、薫り高い、ハーブもたくさん葉を揺らしています、
向こうから若者二人が手をつないで歩いてきました。
「オジサンお早う」
「お早う」
二人は今日もここを歩いています。
オジサンは坂の上のベンチに座って、街を見下ろしました。
オジサンは本のページを一枚めくりました。
朝は恐怖と希望をまとめて持ってきました。
戦いと平和が一緒に歩いてきます。
オジサンは二行読んで本を閉じました。
見下ろした街から電車の音が聞こえてきました。
オジサンは経ってから、ゆっくり振り返ると若者たちは手をつないで歩いて、坂道を下っていました。
ブロック塀の向こうから大魔王がにらんでいます。空の上で観音様が微笑んでいました。
オジサンは、ゆっくり歩き始めました。
緑の森が青く燃えています。
ブロック塀のコケも緑が濃くなっていました。
苔の間をカタツムリがもう歩いています。
赤いつつじはコガネムシと遊んでいます。
藤棚に熊バチが止まっていました。
オバサンは慌てて道を引き返しました。
オジサンは坂の上のベンチに座って、今日はスケッをはじめました。ようやく描きました。
オバサンは、
「おい、まだ何もやってないぞ」
と家のソファーで、ピーナツをかじりながら怒鳴っていました。
オジサンは背筋が凍って、街を眺めていました。
オジサンはしばらく振り返らないでいようと思いました。
街の向こうに、海が広がっていてその向こうに富士山が鎮座しているのが見えました。
オジサンは、また今日も、と考えましたが仕方のないことだと思いました。
オジサンは若者の背中が消えていくのをゆっくりと眺めていました。
白い虹の橋が架かっていました。虹のふもとにはつつじの茂みが、広がっていました。
オジサンは6Bの鉛筆をゆっくり削って、白い虹か、描いてみよう、二人の若い人影もいいなと思い描きました。
オジサンはここに毎日来てるのは、どうしてなのか。
坂道を苔の壁を見ながら上ると、そこに自分の場所があるのはなぜなのか。いつ頃からここに来るようになったのか考え始めました。そうだ、ここに新聞紙を挽いて、寝っ転がったら、見えてくるのかもしれないと思いました。
オジサンは、そう思ったら、汗をかいてきました。寝転がったら私は立つことができない。100年この丘に寝転がっていてもたつことができない。オジサンは坂の下の洋食屋さんに入ってみようと思いました。壁のある路地を抜けて。角を曲がったところの居酒屋さんに入ってみました。オジサンは、いつもの、と思いましたが、いつもの席は無くなっていました。オジサンは仕方ないので店を出て、海辺のそばの路地を歩いていきました。道の両脇には、灯篭のような明かりがともっていました。オジサンは、お祭りが始まったんだと思いました。縁日が、にぎやかに始まっていました。オジサンは、そうだお面を買ってかぶろうと思って、縁日の店に寄りました。ひょっとこ、おカメ、赤鬼に、青鬼に、あれ黄色い鬼と黒い鬼がいない、白鬼は、竜の顔を、額に付けていました。オジサンは白鬼のお面を買ってかぶりました。白鬼になったオジサンは、まだまだ歩いていけるぞ、と思いました。オジサンは川にかかる橋の下にある焼き鳥屋さんに入って、なぜか、「釘はないですか」と聞きました。オジサンはしまったと思ってもう一軒向こうの屋敷に向かいました。オジサンは、商店街の入り口の書店に入りました。すると本屋の奥が深くて天井まで届くほどの文庫本が並んでいました。オジサンは、スピノザの本を探しました。御いつまでたっても目当ての本棚煮たとりつきませんでしたすると一羽の青い鳥が飛んできて、オジサンをこっちにこいと案内してくれましたオジサンはいつの間にか飛んで書店をめぐっていました。オジサンはもうここから出れないのかなと思いました。朝の光が天井からさしていました。
オジサンはもう一度丘の上に帰ろうと、書店の出口を探しました。大きなエレベーターにのって一階に行こうとしましたが三階でとまりました。オジサンは下りて階段を探しました。
「おじさん」
「ああ」
「また明日」
若者二人は森の道を歩いて進んでいきました。
オジサンは、玄関を掃除をしようと思って家に帰ることにしました。
「いつもどこに消えてるんだ、まだ掃除とご飯ができてないぞ」
オバサンはソファーでお菓子をかじって、怒鳴りました。
オジサンは背中を向けて、玄関とお風呂と便所とキッチンの掃除をしてゴミを袋にまとめて捨てに行きました。
商店街の本屋さん、あんなに広くてデパートみたいなのが、この町にあったんですか。いつの間にかできていました。スピノザの世界が突然また現れたみたいです。あの若者二人は、森の湖のほとりを歩いてるんだろう。オジサンはトーストサンドとコーヒーを淹れて、オバサンを「出来たよ」と呼びました。オバサンの返事がなくてまたソファーで寝ていました。またやったか、とオジサンは焦って叔母さんの体をゆすって起こしました。オバサンは、「朝は食べたよね」とまた寝ぼけていました。「出来たよ」
オジサンはオバサンを寝かせておいてダイニングのテーブルに向かって一人で朝食を済ませました。しばらく静かな時間の中を楽しもうと思いました。オジサンはカーテンを開けて、グランドの緑の木々が揺れるのを眺めていました。
オッジさんは新聞を読んで、コーヒーをもう一杯飲みました。グランドの木の緑は、大きな生き物のように動いています。遠くから犬の鳴き声が聞こえてきました。若い女性がリードを持って走っていきました。オジサンは、少しうとうとしました。
「もう食べたの」
オバサンは起きてテーブルに座ってミルクを飲みました。テーブルの上のシャクヤクの花がめいっぱいに開いて、朝を祝福していました。
オジサンは、もう一度商店街の本屋に行ってみようと思いました。
「どこに行くの」
「ちょっと」
と言ってオジサンは商店街に向かいました。
入り口のクスノキが、大きく揺れました。
オジサンは昨日このあたりで見つけたんだけど、
と思ってビルを探しましたが、消えていました。
オジサンは楠を見上げると、てっぺんの枝から仁王がこちらをにらんでいました。
オジサンは、昨日だけの店か、やっぱりお祭りの出店だったかと思って、仕方ないので以前からあるショッピングモールの書店に行きました。
オジサンはスピンノザのエチカを読んでみたいと思ったのです。なぜか、読むべきこの本を読んでいなかったのです。ローマ教皇がなくなってコンクラーベの準備が進んでいるこの時に、ユダヤもイスラムも、東方教会も、こぞって戦争をしています。スピノザに聞いてみたら落ち着く気がするのです。オジサンは楠の中央あたりに深い穴があるのを見つけました。オジサンは、ここか、と思ってよいしょと穴に入りました。するとエレベーターが開いていきなり7階まで行って止まりました。ドアが開くと昨日見た本棚のタワーが並んでいました。オジサンは部屋に入って、たぶん向こうだと思って本棚の間を歩いていきました。すると青い小鳥がまたやって来て、「飛べるからついておいで」と言ったのでオジサンは、ジャンプすると本棚の通路を飛んでいきました。小鳥は、「ここだよ」と奥の棚の前で止まりました。するとそこにスピノザのエチカの背表紙が見えました。おじさんは「ありがとう」と言って、一冊取り出して、カウンターに持っていきました。「お客様これはお買い求めができません貸し出し本の棚の本です。神社ですから宗教関係の本は貸し出しになります」「へー」オジサンは感心して、「借りていいですか」と聞きました。「はい」「これに記入してください。オジサンはカードに住所と名前と電話番号を記入して本を借りました。オジサンはエレベーターに向かって、一階のボタンを押しました。するとまた三階で止まってオジサンは、また階段に向かって、店を出ました。振り返ると楠の上の仁王が、
「おまえのたくらみは、阻止するぞ」
とにらんでいました。オジサンは丘の上のベンチで読もうと思いましたが、雷の音がしたので、家に帰ることにしました。仁王やってくれたな、とオジサンは思いました。オジサンは、そこまでするならと怒って、楠のてっぺんまでジャンプして仁王をにらんでやりました。オジサンはついでに仁王の頭をげんこつで、ごつんと殴りました。
仁王は、
「おー」とどなりました。声は向こうの国の谷底にまで響いていました。
オジサンは、
「うるさいぞ」と仁王をぶちました。すると仁王はこん棒を振り上げて。オジサンを打ち飛ばして地獄の底に突き落としました。
「地獄の沙汰の時だ、金次第だぞ。わしは金などないが借用書はしっかりあるぞ、借金地獄だー」
オジサンは叫びました。
オジサンは血の池地獄で、
「いい湯だなハハハハ。と歌い始めました」
オジサンは仁王の足元まで這い上って。
「腹減ったぞーと怒鳴りました。キツツキが慌てて穴から飛び出しました。
チャリーン、さい銭箱の音が鳴りました。すると若者二人が手うつないでお参りしていました。
「チクショー」
オジサンは涙目で怒鳴りました。
「あれ、今」
「聞こえたよ」
「おじさん」
「また叔母さんに怒られたのよ」
「可哀そうに」
「そうね」
それを見ていたオジサンは、くそーとつぶやいてぐすっと泣きました。オジサンは、雷じゃあ坂の上のベンチに行けないな、広場の東屋には屋根があるからそこで本を読もう、と思って、広場に向かって歩いていきました。
オジサンは、広場に向かう途中、空を見上げました。青い空でした。仁王のやつ、脅かしてくれたな、血の池地獄で風呂に入ったのでちょうどいい天気になった。オジサンは東屋はあきらめて広場のベンチに座ってゆっくりと本を読みました。あ、また来たな、チワワオジサン、リードを引っ張って怒っているのに、おしっこを平気でわしの足元にさせて平然と歩いて行きました。オジサンは、犬ひげ爺と名付けてやりました。
「なにか」
お、ヤバイ聞かれた。
オジサンは慌てて
「いい天気ですね」
と笑顔を返しました。
「花子」
「え」
「こいつの名前です。呼んでやってください」
