霜柱と花
「おい、もっとゆっくりいこうよ」
「うるさい、走れ、時間がない」
おっと、そらからみずがふってきた。今日は雨の無い日のはず。美緒のやつねらっておしっこをしたな。
窓辺にケーキは置いておいたのに、水がないというのか、ブラックのやつだろ。
わたしは木の枝を払った。オッこいつは、勇人というやつか、道のそばにすっと立っている、樫の木だろ。私は、道を歩いて、山茶花がまだ花をつけているなと思った。梅の香りもし始めた。霜の音が鳴った気がした。私は静かに道を眺めて、また、ここを歩こうと思った。ここは大切な道、近所の人しか気づかない、大切な時間がいくつも重なる道。この道は朝日から夕陽につながる道だ。この道で、ゆっくり休む時間がある。子供たちはここでかけっこをする。
家内が戻ってきて
「何か食べたいものある」
「甘いパン」
「おやつ、郵便局に行ってくる」
私はちょうど喉が渇いていたので、コーヒー飲むかと聞かれたので、夕食のときにお願いするよといった。
私は今日も汗をかいたが、同じ道を明日も歩くだろう、小鳥の美緒くん、頑張って羽ばたいている。夕日に向かっていい声で歌っているよ。グランドの向こうに見える木立は、あーあの時描いた木なんだなと窓から眺めていた。
私は、グランドを眺めて、今日の一日を穏やかに過ごせたと思っている。
「どうする、昼」
「猫に聞いたら」
「そうだね」
「どうする」
「パンはやめとけ、ケーキもやめろ、にぎりめしでいいわ」
「ということで、でも私はコーヒーは飲みたい、ブラックで」
「肉まんよ」
「お父さん、それもダメ」
「だめみたいだけどいただきます」
「ろくでなしのお父さん、おい、いつまでも猫と呼ぶ名前ぐらいつけろ」
「うっかりしてた、サファイアにするよ」
「サファイア、そいつは食えるのか」
「これがあれば、3日はいいものが食べれるよ」
「よし、気に入った、肉まん食べろ」
「真ん中によるな、右端に行け」
そうか、また笑われてしまうのか。
「ハハハハハ」夕陽にわらわれてしまった。
「おいろくでなし、またパンを食べたろ。デブ」
「お前に言われたくはないわ」
「父さんと思って、思い上がるなよ。また倒れたらどうする気か。歩いて笑われることもなくなってしまうぞ」
「サファイアの言うとーり、明日歩いて消費するから」
「馬鹿、歩くのは俺だ。お前ははいつくばってろ」
「いいけどサファイアの昼は抜きになるよ」
「頭悪いな、オレの一族はネズミや、鳥を捕まえる一族だ」
「ゴキブリは捕まえないのか」
「そいつはまずい」
「なんだ、好き嫌いが多いいぞ」
「うるさいやつだな、おっと失礼」
ご主人、また奥さんともめたな。
「馬鹿な奴」
「サファイア、そろそろ布団にかえりなさい」
「うるさい、うまいものを食わせろ、俺の人生を返せ」
「サファイア、家内の口癖の真似はやめてくれ」
「うるさい、なにかいいことにしろ」
「はい、わかったから、静かに」
「お前がうるさい」
「外でかけるか」
「馬鹿見てみろ、外はまだ、雨の跡が残っているぞ、俺は汚れたくない」
「わかった、キッチンのビスケットでもたべておいで」
「ミルクはないのかブラックだぞ」
「後で用意するから少し待っておいてくれ」
私はキッチンに向かって冷蔵庫から牛乳を出して、皿に注いだが、浅すぎたかなと思って、別のものを探した。
「サファイア、ごめん、家内が戻った。ピザになってしまった。キットカット月になった。ミルクでなくストレートのお茶を飲んでくれ、ビスケットは食べたか」
「駄目オヤジ、食うとらんわ、ピザを取ろうとしたのに食うたろ」
「悪かった。家内からもらってくれ」
「けちだからな」
「出ていくか」
「くだらん、腹いっぱいにさせろ。駄目オヤジ」
「もう少し待ってくれ家内が昼寝してから何か探すよ」
「だっめオヤジのバカ。また、パンの類を食うて、それで済むと思うか、歩け」
「とりあえず体操をするよ」」
「オヤジ、今日は歩かなかったな、明日は俺を歩かせろ、話によるとモズの美緒というやつがいるそうだが」
「あいつはいい歌を歌うやつだが私におしっこをひっかけようとした」
「だったら食べてもいいか」
「それはやめてくれ、みんな彼の歌を待っているんだ」
「がまんできん」
「明日家内に肉をもらうから」
「オヤジ又嘘をいったろ」
テーブルの上の花瓶のチューリップが笑っていた。春分の日の午後だ、今日は。
「サファイア、ちゃんと食べろ」
私は、チョコ菓子を置いて、水を置いた。
「ご主人、私美人でしょ、描くのはいいけど、事務所を通してね」