「ええ読んでるんですよ、私の足元が水浸しなんです」
「しくじったんですか」
「こら。花子」
オジサンは呼びました。
「わん」
「ではまた」
犬ひげ爺は、悠然と歩いていきました。
「あら」
指差しオバサンが指をオジサンの足元を刺しました。
オジサンは、
「あいつです」
と、チワワを指さしました。
オバサンはチワワを指さしてうなずきました。
オジサンはここは臭うから、広場の向こう側にあるベンチに行こうと本を閉じてベンチを立って向こうのベンチに歩いていきました。
オジサンはもう一度ベンチに座って、
本を開きました。青い空に、雲が浮かんで泳いでいました。雷はもう気k萌えません。
オジサンは広場をゆっくり眺めました。
広場ではお祭りが始まりそうです。子供たちが元気にスケートボードをけって遊んでいました。
「いきまーす」
「待ちまーす」
男の子たちの笑い声が響いていました。
緑の森で白い花が甘い香りを放って、ゆっくりと揺れていました。
純子は、
「かけっこよ」
「うん」
剛は純子の手を握って広場を大きく一周しました。二人は喉が渇いたので、自動販売機でペットボトルの水を買って、一本を分け合って飲みました。
オジサンは腹が減ったのでオバサンに中華にしようと言って中華屋に向かいましたが残念ながら休みだったので蕎麦屋に入って、鴨南そばを食べました。そのあと歩いて、三件となりのパン屋まで歩いて、そのあとまだゆっくりと歩いて、水芭蕉が咲いているのを眺めていました。
オジサンは、広場から坂の上のベンチに向かいました。
見下ろした町は、活気づいた街です。駅から続く商店街には、沢山の人が買い出しに出て居るるのが見えてきました。オジサンは、ゆっくり本を読んで、街に出かけて散策してみようと思いました。オジサンは町の商店街で、せんべい屋が三件と喫茶店が一軒とうどん屋に蕎麦屋に、洋食屋さんがあるのを確認しました。すると向こうからこちらを向いて指をさしているおばさんが歩いてきました。オジサンは、なんだと焦って振り返って歩き始めましたするとオバサンが横を通って、おじさんをゆびさして、「問題なし」と言って通り過ぎました。オジサンは目を丸くしてキヲツケをして歩きました。あれ歩き方がおかしいぞ、オジサンは一度止まって通りの先を呆然と見ていました。本屋さんとレコード屋さんが消えた。角の団子やは、ケンちゃんの実家で、昔から、居座っているよと言っていた店も消えていました。団子やの鶯団子は、中に白あんと緑のきな粉と、みたらしと、こし餡の団子で、地小さくても腹持ちするいい団子で舌。うまいかどうかは世間の評判では全く出ていませんでした。オジサンは、鶯団屋で、ぜんざいを頼んで、お茶を飲んで、商店街の散策を続けました。オバサンが「こら、かき氷を食べろ」と怒鳴るので、オジサンは、屋台でレモンシロップのかき氷を頼んで、食べました。
オジサンは口を開けて舌が黄色くなってるのを確認して、むしょうにわらいがとまらなくなって、くちをあおぞらにむけて、
「どうだ黄色と青だ。参ったか、と心の中で、叫びました。オジサンはお腹を抱えてしばらく大笑いしてました。
「変なおじさんだ」
「逃げろ」
キックボードの男の子たちが真剣な顔で逃げていきました。
オジサンは、
「どうだ」
と言って笑いました。
すると口の中にしょっぱい水が落ちてきました。
空に白いハトが飛んでいました。
オジサンは、黙ってベンチに座りました。
そして本を読み始めました。
ベンチに缶コーヒーを置いていたのをは忘れていました。
オジサンはおっと思って飲もうとしましたがアリが、缶の上に登っていました。
オジサンは、いいえいようげんだとおもいましたが、缶をベンチにおいてアリが降りていくかどうか観察していました。
アリは缶の天井を一周して何を思ったか、缶の縁の壁を上って、降りていきました。こいつ仲間を呼ぶのか、と思ってしばらくありの向かうほうを見ていました。アリは広場の脇にある、植え込みに向かって歩いて言って壁を上って向こう側に降りていきました。しばらくするとアリは壁に戻って来て、後ろを振り向きました。すると数匹のアリが壁の上に顔をのぞかせました。オジサンは、来たな、と思って缶を持ち上げてコーヒーを飲みました。そしてオジサンは、缶を回収ボックスに入れました。ベンチに戻ると数十匹のアリが仲間の跡をうろうろと歩いて浮いました。
「残念だったな」
オジサンはそう言って、ポケットから、キャラメルの包み紙を取り出して、ベンチの上に載せました。
風が吹くとまずいと思ってオジサンは小石を拾って、キャラメルの紙を押さえました。紙の端にはky羅メルが解けて固まった山ができていました。すると小さなアリがやって来て、数分もたたないうちに長い行列を作りました。オジサンは、これはまずいと思って紙をゴミ箱に丸めて捨てました。アリの行列はしばらく続きました。都会の交差点の人間の、動きと同じだなとオジサンは思いました。人間もアリもやっていることは同じか。オジサンは長い論文の本を一冊読んだような塚軽い疲れを感じました。広場には男の子たちが戻って着てキックボードで駆け回っていました。オジサンは、ベンチに座って、足を組んで、借りてきた本を読み始めました。
「おじさん、その本は」
「ああ」
「古本屋さんで見た赤い表紙の本」
「そうだよ」
「読むんだね」
若い青年が声をかけてくれました。
「ああ」
「良かった見つかって」
「買いたかったんだよ」
「おじさん」
「ああ」
口をあけて笑っちゃあだめだよ。
「ああ」
「おじさん、どうして笑っていたの」
「心から楽しいときは笑うんだよ」
オジサンはまた楽しくなってきました。
オジサンは、青年の後ろ姿が空を飛んでいるのを見つけました。青い鳥でした。
おじさんは、本を読んできるだけ早く本は返そうと思いました。やはりこの本は、ノートを用意して、書き留める言葉もいくつかありそうです。
オジさんは、ベンチに座って本を読んでノートに、
全能の神は自然の中で自然を生成させた。
という一行をノートに書き留めました、
待てよ、原語はどうなんだと思ってオジサンは、自分は語学ができないのをうっかり忘れていたと思いました。
剛と純子は、オジサンが本を読んでるのを見て、
「始めようか」
「うん」
と言って、二人は植え込みを耕し始めました。
大根の種、オクラの種をまいておきました。
もちろん許可はもらっているので、市民菜園、一号の札を立てました。
二人は広場の水飲み場に行って蛇口をひねって、手と足を洗って、顔を洗ってタオルで拭きました。
「明日は雨よ」
「そうか」
剛は、ちょっとと思って、菜園にもどって、畝を、固めて大きました。
純子は、タオルを濡らして絞って、剛のほうに向かいました。
剛の額には大きな汗の粒がいくつも輝いていました。純子は剛の顔を、ゆっくり丁寧に吹きました。
「脱いで」
純子は言いました。
剛はTシャツを脱いで上半身裸になりました。
純子はタオルを渡して、剛は体を拭きました。
「あーすっきり」
剛は思わず大声で言いました。
「変な兄ちゃんたち」
「逃げろー」
男の子たちは一斉に広場から逃げ出しました。
純子は剛に、白いTシャツを渡しました。剛はそれを着て。
「おーい一しぃしょに遊ぼ」
「イーイーよ」
「鬼ごっこ」
「かくれんぼ」
「三角ベースボールだ」
一対五じゃあ試合にならないよ、
「お兄さんに二人、来てくれれば、三対三でできるよ」
「ずるくない」
「一人減らして」
「いいよ」
剛は子供たちと二対四で広場で三角ベースボールを楽しみました。純子はそれを見て手をたたいて笑っていました。
オジサンはおお、そうかと思って広場をゆっくり眺めて本を読み始めました。
剛は男の子たちと、一緒にボールを拾って走りました。
「兄ちゃん下手だな、こうやって投げるんだよ」
男の子たちはいらいらした顔でふくれていました。剛は、ボールをとってお手玉にして見せました。
「すげー」
男の子たちは目を丸くして、手をたたきました。
「でも野球は下手だね」
剛はvサインで笑いました。
オジサンは本を読んでノートに3ページ分メモをしたところで、丘の上の静かなベンチで読むことにしました。
オジサンは、丘の上に続く道をゆっくり歩いていきました。ブロック塀の上で黒猫が歩いていました。猫は鬼の顔の石燈籠の石の中に入って、いい気持で寝ていました。今日は、食い物にありついたんだな、とオジサンは思いました。楠の上では天狗が腕を組んで、川向こうの街をにらんでいました。イノシシの軍隊が動き始めていました。天狗は鋭い目で見てピクリとも動きませんでした。オジサンは丘の上のベンチについて、街の中央を流れる川を見て黒い獣の影がたくさん泳いで渡っているのを見ました。オジサンは、ベンチうに座って本のページを開いて読み始めました。ポケットから鉛筆を取り出して、ノートと一緒にベンチの上に置きました。オジサンは、もう一度川を見下ろいしました。
オジサンは、そろそろ部屋に帰って一休みしようと思いました。緑の新緑に赤や白のつつじが、笑っていました。
グランドから、少年野球の声が、一日を通して響いてきます。オジサンは驚きました。川を渡った獣たちの黒い影が一斉にグランドに駆け込んでいったのです。よく見るとイノシシでした。少年たちは、
「オー、すげー」
「やっちゃいまーす」
「いきまーす」
と言いながらイノシシの頭を野球のボールに見立ててバッティング練習し始めました。
イノシシは、バタバタと倒れてしまいました。
「もっと遠くへ行け」
「今のはホームランだぞ、もっと走っていけ」
少年たちはヤイヤイと大声でイノシシたちを競争させて走らせました。
それを見ていたオジサンたちは急に、赤鼻一号、青鼻一号緑鼻二号、紫鼻二号黄鼻だ。
大人たちは、掛け金を決めて、高額な券を販売しました。イノシシたちは一斉にスタンドの奥を目指して土煙を上げてはしていきました。
オジサンの中には、予想屋を始める人もいて大盛り上がりです。
少年たちは何が起こっているのかわからないまま、試合の練習を続けました。
「走れー」
「イケイケ」
少年たちはヒットが出たので立ち上がって声援を送りました。
オジサンたちはそれを見て、はっとして、賭けはやめました。
オジサンたちは、
「どうする」
と顔を見合わせました。
「イノシシ鍋にするか」
「わなを仕掛けるか」
「犬ひげ爺の花子を借りて、わなに追い込もう」
「罠は、忍者オジサンがいたろ」
「お前知っているか」
「そういう人がいるのは聞いたっことがある」
「それじゃあ、茂呂神社の宮司に聞いてみるか」
「殺生だがいいだろうか」
「捕まえるところだから、それから殺生するのは気にせんだろう。
でもすごい量のイノシシだ」
「だから一頭見せしめにしておくんだ」
見ろ向こうの森で、ドングリや草を食べてるぞ」
「草刈りの手間は省けるからもう少し置いておくか」
「子供が危ないだろう」
「とにかく犬ひげ爺と宮司に聞いてみよう」
オジサンたちは、ぞろぞろと歩き始めました。
オジサンたちは、宮司にマタギの人を紹介してもらって犬ひげ爺の花子に仕事を依頼しました。
「おい、日当はどうするよ」
「そうだな税金を使おう」
「市長に談判をしに市役所に行こう」
グランドでは少年たちが真剣に野球の試合をしていました。
オジサンたちは市役所に並んで向かいました。市役所に着くと大勢の人が窓口で、並んでいました。
「イノシシのことですが」
「え」
「マタギと犬の飼い主の日当を出したいんです」
「何ですかそれ」
「今すぐ警察と一緒にグランドの森に行けば分かります」
「え」
「おう」
「おう、市長、イノシシに荒らされるぞ」
「ちうとうきたか」
「とっくによ」
「それなら緊急体制bで対応するぞ、ごくろうさん」
「何じゃ、その上から目線の落ちこぼれが」
「すぐに行くから」
「ほら、まだ少年野球をやっているだろ」
オジサンたちは市長をにらみました。
職員が席を立って、
「まあまあ、落ち着いてください、すぐにやります」
「なんだすぐやる課はまだあるのか」
「はい」
「頼むぞ」
「はい」
っ職員は作業服に着替えてサスマタを手に持って、グランドの森に向かいました。
オジサンたちは、グランドに向かって、途中で、ここでやるかと言って円陣になってラジオ体操を始めました。
「一、二、三、四、五、六、七、八」
オジサンたちは円陣になって号令をかけてラジオ体操の一番をを始めました。
終わると、
「二番は覚えとるか」
「ああ」
オジサンたちはそのままラジオ体操の二番を始めました。
オジサンたちはそのまま並んでグランドの森に向かいました。
市の職員は、わなを仕掛けていました。オジサンたちはイノシシを罠のある草むらに追い込んでいきました。
「ピエーン」
一頭のイノシシが罠にかかったようです。
職員はイノシシの足を縛って、大きな木の枝にチュウ刷りに、しました。するとイノシシたちは並んで歩いて川のほうに向かいました。
おじさんたちはイノシシが残っていないかグランドの隅々まで、確認作業をやりました。
「おじさーん」
「わたしたちもやるわ」
剛と純子は、ようやく起きて騒々しいのでグランドに来たらオジサンたちが大量にイノシシを探してるのに気づいて、驚いて手伝うことにしました。
オジサンたちは、イノシシを吊るして。下から眺めていました。大口を開けていたら鳩が飛んできてクックルーと糞を落としましたオジサンはパクッと食べてしまいました。
ごくっ。
オジサンは目を丸くしてしまいました。
イノシシはしばらくつるされて、お漏らしをしてしまいました。
それを見ていた仲間のイノシシは、なさけないのう、と大声で言って、川のほうへ一列になって歩いていきました。みんな頭を下げて、走る気力もうせていました。
オジサンたちはそれを見て、子供たちに、夕陽が降りたら家に帰って夕ご飯食べろよ、と言いました。
「やったー」
「いけいけ」
「セーフ」
「おー」
野球はまだ5回でした。
役所の職員はにっこりとしました。
イノシシたちは、川にたどり着いたら川岸に横一列になって、隣の誰かが飛び込むのを待っていました。ファーストペンギンが出てくるのを待っていたんです。川面に月明かりが出てきたときたまらなくなったイノシシが一頭、
「お腹すいたよー」
と大声を出して川に飛び込みました。
それを見ていたイノシシたちは、
「腹がすいては泳ぎ切れんな」
と顔を見合わせて川岸の草を食べて、
「俺ドングリをためておいたんだと一頭のイノシシが自慢げに口を動かしました。
「ずるがしこいな」
「ああ優秀な人間しか生き残れないんだ」と自慢げに言って、振り向いたとたんに口の中のドングリが全部飛んでいきました。
「おおお前優秀だな、全部捨てたじゃないか」
川の中を泳いでいたイノシシはもう少しで向こう岸に着くところでした。
あいつら何してるんだ、暗くなったら泳げないぞ。と思って岸に上がりました。そして草をゆっくり食べて横になって寝ました。
仲間のイノシシたちは街灯が川を明るくするのを待って、誰かが飛び込むのを待っていました。
「魚だ」
一番右端のイノシシが捕まえるぞと思って川に飛び込みました。すると川に仕掛けられた網に足をとられてあわ行ゆくおぼれそうになりました。仲間のイノシシは一斉に川に飛び込んで、網を破りながら網の上を歩きながら川を渡っていきました。イノシシたちはようやく対岸に渡りつきました。そして横一列に並んで向こうの森を眺めていました。
「あっちはもうういかん」
「怖いの」
「でも、ドングリはうまいからもう一度行こう」
「またやられてもいいのか」
イノシシたちは、ずっと対岸の森を眺めていました。
オジサンは、もう一度帰って、夕飯にしよう、と思いました。
ようやく街灯がともりました。
オバサンが、
「何やっているの、またしくじったか」
と怒鳴りました。
少年野球の声はまだ響いていました。
ようやく7回の裏になったようです。
やがて夕陽がグランドの向こうの森の先に沈んでいきました。
オジサンは、もう一度本を読もうと思いました。
丘の上に続く道を歩いていきました。
オジサンは道の途中で一度休みました。丘の上には虹がかかっていました。オジサンは虹の橋を渡ってみることにしました。虹に座って本を読みました。
そしてノートにもう二行言葉を書き留めました。
「ゴミ捨てはどうした」
「はい」
「便所掃除」
「はい」
おじさんは、お茶漬けでも食べれたら幸せだ。
あーあ、とうとうわしも捨てられるのか。
と思いました。
剛は、野菜を買いに出かけました。森の向こうの野菜屋さんは今日もたくさんの新鮮でおいしい野菜を並べていました。
剛はジャガイモと人参とキャベツに玉ねぎ、そしてイチゴ一パック飼うことにしました。
剛は今日は肉じゃがにししよう、純子も食べるだろう、と思って買って帰りました。
純子は、横になって剛が出かけたのを見送っていました。少し起きて歩こうと思ってゆっくりと立ち上がりました。
キッチンに立ってみそ魚汁の準備をしました。
もう今日も夜になるのね。
純子はにっこりと笑いました。
剛は野菜を買って隣の肉屋さんで豚肉とミルクを買って帰りました。
「ただいま」
「おかえり」
二人はキッチンに並んで夕食の支度をしました。剛はミルクをコップに注いで純子に渡しました・
「ありがとう」
純子はにっこりと受け取ってゆっくりミルクを飲み干しました。
二人はキッチンで夕食を作るとテーブルに並べて、ご飯をよそって、並んで食べました。
「「明日僕は、仕事が早いけど」
「うん」
「気を付けてね」
「うん、剛も頑張ってください」
二人はゆっくり夕食を食べました。
オジサンはまだ虹の上で本を読んでいました。
オジサンは、イノシシが川を渡るのを眺めて、もう来るなよと言いました。
虹の上は静かで風のない空には星が輝いていました。虹に座ったのはいいけど立てそうにありません。
これはまずいとオジサンは思いました。オジサンは、本をめくって、帳面に、君子危うきに近づかず、と書きました。
剛と純子は食事を終えてゆっくりと夜を過ごして眠りにつきました。
オジサンんは仕方ないのでそのまま横に腰をずらして虹の橋を渡ることにしました。流れ星が、横切って飛んでいきました。
「お祭りだよー」星が言ってくれました。オジサンはゆっくり虹を渡りました。今日の一日が過ぎて明日がやってきそうです。
オジサンはお祭りに行ってみようと思いました。楠の杜でタヌキが太鼓を打ってちんちんと鈴を鳴らしていました。オジサンは、縁日の店で。焼きそばとラムネを買って食べました。いい一日だなと満足な顔をしました。
「また買い食いか、金はよこせ」
オバサンの怒鳴り声が聞こえてきました。オジサンは、背中がぞくっとしました。縁日に来ている人は半そでのシャツや浴衣で涼しそうですが、いけない悪寒、だ。二重焼きを食べて温まろうとオジサンは思って買いました。オジサンは囃子の鳴る法に向かって歩きました。そこでは街の人たちが、円になって踊っていました。
「おいでよ」
指差しオバサンと犬ひげ爺が、手で、誘ってくれました。オジサンは踊りの輪に加わって、見よう見まねで踊りました。楠の上の仁王が、オジサンをにらんで、太鼓をたたいて雷を落としました。
「あ、チー」
オジサンは悲鳴を上げましたが踊りの輪は何事もないように動いていました。仁王はそれを眺めて、笑いました。すると大国主命がやって来て仁王に剣を突きつけて、「無駄に雷を使うな」と、にらみつけて怒りました。それを見たオジサンは、「調子に乗りすぎだよ」とつぶやきました。大国主命は、火の神に祈って薪を始めて、森を温めて明るくしました。町の人々は大歓声を上げて踊り続けました。すると流れ星が、太陽が近づいてきたよとみんなに伝えました。踊りの輪はますます勢いがついてきました。お祭りは夜明けまで続いていきます。オジサンは、まずい朝帰りだ。また便所掃除からの一日が始まる。オジサンの背中は、またぞくっとしました。
かえったらおばさんがまたどなって、掃除にゴミ出しに洗濯から始まってようやく夕飯を食べることになりそうだ。