「料金表があるの」
「事務所に聞いて」
「美人に描きたいだけなんだ。わかった事務所に聞いてみる、今聞いたけど、払うよ」
「又嘘をついたでしょ」
「御免、家内に水を交換してもらうよ」
「勝手にして、事務所がだまってるかどうかわたしはわからないわ」
「ご主人、馬鹿だな、話すからだよ」
サファイア今日はあとで玄関のとびらをすこしあけるから、美緒でないネズミを階段で探して」
「馬鹿また、裏切るか今日は食わせろ」
サファイア、玄関を開けたら少し出て歩いたみたいだね、グレーの毛が落ちていたよ。君のブルーの瞳にも今日の雪が見えたろ。鶏肉を皿に置いたけど、すこしたべたようだね。
「ご主人、少ししょっぱいぞ、こんなのを食っているのか、また倒れるぞ。反省しろ」
チューリップは、雪を見ても微笑んでいます。私はようやくサファイアとチューリップを描いてみようと思いました。
「ご主人、体操でいいと思っているのか、もっと歩け、また倒れるぞ、反省しろ」
「サファイア、おいで、ミルクをテーブルに置くよ」
サファイア、今日はまだ寝ているね、ミルクを飲みに来なかったね。
「お前、またもめたな。駄目オヤジ」
「今日はもうなしだよ、少しだけパンを置いておくよ」
「オヤジ、またパンを食うのか、倒れるぞ、歩け、むすことももめたろ、ばかなやつ」
サファイア、ちゃんとたべてね。
「雪が解けたら、外に出るか」
「足が汚れる俺は嫌だ」
「一緒に車いすで歩こう」
「うまいものを食うならいいぞ」
美緒君が歌っている。穏やかな、道にもどってくれるだろう。近所の人たちは雪かきで汗をかいている。私はもう一度サファイアを描いた。ものに手を入れる。そのまえにたいそうをする。
「サファイア、食べたか、ビスケット」
「外には出ないぞ。寒いからな、家の中にいさせろ」
「昼には出るぞ、ちゃんとあるこう」
「車いすに乗るのじゃないのか」
「今日は階段だけだ」
「駄目オヤジ、またもめるぞ、いい加減学習しろ、それに、チョコはだめだ、うまいものを食わせろ」
「ちょっと、じっとするのは無理かな、昨日君をうまく描けなかったよ」
「オヤジ、面倒くさいぞ」
「いいから、少し落ち着いてくれ」
サファイアはゆっくり、リビングを歩いていた。
「おい、家内がこれから出かけるというから君もついておいで」
「車椅子か」
「そうしてくれると思う」
「またもめたか、俺は、地面は歩かんぞ、ねずみもとりもみえないじゃないか」
「ミルクを頼んでみるよ」
「うるさい、またパンを食べたろ、いい加減反省しろ」
サファイアは窓辺に横になって私をにらんでいる。
「サファイア、おいで、商店街に出かけるみたいだ」
「駄目オヤジ、また奥さんともめたな、馬鹿。俺は歩かないぞ」
「商店街で、家内にミルクを買ってもらえ、明日の朝飲めると思うよ」
「又嘘をついたな朝食はお茶だったろ」
「家内は買ってくれると思うよ」
私は、商店街で、サファイアをスケッチした。
サファイアは気持ちよく、リビングで寝ていた。
「サファイア、落ち着いたね,今日はお日様の光が気持ちよかったね」
「くそオヤジ、うるさい。おれがおまえだったら、今声をかけて起こしたりしないぞ。馬鹿。これでいつももめるのがわからんのか」
「ごはん」
家内が夕飯によんでくれた。ちょうど日没の時間だった。
「サファイア、明日の朝はミルクになるよ」
「嘘をつくな、ちゃんと買ったのを見たか」
「スーパーに入ったから買っているよ」
「うるさい、寝る」
「お休み」
私は今日、久しぶりに雪を手につかんだ。今夜の月はきれいに光るだろう。
「サファイア、まだ寝ているね。今朝も寒いよ、家内にミルクをもらってね」
「駄目オヤジ、またもめたろ、いい加減学習しろ」
窓の外では小鳥の美緒が歌っています。
今朝見ミルクおいしかったろ。
サファイアまだ寝ているね。
今日は我が家の久しぶりの大掃除なんだ。逃げないでね。
「くそオヤジ、また揉めたろ。いい加減にしろ」
「分かった。今日は起こさないから寝ていてよ」
「良いけど、日向ぼっこはさせろ」
「分かったもう少しあったかくなったらね」
サファイア、気持ちよく寝ていたね。
朝ミルクを飲んでね。
「うるさい駄目オヤジ、またもめるぞ」
サファイアはまだ気持ちよく寝ていたいみたい。
「これから出かけるから、ミルクを飲んでてね」
「うるさい、今日は日向ぼっこはないのか」
「今日は後でベランダを開けるから暖かくなったらそこで寝てね」
「駄目オヤジ、今日ももめたな」
2024/2/9