大国主命は、天狗をにらみつけて、剣を振りつけて、天狗の霊能力を消しました。オジサンは、これは絶好のチャンスと思って天狗の頭をげんこつで殴りました。大国主命は、無意味に殴った底の男、
「えい」と言って打ち出の小槌で頭を殴りました。するとオジサンは、猿になってしまいました。
「ウキッキー」
オジサンは、はしゃいで柿の木の上に登っていきました。オジサンは、柿ではない果物を探しに向かいました。
オジサンは頭にきて、大国主命もげんこつで殴ってやりました。
「スイカを持ってこい」
「いつもタダでもらってばかりいて、本当にお前は神か」
オジサンは全く切れてしまいました。猿で生きるのか、わしはもう終わったの。
「うっきっきー」
オジサンは自由に飛び回りました。そして大笑いしました。するとお巡りさんが着て、網で捕まえようとしたのでオジサンは屋根の上に隠れました。大国主の尊は、もっと懲らしめてやろうと言ってまた打ち出の小槌でオジサンの頭を殴りました。オジサンは石になって、道端に立っていました。するとまた犬の花子が来て、足元にしょんべんをひっかけました。指差しオバサンがやって来てオジサンを指さしてうなづいたらオジサンは人間に戻ることができました。やっと戻った。オジサンは何でこうなったのか、わからないでいました。とにかく帰って掃除から始めるしかないなと思ってオジサンは家の玄関を開けてトイレ掃除と風呂掃除をして、ゴミ出しをして、洗濯をしました。
「やればできるじゃあないか、ところでどこに行っていたんだ」
オバサンが、血相を変えて怒鳴っています。
これだからな、オジサンはついでに、草むしりもしました。もう昼は過ぎてしまいました。オジサンは、やってしまったもう夕方だとはっとして目を覚ましました。オジサンは朝縁日で食べたん野で夕飯を食べて寝ようと思って、キッチンのテーブルで本を読み始めました。夕陽が長く部屋に押さしてきました。オジサンはもう一度部屋の掃除を始めました。そしって本を読んで、
奇々怪々と帳面に書きました。そしてオジサンはコーヒーを淹れて飲みました。ドーナッツがあったなと思って探して食べました。
オバサンは、
「こらそれは明日のだ」
と怒鳴りつけました。
オジサンはすでにドーナッツをパクッと口に入れたところだったので思わずのどに詰まりそうになったのでコーヒーを飲みましたが最悪なことにしっかりむせて沿いまいました。オジサンは慌てて帳面と本を閉じました。オジサンは五分してやっと落ち着きました。今のは死神が見えた。今日だったのかと思いました。
「もう食べちゃいました」
「わかっているよ。仕方ないサッサと皿洗をやれ。気が付いたら夕食の跡がキッチンにたまっていました。オジサンは今日はやっぱり夕食も食べれないまま寝るんだなと覚悟を決めました。オバサンはソファーに座って、アイスを食べて、せんべいをかじってました。
「夕べお祭りだったの」
ぎく、オジサンはまた背中に悪寒が走りました。
「美味しかったの」
「え」
「食べたでしょ、焼きそばとかフランクフルトとか、ラムネも飲んだよね」
「え」
「またしらばっくれて」
「何でしょう」
「もういいよ、早く風呂掃除をして湯を淹れろ」
「はい」
オジサンは助かったと思いました。オジサンはすぐにふろ掃除をして湯船にお湯を入れました。
コンコン。
キツネがドアをたたいたようです。
「はい」
「オジサン機能の狸覚えてる」
「ああ、わしはその時ひょっとこの面で踊っていたんじゃがわかるか」
「そうだったの」
「オジサン狸汁の下でしょ」
「いや」
「タヌキが消えて、踊りができなくなって困ってるんだ一緒に探せよ」
オジサンは困りました。今夜は帰らないと、と思ったのですがオジサンは靴を履いてタヌキ探しに向かいました。
宮司のところに行って、
「タヌキはどこをさがせばいいですか」
と聞いたら、タヌキはいざ方で酔いつぶれて寝てるよ、きっと」
と言いました。オジサンは商店街の居酒屋に行きました。
「女将、タヌキは来なかったか」
「タヌキはいないがこちのおじさんの腹が立派でいい音が出そうだよ」
というので見てみるとか大真っ赤にして椅子にねそびっているオジサンが一人いました。オジサンは、
「タンタンタヌキの」と歌いました。
座っていたおじさんは、
「呼んだか」
と言っておきました。
「タヌキさん、一度神社に戻って太鼓をたたいてください。
「その仕事はもう終わってわしはいい気分で酒を飲んでいるんじゃ」
「ごめんなさい、キツネさんがとっても困っているんです」
「キツネのやつまた若い娘に化けたねたね。くそ婆姿であんたをだましたんだ」
オジサンは困って、
「狸汁には絶対にしないよ。
極上の味噌汁を揚げるから。
といっておねがいうしました。
「うぷ、みそ汁、酔いさましににシジミで」
「ええ」
「ネギも入れてくれ」
「はい」
オジサンはにっこり笑って杯を手にもって並々地と注いだ酒を飲みました。
「タヌキよー、囃子をお願いするよ」
「何じゃ」
「みんなが踊りたがってるから」
「縁日はもう終わったろ」
「キツネが」
「だからそいつが騙して喜んでいるんじゃ、しっぽでも切って、猫じゃらしにでも白八本持って、切れたら生えて来る奴じゃ」
「キツネのしっぽ切りは嫌だな」
「勝手にしろ、わしは飲み終わったら、寝る、次の縁日は明日じゃ」
「ああ。いることが分かったから安心したよゆっくり飲んでくれ」
「連れていかないのかい」
女将はなんだという顔でオジサンを見返しました。
「おいタヌキ、俺が酒を買ってくるから、しかも山形の大吟醸だ、一升、飲めるぞ、祠でのもう」
「おやうちに払いがないね」
「女将連れていくからわしのは付けておいてくれ、1000円でいいだろう」
「まあ、向こうでゆっくり、飲みな」
タヌキはゆっくり席を立ちました。
オジサンは酒屋に向かいました。
一万かかるぞと思うとぞっとしました。キツネめ、やっぱりしっぽを一本もらうぞ。
オジサンは一度家に帰って、
「いたよ明日の縁日でたたくそうだ」
「そうですか」
キツネは美人の生娘に成りすまして立っていました。
オジサンは、
「悪いが、一万使ってタヌキの機嫌を取るから、しっぽを一本頼む」
「また余計なことをして、一万か、働け」
オバサンは血相を変えてオジサンをビンタして一万円を渡しました。
オジサンは酒屋に向かって主人に、これこれこういうことで、と話して、
「悪いが2000円ぐらい負けてくれんか、と言ったら、5000円負けるからちょうど一万だと言って山形の出羽桜酒造の大吟醸の新酒を一本出してくれました。オジサンは一升瓶を大事に抱えて居酒屋に行って、女将に1000円払って、これとりあえず三人で開けて、祠でのもうと言って居酒屋で栓を脱いってコップ酒を三人で飲みました。
「美味しいねえ、あんた、またおいでよ」
「ええ、金が入ったら来ます」
「あんた苦労するね」
女将は皿にめざしを一本置いて出してくれました。
「ねえオバサンを泣かせちゃあだめだよ」
女将はもう一杯酒をコップにつで飲みました。
「やってますか」
「おわりだよ」
「あ、オジサン」
「君たちか」
「いいお酒があるから場所を変えて飲もう」
「何だ知り合いかい、ポテサラをもっておいき」
「女将もくればいいのに」
「片付けがあるからね」
「それじゃあ、また」
「杜の祠にいるから」
タヌキとオジサンは剛と純子と並んで一升瓶にポテサラを抱えて歩いていきました。
「おいしっぽは」
「もらえなかった」
「馬鹿だな、一本10万はするのに」
「今度もらうよキツネは安心してて帰ったから今度の縁日頼むよ」
「気が向いたらな」
あー面倒だ。オジサンは、空を見上げました。もう星は消えて明るくなっていました。
「さあ飲もう」
「はいオジサン」
若者二人は疲れを知らない明るさでこっちを向いていました。
「コップ」
「紙コップですね」
「男性が、走っていきました。すぐに紙コップと割り箸を持ってきました。
「山形の、出羽桜の大吟醸だよほれ」
「オジサンは三人の紙コップになみなみと酒を注ぎました。
「オジサン」
と純子が一升瓶をとって酒を入れてくれました。
「それでは、二人の明るい未来と祭りの囃子の成功を祈念して乾杯」
「乾杯」
「面倒じゃの飲むか」
タヌキはぼやいて一気に飲みました。
さあポテサラもと言ってオジサンはポテサラを皿にと思ったのですが、無いから、
「おい、タヌキ、いい葉っぱはどれじゃ」
「今は桜の葉がいい香りでいい」
というのでオジサンは桜の葉を何枚かとってポテサラを取り分けて盛りました。
「いただきます」
三人は箸をと言って一口食べて酒をゆっくり飲みました。
「あーうまい」
「外の宴は気持ちいいの、ポンポコポン」
タヌキは気持ちがよくなって、腹太鼓を鳴らしました」
「あら腹の皮の張がいいねえ」
女将がやってきて、
「残り物だけど」
といって、おでんと唐揚げを大皿に盛って持ってきました。
「女将、今日はもう金はないが」
「いいのよ、また着て頂戴」
「怖いの」
「大丈夫よ」
「オジサンこのお酒どこでけるんですか」
「知り合いの酒屋に仕入れてもらっているんだ」
「何てスペシャルな」
「まあな、高級旅館でもなかなか仕入れられないものだよ」
「いいんですか」
「ああ、タヌキを喜ばせてやってくれ」
「タヌキ」
「ああこのおじさんだ」
「へー」
「おいそこの若いの、俺の言うことは聞くなよ、キツネが生娘に化けてお前を誘うから、ちゃんと相手にしてやれよ」
「エー絶対にダメー」
「そうだな、そこの若いの、お前がしっかりしてないとダメなんだけど俺の言うことなんか聞くな、自分で考えるだろうから」
「はい」
五人は夜が明けても祠で宴会を続けました。
「ええ、僕は考えました。狐にしっぽをもらって売ってやります」
「僕は純子を放しません」
「オジサンなんて馬鹿だ聞くもんか」
「おう、そこの若いの絶対に聞くなよ、浮気は絶対にばらすな」
「ばれないですよ」
「ばれてるよ」
バッゴーン。
純子はグーで思いっきり剛を殴りました。
「とっくにばれてるんだよ。由美って誰よ」
「えー、」
「いつも由美って呼んでいるよ」
「しまった」
「やったな」
「オジサン、飲もう」
「ああ」
「タヌキの世界でそれをしたら狸汁にされてしまうんだ、わしも一度やばかった」
「反省します」
「そこいらの若いの、やりたいことは今やれ」
「殺さないように、グーで殴れ」
「気持ち良くないよもう一発」
純子は、もう一度剛を殴りました。
「糞ー飲むぞ」
五人は夜明けに宴会を続けました。
悲惨な朝だ、またわしも殴られてしまうな、一日飯抜きだ。
オジサンは、情けがないの、世の中厳しいの。
「おい、わしは太鼓は叩かんぞ」
「えー、わしは叩かれてしまう」
「オバサンにな」
「どうしようもない」
わしは、
「死ぬー」
と叫んで泣いていました。
オバサンはソファーでせんべいを食べています、
オジサンはまた今日も駄目だ、人間でなくなった。
オジサンは、
「朝になった、わしはいぬる」
「犬か」
「ああ帰る」
オジサンは絞首刑台への道ゴルゴダの坂を上って帰りました。
丘の上はもうすでに太陽が昇って十字架の上が輝いていました。
オジサンはとうとうここで火あぶりかと覚悟を決めました。
ところでわしは、この宗教じゃあないぞ、山門のある所へ行かなければ仁王に会えんぞ、
オジサンは、丘の上に着いたのでベンチに座って本を開きました。
そして帳面に
南無阿弥陀仏と書きました。
そして護摩を焚くためにい小石で囲んだ炉を作って、折れた小枝を集めて、風の止むのを待って火をつけて護摩を焚きました。
オバサンのパンチがバッゴーンと飛んできました。オジサンは、耐えられないで、失神してしまいました。炉の火は小枝を焼き尽くして消えていきました。オジサンは気持ちよく寝ていました。
静かな湖に白いボートが浮かんでいて若い美しい姫が、ゆっくりくつろいでいました。若い、体のがっちりした船頭が美しい声でアリアを歌っていました。オジサンはその歌を聴きながら深い眠りに落ちました。
桃色の花が水面に映ってに、青い小鳥が、水面を横切りました。
するとキツネのしっぽがゆらゆら八本揺れているのが見えました。なんと白いドレスの姫のお尻から生えているものでした。オジサンは、慌てて河童を呼びました。
「何だ」
「やあ、久しぶり、キツネの霊術を解いてやってください」
「面倒なことを言うな、縄文の呪文を唱えればいいだろう」
オジサンは、縄文の呪文は知らないので「南無阿弥陀仏」
と唱えました。
「何、薄気味悪い。歌声が聞こえなくなるでしょ」
と言ってお姫様は日傘の柄で水をオジサンめがけて打ちました。
オジサンはたちまち、禿になりました。
あれ、これは、と思いましたが事はもう終わったっことでした。
オジサンはしまったと思いましたがまだ人間だから猿にされるよりは、ずいぶんましなことだと思いました。湖の鯉が虫を食べようと飛び上がって浜辺に打ちあがりました。オジサンはしめた、塩焼きができるぞと思いました、オジサンは考えました。ちょっと手間がかかるけどこんなに立派な頭付きの鯉は煮魚にするとご飯が進むぞと思ってオジサンは、網を火からおろして鍋を用意しました。こいつやっと食事にありつけたというのに、食べられてしまったら、さっぱりシャンシャン、じゃあないかと思いました。オジサンは、鯉をさばいて鍋で煮魚にしました。ご飯が炊けたころ魚の身もちょうどいいようなったので鍋の火を止めて、鯉の煮魚を青海波紋の平皿に盛り付けて、バジルの葉をみじん切りにして身の上に載せました。自分ながら春の一皿だなと思いました。フキの煮物もあったのでそれを皿によそってテーブルの上に置きました、
「できたか」
オバサンがむくっと立ち上がってテーブルにやって来て、いつの間にか箸をもってキレイに鯉とフキとご飯を食べてしまいました。
あれ、今日も夕飯抜きになってしまった。オジサンは仕方ないので本を読み始めました。オバサンはやはりソファーに座ってかりんとうをむしゃむしゃ食べていました。
オジサンはそうか仕方ないなと思ってコーヒーを二杯入れて叔母さんに一つ渡しました。オジサンはようやく夕食ができたと思いました。今夜は出かけないようにしないと明日も食べれない一日になりそうだ。と思って静かにに本を読みました。
深夜、コンコン、またキツネか。オジサンは無視することにしましたが、「来るなら夜が明けてこい」と怒鳴りました。
キツネは、
「しっぽはいりませんか、おなかがすいて」
と言いました。オジサンはあと少しで夜明けだから太陽が昇ってからドアを開けるから待ってろ」
と言いました。
「はい、待っています」
キツネは月を眺めて涙を流していました。
タヌキだけいい思いをして、お稲荷さんぐらい誰かくれてもいいのに、私は騙さないよ、タヌキは腹黒いんだから、と鳴きながらつぶやきました。
タヌキは、キツネめまた生娘でだますな。わしは頑固爺で懲らしめてやる。
タヌキの顔は真っ赤でした、そこに猿がとんできてかおをゆびさして、
「赤いー、ウッキッキ」大喜びで飛び跳ねました。
「わしの顔は赤いんか」ポンポコポン。
「ウップー、いい音じゃ」
タヌキは気持ちがよくなって太鼓を打ち続けました。
すると町の人たちが詰まって来て、輪になって、踊りを始めました。
オジサンは思わず輪に入って、よっこらどっこいしょs-いすーいと踊り始めました。
踊りは元気に飛びあがっていきました。キツネは、楽しくなって目を細めて着物を着換えました。
街の人たちは、それを見て、持っていた懐中電灯でスポットライトを当てました。
キツネの顔は白いので口の赤いのが気持ち悪いくらいに明るく見えてしまい。キツネはお面をかぶりました。
あいつ化けるのをやめたか。
タヌキは太鼓のリズムをますます早くしました。
「オジサン酒だ」
二人はスコッチを一本持ってきました。
タヌキは「よこせ」と言って瓶を掴みました。
「オッとそれは狸さん」
「ポンポコポンな狸さんですよ」
純子は大笑いしました。
オジサンは、広場の井戸から水を汲んで持ってきました。
タヌキは
「そこにスコッチを全部入れて分け合って飲もう」
「合理的な」
剛は驚いて、拍手をたたきました。
囃子が止まった街の人たちは歌を歌いながら踊っていました。
キツネは歌が聞こえないので踊りの輪の中央で細い樹になって突っ立っていました。
オバサンは、おなかがすいたので縁日の焼きそばと、りんご飴を買って口をパクおパクとさせて目を細めてにっこりと笑いました。
タヌキの太鼓は結局深夜まで続きました。
オジサンはしょうがないの焚きそばにはショウガがあったほうがいいと思いました。
おじさんは、
タヌキの囃子はますます早くなって子供たちが大はしゃぎになっていました。
キツネは、それを見て、コーンコーンと鳴いてお面をかぶって踊り始めました。
尾っぽが一本受けて空に飛び上がると
「見てー」
「飛び上がったー」
「行きまーす」
「はーい」
子供たちは目を丸くして青い空を見上げました。
しっぽは空に届く途中でくるくる回って、大国主命がそれを見つけて剣で一本切り落としました。
落ちたしっぽは蛇のようにくにゃくなと歩くので子供たちは枝で突いたり、石を投げつけてはしゃぎました。
オバサンは、
「ヘビ」と叫んで立って震えていました。
「なんだよ」
と一人の男の子がしっぽの橋を掴んで頭の上でくるくると回し始めました。
「すげー」
男の子たちは指差して大笑いしました。
オジサンはタヌキに、そろそろ囃子を静かにしないと近所迷惑だぞ」
と言いましたが、遅かったようです。
近所の家の窓が開いて「
夕べからうるさくて眠れないぞ、いい加減やめないと警察に通報するぞ」
と言われてしまいました。
オジサンとタヌキは、囃子をやめましたが街の人たちは勝手に歌って踊り続けるのです。
「皆さんすみません」
「そろそろ、場所を移しましょう」
と剛と純子は言いました。
「行きましょう、向こうのグランドの上の広場に」
街の人たちは踊りながら場所を移しました。
剛と純子は、水割りの入った桶を抱えて持っていきました。
街のおじさんたちが、
「おう」と言って、水割りを手ですくって飲んでいきました。
空はどこまで行っても宇宙に届くところまでも青く濃く広がっていました。
オジサンたちは、やぐらを組むぞと言って、資材置き場から木の棒を運んで、広場に屋gフラを組んで、タヌキを載せました。
タヌキは仕方ないので、ポンポコポンポコポンポンポコポンと太鼓を打ちました。タヌキは水割りをもらってグイっと飲みました。とたんに顔が赤くなって、太鼓の音の響きもよくなったのでタヌキは機嫌がよくなって笑いながら太鼓を打ち続けました。
オジサンは、やぐらの脇で手で囃子を追いかけていきました。町の人たちは歌いながら踊り続けています。広場は踊り続ける人で埋まってしまいました。5キロ向こうからまだ人がやってくるのが見えています。広場は群衆の圧力で広場の壁が破れてしまいました。「おい、世界のの終わりだ」
「人生最後の食事を盛大に祝おう」
オジサンたちは魚釣りに海に向かいました。
オジサンたちは海に突き出したテトラポットを歩いて行って、波しぶきを頭からかぶりながら、小魚が飛ばされてくるのを捕まえて、
「オーエサが飛んできた」
と言いながら竿の針につなぎました。
オジサンたちはテトラポットの先端でリールを投げました。海底のウツボが、岩の割れ目から顔だけ出して、
今日釣りをする暇人がいるなあ、アホめ、人生で終わりの日なのが分からんのか、ウツボは思わず小魚が泳いできたので強い顎で丸ごと加えつきました。あ、針だ、靭は意図を食いちぎりましたオジサンは思いっきり差をを持ち上げていたので背中から海にドボン、落ちてしまいました。アーア死神がまた来てしまった。オジサンは差をを思いっきりテトラポットにさして飛びあがってテトラポットに起立で着地しました。大生き返ったわ、オジサンは、世界の割を見届けようと思いました。小魚が残っていたのでもう一度竿に針をつけて、餌をつけてもう一度リールを投げました。何かかかったな、今度は慎重に吊り上げました。石鯛の大物でした。
これはいい刺身ができそうだ。オジサンはもう一匹小魚を仕掛けてもう一度リールを海に投げました。
今度はイセエビの大きいのが釣れました。
オバサンは後ろで、
「蟹、蟹、蟹は来ないかなー」と歌って踊っていました。オジサンは石鯛と、伊勢海老が釣れたので止めようと思いましたがもう一度リールを投げました。
今度はウツボがかかって吊り上げました。ウツボのしっぽを蟹がちょうどハサミでつかんだところで一緒に釣れました。オジサンは靭にかまれないように石で頭をつぶして蟹をとろうとしたらオジサンは鼻をはさみで切られてしまいました。
「これがせかいの終わりかー」と叫んで飛び上がりました。雲の上で閻魔様が松井受けていて、
「お前は血の池地獄域だと言われて、地の池温泉に入っているうちに世界は終わっていました。
オジサンはすっかり湯冷めすしてしまいました。オバサンは蟹がいなくなったので仕方ないので石鯛とイセエビを焼いて全部食べつくしました。
オバサンはせんべいも食べられると思ってポケットからせんべいの袋を出して、岩場に座って足をぶらぶらさせてポリポリと食べました。オジサンは世界の終わりはどこに行ったんだろうと考えこんでいました。
世界の終わりは血の池地獄の底に落ちて行ったのでした。
オジサンは蔓につかまっておりていきました。世界の割の宴会に間に合わんの。
ぼちぼち行くか。オジサンは下を覗いて、柔らかいマットがと思ったのですがでかい口が開いていたんぽです。
「食べられるー」
宴会はどこかに消えてしまいました。オバサンの口に食べられてしまったようです。
世界は終わったー。
オジサンは叫びました。
オバサンは、アイスを食べました。
おや、虫がついていた。オバサンは吐き出しました。
ペッ。
おじさんはとんでいきました。オバサンはしっかりアイスを食べました。
オジサンは、また今日も一日食べることができない。と思ってベッドに横になって着地しました。
オジサンは地獄の底を破って家のベッドに戻りました。雨になってしまいました。
鶏の声を聴いて目覚めたのに雨でした。
オバサンは、思わず。
「寝るな、起きろ掃除だ」
と怒鳴りました。
「掃除が終わったらゴミ捨てに行け」
オジサンは、今日も飯抜きの一日だな。と思いました。
オバサンは冷蔵庫からもう一本アイスをとっていてしっかり一本食べました。
そして、
「風呂掃除もだぞ、さぼるな、働け」
と怒鳴ったのです。
オジサンはゴミ捨てに出たついでに傘をさして坂の上に散歩してこようと思いました。
キツネが一人でドレスを着て寒そうに立っていました。
オジサンは騙されないぞ、これでも食べておけとポケットから油揚げを取り出して、キツネにやりました・
「うん、美味しい、味がしみ込んで、いなりにしたい上げだわ」
「こら、だますなお前は男だろ」
「いいえ、ひどい」
「しっぽをよこせ、わしはもう2万円使いこんだんだ」
「嫌だね」
「何て言った」
「嫌だね」
「イヤか」
「その先は」
「イヤ、お金はないよ」
「先に行っても詰まらん、わしがないんじゃ」
オジサンは傘をさして突っ立ていました。
水たまりが次第に広がっていきました。
落ちた枝が席になって、大きなダム湖ができてきました。
キツネは、あわてて、柳の祠に向かっていきました。
柳の幹には、もうカタツムリが
「よいしょよいしょ」
と登っていました。
キツネは、一ついじめてやれ、と思ってカタツムリを落とそうと手を伸ばすとカタツムリがめをぎょろっとキツネの前に飛び出してにらみました。キツネは慌てて飛びあがって柳の枝に腰掛けました。雨が顔に流れてきました。キツネの目はますます赤くなりました。オジサンは、あいつ馬鹿だなと思って丘の上のベンチに向かいました。
オジサンは坂の上の丘に着くと、本を広げてゆっくり、ページをめくっていきました。丘の上から見える町の人の生活は、志津香に動いているようです。川のそばのうどん屋さんは、タヌキうどん、が人気のようで、キツネのおカメひょっとこは、残念なようでした。子供は、炊き込みご飯、お変わりと言っておいしそうにうどんていしょくをたいらげていました。サラリーマンの人たちは袖をまくって楽しそうに、
「部長のやつ、また屁をこいていたよな」
「爺は平気なんだな」
と言って大笑いしていました。
その横を学生たちが背中にギターをしょって歩いていきました。
一人は、スティックを振って、スネアドラムをたたいて頭を振っていました。
「す、げー」
若者たちは、
「出来たぞ、やったー」
と言って輪になって、こぶしを上げて飛んで喜んでいました。
お昼を食べ終わった、オフィスレディーの集団は、角のタバコ屋さんによってストッキングを買っていました。その横を大きなデパートの袋を下げたおばさんが、「だらしないねえ」と言いながら通り過ぎました。
「自分の腹と同じ大きさの袋を下げて歩くんじゃあねえぞ、くそ婆」とオフィスレディーたちは言って大笑いしました。
オジサンは、いけない、ぬらりひょんだ、閻魔大王が、放したんだな。
ぬらりひょんはオジサンめがけて飛んできました。オジサンは、素戔嗚の尊剣をと叫んで飛び上がりました。
すると空が二つに割れて白い竜が降りてきました。ぬらりひょんはまずいと言って壁の裏に逃げて消えていきましたが、竜の爪が引っ張り出して、ぬらりひょんの禿げ頭に雷を落としました。ぬらりひょんは気絶して、1000年お眠りにつきました。
おじさんは、今日は冒険物語をたっぷり見たなと思って、帳面に油断大敵と一行書いて、本を一ページめくりました。オジサンは町を眺めているだけの悲しい昼を過ごしてしまうのはもったいないけど、仕方がないなと思いました。
「お昼はどうしよう」
「今日もおいしいコーヒーランチがいいな」
と純子は言いました。
「じゃあ自転車で森の向こうの喫茶店に行こうか」
と剛は言って、ポーチバックを肩に下げて玄関に向かいました。
純子はアッと思って、ポーチをもって玄関に向かいました。
やっぱり殴ってやる。純子の気持ちはまだ収まるところがないようです。
街のおじさんたちは、今度イノシシが来たら、公営イノシシ競猪を開催しよう、子供がいたから冷静になったが、結構面白かったしな。
オジサンたちは段取りを決めておこうと相談を始めました。
オジサンは、まずい帰らないと、さぼったんだけど、怒られては困る。オジサンは本のページを一枚めくって帳面に、転ばぬ先の杖と一行書いて、本を閉じて帰っていきました。途中壁の上で黒い猫がしっぽを上げて歩いていましたカラスが急降下してきたので猫はギャーと大声で威嚇しました。カラスが一話コントロールができなくて壁にまともにぶつかって気絶しました。鼠がかみつきましたが、「こいつ臭すぎるー」と叫んで逃げていきました。猫はネズミをにらみつけましたが放っておきました。オジサンは家に帰ると、
オバサンは「遅かったな、また悪さでもしてしくじったか」と聞きました。テーブルの上に小僧寿しのパックが空になっておかれていました。オジサンはまたやってしまった。家を出ると食事は必ずなくなってしまうんだなと思いました。オジサンは外がうるさいので窓を開けて覗いてみると土砂降りの雨になって雷の音が遠くで響いていました。ぬらりひょんやったな、と思って見上げると白い顔のお面をかぶったキツネが飛んでいました。また騙されたんだな、ぬらりひょんに化けていたんだな。キツネそばにしてやろう。揚げをを焼いて、カップラーメンにお湯を注いで焦がした油揚げを載せて、うどんをすすりました。オジサンは昼は食べたぞと心の中で大きな万歳をしました。
グランドのベンチの下で、柴犬が昼寝をしてました。ジャー。柴犬はびっくりして起きて思いっきりベンチに頭をぶつけてしまいました。例の花子がまたオジサンに連れられて、縄張りチェックをしていたのです。柴犬は、呆然と花子を見ましたが声も出ませんでした。犬ひげ爺は、リードを引っ張ってポケットから、メンチカツの干物になったものを取り出して花子にやりました。花子は口を開けてそれをパクッと食べました。そして、犬ひげ爺の足元に駆け寄って、「高級ミルク」とせがみました。「無いよ」とオジサンが言うと花子は狂ったように、自分のしっぽを追いかけてくるくると回りました。花子はバタッと倒れました。エネルギー切れですのでオジサンは花子を抱きかかえました。花子の心臓の音が聞こえて、オジサンは花子の頭を撫でてやりました。
オジサンはイテーと頭を抱えました。オジサンの服はびしょびしょです。花子やったな。
「わん」
花子は楽しそうに犬髭おじさんのうでにだかれて気持ちよさそうにしっぽを振っています。
オジサンは家に帰って掃除と洗濯と水シャワーで体を洗うしかないと思いました。やっぱり勝手に出るのは危険でした。安全を確保して出かけようと思いました。
オジサンは今日は野球を始めました。もう5回になっているのですがヒットもないままでストライクも数えるほどです。
「おーい下手だぞ」
子供たちはベンチに座って足をぶらぶらして楽しそうにはしゃいでいます。
オジサンは、子供たちをを振り返ってvサインをしてボールを投げました。
子供たちは真剣に見ています。
それに気づいたおばさんたちは、子供たちにおにぎりを配りました。
子供たちは手でつかんでうれし祖イウにおにぎりを食べました。
純子は、紙ナプキンを用意して子供たちに配って、牛乳を紙コップに入れて配りました。
子供たちは静かに真剣な顔でオジサンたちの野球を見ていました。
剛はグローブをもってオジサンのチームに入ってバティングボックスに入りました。
「ストライク」
「イェー」
子供たちの歓声です。
カーン、鋭い金属音が鳴ってボールはグランドの先の森の中に吸い込まれていきました。
「やったー」
オジサンはブスっとした顔で突っ立っていました。
ようやく一点です。続くオジサンたちは三球三振で、
6回の表になってオジサンは鋭いヒットを打って、えっちらおっちら走って二塁打になりました。つづづくオジサンもタイムリーを売って、同点の振出です。つづくおじさんはバント失敗に、一塁ゴロアウトに、センターフライでアウトでチェンジです。子供たちは、手に汗を握ってみていました。みんなお握りをしっかり食べてミルクを飲み終わりました。
「ごちそうさま」
グランドに子供たちの明るい声が響きました。オジサンは、おなかがすいてきたので、オバサンを見ましたがオバサンは知らんふりしました。オジサンたちは水を飲んで野球を続けました。
カラスは驚いて杜の木の枝に立っていました。すると鳶がやって来て飛んできた野球のボールを口つかんでカラスの頭をごつんと殴りました。キツネはそれを見て、あのボールいいなと言って若い娘に化けておじさんのそばにいって「ぼー」と言って流し目でねだりました。オジサンは、慌てて野球の手をとめて、
「危ないですよ」
と言って、グランドの外に出るよう指差しました。
「くれないんですかー、幸子いじけちゃう」
「幸子さん、今度の紅白頑張ってください」
「ええ、でも、出禁なんです」
「ここもそうしますよ、ボールはスポーツショップで買えますよ」
「けち、出世しないよ」
キツネはそう言い捨てて、グランドを出ました。
オジサンは、怖い獣だな、怪談、百話ができそうだと苦笑いしました。
オジサンはキツネの流し目にウインクしてやりました。
「もうアッチに行け、ろくでもないやつしっぽをよこせ、金がなくなったんだぞー」
オジサンは真っ赤になって怒りました。
キツネは
「オジサン顔が赤いよ」と言って笑いました。
「化け狐目、服でもぬいでみろ、石造にしてやるぞ。
「オジサンセクハラですよ」
「獣にセクハラなぞあるもんか」
オジサンは大きな石を掘ってキツネを掘り出して赤い前掛けをつけて神社の鳥居のそばに置いてやりました。キツネは、これでお稲荷様になれた。と喜んで口を開けましたが、顔が真っ赤に避けた化け狐でした、しっぽは16本になって、奇怪な姿になりました。
子供たちは、
「おそーい」
「いやだー」と言ってかけてきました。
夕焼け小焼け色になってきました。カラスが子供を呼びに飛んでいきました。
「カラスが泣くから帰ろう」
子供たちは、遊ぶのをやめて帰っていきました。
お母さんたちは夕飯の支度にとりかかろうと急いで家に帰る途中、ピーマンが野菜の直売所にあったので一袋買って、精肉屋さんでひき肉と卵を買って帰りました。子供たちは、「また明日」と言って道で分かれました。オジサンは、今日は必ず帰って納豆ご飯を食べようと思って、豆腐屋さんに寄りました。すると納豆はここじゃあないと言われて上げを一枚買いました。オジサンは一枚あぶってご飯を挟んで食べました。
「コラー、まだ食うな」
オバサンはげんこつでオジサンをぶん殴りました。オジサンは歯が折れて顔が膨らんで、
「もう食べれん」と上げを皿に置いて逃げました。振り返るとオバサンが、ゴマの混ぜご飯を揚げに入れて大きな口で食べていました。
「あー今日も夕飯が消えていった」
とオジサンは、便所掃除に取り掛かりました。
「おい次」
オバサンは風呂を指さして、
「ゴミ捨て」
と言いました。
オジサンは、また食べれんか、思って期の上に登りました。
すると下で蟹が
「やーい赤お顔の猿爺」
オジサンは頭にきて柿をとって食べましたが苦いので、吐き出しました。
蟹は箸につままれて天婦羅にされてオバサンの口の中に入りました。
蟹は慌てて、油地獄を耐えて、歩き始めました。オバサンは捕まえて。
「蟹、蟹、蟹」といって、美味しそうにたっぷりとカニを食べました。
オジサンは、驚いてもう一つ熟した柿を探して食べました。
オジサンは下りて今日は草むしりでいいかともいました。突然お尻に何かぶつかってきました。驚いて後ろを見ると猪でした。イノシシは大きなシカに追われて突っ込んできたのです。オジサンは柿の木にぶっ飛ばされて、つぶれてしまいました。
蟹は
「ヤッター、意地悪な猿退治だ」
オジサンは、やっぱり柿木は危険だと思って納屋の梯子を上るとp右手のほうにミツバチがたくさんいてそれをめがけて熊蜂が飛んでくるので、これは地獄じゃと思って、ゴミを出す準備をしました。
オジサンは、玄関に着くと
「便所掃除、次は風呂の掃除」
オバサンの声がソファーのほうから聞こえてきました。オバサンは、もうすでにジャンバラヤを食べ終わってコーヒーを飲みながらどら焼きを二個目を食べていました。オジサンは今日の昼は抜きだなと思いました。
オバサンは帰ってすぐに、アイスを食べてもう一度出かけました、わしは最後にすっきりと間に合わせて出かけるんじゃのと思って出かけました。
熊蜂はユーカリの樹の幹で蜜を吸っていました。そこへ熊がやって来て蜜を手で取って舐めました。熊蜂は黒い獣だと思って思いっきり針を差し込みましたすると熊は青白い気持ち悪い流し目のキツネになりました。イノシシがやって来てキツネのしっぽを牙で抜き取りました。熊蜂は、
「ストライク」
といってで笑いました。
オジサンはまたねぼけて歩いてしまった、すってんころりんしたみたいだ。と思いました。いつの間にか薄暗い森の中にいました。オジサンは、森の中の遊具を使ってゆっくりと360度ぐるっと眺めて歩きました。いつの間にか雨になっていたようで、森の中は半分飛車ビシャで、熊蜂は調子よく森の中の木の枝を飛び回っていました。
「おじさん、あれ」
「気をつけろよ」
「僕あれ、捕まえたよ」
と言って、握った手をこちらに出して手を開いたら2センチの熊蜂が気持ちよさそうに子供の掌の上で眠っていました。
「やったな、すごいな」
とオジサンが言うと男の子は胸を張って、
「当り前だよ」
と言いました。
オジサンは焦って梯子を下りて五右衛門風呂に入ることにしました。
「おい、便所の掃除」
オバサンの声が響きました。
オジサンは風呂の焚口に松葉を入れて、新聞で火をつけてお湯を沸かしました。
「トロイ、明日になる。
オバサンの怒鳴り声が山に響いています。鳩がコッコローと答えて笑っていました。
オジサンは風呂を沸かしましたがそのあと掃除やゴミ捨てに追われて結局風呂は叔母さんが入って、オジサンは昼抜きで、ようやく夕方になって水風呂に入って、
「あー天国じゃ」とおおきなこえを出してしまいました。
「何か言ったか」
オバサンが寝ぼけて聞いてきました。
「何でもありません」
オジサンは、水風呂に頭まで入って、ゆっくりくつろぎました。
「あー今日も昼は抜きになってしまった、夕飯はまた茶漬けになるな、食べれたら、いいほうだ」
オジサンは知らないうちに涙をながしていました。
その茂みにはくちなしの木が一本あって、大きな白い花が、体いっぱいに広げて甘い香りを漂わしていました。その坂に上ったとき向こうから、大きな紙袋を手に持った女性が汗を拭きながら、歩いてきました。オジサンは黙って立って、その女性が歩いて通り過ぎていくのを見ていました。オジサンは女性が一瞬止まって深呼吸をしたのを、アーそうかくちなしだなと思いました。通りの向こうはお祭り騒ぎですがこの茂みは、時間が止まっていました。道から陽炎の揺れた空気が見えていました。オジサンは今日からアイスコーヒーでいいなと思いました。すると、くちなしの妖精が、「今日は満月がきれいですね」というのです。オジサンは空を見ましたが、真っ青な濃い青が広がっていました。
満月か、太陽の明るさに負けてしまったなとおもってふりかえると、そこに立っていたのは紙袋を持った女性でした。紙袋は出版社の社名が入っていましたので、オジサンは「校正ですか」と聞きました。「はい、の資料です」と女性は答えてくれたので、「宇宙の話なんですね」というと、「生命の起源の話です」と言われたので、「それは宇宙ですね」とオジサンが言うと女性は少し笑って会釈して歩き始めました。オジサンはもう少し先の喫茶店でアイスコーヒーを飲むことにしました。木陰の影が濃く暗い時間になっていました。
あー。オジサンははっと目が覚めました。不思議なことにくちなしの香りが体の中に残っていました。女性は
「この坂にはたくさんの言葉が眠っています。読んでみてください」
と言いました。
オジサンは、ようやく坂を上って、喫茶店の前に着きました。
「オジサン、不思議ですね、通じるんですね」
「どこにいるんだね」
「いいるんです、目の前に」
「ああ、長い間消えていたから」
オジサンはまだうとうととしていました。
喫茶店の入り口には一本の大きなクスノキがたっていました。
オジサンは本を読んで後で本を返しに書店に行こうと思いました。
「いらっしゃいませ」
「コーヒー、アイスで」
「ミルクと、ガムシロップは」
「いりません」
女性店員はガクッとして、
「ブラック」
「ブラックで」
女性店員は慌てて引き返して、コーヒーを入れ替えて持ってきました。
「すみませんホットサンド」
「塩」
「ええ」
「わかりました」
オジサンはゆっくりコーヒーを飲みながら本を読みました。
オジサンは帳面に、
「奇奇怪怪」
と書きました。
お待たせしました。
オジサンはホットサンドが来たので塩を少しふって口に運びました。
オジサンはようやく静かな朝を過ごせたと思いました。
窓の外で緑の草木が、たのしんでいます。黄色いバラがダンスを踊っていました。
オジサンは、そろそろ掃除とゴミ出しをやらないとまた昼がなくなってしまうなと思って、本を最後の一ページをめくって、コーヒーとサンドを食べて、店を出てクスノキの穴に登って入ってエレベーターに乗って6階に向かいました。エレベーターに乗ると自動的に動いて6回で止まって扉が開きました。ぎっしうり本が詰まった本棚の壁が広がっていました。外から笛と太鼓の音と、バイオリンのメロディーが聞こえてきました。
オジサンは帰りに祠によって、さい銭を入れて帰ろうと思いました。
「これ読んだので」
「早かったですね」
「今日はこれで帰ります」
「奥に無料のカフェがあるので寄りませんか」
「ええ、でも帰らないと死神を見ることになるので、また着ます」
オジサンはエレベーターに向かって一回のボタンを押すとやっぱり三階で止まって扉が開きました。
オジサンは下りて歩いて祠に向かって再繊維50円を入れて手を居合わせて家に帰りました。
「どこをうろついていたんだ、便所掃除にゴミ出しが済んでないぞ」
オバサンの怒った声が、町中に響きました。
オジサンは、アーまただ、と思って悲しくなってきました。
オジサンは、本を返してしまったので、本棚から一冊取り出して、テーブルで本を読みました。
「やっぱりここにいたね」
「ああ」
「熱くないんですか」
「汗びっしょりだよ」
「どうしてここに」
「私も消えたの」
「アーそうか、でもここは君の来るところじゃあないよ」
オジサンは血の池地獄ですっかりくつろいでいました。
ソロソロまた赤鬼たちが血の湯をかき混ぜに来る頃だ。
「元気で暮らすんだよ」
「はい」
オジサンは、お湯を上がろうとしましたがお湯の底から足を引っ張られていたので、仕方ないのうと思って、南無阿弥陀仏と唱えました。
すると阿弥陀が天空に表れて細い透明な糸をたらしてきたのでまたやったなとおもって、おじさんはおもいっきりひぱってやりました。阿弥陀のやつ慌ててのけぞって転んだよ、ぷじゃ、ざまあない、人の心をもてあそんで喜んでいる、腹黒い、悪人め、南無阿弥陀仏。これで心を入れ替えたか、馬鹿垂れー、オジサンはドアってすっきりしました。
世の中には神を語って詐欺をしている奴らばかりじゃ、誰もが、儲けたいんじゃの。
参ったかわしはもうすでに知っておるんじゃ。
オジサンはこれでもう一生血の池地獄で安らかに過ごせるわと思いました。
「コラーさぼるなまだ便所掃除も風呂掃除もゴミ出しも終わてないぞー」
オバサンの怒鳴り声が響いていました。
オジサンは、知るかと思いました。
オジサンは帳面にとうとう
晴耕雨読と書いて眠りました。
「満月ですよ」
「え」
オジサンは、満月ほど、いかがわしいものはないと思って穴の底から、月を見上げました。
すると阿弥陀が、
「やったなーこの極悪人め」ととうとう本性を出して笑っていました。
オジサンは赤鬼たちに
「ぬるいぞ、働け」
と怒鳴ってやりました。
すると閻魔大王が、
「特別料金が必要じゃ」
と笑いました。
「出たー地獄の沙汰の金のことじゃ、金ならないから、いつでもこい」
閻魔は、それを聞いて
あいつは本物の馬鹿だなと思って背中が寒くなってきました。
まずい、風邪でも引いたか、風呂に入ろう、
閻魔は血の池地獄につかって
「ぬるいぞもっと湯をかいて温めろ」
と赤鬼たちに言いました。
「ほら見ろ、何が追加料金だ」
オジサンはゆっくり肩までつかりました。
「あいつ呑気な奴だな今度は、永久清掃地獄に入れてやる」
と笑いました。
オジサンは、もう一度ゆっくりと空を見上げました。
「おい、まだ掃除が済んでないぞ」
えーまだ聞こえる。
オジサンは大粒の涙をポロリと流しました。
もうつつじは蜜のにおいを消してしまいました。熊蜂は仕方ないので、
朴木の幹の蜜を狙いましたが、カマキリやのこぎりがいたので面倒だなと思って、奴らの頭の上をぶんぶんと飛びました。すると、おおきなありがあたまをあげて、クワガタの足を噛みました。今だ熊蜂は一気に降りて朴木の蜜をお腹いっぱい吸いました。
オジサンは、
君子危うきに近づかずと帳面に書いて目が覚めました。
オジサンはもう少しで夜明けなので。そろそろ湯を上がろうと思いました。そして永久清掃地獄に向けて歩き始めました。
細い岩の道をゆっくり歩くと遠くの街が見えました。はげやまがつらなっているのいで、緑の木の種を植えていくことにしました。
オジサンはお握りでも食いたいなと思いましたが、
地獄のコメは血の味がするので止めました。オジサンは岩山の道をはつらつとした笑顔で歩いていきました。
オジサンは大声で、「北風小僧の貫太郎」を歌いました。すると、楠が、「大きな木の木の下で」と歌い始めたので、若い男性と女性がやって来てちゃんとてゅーをしました。鼠は見上げて、「チューチュータコかいな」と歌いました。臨床は谷に響きました。
「何じゃそいれはひーらひーらひら」と叔母さんが踊り始めました。オバサンは機嫌がよくなって、焼き芋をガブッと丸呑みしました。
オジサンは、仕方ないので便所掃除をしてゴミ出しに行きました。オジサンはお腹がすいていたので、柿の木に登って柿をとって食べようとしましたが、熊蜂がやってきたので慌てて枝を放してドスンと落ちました。
「貧しさに負けた、重力には寒波いいした。右も左も世間の風は空っ風sで身が震える」
と歌いました。オジサンは本当に仕方ないのでコンビニのごみ箱から弁当の残りを店長にお願いしてっ持ち帰りました。
「ほら割りばし」
と店長は割り箸をつけてくれました。オジサンは涙を絶え間なく流しながら箸を動かして、焼き魚の実を掴んで、大粒の涙を流しながら食べました。オジサンは公園の水道の蛇口をひねって水を飲んで腹を膨らませました。オバサンは、みたらし団子をレンジでチンして、お茶を飲みながらテレビをつけて食べ始めました。
オジサンはやっと腹が満たされたと思って次に借りる本はニーチェにしようと決めました。オジサンは地獄を体験したので、もう怖いものはないと思いましたがオバサンの声を聴いたとたん実が固まってしまいました。
オジサンは楠の木の下で、呆然と涙の雨を流していました。
「今日の天気雨になるんだっけ」
「今日は一日を通して晴天の予報よ」
「あの雨は」
「あの雨はオジサンの涙雨よ」
「涙飴ってうまいのか」
剛は聞きました。
「飴細工用よ」
純子は、どや顔で答えました。
純子は雨を一粒採ってハサミでウサギを作りました。
それを見ていたオジサンはますます悲しくなって今度は鼻水まで流し始めました。
オジサンは、ちょっと別な街に一度出かけて、本を探してみようと思って涙を手でふき取りました。
「おじさーん,顔が真っ黒」
女性が指さして大笑いしています。
しまった鉛筆を削った手で顔を拭いてしまった。
オジサンは慌ててグランドの水飲み場の水道の蛇口に向かって、手を洗って、水を飲んで、顔を洗いました。
「おじさん、感染症が流行っている空手は石鹸で洗わなきゃあ」
純子は思わず、オジサンを注意しました。
オジサンはエーっと思って、蛇口の横で凍ってしまいました。
すると犬日ひげ爺が花子を連れてやってきましたがオジサンは不覚にもたったままでした。
ジャー、オジサンの足元が、びしょびしょに濡れてしまいました。犬ひげ爺は知らんふりして花子のリードを引っ張って散歩に向かっていきました。
オジサンは、靴は守れたなズボンが濡れた、オジサンは水道の蛇口をひねってズボンを洗って絞りました。
鯉ううときはと思ったとき、指差しオバサンがまたオジサンおズボンを指さしていました。
「違うぞ、また花子にやられたんだ」
というと、指差しオバサンはこくんとうなずきました。
楠の枝はゆっくりと風に揺られていました。
熊蜂は、クワガタとカマキリを、追い出すことができたので気の幹にべったりと止まって、ゆっくりと楠の蜜をなめることができました。気が付くとアリの行列が二列できていました。熊蜂はこいつら鷲を食う気かと思って羽を思い切りバタバタさせてブンブンにしました。それを見ていたシオカラトンボは股ちゃってるよと思ってみていました。シオカラトンボは、蛇口の水が、溜まっていたので降りて水をなめました。落ち着いたので気の枝に止まって一寝入りすることにしました。
オジサンは、ズボンを絞って、街のほうに歩き始めました。
オジサンは一度電話をしてみました。
しばらくする地電話がかかって来て、
「通じるのね」
「どこにいるの」
「ブラジル」
「お父さんのところにまた戻っているんだね」
「うん、不思議でしょ通じるんだから」
オジサンは、
「元気で」
と言ったら電話は切れました。
オジサンは坂道を上って、くちなしの木の前で、二輪になったなと思って、歩き始めました。
もうすぐ花の季節は終わりです。
オジサンは、古本の街を歩きました。
欅の街路樹から、緑の香りがして喫茶店からコーヒーの香りがしていました。
オジサンは店の外の本棚をゆっくり見て回りました。3冊100円の箱もゆっくりと見て回りました。
オジサンは、一冊文庫本を取り出して、買って、喫茶店でコーヒーを飲むことにしました。
オジサンは昼になるまで店の中で過ごしました。
オジサンは、喫茶店の窓から白い花が開いていくのをじっくりと眺めていました。華が開くと早速ミツバチが飛んできました。
オジサンは、アーそうか、ミツバチにはすぐわかるんだ。紙袋を右手に抱えた若い女性もミツバチを見つめていました。
オジサンは、
「宇宙旅行は楽しかったかい」
と聞きました。
「ええ、火星と怒声でゆっくり、野良猫たちと遊んできたよ」
「猫」
オジサンは驚きました。
女性は
「そう猫でした、猫たちは寒くて暗い世界で、太陽の光を追いかけて遊んでいたんです」
と教えてくれました。
オジサンは猫たち、飛んでいたのかなと想像しました。
女性はミツバチがめしべの根元で盛んに蜜を吸っているのを見つめていました。
ミツバチはどうして三つを見つけるか不思議だなと思いました。女性は思わず花びらを触りました。柔らかくすべすべした肌でした。
気が付くと木の葉もつやのある濃い緑をしていました。女性は額に大粒な汗がついてきていました。楠の上では天狗が片足で立って遠くを扇で指差してにらんでいました。天狗は、交差点で、信号無視して走った自動車めがけて扇を投げました。扇はその自動車を吹き飛ばして、渡っていた母子をすくいました。天狗の芽は険しく光っていました。天狗は扇を呼んで、手に持ちました。
天狗はまだにらんでいます。女性はミツバチとお話ねと思って。
「ミツバチさん美味しいの」
「うん、これは分けられないよ」
とミツバチは、怒って振り返りました」
オジサンは、
「御嬢さん、ミツバチは働き者ですね」
と言いました。
2025/5/31